捕鯨問題最新情報(5) 2010年7月〜2011年3月

 

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2011年 (1月〜3月)  ↓

 

・3月29日(火)   産経新聞インターネットニュースより。

 http://sankei.jp.msn.com/world/news/110328/amr11032808430000-n1.htm 

 津波は日本の捕鯨産業の柱を倒した…NYタイムズ「冷酷」日本総領事館抗議   2011.3.28 08:37

 【ニューヨーク=松尾理也】 在ニューヨーク日本総領事館は25日、同日付の米紙ニューヨーク・タイムズが宮城県石巻市鮎川浜の捕鯨産業を取り上げ、「日本の町は捕鯨のない将来を考える」との見出しで、日本の捕鯨産業は東日本大震災によってとどめを刺されたとの内容の記事を掲載したことに対し、「あまりに冷酷であり、不適切な報道だ」と同紙外信部長に対し抗議を申し入れた。

                   ◇

 ニューヨーク・タイムズの記事「捕鯨のない将来」は、同紙の東京支局長、マーティン・ファクラー氏が日本有数の伝統捕鯨の地、鮎川浜で、東日本大震災の被害を受けた港の惨状をリポートした。

 記事では「捕鯨のない鮎川浜はありえない」という船員の声を紹介をしつつも、大打撃を受けた町の実態を伝え、「津波は、日本の捕鯨産業の支柱を倒すことによって、欧米の環境保護団体の抗議や妨害が失敗してきたことを成し遂げたようだ」と指摘した。

 小型沿岸捕鯨と北西太平洋調査捕鯨を担う鮎川浜の捕鯨産業は、これまでも環境団体の批判にさらされてきた経緯がある。今回の震災では、大津波で2隻ある捕鯨船が浜に乗り上げたほか、鯨の解体処理場や日本鯨類研究所の施設なども壊滅的な被害を受けた。

水産関係者によると、船員らは全員無事。捕鯨船も修理すれば使用が可能という。船員らは千葉県南房総市和田浦など他の捕鯨基地の支援を受けながら、「津波に負けていられない」と地元の捕鯨復興に向けて尽力している。

 ファクラー氏は昨年5月も鮎川浜をリポートし、「住民たちは長年のタブーを破って、政府の南極海捕鯨に異議を唱えだしている」と伝え、調査捕鯨を続ける農水省についても「日本の中央省庁で最も秘密主義の省庁の一つ」と指摘した。 (佐々木正明)

・3月28日(月)   『週刊新潮』 3月31日号に、「漁民に命を救われたイルカ漁調査 「シー・シェパード」 の恩と仇」 が掲載された (38−39ページ)。 今回の大震災特集記事のひとつである。 以下、その簡単な紹介。

 今回の東日本大震災発生時、シー・シェパード(SS)は岩手県の大槌町にいた。 イルカ漁調査のためである。 地震と津波で大槌町は人口1万5千人のうち、死者・行方不明者が1200人を越えた。 町長も亡くなっている。

 地震のときSSは高台に避難。 津波が襲ったあとは車中で一晩を過ごしたらしい。 その後地元民についていき、炊き出しの食べ物をもらった。

 しかし、後日、SS代表のワトソンはフェイスブックで 「ツナミ」 と題する詩を発表。 「海神ネプチューンの声は雷のように空を突きぬけ怒りと共に深き海の底を揺り動かした・・・・」 という内容だそうである。

 実は、当日SSが来ているというので、地元の漁業関係者はイルカ漁を中止していた。 そのため港に船を係留しておき、船舶が大きな被害をこうむることになってしまった。

 そしてSSは秋田経由で韓国に逃亡したとのことである。

・3月27日(日)   毎日新聞掲載の、田中優子による、石川『鯨人』の書評。 

 なお、評者の田中優子は捕鯨についてろくに知らないので仕方がないが、文中で土着の捕鯨への圧力が高まっているのが日本のせいだというのは、本末転倒である。 もっともこの種の議論は最近、反捕鯨論者によって一部でなされているので、田中はそれをそのまま採用しているだけの話であろう。 いずれにせよ、自然保護団体は、鯨を神の代わりにして信仰しているのであって、資源量を冷静に評価して捕鯨の是非を決めるという科学的な思考ができない人たちなのであり、そういう人たちと議論がかみ合うはずもないのである。

 それから、商業捕鯨でないというなら鯨肉に値段をつけてはいけないと田中が言うのも無知に由来する。 「原住民生存捕鯨」 をしているグリーンランドやアラスカでは、鯨製品に値段をつけて売っている。 商業と生存は決して二律背反ではない。 むしろそれを分ける思考に無理があるのである。

 日本の新聞が、シロウトと変わらない無知な大学教授に書評をさせるのは、なぜだろう。

 http://mainichi.jp/enta/book/news/20110327ddm015070014000c.html  

 今週の本棚:田中優子・評 『鯨人』=石川梵・著 (集英社新書・819円)

 ◇生きるための捕鯨、自然との真剣勝負

 この本、「くじらびと」と読む。鯨と人が合体した怪獣を思い浮かべてしまうタイトルだが、読んでみるとまさに、彼らは「くじらびと」なのだ。国の名で言えばインドネシア。まずバリ島のデンパサール空港まで飛び、次にフローレス島のマウメレまで飛び、四、五時間かけてバスでさらに東端の港まで移動し、そこから船に乗って到着するのが、レンバタ島のラマレラという漁村である。

 さてその「くじらびと」たちは、そのラマレラに暮らしている。著者はそこに十九年間にわたって通い続け、写真家として、彼らにレンズを向けてきたのだった。写真家が本業とは言っても、文章もすごい。その文章の力の源泉は読むと間もなくわかってくる。身を外に置いた観察者の文章ではないのだ。「二頭のマッコウクジラは、巨大な頭に詰め込まれた脳油を温めるために、毛細血管に大量の血液を流し込んだ」と始まるその文章は、マッコウクジラの体内に私たちを誘い込む。やがて脳油が溶け、頭が上を向き、「果てしない闇の中を加速しながら急上昇していく」と、水の色が黒から深いブルーに変わり、上方で光が白く見え、海がはじけ、空に躍り出る。まるでマッコウクジラになったようだ。

 本書の本質はこの冒頭にすでに現れている。著者は一方で鯨の側に身を置き、もう一方で鯨を捕る人間に身を置くのである。その鯨を捕るラマレラ村の銛(もり)打ちたちこそ、「くじらびと」である。文章は、こんどは椰子(やし)の葉の帆で走る船に移る。そこから、銛竿(もりざお)一本持つだけのたった一人が、豹(ひょう)のように跳躍して鯨の尾びれにそれを打ち込む。たった一〇メートルほどの木造の船が鯨と互角に戦い、銛と綱だけで鯨を捕る。著者はボートで追跡しながら、海に飛び込んで写真を撮り続ける。

 私は捕鯨反対論者だ。だからこそ、本書に惹(ひ)かれた。まず捕鯨反対の理由を書いておこう。理由は二つある。

 ひとつは、今や海の大型動物はイルカもクジラも、種類によっては多くの水銀をその体内にためており、とくに妊婦や子どもたちにとって、決して安全な食べ物ではないという点にある。まず海の汚染に立ち向かうべきなのだ。鯨やイルカは、人間に警告を発している。大事なのはその実態に眼(め)を向けることであり、肉を売り続けることではない。

 二つ目に、大国が鯨を乱獲してきた歴史があり、その乱獲が少数民族の捕鯨まで圧迫してきたからだ。最初はアメリカの捕鯨である。ペリーの黒船は、太平洋における捕鯨の拡大および、綿製品と鯨油の市場開拓のために日本にやってきた。決して日本を民主化するためではなく、捕鯨を続けるためだったのだ。その後を引き継いでいるのは、今の日本かも知れない。捕鯨しなくとも食料が足りている大国の不必要な捕鯨が、自然保護団体の警戒の的となり、そのとばっちりが伝統的捕鯨を消滅に追いやっているのではないか。

 伝統的捕鯨といっても、日本はもちろんのこと、ロシアの少数民族やグリーンランドの先住民などを含め、近代的な船を使い、銃を使って捕鯨しているという。これは本書から学んだ。国際捕鯨委員会は全ての商業捕鯨を禁止しているから、これらは「商業ではない」とされているのだ。しかし日本では鯨の肉に値段をつけて売っている。商業ではないというのなら、調査後の鯨は無料で配布すべきだ。そして何より、数字で制限されているというところに、近代捕鯨の本質が見える。伝統捕鯨とは、そこに暮らす人々が生きるためにおこなっている捕鯨であって、大規模に市場を求める捕鯨ではないのである。ラマレラでは年間に約一〇頭の鯨を捕るというから、制限の埒外(らちがい)である。にもかかわらず、保護団体はこういう村にまで眼を光らしはじめている。

 日本も江戸時代は捕鯨をおこなっていた。本書ではそこにも言及している。ひとつには、江戸時代に始まったチームワークによる網での漁法であり、その前はラマレラと同じ銛突き漁法だったという。ともかく、制限しなければならないほど無制限に捕れる近代漁法があるために、かつて人間が自然と互角に戦いながら自らを鍛え懸命に生きていた、その生き方は追い詰められ、消えている。ラマレラでは、銛は鉄を溶かして自分で鍛え、綿糸を紡いで綱を自ら編む。全ての技術が相互に関係しており、漁が消滅すれば、全ての技能が同時に消えるのだ。

 捕鯨を写真に撮るといっても、そう頻繁に捕鯨があるわけではなかったことが、本書に書かれた長い「待ち時間」から伝わってくる。鯨一頭で村人は二ケ月食べていかれる。鯨を捕らない期間は、シャチ、エイ、サメなどを捕って平穏に暮らしているが、鯨を撮影しにきた著者にとっては、いつやってくるかわからない「その時」を、現場を離れることもできずにひたすら待ち続けるのである。しかしその時間のなかで見える様々な暮らしと人の表情が、本書の魅力となっている。祭、信仰、祖先の物語、結婚式、日本語の軍歌など、そのひとつひとつが極めて興味深い。ラマレラには、かつて日本軍が駐留していたのである。

 毎日新聞 2011327日 東京朝刊

・3月26日(土)   産経新聞インターネットニュースより。

 http://sankei.jp.msn.com/affairs/news/110326/dst11032611220024-n1.htm 

 シー・シェパード 捕鯨妨害で震災支援に貢献したとPR    2011.3.26 11:19

 南極海の調査捕鯨を1カ月早く切り上げて帰港し、東日本大震災の救援物資船となった日本船団の母船「日新丸」(8044トン)について、捕鯨中断に追い込んだ米国の反捕鯨団体、シー・シェパード(SS)は25日、「われわれの努力が震災犠牲者への支援を生み出した」とアピールする声明を出した。(佐々木正明)

 SSの過激な妨害により今期の調査捕鯨を中断した船団の日新丸は今月21日、東京・大井埠頭(ふとう)に帰港。日新丸を保有する共同船舶はすぐに「震災被災者を助けたい」として、被災地への救援物資運搬船として利用することを決めた。日新丸は25日、重油500キロリットルや大量の食料などを詰み込み、宮城県沖に向け出港した。

 SSは同日の声明で、捕鯨妨害のおかげで日新丸が1カ月早く帰港、その結果、SSが震災への人道援助に貢献できたなどと主張。「日新丸は永久的に人道援助船となるべきだ」とも要求した。

 SSは東日本大震災の発生後、震災について頻繁に言及。代表のポール・ワトソン容疑者(60)=傷害容疑などで国際手配中=は、海の神が怒ったとする趣旨の「Tsunami(津波)」と題した詩を発表し、物議を醸している。

 一方、日本のイルカ漁に圧力を加えようと、震災直前の3月上旬に岩手県大槌町を訪れていたSS幹部のスコット・ウエスト氏は津波の被害から逃れ、日本を脱出。米国に帰国後、手記を公表し、避難の際に助けてもらった地元の人々に感謝しつつも、「岩手県と和歌山県太地町のイルカ虐待は常軌を逸した活動であり、決して許されるものではない」と指摘した。

・3月22日(火)    毎日新聞インターネットニュースより。

 http://mainichi.jp/select/world/news/20110322ddm012040084000c.html 

 調査捕鯨:活動を切り上げ、捕鯨船帰国−−SS妨害行為で       毎日新聞 2011年3月22日 東京朝刊

 反捕鯨団体シー・シェパード(SS)の妨害行為で活動を約1カ月早く切り上げた10年度の南極海調査捕鯨船団(4隻)が21日、帰国した。

 母船の日新丸(8044トン)は同日午前、東京港に着岸し、水産庁幹部らが迎えた。他の3隻は山口県下関市内に着いた。

 水産庁によると、乗員計184人の3割弱が東日本大震災の被災地住民で、帰国を早めた。日新丸は今後、被災地の物資輸送に使用される。【佐藤浩】

・3月16日(水)     石川創 『クジラは海の資源か神獣か』 の書評――『サンデー毎日』 掲載

 http://mainichi.jp/enta/book/review/news/20110316org00m040027000c.html 

 サンデーらいぶらりぃ: 水口 義朗・評 『クジラは海の資源か神獣か』 石川創・著

 ◆「調査捕鯨」団長はかく反論する

 『クジラは海の資源か神獣か』石川創・著(NHKブックス/税込み1050円)

 国際捕鯨委員会のリストによれば、86種の鯨が登録されている。クジラとイルカは何が違うのかと問われて、正確に答えられる人は意外と少ない。シロナガスクジラ(体長30メートル強、体重150〜200トン)は、重量から見れば、地上最大の生物であった恐竜(セイスモサウルスなど)を凌ぎ、史上最大の生物。

 ノルウェーやアイスランドが商業捕鯨で捕獲しているほか、日本も調査捕鯨で捕獲しており、国内で流通している鯨肉のほとんどは繁殖力旺盛で生息頭数がもっとも多い種のミンククジラ。鯨は海の哺乳類、その祖先は太古の昔、陸上を歩く四足動物で、5000万年前に生息していたパキケタス、アンブロケタスだったと最近の研究結果。

 体温は他の陸上哺乳動物と変わらず、37度前後。潜水時間は90分、潜水深度は2000メートルを超える。鯨類が一年間に食べる魚の量は、人間が一年間に漁業で捕獲する量のおよそ4、5倍になる。鯨の知能、知性がヒトに匹敵するという科学的証拠は今のところない。など、エピソード満載。

 鯨だって、食べて寝る。旅をする鯨。歌う鯨、吠える鯨。自殺する鯨。イマドキの捕鯨論争……。

 著者は、この20年の間に、調査団長になるまでに南極海を13往復。“戦う調査団長”として、日本の南極海鯨類捕獲調査と、反捕鯨団体の妨害の実態をきわめて冷静に、獣医師としてリポートしている。

 鯨肉はCO2排出量の少ない高タンパク低カロリーの生物資源。捕鯨が反対される理由、1.捕鯨をすると鯨が絶滅するから2.捕鯨は残虐だから3.鯨は神の獣だから。著者は明快に説明している。国民的議論が必要。

 <サンデー毎日 2011320日号より>

・3月11日(金)   産経新聞の 「金曜討論」 欄に、宮嶋茂樹氏と山田吉彦氏の討論が掲載された。

 http://sankei.jp.msn.com/politics/news/110311/plc11031114270023-n1.htm 

 【金曜討論】  調査捕鯨中止めぐり激論  2011.3.11 14:17

 南極海での調査捕鯨について政府は、反捕鯨団体の妨害で乗組員の安全が脅かされている、として今期途中での中止を決めた。日本の伝統的な食文化である鯨肉食は無法な行為の前に、このまま消えてしまうのか。「国際社会で譲歩を繰り返せば、なめられるだけ。護衛艦をつけても続行すべきだ」と主張するカメラマンの宮嶋茂樹氏と、「調査捕鯨は行き詰まっていた。これを機に沿岸での商業捕鯨再開を」と話す東海大教授の山田吉彦氏に聞いた。  (喜多由浩)

 ■ 沿岸での商業捕鯨再開を 山田吉彦氏

 −−調査捕鯨中止決定の背景は

 「シー・シェパード(SS)のゴジラ号が巧妙なやり方で豪州の船籍証を取得したことで、何となく国際社会の後押しを得たような印象があり、日本は外交的に譲歩せざるをえない状況にあった。また、日本の調査捕鯨のデータは欧米で理解されず、商業捕鯨の“隠れみの”とみられている。国内的にも、日本人の食文化の変化によって調査捕鯨で捕った鯨肉は安くしても売れず、在庫がだぶついていた。中止せざるを得ない状況に追い込まれた一方で、政府にとっては“渡りに船”といった面もあったのではないか」

  ◇SS側も“痛し痒し”

  −−「テロ行為に屈した」という印象があったが

  「相手(SS)がどんどん過激になり、予算も増やしているのに、日本側は同じやり方で無策だったのは否めない。この1年間は海保の巡視船などを護衛につけてでも行うべきだった。本腰を入れて犯罪行為があれば捕まえるという明確な意志と体制がなかった以上、中止は必然的だった」

  −−日本の捕鯨船との戦いを取り上げたアメリカのテレビ番組はSSの資金源にもなっている。それを断つためとの見方には?

  「日本の中止決定を受けて、SSは勝利宣言をしたが、本当は『痛し痒(かゆ)し』といったところだろう。“戦いのシーン”がなければ番組が成り立たないからだ。この番組は、黄色人種の日本人が知的能力の高い鯨やイルカをいじめているというコンセプトになっている。(同じく捕鯨を行う)ノルウェー人では敵役になりえないし、捕るのがマグロでもダメ。ただ、日本政府がそこまで考えて、中止を決めたとは考えにくい」

  −−調査捕鯨は中止すべきか

  「日本人として必要な捕鯨を行う、という明確なメッセージを発すべきだ。それは調査捕鯨ではない。日本の伝統である沿岸での商業捕鯨の再開だ。日本は中世の時代から鯨漁を行い、鯨肉を食べる文化がある。そして、食文化の嗜(し)好(こう)が変化した現在では、調査捕鯨の5分の1の鯨を捕るだけで需要は賄える。もし、そこまでSSが妨害に来るのであれば、堂々と法に照らして処罰すればいい。今度はアウェー(南極海)ではなくホーム(日本沿岸)なのだから海保もはるかに対処しやすい」

  ◇政府の決意次第

  −−商業捕鯨の再開は可能か

  「実際にノルウェーは、IWC(国際捕鯨委員会)に異議申し立てをして約600頭の鯨を捕っている。大事なのは、国際社会やIWCに迎合するのではなく、政府として明確な方針を決め、決意を示すことだ。今回の出来事は“劇薬”だったが、今後の捕鯨を真剣に考える契機になるだろう」

 ■ 護衛艦つけても続行せよ 宮嶋茂樹氏 

 ◆なめられた日本

  −−政府が今期の南極海での調査捕鯨の中止を決めた

  「一番問題なのは、日本政府がまたしても『テロ行為』に屈してしまったことだ。シー・シェパード(SS)は反捕鯨団体を名乗っているが、そのやり口はテロリストそのものであり、現に捕鯨船への妨害行為によって傷害罪で有罪判決まで受けている。海上テロへの対処訓練を積んでいる海保のSST(特殊警備隊)や海自のSBU(特別警備隊)を使えば、ごく簡単に妨害行為を防げたはずだ。あえてそういう対応を取らなかったのは、(SSに近いとされる)豪州やニュージーランドの顔色をうかがっているからだろう。かつてダッカ日航機ハイジャック事件(1977年9月)で、テロリストの要求に屈し、世界中から嘲笑されたことを忘れたのか」

  −−「及び腰」の対応を続けていると国際社会からなめられる

 「尖閣諸島周辺の中国漁船衝突事件で腰の引けた対応をして以来、今の民主党政権は国際社会からなめられっぱなしだ。ロシアの大統領らが北方領土に次々に乗り込んできているのも、日本が何もできないどころか、脅せば譲歩を繰り返す国だと見透かされているからだ。国際社会は、いったん相手をなめたらとことんやってくる。『友愛外交』だ『話せば分かる』と言っても、だれも相手にしてくれなかったではないか。断固たる態度を示さねば、領土も海洋資源も取られ放題だ。そのことに今ごろ気づいても遅いが…」

  −−来期以降の見通しは見えないが

  「今期の中止だけでも、情けないのに、来期以降、調査捕鯨を中止するとなったら、取り返しがつかない。海自の護衛艦をつけてでもやるべきだ。SSがやっていることは、(ソマリア沖などの)海賊行為と変わらない。日本人の生命、安全と財産が侵害されているのだから、邦人保護のために、護衛艦を出しても何らおかしくはない。(もし、反対する国があれば)関係を絶つぐらいの断固たる覚悟でやるべきだ」

  ◆次はイルカ漁が標的

  −−そもそも鯨を食べるのは日本の伝統文化だ

  「日本人に『鯨を食べるな』というのは、インド人に『手で食べるな』というのと同じようなことだ。しかも、(捕鯨やイルカ漁に反対する国は)『かわいい』『頭が良い』などと感情論で主張しているにすぎない。実際、鯨は増えすぎて、食物連鎖に影響を与えていると聞く。日本の場合、有事などで外国から肉が入ってこなくなれば、海からほとんどのタンパク源を取るしかない。鯨で譲歩したら次はイルカ漁やマグロ漁が必ずや標的にされるだろう」

                   ◇

 【プロフィル】 山田吉彦

 やまだ・よしひこ 東海大学海洋学部教授(海洋政策)。昭和37年、千葉県生まれ。48歳。学習院大経済学部卒、埼玉大大学院経済科学研究科博士課程修了(経済学博士)。銀行、日本財団勤務を経て、平成21年から現職。著書に「日本は世界4位の海洋大国」「日本の国境」など。

 【プロフィル】 宮嶋茂樹

 みやじま・しげき 報道カメラマン。昭和36年、兵庫県生まれ。49歳。日大芸術学部卒。写真週刊誌カメラマンを経てフリーに。東京拘置所の麻原彰晃被告(当時)やロシアでの北朝鮮の金正日総書記などスクープを連発。著書に「不肖・宮嶋 戦場でメシ喰う!」「金正日を狙え!」など。

・3月6日(日)  産経新聞ニュースより(yahoo経由)。

  http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20110306-00000519-san-int  

 豪連邦警察「法に基づき捜査」もSS反論「非暴力の活動だ」    産経新聞 36日(日)1457分配信

 オーストラリア南部・ホバート港に6日朝、入港した米国の反捕鯨団体、シー・シェパード(SS)の抗議船に強制捜査に入った豪連邦警察の報道官は「国内法と国際法のオーストラリアの義務に基づき、捜査に着手した」との声明を出した。豪有力紙、シドニー・モーニング・ヘラルド(電子版)が報じた。

 豪連邦警察の捜査員が6日朝から、SS抗議船のスティーブ・アーウィン号とボブ・バーカー号2隻に立ち入り、捜索令状を執行、1、2月に南極海で起こった出来事について、捜査しているという。

 一方、SS側も「豪連邦警察の捜査に協力している。南極海の活動は非暴力であり、違法性がないことに自信を持っている」との声明を出した。

 

・3月5日(土)  【私の見解】 反捕鯨主義者とは差別主義者である――差別主義の暴力に屈せず筋を通せ

 すでに報道されているように、今期の南極海における日本の調査捕鯨がシーシェパードの妨害行為により中止のやむなきに至った。事実関係については当サイトをごらんいただきたい。 また、これについてのマスコミの代表的な意見として、毎日新聞の社説 (2/19) と産経新聞の主張 (2/20) を紹介しておいた。 さらに、毎日新聞は 「社説:論調観測」(2/27) をも掲載しているので、それも紹介しておいた。 これによって、読売、朝日、日経といった他紙のスタンスをも知ることができるだろう。

 この件に関する当サイト製作者の見解を以下で述べておく。

 毎日新聞の社説はきわめていい加減であり、捕鯨問題に関する歴史を知らず、差別主義やテロリストを許容するという点で到底クォリティペーパーの意見というに値しないものである。

 まず鯨肉の需要だが、毎日新聞の社説を読むとまるで自然に減っていったかのように読みとれる。 しかし捕鯨問題の歴史を多少でも知っていれば、国内の鯨肉需要は反捕鯨運動によって強制的に減らされたのだということが分かるはずである。

 IWCでの商業捕鯨モラトリアム発効と、その後のアメリカによる圧力によって、日本の南極海での商業捕鯨は打ちきられた。IWCにおける商業捕鯨モラトリアムは鯨資源を冷静に見据えた上での決定ではない。 鯨を神聖視するカルトまがいのNGOや、かつては油を取るというだけの目的で鯨を乱獲していながら、鯨に利害関係がなくなって平然と鯨を捕るなと言い始めた英国などの身勝手なヨーロッパ諸国などにより、南極海での商業捕鯨はモラトリアムに追い込まれたのであった。 そのため、稀少になった鯨肉の価格が急上昇し、庶民にはなかなか手の届かないものになったというのが、鯨肉需要をめぐる歴史的な経緯なのである。 毎日新聞はこうした歴史にまったく盲目である。

 次に、南極海を仮に放棄すればSSなどの嫌がらせは止むかといえば、そうではない。 すでにSSは日本の太地町にやってきている。 彼らの嫌がらせは日本国内に及んでいるのに、毎日社説はそのことにまったく触れていない。

 したがって問題は南極海だけのことではない。 SSのテロ行為を放置すれば、その行き着く先は太平洋や日本国内でのテロ行為であることは明白なのだ。 日本政府の毅然たる対応を私は望む。

 昨年、映画『ザ・コーヴ』がアメリカ・アカデミー賞を取ったように、反捕鯨意識は欧米人 (豪・NZをを含む) の中にかなり強く根を張っている。 SSのテロ行為はこうした欧米大衆の意識をバックにして成り立っているわけだ。 その本質は、差別意識である。 反捕鯨主義とは黒人差別や反ユダヤ主義にも似た差別主義なのであって、これまた歴史を知る者であれば、十字軍や黒人奴隷やポグロムなど、欧米の歴史が差別の歴史でもあり、それと無関係とは思われないことが分かるだろう。

 また、毎日社説はIWCでの議論による打開策を提唱しているが、これまた現実をまったく見ていない。 昨年のIWCの会議は捕鯨国と反捕鯨国の話し合いすらまともにできず、次回の予定もまともに決まらないままに散会しているからだ。

 以上、毎日新聞の社説がいかにいい加減で現実から遠く離れているかを指摘した。 朝日の社説も同工異曲だから、朝日社説への批判にも使えることと思う。 毎日新聞はかつては朝日新聞 (かなり早い時期から反捕鯨論者寄りのスタンスをとっていた) とは異なり、捕鯨問題については筋の通った見解を述べていただけに、ここに来て腰砕けになったのは残念と言うしかない。 ただし、ここにも紹介したように、毎日新聞の地方版はこの問題に関する地方在住者の意見を積極的に掲載している。 内部は一枚岩ではないわけだ。 今後は、歴史と欧米の差別意識を見据えた記事の掲載を期待したいものだ。

 

・3月4日(金)     最近出た捕鯨・鯨関係書籍を紹介しておこう。

 ・石川梵 『鯨人』(集英社新書、780円+税)   

  インドネシアの捕鯨文化を紹介した本。

 ・石川創 『クジラは海の資源か神獣か』(NHKブックス、1000円+税)

  調査捕鯨にも携わった鯨学者にして獣医師である著者の、鯨と調査捕鯨、及びそれに対する妨害行為についてのリアルな報告書。

 ・藤倉良 『エコ論争の真贋』(新潮新書、700円+税)

  捕鯨問題だけを扱った本ではないが、154ページ以下で触れています。

 ・雑誌 『正論 2011年4月号』(税込み740円)

 シーシェパードについての本も書いている佐々木正明・産経新聞記者による 「シー・シェパードよ、図に乗るな!」 を掲載。 和歌山県太地町に対するSSなどの嫌がらせを報告しています。

・2月27日(日)   毎日新聞の 「社説: 論調観測」 より。

 http://mainichi.jp/select/opinion/editorial/archive/news/20110227ddm004070014000c.html 

 社説:論調観測 調査捕鯨 継続するか見直すか

 南極海での日本の調査捕鯨が打ち切られることになった。シー・シェパード(SS)の妨害で安全確保が難しくなっていることが理由だ。

 今期の調査捕鯨打ち切りの発表を受け、翌19日から20日にかけて各紙社説はこの問題を論じた。暴力に屈した形になるのは問題だと指摘しているのは共通だが、見出しから力点の置き方の違いがうかがえる。

 「暴力で調査捕鯨中止は問題だ」という日経と、「暴力に屈せず正当性貫け」を見出しに掲げた産経は、調査捕鯨の継続を主張する。日経は「国際的に認められた活動を、不法行為をきっかけに取りやめることがあってはならない」と述べ、産経も「調査捕鯨の正当性を貫くためにも、調査続行は明確にしておくべきだ」と強調する。

 「悪質な妨害行為は許されない」の見出しの読売は、「調査捕鯨の正当性を国際社会に改めて訴えることが必要である」と主張しつつ、今後の見直しについても言及している。

 調査捕鯨の捕獲枠の大幅削減の一方で沿岸の商業捕鯨を上限付きで認める案を出した国際捕鯨委員会(IWC)の案を紹介し、「鯨肉消費の低迷などを考えれば、今後の捕鯨政策は、IWC案を軸に見直すべきだろう」との結論を導いている。

 「根本見直しの契機に」の見出しに示されているように、今回の調査捕鯨の打ち切りを機に、捕鯨政策の抜本的な見直しを主張しているのが毎日だ。

 「現実にはクジラ肉を食べなくなっており、調査継続の意義を掘り崩している」と分析したうえで、「SSよりも日本人の食の変化の方が調査捕鯨にとって難問なのである」と指摘する。

 日本の調査捕鯨は、次期計画の策定という節目の時期を迎えており、「この際は調査捕鯨を凍結することもふくめ、一度根本から見直してみてはどうか」と、毎日は提案する。

 22日に取り上げた朝日も、捕鯨政策の再考をという立場だ。ただし、「多くの日本人が『外圧』によって調査捕鯨をやめることを不愉快に思い調査捕鯨の継続を支持している」と毎日が記しているように、捕鯨は、これまでの経過や感情的なわだかまりもあり、取り扱いが難しい問題でもある。

 とはいえ、鯨肉需要が限界に直面しているのも事実だ。SSの行為は論外であり、捕鯨は食文化との関連で日本人の価値観に関わる問題でもあるが、現実を見据えた冷静な視点も、やはり必要ではないだろうか。【論説副委員長・児玉平生】   毎日新聞 2011227日 東京朝刊

       *

 同じ日の毎日新聞下関版より。

http://mainichi.jp/area/yamaguchi/news/20110227ddlk35040252000c.html 

 講演:桜井よしこさん、政府の外交を痛烈批判−−下関 /山口

 ◇シー・シェパード、尖閣、北方領土…

 ジャーナリストの桜井よしこさんの講演会「世界が変わる二十一世紀の展望」が26日、下関市細江町の生涯学習プラザであり、約800人が熱心に聴き入った。

 桜井さんは反捕鯨団体シー・シェパードによる妨害で調査捕鯨が打ち切られたことについて「国家が国際社会の無法者に屈した初めての例。来年も捕鯨ができなければ『日本人は自ら戦う気持ちが全くないため逃げる』とのメッセージを国際社会に送るようなもの」と述べた。また、尖閣諸島沖の漁船衝突事件や北方領土問題についての民主党政権の対応も痛烈に批判した。

 さらに緊迫化する中東情勢にふれて「地殻変動のような大きな変化が起きつつあるアジア、ユーラシアにおいて日本がすべきことは、国を守る基盤を固めることだ。それには軍事力と経済力が必要で、自衛隊が本当に国を守れるよう憲法を改正すべきだ」と訴えた。【松田栄二郎】 〔下関版〕

・2月20日(日)   本日の産経新聞の 「主張」 (他紙の社説に当たる) より。

 http://sankei.jp.msn.com/life/news/110220/trd11022002530003-n1.htm 

  調査捕鯨中止 暴力に屈せず正当性貫け    2011.2.20 02:53

 南極海で3月まで実施予定だった今期の調査捕鯨が、反捕鯨団体シー・シェパード(SS)の執拗(しつよう)な妨害行為により打ち切られた。

 SSによる妨害活動は平成17年から続いているが、調査の中止に追い込まれるのは今回が初めてである。調査捕鯨は国際条約に基づく合法的な活動であり、政府は極めて重大な事態と受け止める必要がある。

 しかし、鹿野道彦農林水産相は「乗員、調査船の安全確保の観点からやむを得なかった」との判断を強調しただけで、来期以降の南極海での調査捕鯨継続については明言を避けた。

 これでは、SS側をさらに勢いづかせかねない。調査捕鯨の正当性を貫くためにも、調査続行は明確にしておくべきだ。

 また日本は、SSの無法な暴力行為の実態を重ねて国際社会に強く訴えていくのは当然として、法的にも毅然(きぜん)たる対処ができるよう整備を急がねばなるまい。

 一つの不法行為を許せば、次の不法行為を呼び込む。事実、SS側は今回の調査中止を「大勝利」としており、次の捕鯨シーズンにはさらに抗議船を増やす考えを明らかにしている。

 昨シーズンもSSは、日本船団の監視船に高速船を体当たりさせたほか、大破した高速船のニュージーランド人船長が損害賠償を求めて監視船に侵入する事件を起こしている。拘束された船長は日本へ移送後に刑事訴追されたが、有罪とはいえ執行猶予付きの判決で母国に強制送還された。

 今回の妨害行為は、発光弾や発煙筒を直接、乗組員に向けて投げつけるなど、従来にもまして過激だ。昨年日本で開かれた生物多様性条約第10回締約国会議(COP10)で、生態系保全の世界目標などが採択されたことも彼らには追い風となっているようだ。

 だが、こうした行為は環境保護に名を借りた明らかなテロ行為である。反捕鯨国からも批判の声は強い。国際常識に照らしても、海賊行為として、もっと厳しい処罰を受けてしかるべきものだ。

 日本も一昨年に海賊対処法を成立させたものの、SSについては「海賊とは解釈できない」との慎重論から、適用対象外とされた。政府は、捕鯨の是非を問う以前の問題行動だと国際世論にも働きかけ、こうした法の不備を是正する努力をすべきだろう。

        *

 この日の産経新聞インターネットニュースより。

 http://sankei.jp.msn.com/affairs/news/110219/crm11021921560015-n1.htm 

 妨害防げず捕鯨中止 IWCに募る不信感     2011.2.19 21:55

 米国の反捕鯨団体、シー・シェパード(SS)の過激な妨害行為により、今期は中止に追い込まれた日本の調査捕鯨。国際的な捕鯨の枠組みを検討する国際捕鯨委員会(IWC)は、日本の再三の訴えにもかかわらずSSの妨害行為を止められなかった。来期以降の捕鯨の見通しも、機能不全のIWCでは不透明。関係者にはIWCへの不信感が募っている。

 これまで日本はSSの妨害行為をIWC会合でたびたび取り上げ、SS抗議船の船籍国や寄港国であるオーストラリアやオランダ、ニュージーランドなどに対応を要請してきた。

 平成18年と19年のIWC総会では全会一致で妨害行為に対する非難を決議。20年には中間会合で、SSの危険な行動を停止するよう求める声明を出した。しかし、実効性ある対策を打ち出せないままで、今回の事態を防げなかった。

 「暴力的な行為は一切認めない」「SSの行為について捜査している」

 船籍国など関係国は総会でこうした発言はするものの、水産庁によると、これまでSSメンバーが日本への妨害行為について、関係国で立件されたことはない。水産ジャーナリストの梅崎義人さんは「IWCには非難決議以上のことは期待できない」と指摘する。

 また、捕鯨支持国と反捕鯨国との対立でIWC自体が機能不全に陥っている。新たな捕鯨の枠組みを作ろうとした昨年の交渉も決裂し、来年の枠組みをどうするかは決まっていない。

複数の専門家は今後のIWC会合が、日本にさらなる捕鯨縮小を求める場になることを懸念。政策研究大学院大の小松正之教授(海洋政策論)は「南極海の調査捕鯨で譲歩すれば、反捕鯨国は日本沿岸の捕鯨や北西太平洋の調査捕鯨の廃止も求めてくる可能性が高い」と指摘する。

 水産庁幹部は「IWCの昨年の総会で正常化はできないと幻滅した。今後のためにも国際的な枠組みの見直しが急務だ」と話している。

           *

  この日の毎日新聞インターネットニュースより。

 http://mainichi.jp/area/wakayama/news/20110220ddlk30040213000c.html 

 調査捕鯨: 打ち切り 太地町関係者、シー・シェパードに不快感 /和歌山

 ◇「無謀行為許されぬ」

 南極海で活動する調査捕鯨が反捕鯨団体シー・シェパード(SS)による妨害で打ち切られた問題で、古式捕鯨発祥の地、太地町の関係者らはSSに不快感を示した。

 町漁協は3月末まで鯨類追い込み網漁をする。町議会議長でIWC(国際捕鯨委員会)捕鯨全面禁止絶対反対太地町連絡協議会の三原勝利会長は「SSの無謀な行為は許されない」と怒った。そのうえで「捕鯨船の砲手が、撃つ前に腰を落とし狙いを定めるがごとく、我々は腰をためて捕鯨の正当性をより強く主張していく」と憤り、「今回の打ち切りは水産国・日本が海洋資源をいかに利用していくのか、もう一度考え直し未来につなげるチャンスにしなくてはならない」と強調した。

 町立くじらの博物館の林克紀館長は「予定より捕獲量も少なく残念だ。SSは太地の追い込み網漁の様子をインターネット上で流したりしている。腹立たしい」と話した。 【神門稔】     毎日新聞 2011220日 地方版

・2月19日(土)   産経新聞インターネットニュースより。

 http://sankei.jp.msn.com/affairs/news/110218/crm11021823020042-n1.htm 

 【調査捕鯨中止】

 「暴力に屈していいのか」「来期以降どうすれば」苦渋の選択    2011.2.18 23:00

 度重なるシー・シェパード(SS)の妨害行為で中止に追い込まれた調査捕鯨。「暴力に屈していいのか」という捕鯨関係者の声は強かったが、日本側は捕鯨船の乗組員の安全を守るため、苦渋の決断をした。現行法では、公海上のSS抗議船を取り締まることは不可能。法整備が進まなければ、来期も同じことが繰り返される。

 「そんなに危険なら、今回はやめるしかない…」

 鹿野道彦農林水産相は18日午前、水産庁幹部からSSの妨害の報告を聞くと、言葉少なに、こう指示した。調査捕鯨中止を発表した閣議後会見の直前だった。幹部らはみな、厳しい表情を浮かべた。

 「もう限界かもしれません」

 ここのところ水産庁幹部のもとには、捕鯨船乗組員の悲痛な声が届いていた。今月9日に初めて日新丸が妨害を受け、10日以降は抗議船の追跡から逃げるのがやっとで、調査捕鯨ができない状態が続いていた。16日からは天候も荒れ、乗組員らにとっては緊張の日々だった。

 それでも「暴力に屈するわけにはいきません」という乗組員もおり、水産庁幹部は「抗議船の燃料が切れれば、なんとか…」と淡い期待を抱いていた。

 18日に、燃料を補給したとみられる別の抗議船「スティーブ・アーウィン号」が間近に迫っていることが判明。水産庁幹部は「これ以上逃げても再開の見込みはなかった」と苦渋の決断の理由を語った。

 決断の背景には、SSの今期の妨害行為が例年より過激さを増し、より巧妙になってきたことがある。

 例年も酪酸とみられる液体の入った瓶などを投げつけるなどしていたが、1回に10〜20個程度。だが、今期は1回に最大で110個以上が投げられた。レーザー光線も照射された。炎を発しながら落下する落下傘信号弾や発光弾も新たに投入された。

 SSの操船技術は向上。「危険を顧みずギリギリまで接近してくる」(水産庁)といい、絡むと沈没する危険性があるロープの投入も繰り返された。

 「どうすればいいか、まったく分からない…」

 来シーズン以降の調査捕鯨について、水産庁幹部はこう話す。SS抗議船はオランダとオーストラリア船籍のため、両国に取り締まり権限があるが、反捕鯨国で、日本が協力を求めても、船を止めてくれない。

 昨年、捕鯨船に乗り込んできたSS活動家を逮捕・起訴したケースはあったが、SS抗議船に乗ったままの暴力行為には法律上、手を出せない。

 国際慣習上、SSを「海賊」と判断すれば取り締まれるが、そのためには法整備が必要だ。検討されたこともあったが、外務省が「SSは海賊とはいえない」と反対し、頓挫している。

 中止により捕獲頭数が激減したことで、調査捕鯨の費用に充てられる鯨肉の販売収入も減る。鹿野農水相は「財政的に困難な状況になる」と述べた。

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 同じく、産経新聞インターネットニュースより。

 http://sankei.jp.msn.com/world/news/110218/asi11021821020005-n1.htm 

【調査捕鯨中止】 背景に隠れた狙い SSの宣伝と資金源封じ  2011.2.18 21:01

 日本が南極海調査捕鯨の中断を決めた背景には、日本の捕鯨やイルカ漁を「食い物」(農林水産省幹部)にして、寄付金収入を増大させてきたシー・シェパード(SS)に経済的な打撃を与えたいという日本側の隠れた狙いがある。

 SSは、米有料チャンネル「アニマル・プラネット」が2008年から放送しているテレビ番組 「鯨戦争」 を通じて飛躍的に知名度を上げてきた。

 撮影班が抗議船に乗って妨害活動を収録、SSの主張を反映した一方的な内容に編集した番組で、同チャンネルの歴代2位の視聴率を稼ぎ出す人気番組に成長している。SSにとっては、支持者や寄付者を増やすための 「情報戦略の核」 となる宣伝媒体となった。

 しかし、内容には問題点が多い。SS代表のポール・ワトソン容疑者は著書で、「派手派手しいドラマを演出し、相手をだませ」 と述べている。 番組も日本側を悪役に仕立て上げてショー化され、代表が日本の暗殺者に撃たれ 「たまたま弾が胸のバッジに当たって助かった」 とするような “やらせ演出シーン” が数多く存在する。

 SSの妨害は撮影とセットで行われており、16日には抗議船3隻が合流、大規模な攻撃が予想されていた。このため、日本政府内では 「SSにこれ以上、PR用の光景を撮らせるべきではない」 として、肩すかしを食わせようとの考えが強まった。 実際、SSを知る元活動家は 「盛り上がりシーンに欠ける今回の鯨戦争は大幅な番組縮小を余儀なくされ、団体は経済的な打撃を受ける」 と語った。

 これまで、SSの妨害に苦しんだカナダやノルウェーは、抗議船の拿捕(だほ)や活動家の立件で、妨害を阻止してきた。日本はSS船の旗国であるオーストラリアやオランダに厳しい措置を要請していく必要がありそうだ。 (佐々木正明)

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 同じく、産経新聞インターネットニュースより。

 http://sankei.jp.msn.com/politics/news/110218/plc11021818020017-n1.htm 

【調査捕鯨中止】 枝野氏「SSに遺憾超え、怒り禁じ得ない」 2011.2.18 18:02

 枝野幸男官房長官は18日の記者会見で、反捕鯨団体「シー・シェパード」の妨害行為により南極海での今季の調査捕鯨打ち切りを決めたことについて「大変残念だが、乗組員の安全確保の観点から判断した。遺憾を超えて怒りを禁じ得ない」と述べた。その上で「こうした妨害に屈することなく、調査捕鯨が進められる構造にするためにどうしたらよいか、省庁横断的にしっかりとした対策をつくっていきたい」と述べ、再開に向けた対策を早急に講じることを表明した。

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 同じく産経新聞インターネットニュースより。

 http://sankei.jp.msn.com/politics/news/110218/plc11021818010016-n1.htm 

 【調査捕鯨中止】 外務省が蘭豪NZに遺憾の意、前原氏 「SS断じて許されない」     2011.2.18 17:53

 伴野豊外務副大臣は18日、南極海での日本の調査捕鯨を反捕鯨団体「シー・シェパード(SS)」による妨害行為で打ち切ったことに関し、SSの旗国、寄港国であるオランダ、オーストラリア、ニュージーランドの各在京大使を外務省に呼び遺憾の意を伝えた。

 前原誠司外相は同日の記者会見で「公海上で合法的な調査活動を行っているわが国の乗組員の生命、財産、船舶の航行の安全を脅かす危険な不法行為で、断じて許されない。極めて遺憾だ」と述べ、SSを厳しく批判した。

 また「調査捕鯨は極めて合法的で、阻止する権利はシー・シェパードにない」と指摘。その上で「法的に認められたことが不法な妨げでできなくなるのは筋が通らない」と語り、今後関係国と連携して実効的な妨害行為の再発防止策を検討していく考えを示した。

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  この日の毎日新聞社説。

 http://mainichi.jp/select/opinion/editorial/archive/news/20110219ddm005070033000c.html 

 社説: 調査捕鯨の中断 根本見直しの契機に

 日本が南極海で行ってきた調査捕鯨を今期は中途で打ち切ることが決まった。鹿野道彦農相はその理由として、反捕鯨団体シー・シェパード(SS)による妨害や追尾で、乗組員や調査船の安全確保が難しくなっていることをあげた。

 シー・シェパードの「抗議活動」は危険極まりないものだ。調査捕鯨船団(4隻)は昨年末に日本を出港したが、年初にはシー・シェパードに捕捉され妨害行為が始まった。スクリューに絡ませるため進路にロープを投げ入れたり、ビンを投げつけるなど妨害行為は9回に及んだという。言語道断というほかない荒っぽさだ。捕獲頭数は予定をはるかに下回る水準で終わった。

 乗組員の安全が危うくなっているとすれば、中断もひとつの判断であろう。問題は次期以降の調査捕鯨をどうするかである。

 水産資源の有効活用は当然でありクジラも例外ではないだろう。クジラの生息数や分布がどうなっているか、科学的調査を行うことを非難されるいわれはない。

 ただ、現実問題として食料としてのクジラに対する国内需要は急減している。戦後間もなくの食料不足時代にはクジラは貴重なたんぱく源であり、学校給食などにも使われた。団塊世代以上には郷愁を感じさせるクジラ肉だが、近ごろはめったに食卓にものぼらなくなった。このため、クジラ肉の在庫は近年にない水準に積み上がっている。

 今回の調査捕鯨の打ち切りは、直接的にはSSの危険な活動が理由になっているが、中断やむなしとした背景には日本人の食生活の変化があると見ることができる。

 多くの日本人が「外圧」によって調査捕鯨をやめることを不愉快に思い調査捕鯨の継続を支持している。しかし、現実にはクジラ肉を食べなくなっており、調査継続の意義を掘り崩している。SSよりも日本人の食の変化の方が調査捕鯨にとって難問なのである。

 調査捕鯨は今期で6年間にわたる「第2期南極海鯨類捕獲調査」が終了し、第3期の計画の検討が行われる。大きな節目だ。この際は調査捕鯨を凍結することもふくめ、一度根本から見直してみてはどうか。国際捕鯨委員会(IWC)では調査捕鯨の大幅縮小、沿岸捕鯨の拡大などが提案されている。

 そして、中長期的には日本の水産物資源の保護の水準を国際的に見劣りしないものに高める必要がある。クジラ問題だけでなく、マグロ問題でも日本に対する風当たりは強まっている。海外からの一方的な言いがかりを許さないように、まず自分の庭先をきれいにしよう。

 毎日新聞 2011219日 東京朝刊

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 この日の毎日新聞インターネットニュースより。

 http://mainichi.jp/select/wadai/news/20110219k0000m040096000c.html 

 調査捕鯨打ち切り: 「逃げ帰ってはいけない」 不安や反発

 反捕鯨団体シー・シェパード(SS)が繰り返す妨害行為のため安全確保ができないとして18日、南極海での10年度の調査捕鯨が打ち切りと決まった。「今後、捕鯨はどうなるのか」。各方面に不安が広がっている。

 ■影響

 調査捕鯨は南極海と北西太平洋で財団法人日本鯨類研究所(鯨研)が行っている。10年度の南極海での捕獲数は、中止によりミンククジラ170頭(計画は約850頭)、ナガスクジラ2頭(同50頭)止まりで、87年の開始以来最少となった。

 調査捕鯨の費用には鯨肉の販売代金と国からの補助金が充当されている。鯨研は08年度で1億6400万円の赤字に陥っており、中止が財政的に追い打ちをかけることは間違いない。鹿野道彦農相は18日、今後について「財政的な困難が予想される」と語った。中止を機に南極海調査捕鯨からの撤退論も浮上しかねない状況だ。

 ■反発

 一方で日本人の鯨離れは進んでいる。水産庁の統計では、国内の鯨肉在庫は10年末現在で5093トンと5年前より4割も増加。捕鯨中止ですぐに鯨肉が足りなくなることはない。だが、料理店や捕鯨基地などでは不安や反発の声が上がる。

 東京都千代田区の鯨料理店 「くじらのお宿 一乃谷」の店主、谷光男さん(55)は 「安全を考えれば打ち切りは仕方ないが、他国の食文化を尊重しようとしないSSの行動は理解できない。事態が長引けば、メニューを替えざるをえなくなるかも」 と話す。

 調査捕鯨基地がある山口県下関市。義理の息子が捕鯨船に乗船中という女性(55)は 「出港後、家族は心配で仕方がない。息子は『SSに薬品や塗料をかけられ、船体はぼろぼろの状態』と話していた。帰国が決まって安心したが、乗組員としては歯がゆいだろう」 と語った。元水産庁漁場資源課長で政策研究大学院大学の小松正之教授は 「合法的な捕鯨なのに暴力で邪魔された。逃げ帰ってはいけない。日本は悪いことをしていると国際的に喧伝(けんでん)される。乗組員に生命の危機があるなら、海上保安庁に護衛を頼み、居続けることが何より大切だ」 と強調した。

 毎日新聞 2011218日 2148分(最終更新 219日 1034分)

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  同じ日の毎日新聞西部版より。

 http://mainichi.jp/seibu/shakai/news/20110219ddp012040012000c.html 

 調査捕鯨:打ち切り 不安と歯がゆさ 鯨の町、山口・下関「動じず正当性訴えて」

 反捕鯨団体シー・シェパード(SS)が繰り返す妨害行為のため安全確保ができないとして18日、南極海での10年度の調査捕鯨が打ち切りと決まった。「今後、捕鯨はどうなるのか」。各方面に不安が広がっている。【佐藤浩、松田栄二郎、野呂賢治】

 調査捕鯨は南極海と北西太平洋で財団法人日本鯨類研究所(鯨研)が行っている。10年度の南極海での捕獲数は、中止によりミンククジラ170頭(計画は約850頭)、ナガスクジラ2頭(同50頭)止まりで、87年の開始以来最少となった。

 調査捕鯨の費用には鯨肉の販売代金と国からの補助金が充当されている。鯨研は08年度で1億6400万円の赤字に陥っており、中止が財政的に追い打ちをかけることは間違いない。鹿野道彦農相は18日、調査捕鯨の今後について「財政的な困難が予想される」と語った。中止を機に南極海調査捕鯨からの撤退論も浮上しかねない。

 調査捕鯨基地がある山口県下関市の中尾友昭市長は、今季の調査捕鯨打ち切りについて「鯨の町・下関として水産庁などをサポートしていく」と述べる一方、「日本として毅然(きぜん)たる態度で調査捕鯨の正当性を世界に訴えてほしい」と強調した。

 義理の息子が捕鯨船に乗船中という、同市の女性(55)は「出港後、家族は心配で仕方がない。息子は電話で『船体は、シー・シェパードに薬品や塗料をかけられ、ぼろぼろ状態』と話していた。帰国が決まって安心したが、乗組員としては歯がゆい思いだろう」と複雑な心境を語った。

 また、34年以上続く鯨料理店「下関くじら館」を切り盛りする小島純子店長は「今季の捕鯨打ち切りで品物の入手が難しくなれば困るが、こんな時こそ動じないことが大切。捕鯨は将来の食糧確保を見据えた大切な事業であることを国内外にもっと発信すべきだ」と冷静に語った。

 かつて捕鯨基地があった長崎県平戸市の黒田成彦市長も「生態系の保護とバランスを図る上で行われている調査捕鯨を妨害するテロリスト的行為に対して、政府は断固抗議すべきだ」とのコメントを発表した。

 毎日新聞 2011219日 西部朝刊

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 さらに、同日の毎日新聞宮城地方版より。

 http://mainichi.jp/area/miyagi/news/20110219ddlk04040081000c.html 

 調査捕鯨:打ち切り 「原料足りなくなる」 石巻の水産業者が危惧 /宮城

 南極海で行われている調査捕鯨が反捕鯨団体シー・シェパード(SS)の過激な妨害行為により打ち切られたことを受け、調査捕鯨で取れた鯨肉を仕入れている石巻市の水産加工会社からは「原料が足りなくなる恐れがある」と危惧する声が上がった。

 ミンククジラやナガスクジラの鯨肉を仕入れ、鯨ベーコンや皮などの商品を出荷している 「木の屋石巻水産」(石巻市)の木村隆之副社長は18日、調査捕鯨中止の決定について 「乗組員の人命を考えるとやむを得ない」 と理解を示した。 一方で、12年以降に出荷する商品の原料が足りなくなるとの見通しを示し、「政府が(SSの)暴力に対し、どう対応してくれるのか注目したい」 と語った。調査捕鯨は鯨肉販売収益を調査費に充てている。 【比嘉洋】     毎日新聞2011219日 地方版

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 さらに、同日の毎日新聞北海道版朝刊より。

 http://mainichi.jp/hokkaido/shakai/news/20110219ddr041040007000c.html 

 調査捕鯨: 打ち切り 道内関係者「残念」「許せない」

 クジラと関係の深い北海道内でも、調査捕鯨の打ち切りに落胆の声が聞かれた。

 かつて捕鯨基地があった釧路市水産港湾空港部の中島一男次長は「科学的な調査に基づき、将来的な商業捕鯨を再開するための根拠を積み重ねる−−との国の方針を支持してきただけに、こんな形で調査捕鯨が中断させられたことは残念」と話し、「さまざまな考えがあるのは理解するが、このような暴力的手段はいかがなものか」とシー・シェパードの手法を批判した。

 網走市の沿岸小型捕鯨業「三好捕鯨」の富士智之社長は、「農林水産大臣が決めたこと。政府が決めたのだから、正しいんじゃないか」。商業捕鯨を再開できないばかりか、調査捕鯨打ち切りにあきらめムードも漂う。前社長の三好英志さんも「何も話すことはない」と言葉少なだった。

 クジラに詳しい北大大学院水産科学研究院の松石隆准教授は「合法的、科学的な調査が継続できなくなったのは残念。クジラ保全はしっかりとした調査の上で進められなければならない。調査の妨害は保全を阻害するもので、断じて許せない」と語気を強めた。 【山田泰雄、渡部宏人、近藤卓資】      2011219日 北海道朝刊

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 さらに、同日の毎日新聞千葉地方版より。

 http://mainichi.jp/area/chiba/news/20110219ddlk12040248000c.html 

 調査捕鯨:打ち切り 漁業関係者、戸惑いも 「沿岸」への波及懸念−−南房総 /千葉

 「ますます規制が厳しくなるのでは、と心配だ」−−。南極海で活動する日本の調査捕鯨船団が反捕鯨団体の妨害で調査捕鯨を打ち切ったことについて、沿岸捕鯨が盛んな南房総市の漁業関係者から戸惑いと不安の声が上がっている。

 船団を組み遠洋で行う捕鯨に対し、「沿岸捕鯨」は近海でクジラを捕獲する漁。かつては世界各国で行われていたが、今は日本だけとされる。南房総市の和田漁港は関東唯一の沿岸捕鯨基地で、1948年ごろからツチクジラ漁が続いている。

 同港で船と解体場を所有する水産会社「外房(がいぼう)捕鯨」は毎年夏、約100キロ沖合で深さ約1000メートル超の沿岸海域を回遊するツチクジラを捕獲。クセのある加工肉は地元の郷土食として親しまれている。ツチクジラはIWC規制対象外。

 「世界的にますます規制が厳しくなるのではと心配です」。調査捕鯨打ち切りのニュースに、同市の和田町漁協の黒川和則総務課長は不安を隠せない様子だ。「国にしっかり対応してもらいたい。調査でクジラが増えてきているのは分かっているはず。クジラ文化の町としてはつらい」

 同市和田町の「くじら食文化研究会おかみさんの会」代表の檪原(いちはら)八千代さん(61)は「妨害されたくらいで帰ってくる必要はない。私たちの世代はクジラを食べて大きくなった。日本人にとって大事な食料資源です」と、打ち切りにがっかりしていた。 【米川康】      毎日新聞2011219日 地方版

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 さらに、前日の毎日新聞大阪版夕刊より。

 http://mainichi.jp/kansai/news/20110218ddf041040004000c.html 

 調査捕鯨中止: 店舗、仕入れ心配

 調査捕鯨が中止になった問題で、大阪名物の鯨料理「ハリハリ鍋」などの料理を出す鯨料理店からは供給について心配する声も聞かれた。

 大阪市西区の鯨料理専門店「むらさき」の今川義雄店主(68)は 「仕入れ値に影響しないか心配だし、残念」 と表情を曇らせた。 同店では南極海域での調査捕鯨でとれた鯨を仕入れて提供しているといい、予定通りの捕鯨が行われなければ供給が少なくなる懸念もある。「日本の食文化が薄れてきているのに、追い打ちをかける結果にならなければいいが」 と話した。 【堀江拓哉】

 毎日新聞 2011218日 大阪夕刊

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 この日の読売新聞インターネットニュースより記事2つ。

 http://www.yomiuri.co.jp/world/news/20110219-OYT1T00200.htm 

 調査捕鯨中止、豪・NZが歓迎…完全廃止を要求

 【シンガポール=岡崎哲】 日本が18日、今季の調査捕鯨の中止を決めたのを受け、反捕鯨国のオーストラリアとニュージーランドの政府は同日、そろって歓迎を表明し、日本に来季以降、調査捕鯨を完全に廃止するよう求める声明を出した。

ただし両国政府は、反捕鯨団体「シー・シェパード」の妨害活動については一切言及しなかった。ニュージーランドのマカリー外相は「南極海での恒久的な捕鯨廃止の枠組みを作りたい」と表明。オーストラリアのラッド外相とバーク環境相は共同声明で「国際社会には日本の調査捕鯨に対する懸念が広がっている」との見解を示し、日本の調査捕鯨の中止を求めて昨年、国際司法裁判所(オランダ・ハーグ)に起こした訴えを取り下げない方針を明らかにした。

 (20112190925分 読売新聞)

 http://www.yomiuri.co.jp/world/news/20110219-OYT1T00647.htm 

 NZ外相、シー・シェパード船寄港黙認の方針

 【シンガポール=岡崎哲】 反捕鯨団体「シー・シェパード」の抗議船の寄港を認めてきたニュージーランドのマカリー外相は19日、「寄港拒否にふさわしい理由はない」などと述べ、同団体の調査捕鯨妨害活動を実質的に黙認する方針を示した。

 ラジオ・ニュージーランドに語った。

 日本政府は18日、ニュージーランド、抗議船の船籍国のオーストラリア、オランダに妨害活動の再発防止につながる措置を講じるよう求めていた。

 マカリー外相はまた、「(ニュージーランドが)警察官の役割を演じることはできない。船籍国に責任がある」とも語った。

 一方、船籍付与のほか寄港地提供などで妨害活動を事実上支援してきた豪州のラッド外相は19日の記者会見で、「秘密が保たれるべきだ」と日本が再発防止を求めた日豪協議についてのコメントを拒否した。

 (20112192001分 読売新聞)

・2月18日(金)     毎日新聞インターネットニュースより。

 http://mainichi.jp/select/wadai/news/20110218k0000e040044000c.html 

   調査捕鯨: 妨害受け打ち切り 予定1カ月残し

 南極海で活動する調査捕鯨船団(4隻)が反捕鯨団体シー・シェパード(SS)による妨害や追尾で、3月末まで予定していた捕鯨が中断している問題について、鹿野道彦農相は18日、船団を帰国させることを決めた。閣議後会見で鹿野農相は「乗務員、調査船の安全確保の観点から調査を切り上げる」と述べた。SSの妨害による中止は初めてで、船団は3月上旬にも帰国する。11年度以降の南極海での調査捕鯨実施に影響を与えそうだ。

 今回の調査捕鯨船団は昨年12月に出港し、1月1日にSSに初めて妨害行為を受けた。今年度の妨害はスクリューに絡ませるためにロープを捕鯨船の進行方向の海中に投げたり、船体に瓶を投げるなど計9回あった。

 2月に入り、捕獲した鯨を調査、解体する母船「日新丸」が妨害され、その後も追尾され続けたため、調査を中断していた。

 水産庁によると、約850頭を捕獲する計画だったミンククジラの捕獲は170頭に、50頭を計画していたナガスクジラは2頭にとどまった。

 SSの妨害は05年度の調査捕鯨から続いている。日新丸への妨害は過去にもあったが、そのたびにSSの妨害船が燃料切れでいったん日新丸から離れたため、活動中止には至らなかった。今回は追尾中の1隻に加え、もう1隻が近づく可能性が高いため、やむを得ず調査切り上げを決めたという。【佐藤浩】

 ◇「素晴らしい」 シー・シェパード

 【ジャカルタ佐藤賢二郎】日本政府が今季の南極海での調査捕鯨の打ち切りを明らかにしたことを受け、妨害行為を繰り返していた反捕鯨団体シー・シェパード(SS)のポール・ワトソン代表は「素晴らしいニュースだ」とコメント。「我々は日本の捕鯨船が北に帰り、クジラの聖域から出たことを確認するまで付き添う」と話した上で、今後もあらゆる捕鯨を阻止する姿勢を明らかにした。AFP通信が伝えた。

 毎日新聞 2011年2月18日 11時39分(最終更新 2月18日 14時28分)

       *

 この日の産経新聞インターネットニュースより。

 http://sankei.jp.msn.com/world/news/110218/asi11021801310000-n1.htm 

 SSの調査捕鯨妨害が過激化 日本政府、豪州に被害届を提出  2011.2.18 01:30

 国際条約で認められている調査捕鯨への妨害を続ける米団体、シー・シェパード(SS)の暴力行為に対し、日本政府が抗議船の旗国であるオーストラリアに被害届を出し、証拠類を提出していたことが17日、分かった。SSは、調査船団の母船、日新丸に発火した信号弾を撃ち込むなど妨害行為をエスカレートさせており、日本側が「人命重視」のため一両日中にも、今期の南極海での調査活動の中止を決断する可能性が出てきた。

 調査捕鯨についてSSは「違法」とし、法的根拠のない「国連世界自然憲章により妨害に介入する」などと主張。装備を増強し、年々、日本船への攻撃姿勢を強めている。

 今年はさらに過激化し、今月4日には豪州船籍のゴジラ号などが第3勇新丸に対して、高圧ランチャーなどで110本以上の酸化物の入った瓶などを投てき。これらは海への投棄が厳しく制限されているが、70本以上が南極海に落ちた。妨害の途中、第3勇新丸は航行不能になり救難信号を出したものの、SSは無視し攻撃を続けた。

 9日には、ゴジラ号が日新丸に異常接近し、発煙筒や発光弾、発火した落下傘信号弾などを発射、日新丸の甲板の一部が焼けるなどの被害が出た。

 豪州は昨年まで、捜査管轄権のあいまいな公海上で起きたSSの妨害行為に対し、積極的な警察権の行使を控えてきた経緯がある。しかし、今回は自国船が妨害行為の当事者となっており、国内法で独自に捜査できる状況にある。こうしたことを背景に、豪州の捜査当局が日本政府に協力を提案、日本側が被害届を出すことになった。今後、豪州当局は捜査に着手するとみられるが、反捕鯨政策をとる同国政権の政治的判断で、強硬措置は取らないとの見方もある。 (佐々木正明)

         *

 同日の産経新聞インターネットニュースより。

 http://sankei.jp.msn.com/economy/news/110218/biz11021810580010-n1.htm 

 シー・シェパードの妨害で調査捕鯨中止  鹿野農水相「乗組員の生命守る」    2011.2.18 10:58

 米国の反捕鯨団体「シー・シェパード(SS)」が日本の南極海調査捕鯨に対し妨害を続けている問題で、農林水産省は18日、今期の調査を中断し、船団を帰国させることを決めた。閣議後の会見で鹿野道彦農水相が明らかにした。「乗組員の生命の安全を守る」のが理由という。SSの妨害で調査捕鯨が中断になるのは初めて。

 今期の妨害は1月上旬に始まり、今月9日には、オーストラリア船籍の抗議船「ゴジラ号」が船団の母船「日新丸」に異常接近。発煙筒や発光弾、発火した落下傘信号弾などを発射。日新丸の甲板の一部が焼けるなど被害が出た。日新丸に対し、現在も抗議船の追尾が続いており、乗組員の安全が脅かされている状態が続いているという。SSの過激な妨害について、日本政府は豪州に被害届を出した。

 鹿野農水相は「妨害活動は断じて許されるものではないが、船舶の安全と乗務員の生命・財産を脅かす危険があり、やむをえず決断した。無事の帰国を願っている」と話した。来期の調査捕鯨については、「帰国後、現場の状況を聞いた上で、総合的に判断して検討したい」と明言を避けた。

 調査捕鯨は国際条約で認められているが、SSは「違法」として、法的根拠のない「国連世界自然憲章により妨害を続行する」などと主張。年々攻撃をエスカレートさせていた。

         *

  同日の産経新聞インターネットニュースより。

 http://sankei.jp.msn.com/economy/news/110218/biz11021812590015-n1.htm 

 【調査捕鯨中止】 日本標的で急成長したシー・シェパード 7・8億円の寄付金で攻撃装備を購入   2011.2.18 12:57

 調査捕鯨妨害事件で国際手配中のポール・ワトソン容疑者(60)が率いる米団体、シー・シェパード(SS)は2003(平成15)年、日本の捕鯨やイルカ漁を本格的に妨害して以来、急成長を果たしてきた経緯がある。

 ワトソン容疑者は03年10月、追い込みイルカ漁を行っている和歌山県太地町に、当時の自分の妻と現在、調査捕鯨妨害で抗議船の船長を務めているオランダ国籍の男の2人の活動家を送りこみ、いけす網を切断する事件を起こした。

 また、05年には日本が調査捕鯨を行う南極海に、自らが船長として抗議船に乗り込み、船団への妨害活動を始めた。妨害行為は、悪臭を放つ酸化物の液体が入った瓶や固形の物体を高圧ランチャーで投擲(とうてき)する攻撃だけに止まらず、捕鯨船への体当たりや活動家の捕鯨船への乗り込み行為など、年々、苛烈を極めるようになった。

 SSを「海の警察」と評するワトソン容疑者はこうした妨害行為のあと、派手派手しい演出を交えながら、「鯨の命をわれわれが救った」などとPR。反捕鯨派が多いオーストラリアやニュージーランド、米国などのメディアなどに報道してもらうことで、支持者を増やしていった。

 その結果、SSが毎年、米政府に提出するNPO年間活動報告書によれば、米国内での04年の寄付収入が120万ドル(約9960万円)だったのに対し、09年は約940万ドル(約7億8020万円)と7倍強に膨れあがった。

 SSは集めた資金で、100万ドル以上を支払って、抗議船の数を増やしたほか、装備品を増強。今期は3隻態勢で南極海に展開し、信号弾や発光弾なども発射して、日本船員の生命を脅かす事態にまで至った。

 また、昨年9月には、太地町に初めて活動家を常駐させ、イルカ漁に圧力を加えている。今も、数人の活動家が滞在しており、悪質な嫌がらせを続けている。

 こうした費用は、日本をダシにして急増した寄付収入でまかなわれている実態がある。(佐々木正明)

・2月17日(木)  産経新聞インターネットニュースより。

 http://sankei.jp.msn.com/world/news/110216/asi11021623180002-n1.htm 

 効果的に妨害と強調 反捕鯨団体        2011.2.16 23:18

 日本の調査捕鯨が反捕鯨団体シー・シェパードの妨害行為を受けて中断していることが明らかになったことを受け、同団体は16日、「今シーズンは効果的に調査捕鯨を妨害できている」と強調した。

 シー・シェパード代表のポール・ワトソン容疑者=傷害容疑などで国際手配中=は、共同通信の取材に対し、同団体の徹底的な追跡と妨害により「(調査捕鯨船団は)恐らく(予定を早めて)逃げ出すことを決断するだろう」とし「捕獲を免れた全てのクジラがわれわれにとっての勝利だ」と述べた。(共同)

・2月12日(土)   毎日新聞インターネットニュースより。

 http://mainichi.jp/select/jiken/news/20110212k0000m040107000c.html 

 調査捕鯨: シー・シェパードが妨害 日本船にレーザー光線

 水産庁は11日、南極海で調査捕鯨を行っている日本の調査船団が、日本時間の同日午後7時40分ごろ、国際的な反捕鯨団体「シー・シェパード」(SS)からレーザー光線を使った妨害を受けたと発表した。船の損傷はなく、乗組員にけがはない。

 同庁によると妨害を受けたのは母船「日新丸」(8044トン、乗員約140人)。SSの「ゴジラ号」(全長約33メートル、幅約14メートル)から緑色のレーザー光線の照射を受けた。日新丸側は放水や英語での警告放送をしたが、その後も、ゴジラ号と別のSSの船が周辺を航行しているという。 

 毎日新聞 2011211日 2251

・2月4日(金)   読売新聞インターネットニュース(yahoo経由)より。

 http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20110204-00000419-yom-soci 

  シー・シェパード、また捕鯨船にロープ絡ませる     読売新聞 2月4日(金)11時32分配信

  水産庁は4日、南極海で調査捕鯨を行う捕鯨船「第3勇新丸」のスクリューに対し、反捕鯨団体「シー・シェパード」がロープを絡ませる妨害を行ったと発表した。

 同団体による今季の妨害によって、捕鯨船団に被害が出るのは初めて。

 同庁によると、同日午前7時頃(日本時間)から、シー・シェパードの抗議船2隻がロープを絡ませたほか、瓶を投げつけたり、着色弾を発射したりする妨害を行った。第3勇新丸はロープが絡まったことで航行速度が遅くなったといい、救難信号を発信した。けが人はいないという。

 捕鯨船団は昨年12月から南極海で今季の調査捕鯨を実施している。同団体による今季の妨害行為は今年1月1日に始まり、今回が7回目。

 最終更新:2月4日(金)11時32分

・1月31日(月)   毎日新聞インターネットニュースより。

 http://mainichi.jp/select/world/news/20110131ddm041040093000c.html 

 シー・シェパード:また調査捕鯨妨害     毎日新聞 2011年1月31日 東京朝刊 

 水産庁は30日、南極海で活動している調査捕鯨船団の第3勇新丸が、反捕鯨団体「シー・シェパード」(SS)の船から発煙筒を投げられるなどの妨害行為を受けたと発表した。けが人や船の損傷はなかった。今回の調査での妨害は5回目。

・1月23日(水)   読売新聞インターネットニュースより。

 http://www.yomiuri.co.jp/national/news/20110121-OYT1T00191.htm     

 アディ・ギル号提供者ヨット係留許可…那智勝浦

 反捕鯨団体「シー・シェパード」(SS)に捕鯨抗議船「アディ・ギル号」を提供するなどの資金援助をしてきたイスラエル国籍で米在住の実業家、アディ・ギルさん(52)が和歌山県那智勝浦町に所有するヨットの町内での係留許可を申請し、20日、町から許可を受けた。

 ギルさんは「SSとは関係を絶った」としているが、太地町などは捕鯨への抗議行動が行われないか危惧。この日、田辺海上保安部も職員を出して、ヨット周辺で警戒に当たった。

 ギルさんは5日に来日し、7日から県内に滞在。日本で小型ヨットを購入して、新宮市在住の日本人女性名義で那智勝浦町内での係留を申請し、町は3月31日までの係留を認めた。

 ギルさんがSSに提供したアディ・ギル号は昨年1月、南極海で日本の調査捕鯨への妨害行為を繰り返し、監視船「第2昭南丸」と接触、大破した。

 ギルさんは20日、取材に対して「SSは信頼できず、いまは全く関係ない」としたものの、「イルカ漁についてはノーコメントだが、すべての生き物を殺すことに反対だ」と発言。21日に帰米した後、夏頃に再来日し、那智勝浦町を拠点に地元住民らと交流を深めたいと話した。
(2011年1月23日18時04分 読売新聞)

・1月20日(木)    産経新聞掲載の山田吉彦・東海大教授の意見。

 http://sankei.jp.msn.com/life/news/110120/trd11012007370050-n1.htm

  山田吉彦 沿岸での商業捕鯨を再開すべきだ     2011.1.20 07:34

 今年も「ホエールウォーズ」の季節がやってきた。ホエールウォーズとは、環境テロリスト団体と呼ばれるシーシェパード(SS)の反捕鯨活動を放映する米国のテレビ番組のタイトルである。そもそも日本の調査捕鯨船と戦わなければ番組が成り立たないのだ。

 例年、強い異臭を発する酪酸入りのビンを船内に投げ込んだり、ロープをスクリューに絡ませようとする。昨年は、未来船もどきのアディ・ギル号を捕鯨監視船に体当たりさせる暴挙にでた。そして、ア号を自沈させ、日本の責任にしたのだ。この沈没事件がSSの自作自演であったことは、ア号の元船長の自供により明白である。

 賢くてかわいいクジラを食べる野蛮な日本人を懲らしめるというコンセプトは欧米人の間で好評で、今年は、番組のスポンサー収入も増加し、SSが受け取る資金は前年の3倍だという。新兵器は、捕鯨妨害船ゴジラ号とヘリコプター1機である。ゴジラ号は、ア号の約3倍の大きさで破壊力がある。ヘリによる空からの攻撃も可能だ。今年は、海上保安官が乗り込み、不測の場合に備えているものの、相手が「戦争」を仕掛けていることを忘れてはいけないのだ。

 ただし、日本の調査捕鯨の続行については、検討すべき時期だろう。残念ながら調査データに対する欧米の評価は低く、商業捕鯨の隠(かく)れ蓑(みの)と考えられている。また、捕獲した鯨肉は市場に持ち込まれるが、在庫が多いようだ。そろそろ調査捕鯨から撤退し、正々堂々と沿岸の商業捕鯨を再開すべき時期ではないか。国民が真に鯨肉を必要とするならば、国際批判にも耐えるだろう。ノルウェーは、国際捕鯨委員会に異議を申し立て、商業捕鯨を続けているのだ。むしろ商業捕鯨によって、クジラの需給を市場原理に任せれば、適正価格で鯨肉が売買されるとともに、調査捕鯨より捕獲数は減り、資源の保全につながる。沿岸捕鯨は、日本の伝統である。南極海ではなく、地の利のある日本沿岸で、SSと戦うのである。(東海大教授)

 

・1月11日(火)    産経新聞インターネットニュースより。 (2012年5月30日、追加)

 http://sankei.jp.msn.com/world/news/110111/amr11011107400036-n1.htm 

 【日々是世界 国際情勢分析】 捕鯨問題を“狙い撃ち”したウィキリークス   2011.1.11 07:38

 内部告発サイト 「ウィキリークス」 が日本の調査捕鯨問題について、関連の米外交公電を次々に暴露している。 時を同じくして、米国の反捕鯨団体 「シー・シェパード」(SS) が南極海で調査捕鯨船団に過激な妨害活動を始めており、ウィキリークスが国際的な関心を引きつけようとして、この時期に集中して捕鯨問題を取り上げ出した可能性もある。

 1月1日、ウィキリークスは東京の在日米国大使館が作成した外交公電を暴露した。 ウィキリークスが入手した25万件の公電のうち、東京発の公電は各国の米大使館別で3番目に多い約5700点。外交関係者は、米軍普天間飛行場の移設問題など日米関係の機微にふれる公電の暴露を懸念していたが、結果的に第一号として公開されたのは捕鯨問題にまつわる日米外交当局のやり取りだった。 米公電はいずれも 「秘」 指定で、2009年11月から10年1月に作成された3点だ。

 09年11月2日の公電では、農水省幹部が海上で極めて危険な状況を作り出しているSSに対して、特別なNPOとして税制上の優遇措置を認めている米政府が適切な措置を取るよう要求。米側が「もし、違反が認められれば、適切な司法措置を取る」 と返答したところ、日本側は米国がSSへの措置に踏み切れば、「IWC(国際捕鯨委員会)での交渉の進展が容易になるだろう」 と説明したという。

 町田勝弘水産庁長官(当時)とIWCのモニカ・メディナ米政府代表の会談を取り上げた11月9日の公電でも、SSに関する記述があり、メディナ代表は「彼らは攻撃的で有害な活動を基盤としており、米政府は(SSに)免税資格が与えられているのは妥当ではないことを示すことができると思う」と答えている。

 このやり取りについて、1月6日付の英紙ガーディアン(電子版)は 「米日間で策略された秘密捕鯨交渉」 と報道。 「米国の外交当局者はシー・シェパードへの厳重措置を(米政府に) 促すことを引き換えに、日本のクジラの捕獲数を減らすよう提案した」 と指摘した。

 オーストラリア・キャンベラ発の米公電も相次いで公開されている。 豪紙シドニー・モーニング・ヘラルドは、日本が南極海での捕鯨を停止するなら捕鯨継続を認めるとする妥協案を豪政府が提案していたことを報道。 また、昨年5月にはラッド豪政権が日本の調査捕鯨停止を求めて国際司法裁判所(ICJ)に提訴しているが、豪州の勝算は薄いとして、当時の主要閣僚が反対していたことも暴露した。

 この点について、6日付の豪紙オーストラリアン(電子版)は、「日本の捕鯨に反対するオーストラリアの提案に関する微妙な情報は、国際的な交渉を反故(ほご)にするだろう」 と指摘。 一方、5日付の豪紙エイジは電子版で世論調査を行い、92%が 「政府は捕鯨交渉に関して、世論の声に応じていない」 と答えている。

 今後も、捕鯨問題に関する米公電の暴露が続けられる可能性は高い。

 

・1月9日(日)   産経新聞インターネットニュースより。

 http://sankei.jp.msn.com/life/environment/110109/env1101091801000-n1.htm 

 【社会部オンデマンド】 調査捕鯨の必要性とアピールは? 将来的食料として管理、現地新聞に意見広告も   2011.1.9 18:00

 「今期も南極海で日本の調査捕鯨に対する妨害行為が始まりましたが、なぜ数百頭も捕獲する調査捕鯨が必要なのでしょうか。必要なら、日本は反捕鯨国にどんなアピールを行っているのでしょうか。また、鯨肉がどのように流通しているのかも教えてください」=奈良県の自営業、前田和男さん(63) 

 ■個体数の予測も可能…収入は50億円超

 日本の南極海での調査捕鯨は将来、鯨類を食料として持続的に捕れるように管理するため、生態や個体数、生態系に及ぼす影響など科学的なデータを集めることが目的だ。

 調査は国際捕鯨取締条約に基づき、国の許可を受けた「日本鯨類研究所」(東京)が実施する。水産庁などによると、目視による分布や行動などの調査のほか、群れの中から無作為に抽出して捕獲、群れの年齢構成や妊娠率、エサは何かなどを調べることで、将来的な個体数も予測できるという。

 調査結果は国際捕鯨委員会(IWC)でも参考にされ、専門家の論文にも多数引用されている。

 捕獲するのは、年齢を調べる年輪のような耳あかの固まり(耳垢=じこう=栓)や、胃の内容物を得るために解体が必要だからだ。

 現行の捕獲目標は南極海のミンククジラ850頭(前後10%)など。実際は妨害行為などのため、目標を達成した平成17年度を除いては約510〜約680頭の捕獲にとどまり、目標を下回っている。

 捕獲目標は生息数に影響を与えない範囲で統計的に有意な結果が出せ、効率良く捕獲できる数として算出されたものだ。だが、反捕鯨国などからは獲りすぎではないかとの批判もある。

 日本鯨類研究所の西脇茂利調査部長は、米国などの少数民族は約5千頭しか生息していないとみられる種類のクジラを年間50頭捕獲することが認められていると説明。その上で、「南極海のミンククジラは推定約76万頭で、捕獲しても生息数に影響はなく獲り過ぎということはない」と話す。

 捕獲したクジラを調査後に利用することも条約で義務付けられている。鯨類研究所は21年度、南極海以外の調査で捕獲したものを含む約3900トンを共同船舶(東京)に販売委託し、約55億円の収入を得た。

 鯨肉は主に卸売業者や加工業者が購入し、各地の市場などを通して消費者の元に届く。販売委託で得られた収入は、年間で50〜60億円程度かかるという捕獲調査費用に充てられる。

 こうした日本の調査捕鯨を諸外国に理解してもらうため、これまで在米、在英の日本大使館などが現地の新聞に意見広告を出すなどして、調査捕鯨が条約に基づく合法的なものであることや調査内容、クジラを食べる文化への理解などを訴えてきた。

 ■食料か否か…背景に食文化の違い

 IWC総会も日本の主張をアピールできる場だ。17年以降、日本の調査捕鯨船団に対し、環境保護を標榜(ひょうぼう)して過激な妨害行為を繰り返す米団体「シー・シェパード(SS)」についても、日本はIWC総会で度々取り上げ、関係国に対応を要請。18年と19年には全会一致で妨害行為に対する非難決議もまとめている。

 だが、22年6月のIWC総会では、反捕鯨国は暴力行為への非難には理解を示すものの、「クジラを殺すべきではない」といった従来の主張を繰り返す場面が目立った。

 結局、南極海のミンククジラの生息数が増えているなど、日本が調査捕鯨で分かった科学的な根拠に基づく情報の尊重を訴えても、考え方の溝が埋まらない状況が30年近くも続いている。その背景を関係者は「クジラを食料とみていないためだ」と指摘する。

 22年1月、当時の赤松広隆農林水産相は会見で、反捕鯨国の豪州やニュージーランドについて、「彼らはクジラに対する思いが僕らとちょっと違う。『なぜかわいいクジラちゃんを食べてしまうんだろう』と。これは国々の食文化の違いだろう」と話している。

 日本が調査捕鯨を担当するのが水産資源を管理する水産庁であるのに対し、反捕鯨国では、担当は日本の環境省や外務省に当たる省庁の場合が多い。こうしたところからも認識の違いはみてとれる。

 南極海ではオキアミやメロなどは、国際条約に基づき、漁業と資源管理が行われている。水産庁は「ほかの魚と同じ土俵で議論をしたいだけ」と強調しているが、長年埋まらない溝は深い。今後もねばり強く日本の認識を伝えていくほかなさそうだ。(高橋裕子)

・1月6日(木)  毎日新聞インターネットニュースより。

  http://mainichi.jp/select/jiken/news/20110106ddm041040130000c.html

 シー・シェパード:調査捕鯨船をまた妨害−−今年度2回目       毎日新聞  201116日 東京朝刊

 水産庁は5日、南極海で調査捕鯨船団の一隻が、反捕鯨団体「シー・シェパード(SS)」から再び瓶を投げられるなどの妨害を受けたと発表した。乗員や船に被害はなかった。10年度調査捕鯨へのSSの妨害は2回目。【佐藤浩】

・1月5日(水)  産経新聞インターネットニュースより。

 http://sankei.jp.msn.com/world/asia/110104/asi1101041157000-n1.htm 

 【米公電流出】 豪、捕鯨で対日妥協案を検討 10年で5千頭削減    2011.1.4 11:55

 日本の調査捕鯨に反対するオーストラリアの外交当局が昨年2月ごろまで、捕獲数を削減することなどを条件に日本の捕鯨を認める妥協案を内部で検討していたと有力紙シドニー・モーニング・ヘラルドが4日、伝えた。

 同紙が内部告発サイト「ウィキリークス」から独自に入手した米外交公電などによると、日本側が今後10年間で捕獲数を5千頭分減らすことなどを条件に捕鯨の継続を認める妥協案への合意が検討されていたという。

 しかしオーストラリア政府は昨年5月、国際司法裁判所(オランダ・ハーグ)に日本を提訴。合意が実現しなかった理由は不明だが、2009年12月作成の公電などによると、捕鯨問題を担当した当時のギャレット環境・遺産・芸術相が日本との妥協に消極的だったほか、反捕鯨の国内世論の高まりも背景にあったとみられる。(共同)

・1月4日(火)  産経新聞インターネットニュースより。

 http://sankei.jp.msn.com/world/america/110103/amr1101031945008-n1.htm 

 【米公電流出】 農水省幹部、米大使館に反捕鯨団体への対応要求 「東京発」 初公開   2011.1.3 19:43

 日本の農林水産省幹部が2009年11月、東京の米大使館幹部に、日本の調査捕鯨の妨害を続ける米国の反捕鯨団体「シー・シェパード」に対して断固とした措置を取るよう要求していたことが、内部告発サイト「ウィキリークス」が3日までに公表した東京の米大使館の外交公電で分かった。

 ウィキリークスは米国の秘密外交公電約25万点を入手したとして、ネット上で順次公開しているが、東京発の公電が公表されたのは初めて。今回公表されたのは3点で、いずれも捕鯨問題に関する公電。

 公電によると、農水省幹部は「(妨害行動が)海上に危険な状況を生み出している」と懸念を伝え、何らかの措置を取るよう繰り返し要求。米側は「国内法に違反する点が見つかれば適切な措置を取る」と応じた。(共同)

      *

 同じ問題についての毎日新聞の報道。

 http://mainichi.jp/select/world/news/20110104ddm007030112000c.html 

 ウィキリークス:東京発公電、初の暴露 「日本側がシー・シェパード対策を要求」    毎日新聞 201114日 東京朝刊

 米外交公電の暴露を続ける内部告発サイト「ウィキリークス」は1日、日本の調査捕鯨を妨害する反捕鯨団体「シー・シェパード」(SS、本部・米ワシントン州)をめぐり、日本の農林水産省幹部が米側にSSへの対策強化を要求したとする在日米大使館発の公電を公表した。

 ウィキリークスは同日現在、入手したとされる公電約25万点のうち約2000点を公表したが、東京の米大使館発の公電が公表されたのは初めて。今後、米軍普天間飛行場の移設問題や北朝鮮情勢などを巡る日米間のやり取りが暴露されていく可能性もある。

 09年11月〜10年1月に発信された日本の調査捕鯨に関する公電3点。09年11月2日付の公電は、日本の農水省幹部と在日米大使館の首席公使との会談内容を報告。幹部は、SSの行為が非常に危険なものだと非難した上で、(非課税団体である)SSに税制上の問題点がないか調査するよう要求した。

 また、同月9日付の公電は、別の農水省幹部と国際捕鯨委員会(IWC)のモニカ・メディナ米政府代表との会談内容を報告。幹部は、SSの暴力的な活動はIWCの交渉における日本の柔軟性を制限することになると警告。メディナ代表は、SSに対する課税について、その攻撃的で有害な行動を考慮すれば、SSが非課税団体には値しないと証明し得るとの見解を示した。

 一方、10年1月27日付の公電によると、当時の福山哲郎副外相(現官房副長官)と在日米大使館の経済担当公使が捕鯨問題をめぐって会談。公使は、国際的な交渉が難航する捕鯨問題で、主要な捕鯨国であるアイスランドの捕獲枠の削減に向けて日本の協力を要請。これに対し福山氏は「日本政府がこの問題で性急に動けば、与党である民主党にとって国内政治の問題になる」と難色を示したという。【隅俊之】

      ◇

 福山哲郎官房副長官は3日夜、毎日新聞の取材に対し「事実関係を含め、コメントをすることは適切ではないと考える」と語った。

・1月3日(月)   毎日新聞インターネットニュースより。

 http://mainichi.jp/select/world/news/20110103ddm002040017000c.html 

 シー・シェパード:南極海妨害 「日本側が放水」     毎日新聞 201113日 東京朝刊

 【シドニー共同】反捕鯨団体「シー・シェパード」は1日、共同通信に対し、南極海付近で発見した日本の捕鯨船団側から同日、放水による攻撃を受けたことを明らかにした。同団体側にけが人はないという。

 シー・シェパードは31日、初めて日本側が捕鯨活動を始める前の段階で捕鯨船団を発見したとした上で「重大な勝利」と強調していた。 

 http://mainichi.jp/select/world/news/20110103ddm002040016000c.html 

 シー・シェパード:調査捕鯨船に瓶など投げ妨害−−南極海     毎日新聞 201113日 東京朝刊

 水産庁は1日、南極海を航行していた調査捕鯨船団の1隻が、反捕鯨団体「シー・シェパード(SS)」から瓶を投げられるなどの妨害を受けたと発表した。乗組員や船に被害はなかった。10年度の調査捕鯨に対するSSの妨害は初めて。

 水産庁によると、妨害は日本時間1日午前8時ごろから約1時間にわたり、第3勇新丸(乗員22人)がSSの船から出た小型ボートに妨害された。【佐藤浩】

 

2011年 ↑

2010年(7月〜12月) ↓

 

・12月25日(土)   産経新聞インターネットニュースより。

 http://sankei.jp.msn.com/world/asia/101225/asi1012251202000-n1.htm 

 【海外事件簿】 反捕鯨団体SSがさらに装備増強 腐乱臭詰め投擲弾も用意    2010.12.25 12:00

 今月初旬、オーストラリアの寄港地から出港した反捕鯨団体、シー・シェパード(SS)の抗議船が南極海で、日本の調査捕鯨船団の到着を待ち構えている。SSは新抗議船、ゴジラ号を投入し、昨年に続き、3隻態勢で妨害を繰り広げる。豊富な資金力をもとに、哨戒用ヘリコプターや妨害用高速ゴムボートなども増強。腐乱臭詰めの投擲(とうてき)弾なども用意している。代表のポール・ワトソン容疑者=(60)、傷害容疑などで国際手配中=はメディアに対し、「われわれは、初めて日本側より強い装備を整えた」などと豪語している。(佐々木正明)

 SSの豊富な資金保有ぶりは、SSが毎年、米政府に提出しているNPO年間報告書の決算表に裏打ちされている。報告書によると、SSの2009年の総収入は981万ドル(約8億1400万円)。08年の2・4倍、さらに、5年前に比べると7倍以上に膨れ上がった。06年に南極海で捕鯨妨害を本格的に開始して以来、寄付がさらに集まるようになり、日本をダシにして急成長している実態がはっきりと数字で表れている。

 09年には米元テレビ番組司会者、ボブ・バーカー氏が500万ドルの大金を寄付した。ワトソン代表は長年の友人である動物愛護活動家の紹介で、バーカー氏と面会。「あと500万ドルあれば、日本の捕鯨産業を倒産させることができる」と協力を申し出たところ、もともと、動物愛護や環境保護活動に熱心だったバーカー氏が「君なら、それを成し遂げることができる」と同調し、寄付を約束した。

 今回のSSのパワーアップは、この大口寄付によるところが大きい。豪紙・マーキュリーによれば、ゴジラ号の獲得費用は120万ドル。それまで、南アフリカのクルーズ関連会社が所有していた船であり、今年1月に日本の第2昭南丸と衝突、大破したアディ・ギル号と同じデザイナーが設計したため、アディ号と似た外観をしている。

 ゴジラ号は1998年に建造され、全長35メートル。航行速度は24ノットで、アディ号が2008年に塗り替えるまで、世界一周最短航行のギネス記録を持っていた。日本船団のどの船よりも早く、いったん見つかれば、追跡を振り切ることは難しい。南アフリカのドックで、SSシンボルカラーの黒色に塗装され、船首付近にはゴジラのような怪獣のイラストが描かれた。

 ゴジラ号には11人のクルーが乗船。苛酷な航海となるが、中には女性ボランティアも含まれている。ワトソン代表の右腕でもある同号のロッキー・マクレーン船長は「この船はレーダーに映りにくい素材で作られており、直前まで探知されずに、日本船に近づくことができる」と性能を披露した。

 ワトソン代表が乗船するSSの母船スティーブ・アーウィン号の装備もリニューアルされた。同号のヘリポートに格納され、哨戒用、撮影用のヘリコプターは、「MD500」という機種に替えられた。

 MD500は各国海軍や海上保安当局などでも使われている汎用(はんよう)型の機種で、航続距離は500キロ以上。2時間以上の飛行が可能となり、日本船を探知するための航行海域が一気に広がった。また、SSは従来、日本の捕鯨の実態を伝えるために、上空からの撮影用にもヘリを用いており、燃料さえ確保できれば、SSは妨害期間中、新ヘリをフル活用するとみられる。

 これまでのヘリは、SSクルーの元米軍パイロットの所有物で、SSがレンタルしていた形だった。捕鯨関係者は「ヘリの使用には、所有者の許可が必要で、ワトソン代表でさえパイロットの意向に従っていた。今回、自前のヘリを用意できたことは、上空からの活動がさらに活発になることを意味する」と話す。

 前回、日本側は各船に複数のカメラマンを乗船させ、SSの過激な妨害活動をデジタルカメラで撮影。動画像データを衛星回線で東京まで飛ばし、即時広報態勢を取ることによって、SSの暴力を、動かぬ証拠で全世界に告発することに成功した。一方で、SSは質・量ともに、広報態勢は後れをとり、情報戦では終始、劣勢に置かれた。

 今回、スティーブ号はオーストラリアのホバート港に停泊中、船体後方に、球状の物体が新たに設置されていることが確認された。日本側関係者は「形状から見ると、新しい衛星用アンテナの可能性が高い」と指摘。SSは前回の教訓をもとに、情報戦を有利に展開するために、通信設備の拡充を図ったとみられる。

 また、スティーブ号に格納され、妨害時には日本船に張り付いて航行を邪魔する高速ゴムボートの数も2隻から3隻に増えたことも確認された。

 さらに、今回、SSは日本船に投擲(とうてき)するための瓶に、「Pseudo Corpse」という化学物質を詰めることも明らかにした。これは、警察犬の訓練のために使われ、動物の腐乱臭のような強烈な臭いを発する液体という。日本船に投げつけることで、悪臭を拡散させ、甲板での船員の活動に支障を与えようとする狙いがあるとみられる。

 ワトソンは12月中旬に公式HPに声明を出し、「われわれは、南極海でクジラを殺す行為を、殺人と同じだと考えている。われわれは自分たちの命に代えて、クジラを守ってみせる」と挑発した。

 例年通りのルートならば、12月初旬に日本を出港した捕鯨船団は今月末から1月初旬にかけて、南極海海域の調査捕鯨エリアに到達する。

 大捜索網をはり、日本船の影を追うSSには、反捕鯨国の応援団がついており、過去の経緯をみると、日本船の航行情報は、付近を航行する船舶によってSSに集約されている実態がある。南極海の攻防は今後、日本側、SS側の情報戦をまじえながら、激化していくことが予想される。

 

・12月18日(土)  読売新聞インターネットニュースより。

 http://www.yomiuri.co.jp/national/news/20101217-OYT1T00875.htm 

 「ザ・コーヴ」配給会社への街宣活動、禁止判決

 和歌山県太地町のイルカ漁を隠し撮りした米ドキュメンタリー映画「ザ・コーヴ」の配給会社「アンプラグド」側が、上映中止などを求める街宣活動を行った市民団体「主権回復を目指す会」などに、街宣活動の禁止と損害賠償を求めた訴訟の判決が17日、東京地裁であった。

 阿部潤裁判長は「執拗(しつよう)に批判を繰り返し、正当な政治活動や表現行為から逸脱している」と述べ、同社事務所と加藤武史社長の自宅から半径100メートル以内での街宣活動の禁止と計110万円の賠償を命じた。

 判決によると、同会は4月、東京都目黒区内の同社事務所や加藤社長の自宅周辺で、インターネットで呼びかけた参加者らとともに拡声機で「廃業しろ」などと連呼。

 同地裁が同月、同社側の申し立てに基づき、街宣活動を差し止める仮処分決定をした後も、同様の街宣活動を続けた。 (201012172110 読売新聞)

 

・12月5日(日)    読売新聞インターネットニュースより。

 http://osaka.yomiuri.co.jp/e-news/20101205-OYO1T00221.htm 

 イルカ漁の 「真実」 映画化、和歌山・太地町でロケ   米在住の日本人監督 「反捕鯨」 偏らず描写

 イルカ漁を批判的に描いた映画「ザ・コーヴ」の舞台となった和歌山県太地町で、米国在住の映画監督、佐々木芽生(めぐみ)さん(48)が、鯨、イルカ漁の現状や賛否をそのまま伝えるドキュメンタリー映画の撮影を進めている。「ザ・コーヴ」や欧米での論調が「反捕鯨」に偏っていると感じ、製作を決意した。既にロケを重ねており、来年の完成を目指す。

 「ここは水が乏しく、米も野菜も育ちにくい。だから先人たちは、近くを回遊する鯨に命を懸けてもりで挑んだ。そうしなければ生きられなかった」

 太地町の三軒一高町長は11月中旬、佐々木さんのインタビュー撮影に応じ、町長室で約2時間にわたって胸の内を語った。「子どもが給食で鯨の竜田揚げをおいしそうに食べる場面も、ぜひ紹介して。事実を伝えてくれるなら、私たちは喜んで協力する」と話す。

 佐々木さんは昨夏、ニューヨークで「ザ・コーヴ」を見て衝撃を受けた。米国では反捕鯨団体「シー・シェパード」の活動を紹介するテレビ番組が人気で、捕鯨批判の声ばかり。「地元の意見も正確に伝え、事実をきちんと検証してどちらにも偏らないドキュメンタリーを作りたい」と話す。

 太地町にはこれまで4回訪れ、9月のイルカ漁初日や地元の秋祭りの様子などを撮影した。漁師や、同町内に常駐するシー・シェパードのメンバーらにもインタビューを敢行。6月にモロッコで開かれた国際捕鯨委員会(IWC)総会も取材し、今後はニュージーランドやデンマークなどでも取材する予定だ。

 1987年に渡米した佐々木さんは、フリーのジャーナリストとして活動。美術コレクターの老夫婦を追った初の監督作品「ハーブ&ドロシー」が全米100以上の劇場・美術館で公開され、フィラデルフィア国際映画祭などで賞に輝いた。同作品は先月から、日本でも上映されている。

 佐々木さんは「取材するにつれ、捕鯨国側の主張にも疑問を感ずる部分があり、改めて複雑な問題だと感じる。ただ、今は賛否双方の主張がかみ合っていないというメッセージを欧米で発信するだけでも、意味はあるはず」と話している。  (2010125 読売新聞)

 

・12月4日(土)    読売新聞インターネットニュースより。

 http://www.yomiuri.co.jp/national/news/20101203-OYT1T00001.htm 

 調査捕鯨船団が出港、シー・シェパード抗議船も

 今季の調査捕鯨のため、捕鯨船団が2日、山口県の漁港を南極海に向け出港した。

 一方、今季も妨害を宣言する反捕鯨団体シー・シェパードも同日、抗議船2隻をオーストラリア・タスマニア島から出航させた。別の抗議船も既に南極海に向かっており、今季は計3隻で妨害活動を行うという。昨季はメンバーの1人が船に侵入するなど混乱を巻き起こしたシー・シェパードだが、水産庁の対抗策は限られている。

 2日午前、調査捕鯨船「第3勇新丸」など2隻が山口県の下関漁港を静かに出た。式典もなく、乗組員の家族らが見送るだけの、ひっそりとした船出。水産庁は「航路を予測される恐れがあるため、出港したかどうかは言えない」と、船団の隻数や団長の氏名も明らかにしていない。

 捕鯨船団には、3季ぶりに海上保安官が複数人乗り込んだ。銃も携行している。「もし昨季のようにシー・シェパードのメンバーが乗り込んできたら、海上保安官が船上で逮捕することもあり得る」(水産庁関係者)という。  (20101230306 読売新聞)

・12月3日(金)  毎日新聞インターネットニュースより。

 http://mainichi.jp/select/science/news/20101202dde041040038000c.html 

 グリーンピース: 国際環境保護団体、最年少の日本事務局長   毎日新聞 2010年12月2日 東京夕刊

 国際環境保護団体「グリーンピース」は、日本事務所の事務局長に、佐藤潤一氏(33)を1日付で起用したと発表した。42カ国ある現地代表で最年少となる。日本の調査捕鯨船の船員による横領疑惑を調べるため、運送途中の鯨肉を持ち出した行為が窃盗罪などに問われ、今年9月に懲役1年、執行猶予3年の有罪判決を受けた。仙台高裁に控訴中で被告の立場にあるが、係争中のメンバーを起用し政府への圧力を強める構えだ。

     *       *

   産経新聞インターネットニュースより。

 http://sankei.jp.msn.com/world/asia/101202/asi1012020837000-n1.htm 

 反捕鯨船、出港 「昨季より妨害に自信」 とシー・シェパード代表  2010.12.2 11:20

 日本の南極海調査捕鯨船団による本年度の捕鯨シーズンを迎え、米国の反捕鯨団体「シー・シェパード」の抗議船が2日、調査捕鯨活動の妨害を目指し、オーストラリア南東タスマニア島のホバートを出港した。

 同団体は今年2月、抗議船の船長が日本側の船に酪酸入りの瓶を発射するなど、妨害活動は激しさを増す一方。海上保安庁が国際手配している代表のワトソン容疑者は「昨季より効果的に妨害する自信がある」と強調しており、今回の捕鯨活動も難航が予想される。

 シー・シェパードの抗議船「アディ・ギル号」は今年1月、日本側の船と衝突し、航行不能となった。今季は新たに、日本の怪獣映画にちなんで名付けた「ゴジラ号」(全長約35メートル)を導入。日本の船団より高速での航行が可能とし、ほかの2隻と計3隻態勢で捕鯨活動を監視する。(共同)

・12月2日(木)   毎日新聞インターネットニュースより。

 http://mainichi.jp/select/jiken/news/20101202k0000m040086000c.html 

 ザ・コーヴ: 「恣意的に編集」…取材受けた准教授が提訴  毎日新聞 2010年12月1日 21時59分(最終更新 12月1日 22時10分)

 米映画「ザ・コーヴ」に登場している遠藤哲也北海道医療大准教授が、映像を恣意(しい)的に編集され名誉を傷付けられたとして、日本で上映権を持つ「メダリオンメディア」(東京都)と配給会社「アンプラグド」(同)に登場部分の削除や1100万円の損害賠償を求めて提訴していたことが1日、分かった。

 大阪地裁に提訴されたが、東京地裁に移され同日、第1回口頭弁論が開かれた。2社は争う意向とみられる。

 訴状によると、遠藤准教授は07年2月、海外の共同研究者に紹介されたルイ・シホヨス監督から、海洋生物の水銀汚染が題材との名目でドキュメンタリー映画製作への協力を依頼され取材を受けた。

 遠藤准教授は、監督が特定の思想や価値観に基づいたイルカ漁非難を隠したまま取材したとして「映画は極めて主観的で非科学的な内容。客観性が重視される科学者としての信用を失墜させる行為だ」と主張している。

 准教授本人が和歌山県太地町で購入したイルカの肉を持つ映像を巡っては、実際は別のイルカに関する説明なのに「水銀が検出された」との字幕を挿入される恣意的な編集もあったという。

 メダリオンメディアは「担当者が不在」、アンプラグドは「係争中のためコメントは控える」としている。

・12月1日(水)   産経新聞インターネットニュースより。

 http://sankei.jp.msn.com/life/environment/101201/env1012010136000-n1.htm 

 保安官乗船し調査捕鯨船団、南極海へ シー・シェパード3隻も追尾   2010.12.1 01:31

 日本の調査捕鯨船団が今月上旬、南極海へ出港する。反捕鯨団体、シー・シェパード(SS)も抗議船3隻態勢で、2日にオーストラリアから船を出港させる。資金面で急成長を見せるSSは今回、新たに監視用ヘリや追跡用高速ボートなどの戦力を増強。日本側は3年ぶりに海上保安官を乗船させるが、乗組員の安全対策は十分といえず、航海中の危険性が高まっている。

 SSは米国に本部を置き、税の減免措置を受ける特別なNPO。毎年、米政府に活動報告書を提出する義務がある。2009年の報告書によれば、同年の年間収入は980万ドル(約8億2300万円)で5年前の7倍強に膨れあがった。

 日本の“捕鯨船たたき”によって知名度があがり、世界中から寄付金が集まるようになったからで、SSはこの資金をもとに、抗議船の設備を拡張している。

 SSは、南アフリカの会社が所有していた高速船を100万ドル超で購入。「ゴジラ」 号と命名した。 捕鯨船よりも航行速度が速く、一度、発見されれば追跡をふりきるのは困難だ。 「4隻目の船も用意している」 との情報もある。

 さらに、抗議船のヘリポートには、監視、撮影用のヘリコプターや捕鯨船の航行を妨害するための高速ゴムボートを格納。SSによれば、ヘリは「MD500」という機種で航続距離が約500キロと長時間の飛行が可能という。

 日本側は、安全対策と事件対応などのために今回、海上保安官を乗船させる。 しかし、前回の乗船時にはSSが「武装保安官がわれわれを攻撃してきた」などと喧伝(けんでん)して、日本側を悪役に仕立て上げ、船団は情報戦でも劣勢となった。 さらに、保安官が乗っていた母船・日新丸にもSSは大量の酪酸瓶を投擲(とうてき)し、妨害抑止にはならなかった。

 今年春にSS抗議船に乗船して、じかに実態を取材したオーストラリアのスティーブ・ジャービス記者は 「情報戦では明らかに日本は不利。 もし、衝突でどちらかに死者が出るような事態に陥れば、日本側の責任が高まり、調査捕鯨は完全に“敗北”するだろう」 と指摘、双方に冷静になるよう呼びかけている。(佐々木正明)

・11月30日(火)   読売新聞インターネットニュースより。

 http://www.yomiuri.co.jp/kyoiku/news/20101130-OYT8T00360.htm 

 市民が考える鯨問題…山口   海響館 国際会議を前にシンポ

 鯨支持国による国際会議「鯨類の持続的利用に関する会合」が山口県下関市で開かれるのを前に、「鯨問題を考える市民100人シンポジウム」(下関市主催)が29日、同市の水族館・海響館で行われた。

 水産庁資源管理部の森下丈二参事官とノルウェー・オスロ大のラルス・ワロー名誉教授が登壇。森下参事官は、商業捕鯨の再開に向けて、反捕鯨国と交渉を続けているものの、今年の国際捕鯨委員会(IWC)でも進展がなかったことを報告。ワロー名誉教授は、反捕鯨団体の主張について「鯨は知能が高い特別な動物とする意見もあるが、豚などのほかの大型哺乳(ほにゅう)類も知能が高く、特別な違いはない」と話した。

 参加した市民からは、調査捕鯨船団が南極海で反捕鯨団体の妨害を受けたことについて、「護衛を付けるなど、強制的に排除することはできないのか」と質問があった。森下参事官は「対策を考えているが、実現できていない。妨害を問題とする機運が、全国的にもっと高まることを期待したい」と答えていた。

 国際会議は30日と12月1日、下関市の海峡メッセ下関で行われ、約30か国が参加する予定。  (20101130 読売新聞)

・11月26日(金)   毎日新聞インターネットニュースより。

 http://mainichi.jp/select/seiji/news/20101126ddm008010017000c.html 

 ファイル: 「シー・シェパードの悪質さ強まっている」 捕鯨船3年ぶり海上保安官同乗   毎日新聞 2010年11月26日 東京朝刊

 筒井信隆副農相は25日の会見で、今年度の南極海の調査捕鯨船団に、反捕鯨団体「シー・シェパード(SS)」対策として海上保安官が同乗する予定であることを明らかにした。水産庁によると、08、09年度は船団の装備充実を理由に海上保安庁に同乗を要請しなかったため、3年ぶりとなる。

 筒井副農相は「(SSの)悪質さが強まっている。(同乗する海上保安官の人数は)具体的には言わない方針だ」と述べた。水産庁は安全上の観点から出港予定日などを明らかにしていない。

・11月19日(金)  毎日新聞インターネットニュースより。

 http://mainichi.jp/select/jiken/news/20101119k0000m030045000c.html 

 調査捕鯨船: 抗議船との衝突は両者に責任 NZ海事当局       毎日新聞 20101118日 1940

 【ジャカルタ佐藤賢二郎】 南極海で今年1月、日本の調査捕鯨船団の調査船「第2昭南丸」と反捕鯨団体「シー・シェパード」(SS)の抗議船「アディ・ギル号」(船籍ニュージーランド)が衝突した事故について、ニュージーランドの海事当局は18日、「(衝突は)双方が適切な対応を怠った結果」として、両者に責任があると結論付けた調査報告を公表した。AFP通信が伝えた。

 報告書は「双方について意図的に衝突を引き起こした証拠はなかった」とする一方、調査船がアディ・ギル号に近づいた際、アディ・ギル号は衝突回避のため前進したが、両船は共に「国際的な衝突回避規則を順守しなかった」と指摘した。

・11月10日(水)    やや遅れたが、読売新聞インターネットニュースより。

 http://www.yomiuri.co.jp/column/kenkyu/20101020-OYT8T00334.htm 

 そこにも、エコ・テロリズムの影が    調査研究本部主任研究員 渡辺 覚

 沖縄・尖閣諸島沖の中国漁船衝突事件は、日中関係を大きく揺るがすものとなったが、10月には、別の外国船が引き起こした<もう一つの衝突事件>をめぐり、注目される動きがあった。

 南極海で米国の反捕鯨団体シー・シェパードの小型高速船が、日本の調査捕鯨船団の監視船「第2昭南丸」に衝突して大破・沈没した事件を覚えておいでだろうか。今年1月のことである。

 発生当初、シー・シェパード側は「(衝突を回避するために)後退しようとしたが、昭南丸がスピードを上げて我々の船首部分に突っ込んできた」「日本側は救難活動を行わなかった」などと非難。衝突と沈没は、日本側に重大な責任がある――とする主張を続けていた。

 ところが今月に入って、小型高速船の元船長がニュージーランドのラジオに出演し、監視船との衝突・沈没は、シー・シェパードの代表が書いたシナリオに基づく自作自演だったと証言したのである。「高速船は、えい航可能な状態だったが、(沈没したと発表すれば)『同情を買い、テレビ映えする』として、わざと放棄、沈没させるよう代表に指示された」と真相を明かしたのだ。

 シー・シェパードは2月にも、南極海で同じ第2昭南丸に狙いを定め、強い臭気を放つ酸を詰めたガラス瓶を発射したり、水上バイクで接近して侵入防止用の網を切った上、船体をよじ登って侵入したりする行為を繰り返した。シー・シェパードは、過去には、ポルトガルで捕鯨船を爆破して沈没させ、アイスランドなどで捕鯨船やクジラの解体工場を破壊したこともあった。

 一連のシー・シェパードの活動について、米連邦捜査局(FBI)の担当責任者は米議会での証言などで、環境保護に名を借りた暴力的な破壊行為、すなわち「エコ・テロリズム」であると言明している。

 エコ・テロリズムに分類される事件は、日本ではなじみが薄いものの、米国では2001年9月の同時テロ以降、頻発している。2003年8月には、カリフォルニア州で自動車販売会社が放火の被害にあい、「環境汚染車」とスプレー書きされたスポーツタイプ多目的車(SUV)が、100台以上破壊された。翌月にはテキサス州、ニューメキシコ州でもSUVの放火事件が相次ぎ、カリフォルニア州では建設中のコンドミニアムの放火事件が発生。これらの事件を経て、エコ・テロリズムという呼称が米国社会で一般に定着した。

 今月、日本を舞台にしたエコ・テロリズムを扱ったミステリー「エコの闇 テロリストの光」(織江耕太郎著、文芸社刊)が出版された。未明の東京港で、日本の大手メーカーが製造した主力乗用車約400台が、謎のエコ・テロリストに仕掛けられたプラスチック爆弾で爆発・炎上するという衝撃的な序章で始まる。テロリストはさらに大量のプラスチック爆弾を用い、自動車メーカーのショールームや本社ビルの爆破へ手を伸ばし、これを追う警視庁と新聞記者の動きが縦軸、米国、中東、中国へ広がる謎が横軸となって目まぐるしく展開していく。著者は現役の経営コンサルタントで、ミステリー文学賞を別名で受賞した経歴もあり、綿密な取材と膨大な資料に基づいた本書は、「明日にも日本で起きるかも知れない」と思わせる迫真性をもっている。

 世界の生態系保全について話し合う生物多様性条約第10回締約国会議(COP10)が18日、名古屋市で開幕した。13年前の地球温暖化防止京都会議以来となる大規模な会議には、約190か国・地域から約1万人が参加している。環境をテーマにした国際会議は抗議行動の標的にされやすい。問題のシー・シェパードが各国代表に会議のボイコットを呼びかけた経緯もあり、愛知県警や海上保安庁は厳重な警戒態勢を取っているという。

 これまでのところ懸念される事態は起きていないが、環境保護を隠れみのに破壊行為を正当化する<悪意>の横行を許さぬために、議長国・日本が、途上国と先進国双方の利益に目配せし、地球の未来に十分に配慮した議事運営を求められていることは言うまでもない。  (20101020 読売新聞)

・11月9日(火)  読売新聞インターネットニュースより。

 http://www.yomiuri.co.jp/national/news/20101109-OYT1T00626.htm?from=main7 

 反捕鯨団体が「常駐」、太地町のイルカ漁見張る

 イルカ漁の町・和歌山県太地町で、「シー・シェパード」など海外の複数の反捕鯨団体が漁の反対活動を活発化させている。

 メンバーの一部は町周辺に“常駐”して活動、9月から始まった漁にも影響が出ている。映画「ザ・コーヴ」の舞台となって以降、人口3500人の小さな町は揺れ続けている。

 ◆「出漁減らしてる」

 4日午前10時20分、同町の畠尻湾。沖合に10隻近くの漁船が姿を現した。横一列に並んだ船団の前で、約20頭のイルカの群れが追い立てられるように湾内に向かって泳いでくる。イルカが湾に入ると、別のボートが現れ、100メートルほどの湾の入り口を網で仕切って閉じこめる。「追い込み漁」と呼ばれるこの漁の様子を、浜辺から外国人らがビデオカメラで撮影していた。

 この漁法を国内で行っているのは太地町だけだ。小型船団で沖の群れを見つけ、金づちで鉄パイプをたたいて音を出し、湾まで追い込む。イルカは食肉処理され出荷されるが、反捕鯨団体は「残酷だ」として中止を求めている。

 漁は毎年9月から始まるが、今季はまだ数回しかイルカが捕れていない。イルカ漁師でつくる「太地いさな組合」の幹部は「トラブルを避けるため、出漁回数を減らしている」と明かす。この日は10月26日以来、9日ぶりの漁だった。

 ◆漁の映像、ウェブ発信

 同町では、漁が始まる頃から、シー・シェパードメンバーの米国人スコット・ウエスト氏(52)ら、反捕鯨団体のメンバーらが、毎日のように湾を訪れては、撮影した漁の映像などをウェブサイトで発信している。

 ウエスト氏らは隣町のホテルに滞在しており、同氏は「12月までいる。その後も他のメンバーが交代で来る。漁が終わるまでずっと監視を続ける」と話す。

 9月末には、捕ったイルカを泳がせていたいけすの網がナイフで切断される器物損壊事件も発生し、別の反捕鯨団体が犯行声明を出した。県警捜査幹部は「団体の宣伝のために嫌がらせをしたのだろう」とみて捜査している。

 ◆初の対話、平行線

 2日には、同町公民館で漁師側とウエスト氏ら反捕鯨団体の対話の場が初めて持たれた。だが、「食文化の尊重を」と訴える漁師側と、「イルカを殺すのは野蛮」と反対するウエスト氏らの主張は最後まで平行線のままだった。

 米アカデミー賞を受賞した「ザ・コーヴ」で世界の視線にさらされた太地町。漁協関係者の一人は「認知度が上がり、冷凍イルカ肉が売り切れた」と皮肉な現象を明かし、60歳代の漁師は「世界中で悪者のレッテルを張られた」と憤った。(畑武尊)

20101191501分 読売新聞)

・11月8日(月)   本日の産経新聞 (紙媒体) より。 小松正之氏の 『世界クジラ戦争』 受賞のニュース。

 国際言語文化振興財団(小島宣夫理事長)は10月28日、東京都千代田区の日本プレスセンタービルで、国際問題の理解に役立つ本を顕彰する 「国際理解促進賞」 の表彰式を行った。

 最優秀賞には、政策研究大学院大学教授、小松正之さん(57)の 『世界クジラ戦争』(PHP研究所) が選ばれた。賞金は50万円。受賞作は、かつて国際捕鯨委員会(IWC)の日本代表代理として捕鯨外交に携わった著者が、その交渉最前線での経験をまとめたもの。

 (以下省略)

・11月2日(火)   読売新聞インターネットニュースより。

 http://www.yomiuri.co.jp/national/news/20101102-OYT1T00442.htm?from=main1 

 イルカ漁、反捕鯨団体と太地町長らが意見交換会

 イルカ漁を批判的に描いて米アカデミー賞を受賞した映画「ザ・コーヴ」の舞台となった和歌山県太地町で2日、漁に反対する「シー・シェパード」などの反捕鯨団体と地元側の意見交換会が開かれた。

 反捕鯨側と地元側が同町で公式に対話するのは初めて。

 意見交換会は、民間団体が主催し、シー・シェパードのメンバー2人など計三つの反捕鯨団体が参加。地元側は、三軒一高(さんげんかずたか)町長や同町漁協の幹部が出席。反捕鯨団体側が「伝統だからといって、正しいわけではない」と主張し、イルカ漁を取りやめるように訴えた。これに対し、地元側出席者からは漁の継続を主張する声が相次いだ。

 同町は、イルカを湾に追い込んで漁をする「追い込み漁」で知られる。9月からシー・シェパードのメンバーが同町に滞在し抗議活動を行い、先月中旬には、立ち入り禁止区域に侵入して和歌山県警から厳重注意を受けた。また、9月末にはイルカを飼育するいけすの網が切断される被害があり、別の団体が犯行声明を発表、同県警が器物損壊などの疑いで捜査している。  (20101121147 読売新聞)

 

・10月31日(日)  毎日新聞インターネットニュースより。

 http://mainichi.jp/select/biz/news/20101031ddm008020055000c.html 

 ファイル: アイスランド、日本への鯨肉輸出を本格再開

 商業捕鯨実施国のアイスランドが今年、鯨肉の対日輸出を本格再開したことが30日、分かった。同国最大の捕鯨会社クバルルのロフトソン社長が共同通信に対し、ナガスクジラ肉を日本に「計500〜600トン」出荷したと述べた。【共同】

 毎日新聞 2010年10月31日 東京朝刊

・10月26日(火)  読売新聞インターネットニュースより。

 http://www.yomiuri.co.jp/national/news/20101026-OYT1T00085.htm?from=main3

 太地町とシー・シェパード、11月に対話集会

イルカなどの追い込み漁が行われている和歌山県太地町で、町と反捕鯨団体「シー・シェパード(SS)」メンバーらとの対話集会が、11月2日に町公民館で開かれることになった。

町が国際捕鯨委員会(IWC)総会以外で反捕鯨団体と話し合うのは初めて。

 町によると、9月1日の追い込み漁解禁後は、町にSSメンバーらが常駐し、町側に会見を申し込んでいた。町は拒んでいたが、民間団体「太地町のイルカ漁を考える会」(和歌山県新宮市)から「町の立場を発信すべきだ」と対話の要請を受け、25日、同会主催の集会への参加を承諾した。

 集会は午前10時から。反捕鯨を掲げる数団体が加わる予定で、町からは三軒一高町長や町漁協参事らが出席する。三軒町長は「意見はかみ合わないと思うが、捕鯨を続ける我々の立場を説明したい」としている。

(2010年10月26日08時03分 読売新聞)

・10月25日(月)   読売新聞インターネットニュースより。

  http://www.yomiuri.co.jp/world/news/20101025-OYT1T00932.htm?from=nwla

 シー・シェパードが新船 「アバター」 女優も動員

 【シンガポール=岡崎哲】 米国の反捕鯨団体シー・シェパードは24日、今年1月に南極海で日本の調査捕鯨船団の監視船と衝突、大破した高速船 「アディ・ギル(AG)号」 に代わる抗議船 「オーシャン・アドベンチャラー(OA)号」 を新たに導入すると発表した。

 既存の2隻を加えた3隻で、今年12月以後、調査捕鯨の妨害を行う計画という。日本政府筋は「暴力的な活動のエスカレートが懸念される」と警戒を強めている。

 発表によると、OA号の航行速度は24ノット(時速44キロ)とAG号の6割にとどまるが、全長は35メートルで約1・5倍ある。

 12月からの妨害活動には、米映画 「アバター」 に操縦士役で出演した米女優ミシェル・ロドリゲスさんも参加の意向を示している。

2010年10月25日19時45分  読売新聞)

・10月24日(日)   やや遅れましたが、読売新聞インターネットニュースより。

 http://www.yomiuri.co.jp/national/news/20101016-OYT1T00787.htm?from=nwla 

 シー・シェパード男性、禁止区域侵入で厳重注意

 小型クジラの追い込み漁が行われている和歌山県太地町で、16日午後1時頃、町が立ち入り禁止にしている畠尻湾周辺の遊歩道に、反捕鯨団体「シー・シェパード」メンバーの外国人男性1人が侵入するのを新宮署員が発見、近くの交番に誘導し、厳重注意した。

 同署の発表によると、近くには、ほかにも外国人数人がいたが、トラブルはなかった。遊歩道は落石の危険があり、数年前から立ち入り禁止となっている。

 同湾はイルカ漁を撮影した映画「ザ・コーヴ」の舞台。同町には9月からシー・シェパードのメンバーが滞在し、漁への抗議などを行っている。

2010年10月16日19時45分  読売新聞)

        *      *

 雑誌 『中央公論』11月号に、「映画 『ザ・コーヴ』 に見る日本と世界のギャップ」 という鼎談が掲載された。 出席者は粕谷俊雄、加藤武史、関口雄祐の三氏。

 当サイト製作者も目を通してみたけれど、特に粕谷俊雄氏の、欧米 (の一部) の価値観をそのまま自分の価値観にして怪しまない精神構造には、かなり違和感を覚えた。 もっともこういう精神構造の主は日本の知識階級には一定割合でいるので、こういう人がいること自体は奇異でも何でもないわけではあるが、いまどきこの手の人を鼎談に採用する 『中央公論』 誌の見識は問われなくてはなるまい。

 

・10月23日(土)   *「鯨肉の保健的機能性シンポジウム」 開催

 標記のシンポジウムが11月1日(月)午後1時から、東京のホテル・マリナーズコート東京で開催されます。 詳しくは日本捕鯨協会のHP (↓) をごらん下さい。

 http://www.whaling.jp/info.html 

・10月8日(金)    毎日新聞インターネットニュースより。

 http://mainichi.jp/select/jiken/news/20101008ddm012040014000c.html 

 調査捕鯨: シー・シェパード船衝突 抗議船沈没は 「故意」 元船長証言 「代表の指示」   毎日新聞 2010年10月8日 東京朝刊

 【ジャカルタ佐藤賢二郎】   南極海で今年1月、日本の調査捕鯨船団の調査船と衝突、沈没した反捕鯨団体 「シー・シェパード」(SS) の抗議船 「アディ・ギル号」 のピーター・ベスーン元船長は7日、「ポール・ワトソンSS代表の指示で故意に沈没させた」 と述べ、沈没は自作自演だったと発言した。 ラジオ・ニュージーランドの取材に答えた。 SSは 「ギル号はえい航する途中で浸水し沈没した」 と主張している。

 ベスーン氏は 「(ギル号の)エンジン室は無事で救出可能だった」 とし、代表のワトソン容疑者=傷害容疑などで国際手配中=から 「一般の人々から共感を集めるため」 に沈没させるよう指示があったと証言。 SSを 「道徳的に破綻(はたん)している」 と批判した。

 一方、ワトソン容疑者は 「けん引できない状態で、判断は船長であるベスーン氏が下した」 と否定した。

 日本の調査捕鯨船の調査船への艦船侵入罪などに問われたベスーン氏は今年7月、東京地裁で執行猶予付きの有罪判決を受け、ニュージーランドに強制送還されていた。

 豪紙シドニー・モーニング・ヘラルド(電子版)によると、ベスーン氏は南極海での反捕鯨活動への復帰をSSに求めたが、活動への不参加が執行猶予の理由の一つだったため、SS側は拒否。同氏が日本の捜査当局に対し、「妨害行為はすべてワトソン代表の指示」 と 「うその証言」 をしたとして、6日までに一切の関係を絶った。

 ワトソン容疑者は 「(ベスーン氏は)SSと不仲になったことを恨んでいる」 と述べ、沈没を巡る発言は組織への報復と反論した。

・10月7日(木)  産経新聞インターネットニュースより。

 http://sankei.jp.msn.com/economy/business/101007/biz1010072344041-n1.htm 

 シー・シェパード妨害 不安渦巻く太地町 「外国人がSS活動家に見える」   2010.10.7 23:40

 和歌山県太地町には9月のイルカ漁解禁から、反捕鯨団体 「シー・シェパード(SS)」 などの活動家とみられる外国人の姿が目立ち、住民は「街で外国人を見かけるだけで、漁を妨害しに来たのではないかと疑心暗鬼になる」と不安を募らせている。(佐々木正明)

 SSから同町に長期派遣された幹部のスコット・ウェスト氏は、SSの活動趣旨に賛同する外国人観光客にも抗議活動に参加するよう働きかけている。

 また、「太地町のイルカ狩りのせいで、日本人は世界中から、野蛮で非文明的な民族だとみられている」 として、イメージ低下を懸念する日本人にも、同町に来て漁師たちに圧力をかけるよう呼び掛けてもいる。

 実際、太地町には9月以降、外国人の姿や県外ナンバーの車がいつもより目立つという。和歌山県警が監視を強める中で、9月末に起きたのが 「いけす網切り事件」 だった。

捕獲したイルカのいけす網が何者かによって切られ、欧州の団体 「ザ・ブラック・フィッシュ」 が犯行声明を出した。創設者のウィッツェ・ファンデルウェルフ氏は産経新聞の取材に電子メールで応じ、「ショー用に全世界の水族館に売られていくイルカを海に逃したかった」などと犯行の動機を説明している。

 SSによると、オランダ国籍のファンデルウェルフ氏はかつてSSの抗議船に乗り、日本の捕鯨を妨害した経歴を持つ。SSでの活動体験をもとに今夏、アムステルダムを拠点にした同団体を設立したという。

 太地町のイルカ漁を批判した映画「ザ・コーヴ」の映像により全世界が衝撃を受けたとするファンデルウェルフ氏は、いけす網切り事件の実行犯について、「われわれの活動には日本国籍の活動家を含む多くの国籍の人々が参加している」 と指摘し、日本人の可能性を排除しなかった。

 太地町議会の三原勝利議長は、漁を妨害するSSなどの団体に対し、「いい加減にしてくれという気持ちだ。地元の憤りは増幅している」 と話している。

・9月30日(木)    毎日新聞インターネットニュースより。

 http://mainichi.jp/select/jiken/news/20100930k0000e040010000c.html 

 イルカ: 和歌山・太地のいけす網切断 環境団体が犯行声明   毎日新聞 2010930日 1022分(最終更新 930日 1129分)

 28日午前7時ごろ、和歌山県太地町の太地港で、バンドウイルカを入れたいけす7基の網が、刃物のようなもので切られているのが見つかった。イルカは逃げてはいなかった。県警新宮署が器物損壊と威力業務妨害の容疑で調べている。

 同署などによると、いけすは同町の太地いさな組合と町開発公社が所有し、1辺12メートルの四角い枠が海面に浮かび、海中に網がある。28日は、全14基のうち11基に網を張り、水族館に販売するためのイルカ約50頭を保管していた。いけす近くにハサミなどが残され、1メートル以上切られたり、穴が開けられたりしていた。欧州を拠点に活動する環境保護団体「ザ・ブラック・フィッシュ」がインターネットのホームページ上に犯行声明を出しており、同署は関連を調べている。

 同組合の三好雅之副組合長は「ひどいことで許せない」と話した。同町は古式捕鯨発祥の地で、毎年9月から翌年4月、熊野灘から同町の湾に鯨類を船団で追い込む漁を実施。食用や水族館向けとして販売している。今年の米アカデミー賞を受賞した米ドキュメンタリー映画「ザ・コーヴ」では、批判的に取り上げられた。【神門稔、川平愛】

・9月27日(月)    『勇魚通信 第43号』 発行、今後はインターネット版に移行

 日本捕鯨協会の 『勇魚通信 第43号』 が発行された。 6月にモロッコで開催された第62回IWC年次総会の模様を伝えている。 また、この4月に発売された中園成生・安永浩『鯨取り絵物語』(弦書房、3150円)が、第23回地方出版文化功労賞に選出されたことが取り上げられている。

 なお、紙媒体の『勇魚通信』は今号が最後であり、これからはネット上の電子版に移行するとのことである。 

・9月11日(土)   産経新聞インターネットニュースより。

 http://sankei.jp.msn.com/affairs/trial/100911/trl1009111201001-n1.htm 

 【衝撃事件の核心】 「不正を暴くための行為」 どこまで認められる? 鯨肉窃盗事件にみるその在り方     2010.9.11 12:00

 調査捕鯨船の乗組員が自宅に送った鯨肉を運送会社から盗んだとして、窃盗罪などに問われた環境保護団体「グリーンピースジャパン(GPJ)」のメンバー2人に青森地裁は6日、執行猶予の付いた有罪判決を言い渡した。判決で地裁は「公益目的の正当のものでも、刑罰法令に触れて他人の権利を侵すことは是認できない」と断罪した。GPJ側は即日控訴。法廷闘争を継続する構えのGPJ側が主張する「不正を暴くため」という大義はどこまで認められるのだろうか。(大泉晋之助)

 ■「公共の利益図るため」

 窃盗と建造物侵入罪に問われたのはGPJメンバーの佐藤潤一被告(33)と鈴木徹被告(43)。

 2人は平成20年4月16日、青森市の西濃運輸青森支店の配送所に侵入、調査捕鯨船乗組員が自宅に送った塩漬けの「ウネス」と呼ばれる鯨肉23・1キロが入った段ボール箱を盗み出したとして逮捕・起訴された。

 検察側は2人に懲役1年6月を求刑し、地裁はいずれも懲役1年、執行猶予3年の有罪判決を言い渡した。

 なぜ2人はこのような行為をするに至ったのか。GPJは以前から、「調査捕鯨船の乗組員により、調査捕鯨で捕獲した鯨を不正に自宅に送っている業務上横領行為が横行している」と主張してきた。そして、この横領行為を告発するため、GPJが実際に鯨肉を入手する必要があるとして、2人は違法行為に至ったというのだ。

 こうした行為に対し、公判で検察側は「捜査機関に委ねるべき事案なのに、安易に犯行に及んでいる」と非難。GPJ側は「不正行為を世の中に伝えるための必要な行為だった。公共の利益を図るための行為で、違法な行為であるとしても正当化される。NGOの調査活動はジャーナリストの取材と同様、憲法などで保障された表現の自由」との立場を強調し、真っ向から対立した。

 ■違法性阻却事由 

 一般的に違法行為を行っても、その手段が正当化される場合はあるのか。刑法で規定されているのは次のような行為だ。

 (1)ボクサーやプロレスラーが試合で相手を殴るなどしてけがをさせたり、医師が手術を行ったりする「正当行為」(2)自分もしくは他者への急迫不正の侵害に対し、他に手段がないため、自分や他者の権利などを守るため殺害や傷害行為などを行う「正当防衛」(3)人や物から生じた現在の危難に対して、自己または第三者の権利や利益を守るため、他の手段がないためにやむを得ず他人やその財産に危害を加える「緊急避難」−などがあり、「違法性阻却事由」と呼ばれる。

 これらについては、その行為以外に結果を回避する方法がなかったのかや、どの程度までが許される行為だったのかなどの要件を満たすことが必要となる。

 しかし、今回の事件は、これらの3点には当てはまらず、公判での争点にもなっていない。

 情報収集という観点からみると、沖縄返還をめぐる日米の密約文書を毎日新聞記者が外務省職員から手に入れた機密漏洩(ろうえい)事件で、最高裁は「(情報収集の)手段・手法が相当なものとして社会観念上認められる限りは違法性を欠き正当な業務」と指摘した上で、この記者に有罪判決を言い渡した。

 また、警察や検察といった捜査当局が違法な取り調べで取られた自白や盗聴など、証拠収集に違法性があった際は証拠能力が否定され、そうした証拠から有罪が導かれることはない。

 つまり、違法行為が正当化されるハードルは高いということだ。

 ■「正当性なく限度逸脱」

 今回の裁判の争点は(1)鯨肉を不法に自分のものにする(不法領得)意思はあったのか(2)正当行為として認められるのか(3)表現の自由として認められるのか−という点だ。それでは、青森地裁の小川賢司裁判長はどのような判断を下したのか。

 小川裁判長は2人が箱を開けて肉を取り出したことについて「所有者でなければできない利用・処分」と指摘、不法領得の意思があったとしてその犯意を認定した。

 行為の正当性については「捜索・押収に類する行為で他人の財産権や管理権を侵害することは法と社会が許さない」と判断。「公益目的であっても、調査活動として認められる限度を逸脱したものであり、強い非難を免れず、刑事責任は軽視できない」と断じている。

 表現の自由に対しても「他者の権利や公の秩序、道徳の保護のため一定の制限が課せられる」として、GPJ側の主張を否定した。

 これらの判断は、外務省機密漏洩事件の最高裁判決の判断に沿ったものと考えられる。

GPJが今回の事件の目的としていた船員による横領行為についても、判決は触れている。判決では、GPJが業務上横領容疑で告発したものの、船員らを不起訴処分とした東京地検などの判断に沿って「鯨肉は不正に入手した物とは断定できない」と指摘している。一方で、「鯨肉の扱いに一部不明朗な部分があったことも確かだ」として、含みを持たせた。

 ■「他の方法検討すべき」 

 ある検察幹部は今回の判決を「当然の結果。今後も違法行為があれば厳しく対応していく」と話す。

 元東京高裁裁判長の村上光鵄(こうし)弁護士は「何を言おうと、違法行為は違法行為として処罰を受けなくてはならない。でなければ、目的のためなら何をしても良いということになり、世の中の秩序は崩れる。裁判所は法律や過去の判例に従い冷静な判断を示したのではないか」と指摘する。

 その上で、村上弁護士は「違法行為の内容によっては、GPJ側が言う目的を考慮して、罰金刑など量刑を軽くする判断もあると考えられる。ただ今回の行為は、運送会社に忍び込み、物を持ち出すという極めて悪質な行為だ」と被告の姿勢を批判。「不正を告発する方法はほかにいくらでもある。ましてやGPJは世の中に広く知られた団体。安易な手法に頼るべきではない」と指摘している。

 GPJ側は、判決後に即日控訴。判決翌日には記者会見を開き、「市民の『不正を暴く権利』が十分に尊重されていない」として、改めて争う方針を示しており、高裁の判断が注目される。

・9月8日(水)   昨日の毎日新聞インターネットニュースより。

 http://mainichi.jp/select/jiken/news/20100907ddm041040096000c.html 

   鯨肉窃盗:環境団体2人に有罪 告発目的、正当性認めず−−青森地裁        毎日新聞 2010年9月7日 東京朝刊

 調査捕鯨船の船員が自宅に送った鯨肉を運送会社から盗んだとして、窃盗罪などに問われた国際環境保護団体「グリーンピース・ジャパン」(GPJ)メンバー2人に対し青森地裁は6日、いずれも懲役1年、執行猶予3年(求刑・懲役1年6月)を言い渡した。

 弁護側は「船員らの鯨肉横領を告発する正当な行為」と無罪を主張したが、小川賢司裁判長は「許容限度を逸脱している」と退けた。2人は判決を不服として即日控訴した。

 小川裁判長は「(GPJの)調査が公益目的で正当なものであったとしても、他人の財産権や管理権を侵害することは法と社会が許さない」と述べた。また被告らの告発によって「調査捕鯨で一部不明朗な点があった鯨肉の取り扱いが見直された」としながらも、メンバーが盗んだ鯨肉は「(船員が)不正に入手したものと断定できない」とした。

 判決によると、GPJメンバーの佐藤潤一(33)、鈴木徹(43)両被告は08年4月16日、運送会社の青森支店(青森市)に侵入し、船員が自宅に送った段ボール箱入りの鯨肉約23・1キロ(5万8905円相当)を盗んだ。【鈴木久美、三股智子】

 ■ことば

 ◇鯨肉窃盗事件

 08年4月、GPJメンバーが青森市の運送会社支店に侵入し、調査捕鯨船の船員が発送した鯨肉入り段ボール箱を持ち出した。1カ月後、GPJは「鯨肉は横領されたもの」と主張し船員12人を業務上横領の疑いで東京地検に告発したが、不起訴(容疑なし)になった。運送会社の被害届を受け、青森県警などは、メンバー2人を建造物侵入と窃盗の疑いで逮捕した。  

 

・9月7日(火)   産経新聞インターネットニュースより。(ただし第3段落はネットにはなく、紙の産経新聞の記事に載ったものである。)

 捕鯨反対も 「反日ではない」 「ザ・コーヴ」 出演の米活動家  2010.9.7 12:03

 日本のイルカ漁を批判的に描いた米映画「ザ・コーヴ」に出演したイルカ保護活動家、リック・オバリーさんが6日、東京都内の日本外国特派員協会で会見し、日本でのイルカ漁の中止に向けて「漁業者らと話し合っていきたい」と述べた。

 会見で、オバリーさんは「自分は反日ではない」と強調。日本の捕鯨活動に反対して、調査捕鯨船の妨害活動を行っている団体「シー・シェパード」との連携についても「逆効果だ」と否定した。

   さらに、イルカ漁をしている南太平洋ソロモン諸島で、自らが所属するNGO「アース・アイランド研究所」と同諸島の一部地域が、経済的支援を条件に領の中止で合意したことに言及。「水銀が多く含まれ有害なイルカの肉を取らなくても(生活の)選択肢はある。和歌山県太地町と協力していきたい」と呼び掛けた。

            *       * 

   同じくこの日の産経新聞インターネットニュースより。 捕鯨とは直接関係ないけど、水産物戦争は鯨だけじゃないということで。

 http://sankei.jp.msn.com/world/europe/100907/erp1009071201008-n1.htm?utm_source=MSN産経&utm_medium=MSN産経&utm_term=MSN産経 

 アイスランドvs英国、タラ戦争の次は“サバ戦争”勃発?  2010.9.7 11:58

 欧州の大西洋北東海域のサバ漁をめぐり、アイスランドとデンマーク領フェロー諸島が一方的に漁獲枠を大幅拡大。これに対し英国やノルウェーなど周辺国が猛反発し、欧州連合(EU)を巻き込んで対立が激化している。1950〜70年代のタラ漁をめぐるアイスランドと英国の紛争の再現ともいえる「サバ戦争」に発展しかねない状況だ。

 英メディアによると、アイスランドは「豊漁」などを理由に、今年の漁獲枠を6・5倍の13万トンに拡大。フェロー諸島も3・4倍の8万5千トンとし、国際海洋探査委員会が推奨する漁獲枠を全体で35%上回る見通しとなり、周辺国で「資源枯渇」への懸念が一気に高まった。

 ノルウェーは国内の加工業者に、アイスランドとフェロー諸島からのサバ買い取り禁止を要請。スコットランドの漁師は、フェロー諸島の漁船の荷揚げを妨害する実力行使に出た。

 EU欧州委員会は「来年の漁獲枠交渉に応じない可能性もある」と警告するが、金融危機の直撃を受けたアイスランドにとって漁業は貴重な外貨の獲得手段。フェロー諸島も輸出の95%以上を漁業に頼っており、今のところ「当然の権利」(アイスランドの漁業団体)と徹底抗戦の構えだ。(共同)

 

・9月4日(土)   昨日の毎日新聞インターネットニュースより。

 http://mainichi.jp/select/world/news/20100903ddm041040080000c.html 

 イルカ漁: 映画「ザ・コーヴ」出演者、漁中止働きかけ 米大使館に要望    毎日新聞 2010年9月3日 東京朝刊

 「ザ・コーヴ」に出演したイルカ保護活動家のリック・オバリーさん(70)が2日、東京都港区の米大使館を訪れ、イルカ漁の中止を日本政府に働きかけるよう要望した。

 オバリーさんによると、インターネットで151の国と地域からイルカ漁中止を求める署名約170万人分を集めた。警察官が警備する中、オバリーさんは署名の目録をブルース・ハワード参事官に手渡した。  

 

・9月3日(金)   やや遅れたが、8月22日の産経新聞インターネットニュースより。

 http://sankei.jp.msn.com/entertainments/entertainers/100822/tnr1008220854003-n1.htm 

 【集う】 「ザ・コーヴ」 はドキュメンタリーか? (8月4日、東京都渋谷区のイメージ・フォーラム)       2010.8.22 08:53

 「描き方に文化の差異が表れる」

 和歌山県太地町のイルカ漁を批判的に追った米ドキュメンタリー映画「ザ・コーヴ」(ルイ・シホヨス監督)が7月3日に日本で公開されて1カ月以上がたった。内容の公正さをめぐる抗議行動のため上映を中止する映画館もあった問題作だが、騒動も沈静化し、改めてこの映画について冷静に検証しようという動きが出始めている。

 この映画が提起した問題点は、イルカ漁の賛否だけでなく、その描き方にもある。トークショーのサブテーマは「ドキュメンタリーと劇映画の境界線」。映像研究者の村山匡一郎(きょういちろう)さんは「ドキュメンタリーの描き方に文化の差異が表れる。『ザ・コーヴ』は、情報をちりばめて観客を飽きさせないようにしながらクライマックスに導く、典型的なアメリカ製記録映画だ」と指摘した。

 一方、ドキュメンタリー「あんにょんキムチ」などで知られる映画監督の松江哲明さんは「この映画は作品の出来より話題作りが目的。日本での騒動は万々歳だったのでは」と語った。

 村山さんは「全体的にそんなに面白くなかった。自分たちのやりたいことができていないと感じた」とも述べ、ドキュメンタリーが目的通り撮れなかったときの対応を3つ挙げた。

 「撮れないときの状況の情報発信をする。『ザ・コーヴ』はこれにあたる。2つ目はなぜ撮れないかをドキュメントすることで、実はこれが一番面白い。そして、3つ目は“撮らない勇気”です」

 さらに「監督がカメラの背後で自問自答しながら撮っていくと思ったら、監督自身も被写体になっている。映画がだれの視点で語られているのかがあいまいだ」と苦言を呈すると、松江さんも「撮る側と撮られる側の関係性がこの映画では見えにくい」と指摘。「映像が作り手を裏切らないと面白くない」という村山さんの言葉に、大きくうなずいていた。(伊藤徳裕)

・9月2日(木)    産経新聞インターネットニュースより。

 http://sankei.jp.msn.com/culture/academic/100902/acd1009021127004-n1.htm

  「ザ・コーヴ」 受賞後は抗議なし…伝統漁解禁でイルカ20頭捕獲 太地町    2010.9.2 11:24

国内捕鯨の発祥地、和歌山県太地町で伝統漁法「追い込み漁」が解禁され、2日、今シーズン初めてバンドウイルカ約20頭が捕獲された。漁を隠し撮りし批判的に描いた米映画「ザ・コーヴ」が米アカデミー賞で長編ドキュメンタリー賞を受賞して反響を呼んだが、この日は反捕鯨団体などによる抗議活動はみられず、混乱はなかった。

 午前5時半ごろ港を出た漁船6隻は、同町沖約25キロの熊野灘で群れを発見。鉄パイプをたたくなどして誘導し、バンドウイルカを畠尻(はたけじり)湾に追い込み、仕掛けた大網で取り囲んだ。

 追い込み漁は国際捕鯨委員会(IWC)の規制対象外で、国の指導で県が許可している。シーズンは9月1日から始まり、イルカ類が2月末、クジラ類が4月末まで。合わせて計約2200頭の捕獲が認められている。太地町漁協は「イルカは水族館などから購入の予約がある分だけ捕獲し、残りは海へ返す」と話している。

・8月30日(月)    毎日新聞インターネットニュースより。

 http://mainichi.jp/select/jiken/news/20100830ddm012040004000c.html 

 鯨肉窃盗: NGO調査活動、正当性どこまで 裁判、来月6日判決

 調査捕鯨船での鯨肉横領疑惑を調べていた国際環境保護団体「グリーンピース・ジャパン」(東京都新宿区)のメンバー2人が「証拠品」となる鯨肉を確保して告発したところ、逆に窃盗などの罪で起訴された裁判の判決が9月6日、青森地裁(小川賢司裁判長)で言い渡される。被告側はNGO(非政府組織)の調査活動もジャーナリストの取材活動と同様の保護を受けるべきだとして無罪を主張している。表現の自由の観点から裁判までの経緯、論点を整理した。【臺宏士、内藤陽】

 ■無断で「証拠品」確保

 「船員が大量の高級鯨肉を勝手に持ち出し、一部を売りさばいている」−−調査捕鯨に反対しているグリーンピース・ジャパン(GP)にこんな情報が届いたのは08年1月。通報したのは民間会社・共同船舶(東京都中央区)所有の捕鯨船「日新丸」の50歳代の元船員男性だった。調査捕鯨は財団法人・日本鯨類研究所(鯨研、理事長=森本稔・元水産庁次長)が同社に委託している。問題の鯨肉は西濃運輸の宅配便で自宅や飲食店などの関係者に送られているという。

 元船員は毎日新聞の取材に応じ、乗船時に撮影した写真を示しながら、「捕獲した鯨が多すぎたために処理しきれず廃棄していた。捕鯨の是非の立場は違うがグリーンピースなら社会問題化してくれると思った」と明かした。

 GPは同年4月15日、東京港に帰港した日新丸から降ろされる船員の私物の入った段ボールの荷物を追跡。西濃運輸青森支店の配送所で、疑いのある荷物を無断で持ち帰った。配送伝票には「ダンボール」とあったが、不自然に重かったという。箱の中には、鯨ベーコンの原料となるウネスと呼ばれる高級鯨肉が計10本(約23キロ)入っていた。GPは「横領の証拠品」として5月15日に東京都内で記者会見を開くとともに、鯨肉の解体・加工に従事する船員12人を業務上横領の疑いで東京地検に告発した。

 ところが、西濃運輸の被害届を受けた青森県警は6月20日、荷物を確保したGPメンバー、佐藤潤一(33)、鈴木徹(43)の2容疑者を窃盗と建造物侵入の疑いで逮捕した。同日、東京地検は当該鯨肉は共同船舶が鯨研から買い取った土産と判断、不起訴(容疑なし)とした。東京第1検察審査会も今年4月22日付で不起訴相当と議決した。

 2人は起訴され、青森地検は6月、懲役1年6月を求刑。弁護側は「船員らの鯨肉横領を告発するための正当な行為」と無罪を主張している。

 ■表現の自由、解釈基準は

 裁判で最大の焦点は、違法な手段で情報収集する行為が、公共の利益を図る目的であれば正当化(違法性の阻却)され、それがNGOの調査活動にも認められるかどうかだ。裁判所が報道機関などの取材行為によって損なわれる利益と社会が得られる利益を比較して判断するのは珍しくない。

 例えば、沖縄返還(72年)に伴って本来は米国が負担すべき旧軍用地の原状回復補償費を日本が肩代わりすることを示した機密電文を外務省の女性事務官から入手した西山太吉・元毎日新聞記者が国家公務員法違反(そそのかし)の罪に問われた裁判。最高裁は78年、記者側の上告を棄却(有罪が確定)したが、その際「手段・方法が社会観念上是認されるものである限りは、正当な業務行為だ」と指摘し、情報提供者側にも同様の考えを示した。また、奈良県田原本町の母子3人放火殺人事件を取り上げた本の出版問題で、奈良地検は07年11月、放火した長男の供述調書を著者に渡した医師を秘密漏示罪で起訴した。著者の自宅なども強制捜査したが、最終的には逮捕もないまま容疑不十分で不起訴処分にしている。

 さらに、内部告発を巡る裁判では、正当行為と認めて違法性を退ける判決も出始めている。取引先への不正請求の内部文書を複写して内部告発した従業員の行為について、東京地裁は「形式的には違法とされる可能性のある行為であるとしても、真実であることを示すために必要な行為。正当行為として違法性は阻却される」と判示(07年)している。

 一方、2人の逮捕を巡っては、国連人権理事会の「恣意(しい)的拘禁に関する作業グループ」が09年9月、「国際人権規約に違反する」との意見書を採択し、日本政府に国際基準にかなう手続きを求めた。

 公判では、ベルギー・ヘント大学のデレク・フォルホーフ教授(国際人権法)は被告側証人として、今年3月に青森地裁で「裁判所は、表現の自由を保障する自由権規約と刑法に矛盾がある場合は規約を優先すべきだ」と証言した。公判後、毎日新聞の取材に応じ、「欧州人権裁判所は、公共の利益に関する活動をしているNGOには報道機関と同様の権利が保障されるべきだとしており、守秘義務違反や文書持ち出しといった軽微な犯罪であれば許容している。2人の行為は公共の利益に寄与するものであり、青森地裁はこうした国際的な水準に照らして判断すべきだ」と指摘した。

 東京、徳島地裁などでは自由権規約の解釈に当たり、欧州人権裁判所の判例を解釈基準として肯定する判断も出始めている。

 これに対し、青森地検は6月の論告で「自由権規約で保障されるのは『情報及び考え』であり、運送会社に侵入したうえ、荷物を窃取する行為は保障されていない」と反論した。

  「土産代不透明」「DNA鑑定と矛盾」公判で証言、二転三転−−調査捕鯨実態

 裁判では、調査捕鯨を巡るさまざまな事実が明らかになっている。

 そもそも船員に渡される「土産」とは何なのか。水産庁は当初、GPの照会に「ない」と回答。共同船舶もメディアの取材に存在を否定した。その後、水産庁は「無償の土産はないという趣旨」と説明、同社は公判で「土産品という言葉の認識はなく、現物支給品はあった」と弁明した。同庁や共同船舶によると、土産代は同社が「現物支給品代」として負担してきたという。その分量と価格は明らかにされてなかったが、GPの告発を機に公表を始めた。金額は800万〜900万円という。また、土産代金の決済は鯨研への用船代からの差し引きなどとして行われていた。同社は「文書で残していなかったため不透明な部分もあった」と認める。このため、告発以降は透明性を高めた決済方式に改めたという。

 一方、公判では、GPが「横領の証拠品」とする鯨肉の持ち主の不自然な証言が目立った。土産として配布された鯨肉ウネスは1人2本。持ち主は自分の分とは別に同僚から譲り受けた計5本分を宅配に出した。宅配の箱には10本入っており、「半分にした」と証言。ところが、青森県警が鯨研にDNA鑑定を依頼したところ、5本を半分に切り分けたのなら同じ個体は偶数でなければならないが、結果は7本と3本が同じ個体だった。証言と明らかに食い違った。

 また、ウネスの入手先の人数について持ち主は捜査段階から「1人↓2人↓4人」と二転三転。公判では「1本あげた」と述べた船員の証言に、「もらっていない」と否定。最終的には「3人」になった。さらに、別の元船員が「過去に、段ボールやビニール、塩を用意し、勝手に持ち出したウネスを塩蔵している船員を見た」と証言しているが、持ち主は乗船時に分厚いビニール袋と塩5キロを持ち込んだと認めたものの、塩は「食事用」とした。

 告発した元船員は、毎日新聞の取材に対し「日新丸の船員仲間が『告発以降は横流しはなくなった』と話していた」と述べている。

 毎日新聞 2010830日 東京朝刊

・8月26日(木)  毎日新聞インターネットニュースより。

 http://mainichi.jp/area/yamaguchi/news/20100826ddlk35020422000c.html 

 鯨類持続的利用会合:下関で11月開催へ IWC加盟・約40カ国が参加 /山口

 国際捕鯨委員会(IWC)加盟の捕鯨支持国が集まる「鯨類の持続的利用に関する会合」が11月9〜10日、下関市で開かれることになった。中尾友昭市長は25日会見し「鯨の町日本一を国内外にアピールする機会だ」と期待を寄せた。

 会合は水産庁が主催。6月にモロッコのアガティールであったIWC年次総会が「捕鯨支持」対「反捕鯨」の対立で混乱に陥ったのを受け、商業捕鯨再開を目指して捕鯨支持国と意見交換する。

 市によると、参加は支持国約40カ国の実務担当者や日本政府関係、国内の研究者など約60人の見込み。市長主催のレセプションでは中尾市長が「何かパフォーマンスでもできれば」と意気込む。鯨肉の消費拡大などを呼びかける市民向けシンポジウムも予定している。【取違剛】

・8月14日(土)   産経新聞インターネットニュースより。

  http://sankei.jp.msn.com/affairs/trial/100814/trl1008141201000-n1.htm 

 【衝撃事件の核心】 法廷で流したあの涙は一体… SS元船長の“変心”と“戦術”   2010.8.14 12:00

 「私はシー・シェパードの戦いを信じる」−。先月12日、ニュージーランドで飛び出したのは意外な言葉だった。環境保護を標榜(ひょうぼう)する米団体「シー・シェパード(SS)」のピーター・ジェームス・ベスーン元船長(45)=ニュージーランド国籍=の会見が開かれたのは、日本の調査捕鯨への妨害行為で傷害罪などに問われ、執行猶予付きの判決を得たわずか5日後。「日本人に敵意は持っていません」と涙ながらに語った法廷での姿とは、あまりにも対照的だった。あの涙は、SSの法廷戦術だったのか、それとも…。(滝口亜希)

 ■ SSのオリジナルトレーナーで会見 裁判への不満ぶちまける

 「日本は調査捕鯨で1万頭以上のクジラを殺し、収入を生み出している。これは商業捕鯨と呼ぶ以外なく、ばかげている」

 自身の地元、オークランドのホテルで開かれた会見に出席したベスーン元船長は冒頭、声明文を読み上げて、日本が南極海で行っている調査捕鯨を痛烈に批判した。

 ベスーン元船長はSSの黒いオリジナルトレーナー姿。傍らには、日本の調査捕鯨船団の監視船「第2昭南丸」と衝突し、大破した抗議船「アディ・ギル」号に、かつてベスーン元船長とともに乗船していたSSのオランダ人メンバーも同席するなど、“SS色”が全面的に押し出された会見だった。

 ベスーン元船長は2月11日、南極海で第2昭南丸に酪酸入りのガラス瓶を放って乗組員1人にけがをさせた上、同月15日には、防護用ネットをナイフで切って第2昭南丸船内に不法侵入したとして、傷害や艦船侵入など5つの罪に問われた。東京地裁は先月7日、懲役2年の求刑に対し、懲役2年、執行猶予5年の判決を言い渡した。

「人を傷つける意図はなかった」と否認した傷害以外は全面的に起訴内容を認め、念願の執行猶予を勝ち取った形のベスーン元船長。航海と逮捕、裁判を経て約8カ月ぶりとなった帰郷に、オークランド空港で知人を見つけると、歓喜の声をあげた。

 しかし、その後に続いた言葉は「自分がしたことを後悔していない」というものだった。

 「アディ・ギル号が大破した責任は日本側にある。しかし、第2昭南丸の船長は罪に問われず、裁判にすら出廷しなかった。自分だけが裁判を受けたのは間違いだった」

 「日本は自分に都合の良いときだけ、法律にのっとっていると主張する」

 ベスーン元船長は会見で、日本の裁判への不満をぶちまけた。

 ■ テレビ出演にエミー賞ノミネート… SSの“広告塔”に

地元メディアや外国の通信社、日本の報道機関はこぞって、ベスーン元船長の“変心”を伝えた。各メディアがこう判断した背景には、SSの動きもある。

 SSは東京地裁での公判中に、ベスーン元船長がアディ・ギル号に弓矢を持ち込んだことが同団体の「攻撃的だが非暴力的な行動」という方針に反するとして、元船長を「除名」処分とする声明を発表。しかし、判決が出ると一転し、「日本での刑を軽くするための法廷戦術だった」として、あっさり処分を撤回したのだ。

 実際、ベスーン元船長自身も、公判では「今後、南極海に行くことはない」とSSの活動からの引退ともとれる発言をする一方、帰国後の取材には「日本の裁判で、南極海に行くかどうかについては、何の法的な誓いも立てていない」とも話していた。

 また、ベスーン元船長はその後も、SSのオリジナルトレーナーを着て地元テレビ局の情報番組などに出演している。

 米有料チャンネル「アニマルプラネット」がSS特集番組「Whale Wars(クジラ戦争)」で、アディ・ギル号と第2昭南丸が衝突した際のベスーン元船長の様子を紹介すると、高視聴率を記録。同番組も、優秀なテレビ番組に与えられるエミー賞にノミネートされるなど、ベスーン元船長はいまやSSの“広告塔”のような役割を果たしている。

 ■ 「日本人は尊敬できる人」 たどたどしい日本語で

 しかし、ベスーン元船長が日本の法廷で見せていたのは全く違った姿だった。

 「私が日本の皆さんに理解していただきたいことを述べたいと思います」

 今年6月、東京地裁で4日間の審理を終えたベスーン元船長は、最後に裁判長から意見陳述を促され、たどたどしい日本語で話し始めた。ベスーン元船長の手元にあったのは、自筆の紙。弁護人によると、ベスーン元船長自身が「自分の言葉で日本の人たちに伝えたい」と希望。日本語の発音と英語を書き込み、最終陳述に臨んだという。

 「私が抗議活動に参加した理由ですが、日本の違法な捕鯨活動に抗議しようとしたのであり、乗組員にけがをさせようとする意図はありませんでした」

 「私は、日本には日本の、ニュージーランドにはニュージーランドの法律があり、捕鯨に対する考えが違うのも理解しています」

 自然保護に対する自分の考え方を述べたベスーン元船長。約10分間に及んだ陳述の最後では、日本人への思いにも触れた。

 「捕鯨活動をする人には敵意を持っていましたが、それが間違っているのに気づきました。今では、日本人は寛容で思いやりがあり、世界でもっとも尊敬できる人だと思っています」

 ベスーン元船長は時折、涙ぐみながら「ご迷惑をおかけした人には申し訳ない気持ちです」とも話した。

 約1カ月後の7月7日、執行猶予付きの判決を言い渡されると、ほっとした表情を見せ、弁護人に「判決の内容を妻に伝えて」「早く帰って家族と友達に会いたい」などと書いた紙を渡したという。

 ■ 弁護人も驚き 「SS代表が利用」との声も

 では、ベスーン元船長が法廷で流した涙は、本当に戦術だったのか。

 東京地裁での公判を担当した代理人の弁護士は、ベスーン元船長の帰国後の発言について、「報道を見たとき、彼の真意が正確に伝わっているのか、と思ったのが第一印象だった」と驚きを伝える。

 その一方で、この弁護士は「彼の英語は非常になまりが強く、法廷通訳も誤訳しかけたほど。私たちも言葉の壁があり、彼の真意をすべて聞き取れたかといわれれば自信はないが、帰国後の報道についても必ずしも正確に伝えられているといえるのだろうか」と、海外メディアの報じ方に疑問を呈した。

 また、ベスーン元船長の人柄については「日本風の言い方をすれば、彼は一本気な人。異国の慣れない環境で、計算高いことをできる人ではないと思う。少なくとも、法廷で語った言葉は彼の本心だと感じた」と振り返った。

 SS問題に詳しいジャーナリストは、「ベスーン元船長自身は、日本でもニュージーランドでも常に同じことを発言している。ただ、もともと、捕鯨には良い感情を持っていない地元メディアが報じたことで、日本とは違う部分がクローズアップされたのではないか」と分析。その上で、「正直な人物だからこそ、SSのポール・ワトソン代表に都合のいいように扱われている」とも指摘する。

 SSは早くも今年11月から、反捕鯨キャンペーンを再開することを表明。SSの広告塔となるのか、家族との平穏な暮らしに戻るのか。ベスーン元船長の真意が問われる日は近い。

 

8月3日(火)     映画 『ザ・コーヴ』 について2件。

  本日の新潟日報紙に、映画 『ザ・コーヴ』 についての当サイト製作者 (三浦淳) の論考が載りました。 こちらからご覧いただけます。  

      *     *

   毎日新聞インターネットニュースより。

 http://mainichi.jp/chubu/news/20100802ddh041040002000c.html 

 映画: 「ザ・コーヴ」 14日から名古屋シネマテークで上映 「鯨捕りの海」 併映

 ◇捕鯨ドキュメント「鯨捕りの海」

 和歌山県太地町のイルカ漁を批判的に描き、表現の自由をめぐって議論にもなっている 「ザ・コーヴ」 が、14日から名古屋シネマテーク (名古屋市千種区今池) で公開される。 同館は幅広い視点で捕鯨や海洋環境の問題を考えてもらおうと捕鯨のドキュメンタリー 「鯨捕りの海」(98年) も同時に上映、平野勇治支配人は 「二つの作品を見比べることで、何か発見があるのではないか」 と話している。

 「ザ・コーヴ」はアカデミー賞の長編ドキュメンタリー賞を受賞したが、「反日的」と訴える一部の抗議活動を受け、上映を取りやめる映画館も出ている。太地町の漁協関係者が、本人の承諾なしに撮影されていた手法についても論争となり、日本で公開される映像は、画像処理が施されている。

 平野支配人は、漁師の顔が見える作品も取り上げて比較してもらおうと、以前に上映したことがある 「鯨捕りの海」(梅川俊明監督) を選定。 この映画は、千葉県など日本沿岸の小型クジラを追う漁の記録を中心に調査捕鯨や、ノルウェーのクジラ漁についても描かれている。名古屋シネマテークは、両作品を交互に上映する予定。 東海3県で 「ザ・コーヴ」 を上映する映画館は同館だけ。 【福島祥】

 毎日新聞 201082日 中部夕刊

・7月25日(日)    毎日新聞インターネットニュースより。

 シンポジウム: 映画 「ザ・コーヴ」、「描き方、一面的」−−京都シネマ /京都

 和歌山県太地町のイルカ漁を描き、米アカデミー賞を受賞したドキュメンタリー映画「ザ・コーヴ」のシンポジウムが22日夜、京都市下京区であり、4人のパネリストから「問題提起としては上映が必要だが、盗撮や一面的な描き方などの手法は問題だ」という批判的な意見が相次いだ。

 シンポジウムはコーヴを上映している京都シネマ (同区) が主催し、約60人が参加した。 立命館大産業社会学部の奥村信幸准教授 (ジャーナリズム) は 「(映画の) 製作者が自身を英雄のように扱っているのに違和感がある。 地元の人と関係を持とうとしない態度も問題だ」 と批判。 生駒誠助監督も 「米国人には 『日本人は陰でこそこそやっている』 というイメージがあり、映画を見て 『やっぱり』 と再確認する。 アカデミー賞の底の浅さが現れ残念だ」 と話した。

 環境問題に詳しい京都精華大人文学部の細川弘明教授は 「イルカ漁は日本の伝統」 との反論について、「映画で描かれた、入り江に追い込んで商業用の優秀なイルカを選別、残りを殺す手法は伝統的な漁ではない」 と問題提起した。

 同県串本町出身の男性は 「太地町は紀伊半島の南端にあり (他に産業がなく) イルカビジネスで生きている。 映画は一面的で高慢だと感じた」 と話した。【熊谷豪】

  毎日新聞 2010724日 地方版

 

・7月24日(土)   関口雄祐 『イルカを食べちゃダメですか? 科学者の追い込み漁体験記』(光文社新書) が発売になりました。 内容についてはこちらで。

・7月16日(金)   産経新聞インターネットニュースより。

  http://sankei.jp.msn.com/world/europe/100715/erp1007150322000-n1.htm

 【外信コラム】 ロンドンの甃 捕鯨交渉の情報戦  2010.7.15 03:22

 国際会議の交渉はまさに情報戦だ。6月下旬にモロッコで開かれた国際捕鯨委員会(IWC)年次総会を前に、英紙は恒例行事のように日本へのネガティブ・キャンペーンを展開した。

 英日曜紙サンデー・タイムズは商業捕鯨の一時停止(モラトリアム) 解除を狙って日本がIWCに加盟するグレナダ、マーシャル諸島など6カ国を買収していると報じた。 滞在費の負担にとどまらず、“女性の手配”までしているという衝撃的な内容だった。 英BBC放送も 「日本が捕鯨への支持を得るため政府開発援助を利用している」 という内部告発者の証言を伝えた。

 グレナダ、マーシャル諸島を含む島嶼(とうしょ)国グループは 「サンデー・タイムズの記者は、欧州連合(EU)のために働くスイスの慈善活動家と身分を偽っていた。 書く記事の内容も同じように不正確と推察される」 と批判。 「同紙の報道はクジラの持続的利用を認める歴史的な機会を妨害するために仕組まれたものだ」 と切り捨てた。

 日本は沿岸商業捕鯨の再開を勝ち取るため、南極海での調査捕鯨枠を現在の約900頭から200頭に減らす構えで交渉に臨んだ。オーストラリアなど強硬な反捕鯨国はしかし、南極海での捕鯨禁止という非妥協的な体質をむき出しにした。

 環境NGO(非政府組織)、メディアと一体化した反捕鯨国の攻勢はすさまじい。日本は漁業国と組んで、海洋資源の持続的利用の大切さをもっと世界に発信する必要があるだろう。 (木村正人)

・7月13日(火)   産経新聞インターネットニュースより。

 http://sankei.jp.msn.com/world/asia/100712/asi1007122239003-n1.htm 

 日本の司法制度を批判 強制送還の抗議船元船長   2010.7.12 22:38

 反捕鯨団体 「シー・シェパード」 メンバーとして傷害罪などに問われ、執行猶予付きの有罪判決を受けニュージーランドに強制送還された抗議船のピーター・ベスーン元船長(45)が12日、同国オークランドで記者会見し、「私を裁く一方、抗議船に衝突し、沈没させた日本の捕鯨船の船長を裁かないのは間違っている」 と述べ、日本の司法制度を批判した。

 元船長は、「日本は自分に都合の良い時だけ、法律にのっとっていると主張する」 と語った。

 ニュージーランド政府にも矛先を向け、「マカリー外相は日本に手なずけられた犬」「東京のニュージーランド外交官は支援してくれなかった」 と述べた。

 キー首相はこれに対し、元船長は自ら日本行きを望んで捕鯨船に乗り込んだとし、「ニュージーランド政府への感謝の念がない」 と批判した。(共同)

・7月11日(日)   産経新聞インターネットニュースより。

 http://sankei.jp.msn.com/world/asia/100710/asi1007101152000-n1.htm 

 ベスーン元船長「調査捕鯨妨害を継続」 裁判終え一転表明   2010.7.10 11:36

【シンガポール支局】 フランス通信(AFP)によると、環境保護を標榜(ひようぼう)する米団体「シー・シェパード(SS)」による調査捕鯨妨害事件で東京地裁の執行猶予付きの有罪判決を受け、強制退去処分となったSS抗議船のピーター・ベスーン元船長(45)が10日、母国ニュージーランドに帰国、今後も反捕鯨活動を継続する考えを明らかにした。

 公判でベスーン元船長は、南極海での妨害活動に参加しない意思を表明、それが執行猶予の理由の一つとなった。しかし、この日は記者団に「日本の捕鯨をやめさせるのをあきらめることはない」などと強調。再び抗議船に乗り込むかどうかは明言しなかったものの、「次に何をするか、何人かと話をしなくてはならない」と述べ、SS幹部らと今後の活動について話し合う姿勢を示した。

 妨害活動に参加しないとのベスーン元船長の発言についてSS代表のポール・ワトソン容疑者(59)=国際指名手配中=は、公判後、「単なる法廷戦術だ」と述べていた。

・7月9日(金)   産経新聞インターネットニュースより。

http://sankei.jp.msn.com/world/asia/100708/asi1007081245003-n1.htm?utm_source=MSN%E7%94%A3%E7%B5%8C&utm_medium=MSN%E7%94%A3%E7%B5%8C&utm_term=MSN%E7%94%A3%E7%B5%8C 

 SS代表、ベスーン被告の「除名」撤回 「法廷戦術にすぎない。彼の復帰を歓迎する」   2010.7.8 12:41

 調査捕鯨妨害事件で懲役2年(執行猶予5年)の有罪判決を受けたニュージーランド人、ピーター・ベスーン被告(45)について、シー・シェパード(SS)代表のポール・ワトソン容疑者(59)=国際指名手配中=は、団体から追放したのは「法廷戦術にすぎなかった」とし、「将来、彼が戻ってくることを歓迎する」と述べた。

 ラジオ・ニュージーランドのインタビューに答えた。

 SSはベスーン被告の東京地裁での公判中、被告を「除名」したと発表、声明を出した。このなかで、ベスーン被告が船長を務めていた抗議船「アディ・ギル号」に弓矢を持ち込んだことが「攻撃的だが非暴力的な行動」との団体の方針に反すると指摘していた。また、日本での裁判への支援は続けるが、SSの正式メンバーではなく、今後の抗議活動にも参加させないとしていた。

 しかし、ベスーン被告の判決が出ると、ワトソン容疑者はこの方針をあっさりと撤回。「今シーズン、彼が(南極海での)活動に戻ってくるとは思わない。理由は、彼が(今回の裁判などについての)本を書いているからだ。そのことは良いことだ。将来、彼が戻ってくることを歓迎する」とコメントした。

 ベスーン被告は近く強制退去の見通しだが、除名撤回によって、ニュージーランドへ帰国後、SSの反捕鯨キャンペーンに何らかの形で加わる可能性も出てきた。

・7月8日(木)    本日の毎日新聞の記事より。

 http://mainichi.jp/select/jiken/news/20100708ddm041040095000c.html 

 調査捕鯨:シー・シェパード妨害問題 ベスーン元船長に有罪−−東京地裁判決

  ◇傷害罪も認定

 艦船侵入や傷害など5罪に問われた反捕鯨団体「シー・シェパード(SS)」の抗議船「アディ・ギル号」元船長、ピーター・ベスーン被告(45)=ニュージーランド国籍=に対し、東京地裁は7日、懲役2年、執行猶予5年(求刑・懲役2年)の有罪判決を言い渡した。多和田隆史裁判長は「主義主張のためには乗組員に危害を加えても構わないという独善的な発想に基づく行動」と批判した。

 弁護側は傷害罪について無罪を主張したが、多和田裁判長は「被告はけがをさせて構わないと考えていた」と認定、「重大なけがをさせる恐れがある危険極まりない行為だった」と退けた。

 そのうえで「SSは日本の調査捕鯨が違法であるとの主義主張に基づき暴力的な妨害行為を繰り返し、被告もその考えに同調して犯行に加担した」と指摘。「ほぼ罪を認め、今後は南極海での反捕鯨活動をしないと話している」と執行猶予の理由を説明した。

 判決によると、ベスーン被告は2月11日夜、南極海上で小型ボートから酪酸入りガラス瓶を調査捕鯨船団の監視船に向けて発射し、乗組員に1週間のやけどを負わせたほか、15日には防護ネットをナイフで破り船内に侵入し、傷害と威力業務妨害、銃刀法違反、器物損壊、艦船侵入罪で起訴された。

  ◇上訴権即日放棄、近く強制送還へ

 ベスーン被告は判決後に釈放されたが、在留資格がないため東京入国管理局に身柄を拘束された。近く強制送還されるという。

 「判決を妻に伝えてほしい。早く家族と友達に会いたい」。判決言い渡し中、ベスーン被告は長身を後ろにのけぞらせ、弁護人にB5判のノートを開いて見せた。英語で伝言が走り書きされていた。

 判決前には「どんな内容でも判決を受け入れる」と弁護人に伝え、言い渡しが終わると上訴権を即日放棄した。帰国後は自伝をまとめる意向という。 【伊藤直孝】

 毎日新聞 201078日 東京朝刊

 

・7月4日(日)  毎日新聞インターネットニュースより。

http://mainichi.jp/enta/cinema/news/20100704ddm041040057000c.html

 映画: 「コーヴ」 上映会場で小競り合い−−東京・渋谷、横浜          毎日新聞 2010年7月4日 東京朝刊

全国6館で3日始まった和歌山県太地町のイルカ漁を批判的に描いた米ドキュメンタリー映画 「ザ・コーヴ」(ルイ・シホヨス監督) の上映は、一部の映画館周辺で小競り合いなどがあったものの大きな混乱はなかった。

 東京都渋谷区の 「シアター・イメージフォーラム」 前では、民間団体メンバーが、正午ごろから拡声機などを使って上映中止を求めた。その際、「上映妨害はNG」 と書いた傘を掲げて上映を支持する人たちとの間で小競り合いがあった。

 また、横浜市中区の 「横浜ニューテアトル」 では、男性7人が入場を求め、スタッフらと押し問答になる一幕もあった。

 

・7月3日(土)   毎日新聞インターネットニュースより記事2つ。

  http://mainichi.jp/enta/photo/news/20100703k0000m040034000c.html 

 ザ・コーヴ: 上映阻止に抗議声明発表 日本映画監督協会   毎日新聞 2010年7月2日 19時47分(最終更新 7月3日 20時26分)

 日本映画監督協会(崔洋一理事長)は2日、ドキュメンタリー映画「ザ・コーヴ」(3日公開)の上映を阻止する活動が起こっていることについて、「上映阻止運動に断固抗議する」との声明を発表した。

 声明は 「『ザ・コーヴ』の内容について、疑問や事実誤認を指摘する声があることを認識している」 としながら、「それは本来製作者に対して向けられるべき」 と主張。 劇場などを威圧して上映中止に追い込むことはあってはならないと批判し、「このようなことが繰り返されれば、民主主義社会にとっての根幹である、思想信条表明の場が狭まり、結果的に表現の自由も失われる」 としている。

     *     *

 http://mainichi.jp/photo/archive/news/2010/07/03/20100703k0000e040046000c.html 

 ザ・コーヴ:上映始まる 警備厳戒、混乱なく    毎日新聞 2010年7月3日 11時30分(最終更新 7月3日 13時01分)

 和歌山県太地町のイルカ漁を批判的に描いた米ドキュメンタリー映画「ザ・コーヴ」(ルイ・シホヨス監督)の上映が3日始まった。この映画については、「反日的だ」として上映中止を求める民間団体の抗議活動による観客や近隣への迷惑を理由に、三つの映画館が上映を取りやめ、言論・表現の自由を巡って論議が起きている。

 当初は6月26日公開予定だった。3日は、青森県八戸市▽仙台市▽東京都渋谷区▽横浜市▽大阪市▽京都市の6映画館で上映開始。

 横浜市中区の「横浜ニューテアトル」では午前10時の上映開始前から警察官十数人が待機、ものものしい雰囲気での封切りとなったが、約50人が入場した。

 同館については、横浜地裁が6月24日付で民間団体に対し、近隣で拡声機などを使った抗議活動を禁じる仮処分決定を出しており、上映開始時点では、抗議活動を行う団体はなかった。一方、上映を支持する市民団体は「表現弾圧を許さない」と書かれたプラカードを掲げて支援した。

 映画を見た横浜市南区のカメラマン、高橋晃さん(57)は 「主張が一方的で、共感できない。内容的にも質が低いが、上映の機会を奪ってはいけないと思った」 と話した。また、横浜市港南区の無職男性(63)は 「イルカが高値で取引されていることなど、知らなかった事実が分かってよかった」 と語った。

 また、東京都渋谷区の 「シアター・イメージフォーラム」 周辺でも抗議活動を禁止する仮処分決定が出されているが、上映開始1時間前の正午から、民間団体のメンバーが約20分間、拡声機などを使った抗議活動を展開した。

 アンプラグドの加藤武史社長は 「内容については、公開前から賛否両論あったが、上映自体については、さまざまな方に支援をいただいた。公開が実現できたこと、上映を支えていただいた皆様に感謝しております」 とのコメントを出した。

 ザ・コーヴは3日上映開始の6館ほか、順次、全国18映画館での上映が決まっている。

 ◇視点や撮影手法 国内では賛否

 「ザ・コーヴ」 は、和歌山県太地町で行われている漁船と網を使って入り江に追い込むイルカ漁の実態を描いており、反イルカ漁の視点に貫かれている。米アカデミー賞長編ドキュメンタリー賞を受賞、海外では高い評価も受けている。しかし、日本国内では一方的な描き方だとする意見や撮影手法を問題視する声もあり、上映前から映画関係者や識者らによるシンポジウムなども開かれ、賛否が割れている。

 授業でこの問題を取り上げた大学もある。6月22日に早稲田大学(東京都新宿区)で開かれた授業には、出演している米国人保護活動家、リック・オバリーさん(70)も飛び入り参加した。学生からは 「イルカ漁に反対するのはなぜか」 「エスキモーは捕鯨をしているではないか」−−などの質問が相次いだ。

 オバリーさんは 「イルカには生死の認識があるほど知能が高い。今の太地町でのやり方は残酷だ。エスキモーはたんぱく源の一部として考えている。 太地町のイルカ漁とは違う。一考の余地はある」 などと答えた。

 撮影手法を巡る論議も盛んだ。大勢の同町漁協関係者が登場するが本人の承諾はなく、漁協側は、肖像権侵害を主張。日本での配給会社「アンプラグド」に上映中止を求めた結果、日本版はモザイク処理された。

 早稲田大の授業を担当したアジアプレス・インターナショナルの野中章弘代表は 「ドキュメンタリーは物事の本質を伝えるためにはいかなる手段・方法でも用いる」 と撮影手法などを擁護する。

 また、東京・霞が関で6月21日に開かれたシンポでも製作手法が取り上げられた。映画監督の崔洋一さんは 「プロパガンダ(宣伝)映画なので、事実検証の下で作られたとは言い難い」 と指摘。また、ジャーナリストの田原総一朗さんは 「面白い映画だ。よくできている」 と評価した。

 

・7月2日(金)    まず、産経新聞インターネットニュースより記事2つ。

 http://sankei.jp.msn.com/world/asia/100702/asi1007021258002-n1.htm 

 「経済的に日本の捕鯨船を沈める」 国際手配のSSワトソン容疑者    2010.7.2 12:53

 反捕鯨団体 「シー・シェパード」 による調査捕鯨船妨害事件で、海上保安庁が国際手配した同団体代表のポール・ワトソン容疑者が、1日放送された米CNNテレビの人気トーク番組に出演し 「経済的に(打撃を与えて)日本の捕鯨船を沈めるのが目的だ」 と述べ、抗議活動を続ける姿勢を強調した。

 ワトソン容疑者は、シー・シェパードが年間約520頭の鯨を守っていることで、日本の捕鯨船には多額の経済損失が生じていると指摘。「経済的に彼ら(日本の捕鯨船)を痛めつけるのが、捕鯨中止への最善の方法」とし、「彼らはわれわれを殺そうとしているが、われわれは彼らを負傷させていない」 と主張した。

 妨害事件で傷害などの罪に問われ、東京地裁で公判中のピーター・ベスーン被告については 「(団体の)ルールを破った」 と団体を除名した理由を説明する一方で、同被告を 「百パーセント支持する」 とも語った。(共同)

     *     *

 http://sankei.jp.msn.com/entertainments/entertainers/100702/tnr1007021625012-n1.htm 

 見る側の 「眼」 も試される  ドキュメンタリー映画 「ザ・コーヴ」    2010.7.2 16:22

 この映画の作り手はタフでしたたかだ。和歌山県太地町(たいじちょう)のイルカ漁を題材にして、物議をかもしているドキュメンタリー映画「ザ・コーヴ」(ルイ・シホヨス監督)は実際、どんな出来なのか。

 今年のアカデミー賞長編ドキュメンタリー賞受賞作は、日本のイルカ漁を批判的に描いている。撮影対象である太地町漁協の了解を得ないまま、一方的な視点で作っているため公平性に欠ける。隠し撮りという手法は撮られる側からすればたまったものではない。

 ただ、伝えたいことをいかに見せるかという技術に優れている。地元側の警戒網をかいくぐり、目的達成への熱意と工夫は一見の価値がある。目的とは、入り江(コーヴ)でのイルカ追い込み漁を撮影することだ。

 そのために撮影スタッフは、あらゆる準備をする。特殊造形技師の協力でHDカメラやマイクを隠すための岩を作る。水中カメラや聴音機をセットするため、フリーダイビング元世界女王の手も借りる。夜間に軍事レベルのサーモカメラで、警備する側の動きをとらえるなど非常に手が込んでいる。

 地元側からの“職務質問”に撮影スタッフが答える場面も映し、撮影過程そのものをスリリングに描くさまはしたたかだ。イルカ肉をクジラ肉として偽装販売しているという表現が出てくるが、太地町は「水産庁の調査によっても、そのような事実はない」と反論するなど、主張が食い違う部分が少なくない。この映画は見る側の 「眼」 を試す機会にもなる。

 東京・渋谷のシアター・イメージフォーラム、大阪・十三(じゅうそう)の第七藝術劇場などで7月3日、ほか順次公開。 (市川雄二SANKEI EXPRESS)

      *     *

 次に、同日の読売新聞インターネットニュースより。

 http://www.yomiuri.co.jp/entertainment/cinema/creview/20100702-OYT8T00439.htm 

 「ザ・コーヴ」(米)  誠実さ欠く隠し撮り

 カメラに撮られたくないものを撮るには、どうすればいいか。撮られるべきであることを理解してもらうには、どうすべきか。

 まずは、時間をかけて、撮影対象との間に必要な関係性を築かねばならない。映画作家としてのノウハウ以上に、映画作家としての誠実さが問われるところだ。

 しかし、この映画を見る限り、作り手たちがそのような過程を経たとは想像しにくい。

 保護活動家の主張に沿って、和歌山県太地町のイルカ漁を告発するドキュメンタリー映画。クライマックスは漁師たちがイルカを殺し、血で海が赤く染まるシーンだが、漁師たちは撮影を拒絶している。ルイ・シホヨス監督ら撮影クルーは、夜間、入り江に忍び込んで隠しカメラを設置し、現場の撮影に成功する。

 彼らは、まるで、秘境に挑む探検隊のように勇ましい。音楽が鳴り、ナレーションやセリフがかぶさる。エンターテインメントとしての高揚感は感じるが、対象に向き合う誠実さは感じられない。

 もちろん、公益性があり、他に手段がなければ、隠し撮りが許される場合もあるだろう。が、漁は毎年行われている。優れたドキュメンタリー作家なら、土地に住み着き、対象者と長い時間を共にした後、ようやくカメラを彼らに向けたはずだ。本作のクルーにそんな時間があっただろうか。

 誠実さを欠いた映画を元に、イルカ漁の是非について冷静に語れるのか。ただ、それでも、本作は上映され、批判や賛辞をきちっと受けるべきだろう。 1時間31分。 渋谷・シアター・イメージフォーラム。 (近藤孝)

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