【捕鯨問題関連文献(1) ― 捕鯨問題そのものを理解するために】  2010年08月08日更新

 

 

NEW!・関口雄祐 『イルカを食べちゃダメですが? 科学者の追い込み漁体験記』(光文社新書) 740円+税

 著者は1973年生まれ、東工大博士課程修了で専門は睡眠研究。 千葉商科大専任講師。 映画 『ザ・コーヴ』 が良くも悪くも評判になっている昨今だが、著者は水産庁調査員 (非常勤) として太地町で何年も漁師たちと一緒に暮らし、そのイルカ漁などにも立ち会い続けてきた。 そうした体験を綴ったのが本書である。 太地町に暮らす人々の姿を偏見なく捉えているという点で貴重な本。 ただ、太地町にやってきたイルカ崇拝者たちとのいざこざについてはもっと詳しく書いてほしいし、後半の捕鯨論などは他の本でもっと詳しい知識が得られるわけで、むしろ新書という特性を活かし、太地町の現在を、その対外的ないざこざを含めて描くことに徹していたら、いっそう優れた本になったのではないかという気がする。

NEW! ・小松正之『世界クジラ戦争』 (PHP) 1700円+税

長らく水産庁に勤務し、捕鯨問題で世界と渡り合ってきた著者が、捕鯨問題を中心に、外交とはどうあるべきか、対外的な交渉はどうすればいいのかなどを体験を交えながら語った本。 単に反捕鯨国の無法ぶりを暴くだけでなく、日本側の対応のまずさや取り組みの弱さなども批判し、これからの国際社会の中で日本の外交や対外政策・広報などがどうあるべきかを考えるのにきわめて有用な本である。 私の感想は、日本人は自然系科学者を含め、非常に大人しい、ということである。 もっと自己主張しなきゃ、これからの世の中で日本や日本人は生き残っていけないと強く思いました。

・岩崎・グッドマン・まさみ 『人間と環境と文化――クジラを軸にした一考察』(清水弘文堂書房) 1680円

   さまざまな資料をもとに、捕鯨問題についていくつかの視点から興味深い指摘を行っている。 日本の小型沿岸捕鯨の現在、最近のIWCにおける議論の実態、アイヌの伝統的な鯨利用、日本と並ぶ捕鯨国であるノルウェーの捕鯨、などの考察が含まれており、特に最近のIWCでの議論だとか、ノルウェーの捕鯨の現状などが面白い。 最後に、著者の夫君であるグッドマン・ジョンによる 「反捕鯨の果てに」 という、反捕鯨国の理不尽な態度を批判した文章が収録されている。

・ユージン・ラポワント(三崎滋子訳) 『地球の生物資源を抱きしめて 野生保全への展望』(新風舎) 3000円 

   著者はカナダ人で、ワシントン条約事務局長などを務め、野生動物の保護と利用について長年研究を重ねてきた人。 本書は2003年に出版され、2005年に邦訳が出た。 捕鯨問題にもかなりのページをさいているので、私も一部分には目を通していたのだが、今回あらためて全部を通読してみた。 きわめて教えられるとところの多い本である。 鯨やゾウやアザラシ、さらには鮫にいたるまで、「絶滅しそうだ、保護しろ」という特定NGOの主張がいかに無根拠であり偏見に満ちているか、しかしそうしたNGOの呼びかけに一般市民がいかに簡単に騙されて寄付をしてしまうか、そのNGOのデタラメな主張に政府やマスコミがいかに左右されているか、さらにワシントン・ポストなどの大手マスコミがそうしたNGOのデタラメぶりを指摘されても全然反応を示さないというダメぶり、英国の言いなりになって資源としてのゾウ利用を否定するあまり他のアフリカ諸国から浮いているケニアの悲惨さ、自国の野生資源利用には甘いくせに外国のそれには厳しい注文を付けるアメリカの身勝手さ、などなど、反捕鯨運動や野生動物保護運動が科学を無視した一部NGOや、それを丸ごと信じ込む政治家やマスコミによって動かされている実態がよく分かる。 IWCの実態は他の本――小松正之 『よくわかるクジラ論争』 など――でも分かるが、NGOやワシントン条約については本書が圧倒的な情報量で新しい視野を開いてくれるであろう。 

・日垣隆『常識はウソだらけ』(WAC)857円

 捕鯨問題を手っ取り早く理解したい人のためには格好の本だ。 ジャーナリスト日垣隆氏が、ラジオでゲストを迎えてのトーク番組を持っているが、そのなかからよりすぐった8回分を本に直したものである。 その8回のうち2回が捕鯨問題に充てられている。 

 下でも捕鯨問題関係の書物の著者として出てくる梅崎義人氏と小松正之氏がゲストとして登場する。

 西洋人の偏見、横暴、欧米中心の国際秩序、鯨の資源量、鯨に限らない野生動物資源量の実態とそれを正確に受け止められない政治、などなど、「すぐわかる捕鯨問題」 とも言うべき本になっている。

 

・小松正之(編著)『くじら紛争の真実――その知られざる過去・現在、そして地球の未来』(地球社)1900円

 捕鯨問題について包括的に知りたいと思っている人にお勧めできる本である。 水産庁の参事官である編著者を初め、19人の専門家やジャーナリストが、あらゆる方面から捕鯨問題を分かりやすく解説してくれている。

 章立てを挙げておこう。 

 第1章 クジラの種類とその生活。 第2章 クジラと人間。 第3章 国際的な捕鯨の管理。 第4章 様々な「捕鯨」のかたち。 第5章 捕鯨と鯨文化。

 第6章 捕鯨の技術。 第7章 クジラはどのくらいいるか。 第8章 日本が行っている調査とその成果。 第9章 鯨資源の管理法。 第10章 クジラの流通。

 第11章 ワシントン条約。 第12章 捕鯨と国際法。 第13章 捕鯨に反対する人々。 第14章 マスメディアの論調。 第15章 捕鯨の明日は明るい。

 通読してもいいが、関心のある部分だけ拾い読みしても面白い。 例えば第5章を読むと、『万葉集』に「勇魚(いさな)とり」が浜や海の枕詞として出てくる歌が12首あるという指摘があって、古来日本人が捕鯨文化と関わりを持っていたことが分かる。

 また同じ章を読みすすむと、現在は日本、ノルウエー、アイスランド、韓国など鯨食文化を持つ国は少ないものの、中世においては(今は反捕鯨国である)フランスや英国で鯨が王侯貴族に食されていたのだと知ることができる。

 巻末には国際捕鯨取締条約、鯨肉を買える店、捕鯨問題サイトの一覧が掲載されている。 当サイトもこの捕鯨問題サイト一覧に挙げられていることを、最後に付け足しておきます。 

 

・小松正之『クジラは食べていい!』(宝島社新書) 700円

 捕鯨問題について手軽に知ることができる本を紹介しよう。

 商業捕鯨ができなくなってから20年近くがたつ。学生諸君の世代からすると鯨は身近な食品ではないだろう。しかし商業捕鯨の禁止は鯨の資源量を合理的に評価してなされたものではなく、多分に文化差別的な欧米の政策で決められたものなのだ。

 もともと欧米は、ノルウェーやアイスランドなどを除いて鯨を食べる習慣がなかった。では鯨を捕獲してはいけない動物だと思っていたのかというと、そうではない。英米などは大規模な捕鯨を行って油として利用し(鯨は表皮の下に分厚い脂肪層を持っている)、肉は捨てていたのである。勿体ない使い方をしたものだ。そもそも、江戸時代末期、ペルリが来航して日本に開国を求めたのは、アメリカが日本近海で捕鯨をしていたので、捕鯨船が立ち寄る港を必要としたというのが理由の一つだったのだ。

 やがて鯨資源は減少し、油だけのために鯨を捕っていた英米などは採算が合わなくなって捕鯨から撤退した。しかし日本やノルウェーなどは油だけでなく食肉として鯨を利用していたので、採算は十分にとれたわけだ。その後、英米はかつて自分が捕鯨をしていたことなどなかったかのように「鯨を守れ」と言い始めた。つまり、自国はもう捕鯨をしていないので、鯨を自然保護の象徴に使っても不利益はこうむらない。だから安心して捕鯨禁止を叫ぶことができたわけだ。そのために英米は鯨資源の評価をねじまげて、商業捕鯨を禁止に追い込んだのだ。英米系の学者は基本的にこうした国の政策に従順であり、科学的に鯨の数量を見積もろうという姿勢が見られない。そして英米のマスコミもこれに乗って、「鯨は美しい」と言い始めた。写真やイラストに鯨やイルカ(鯨の一種)がよく使われるようになったのはこの頃からだ。

 加えて、アメリカは今は全然捕鯨をしていないかというと、これも違う。イヌイット(エスキモー)は捕鯨をしているし、おまけにその対象たるホッキョク鯨は絶滅が心配されている種類の一つなのだ。イヌイットと言うけど、要するにアメリカ人である。自国民には希少な鯨を捕らせ、ミンク鯨やマッコウ鯨など数量の豊富な鯨を調査捕鯨の対象とする日本を非難しているのだから、まともな人間からするとアメリカという国はどこか狂っていると言うしかない。

 ここには様々な問題が含まれている。科学者が国の政策に従う形でしか意見を述べないとすれば、「科学的良心」はどこに行ったのか。特定の動物の愛護を強制するのは文化差別だが、差別が差別と意識されない形で浸透してはいないか――例えば映画やディズニー・アニメなどで。「国際会議」ははたして法にのっとってきちんとした運営がなされているのか。不当な政策でも超大国がごり押しすれば通ってしまうのが「国際社会」なのか。

 『クジラは食べていい!』は新書本でページ数も多くないが、こうした問いにある程度答えてくれるだろう。ただし著者は農水省の役人なので文化論的な言及はあまりないが、国際会議における欧米の横暴なやり口の紹介は、著者自身が身をもって体験したこともあり、「国際社会」が決して公正で理性的な討論の場ではなく、かつての帝国主義時代同様、欧米のエゴがまかり通る場所であることを教えてくれる。学生諸君は、仮に捕鯨問題に興味がなくても、将来仕事などで欧米人相手に交渉を行う機会はありそうだ。その時のために、荒波のような「国際社会」の実態を知っておくのも悪くはあるまい。

 

・梅崎義人『動物保護運動の虚像』(成山堂書店)1800円

 ここ数ヶ月、日本の調査捕鯨をめぐってアメリカが制裁措置をとるなど、捕鯨問題がマスコミをにぎわせている。捕鯨問題について正しい知識を得たいと考えている人は少なくないだろう。

 そもそも、よく考えてみるとアメリカの態度は摩訶不思議と言わざるを得ないのである。 日本の調査捕鯨はアメリカの領海や経済水域内で行われているわけではない。公海上である。また、日本側が主張しているように、調査捕鯨の対象となっている鯨は資源量が豊富で、調査捕鯨で数頭ないし数十頭獲ったからといって絶滅する恐れはまったくないのだ。

 さらに、調査捕鯨はIWC(国際捕鯨委員会)で認められた正当な権利であり、国際条約に違反するところはどこにもない。(ニューヨーク市大教授の霍見芳浩みたいに、「国際条約違反だ」なんて言うのは、完全に自分の無知をさらけだしているに過ぎない。)

 とするとアメリカが日本の調査捕鯨に横槍を入れる権利はいったいどこに由来するのだろうか。

 こうした疑問に答えてくれるのが『動物保護運動の虚像』である。この本の冒頭に、アメリカは環境帝国主義の国であると規定されている。環境帝国主義とは何か。「自国以外に生息する動植物の利用を、自国の法律または国際条約によって一方的に禁止しようとする考え方並びにその行動」であると著者は言う。アメリカの二つの国内法は、海洋哺乳類と動植物に関して、外国をも含めてその対象にしているのだ。繰り返す。アメリカの国内法二つは、全世界を対象にして作られている。

 これがどれほど奇妙で恐ろしいことか、ちょっと想像力を働かせてみれば分かるはずだ。 今の世の中、人間は基本的に国内法によって規制され裁かれている。それがまともな国の法感覚である。ところがこの感覚がアメリカには通じない。自分が保護したいと思った動植物については、その資源量に関係なく他国に圧力をかけていい、とアメリカ人は考えているのだ。

 この本は、そうしたアメリカの、他国からは容易には理解できないお節介根性を含め、捕鯨問題に関する経緯と現状を的確に教えてくれる。

 もっとも日本人は奥ゆかしいから、日本は鯨を食べなくとも食料には困らないし、と考えている人もいるだろう。そうした人は、この本の捕鯨問題以外の章を読まれたい。アザラシ、オットセイ、アフリカ象など、鯨以外の野生動物についても多くのページが割かれていて、一方的な禁漁がどれほど資源保護に害をもたらすかが紹介されているのである。

 アザラシやオットセイを禁漁にしたためにかえって数が減り、また漁によって成り立っていたイヌイット民族やアリュート人の社会が崩壊した様子を読むなら、感傷的な都会人の一方的な思いこみによって動かされてきた動物保護運動を厳しく見直さねばならない必然性が、十分に理解されるであろう。                                                         

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