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 以下は、2010年8月3日(火)、「新潟日報」 紙に掲載された論考です。 

 あらかじめお断りしておきますと、見出しの 「新潟県内上映に寄せて」 はもとの記事では単に 「県内上映に寄せて」 となっておりました。 このサイトでは日本全国の方々に読んでいただくことを意識して、「新潟県内」 と改めたものです。

 また、第6段落に 「屠場」 という単語がありますが、これは新聞紙上では 「食肉解体場」 という単語に置き換えられていました。 ここでは元の原稿の形に戻します。

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 『ザ・コーヴ』 新潟県内上映に寄せて

 観客の知性問う作品 根底に差別意識と傲慢さ  三浦 淳

 古来、人類は狩猟や漁労によって生きてきた。 生き物の生命をいただくことで
自分の命を保ってきたのである。野生動物が大部分家畜になっても、その点で本
質的な違いはない。 

 なのに、イルカ漁は野蛮だと主張する人々がいる。 自分は豚や牛の肉によって
生きながら、イルカの肉で生きる人間が許せない。 その根底にあるのは差別意識だ。

 シーシェパードでニュース種になっている捕鯨問題にも同じ背景がある (イルカ
は鯨の一種)。 かつて欧米諸国の多くは大規模な捕鯨を行っていた。 食用ではな
く単に油を取るためである。 乱獲で資源量が減り、油には代替品があったから、
彼らの大半は捕鯨をやめた。 その後少しして、彼らは鯨を聖獣だと言い始めた。
聖獣だから資源量が多くても捕るなというのだ。 捕鯨産業が不要になってからだ
から、身勝手ぶりは歴然としている。

 太地町のイルカ漁を告発したというので話題の映画 『ザ・コーヴ』 を見るに際
しては、こうした背景を知っておかねばならない。 特定の価値観を喧伝するため
には映画がよく使われる。 ナチス党大会を撮影したリーフェンシュタールの『意
志の勝利』は有名な例だ。

 『ザ・コーヴ』 は米国アカデミー賞を獲得したことでも評判になった。 だがこの
賞の歴史は人間くさい偏見や誤りに満ちている。 商業的大成功を収めた監督が
妬まれて賞を逸したり、不倫行為ゆえに賞から遠かった女優が重病になり同情さ
れて受賞したり。 マーロン・ブランドは受賞を拒否し、ハリウッドがインディアン
を差別的に描いてきたことを告発した。 そもそも米国映画史上最初の大作とし
て著名なグリフィスの 『国民の創生』 は、黒人差別意識に彩られていた。 米国の
映画史は差別意識の歴史でもある。

 イルカが殺されるシーンは、見て気持ちのよいものではなかろう。 しかし肉を
食らう人は誰でも動物を間接的に殺しているのである。 かつて欧州の農家は家畜
を自前で殺して肉にしていた。 だが専門的な屠場が成立すると、「私は殺してい
ない」という差別意識が生じる。 牛や豚を食しながらイルカ漁を非難する人々も
これに似ている。

 この映画は観客の知性を問う作品だ。 プロパガンダに踊らされるのではなく、
その裏に隠された偏見や傲慢を読みとれるか、ぜひ映画館で確かめていただきたい。

 なお太地町のイルカ漁については、『イルカを食べちゃダメですか?』(光文
社新書) という、町の漁民と長年交流した科学者による冷静な書物が最近出た。
映画鑑賞のお供にお薦めしたい。

 

 

 

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