映画 「蝶の舌」

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 東京で2001年夏から半年あまりのロングランを続けたスペイン映画 「蝶の舌」 が、翌年3月にようやく新潟でもシネ・ウインドで上映された。

  私は縁があって、「新潟日報」 紙に紹介記事を書いたので、以下に転載する。(2002年3月2日朝刊11面)

 ただし、私が書いた元の形での掲載である。 新聞に載った文では、ある単語が削られていた。 どの単語かを調べてみると、マスコミによる言語規制の勉強になること受け合いである(笑)。

 なお、元の文章より改行を多くしてある。

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 幼年期を扱った映画は少なくない。 しかしそれが秀作となるのは、育っていく感受性と時代的背景との双方に目を向け、両者の微妙な交錯から目をそむけない場合だけだ。

 でなれば作品は、単なる甘い感傷か、歴史年表どおりの冷ややかな公式に堕してしまうから。

 『蝶の舌』はその意味で秀作の名に十分値すると言える。

 といってこの映画に難しい理屈は似合わない。

 内気な男の子が、すぐれた老教師の努力によって徐々に心を開き世の中の諸事を知っていくという筋書きは、その普遍性故に万人を魅了する。

 級友・自然といった公認された世界がある一方、異邦人・私生児など裏の世界も存在する。 世の明と暗との狭間を少しずつ進んでゆく少年を、観客は暖かな共感を持って見守ることができるのである。

 だが時代は緊迫していた。 舞台は一九三六年のスペイン。 共和派の人民戦線が総選挙で勝利を収めた直後。 少年の父も共和派である。

 しかし半年後、軍部のクーデタが起こる。 手のひらを返すように態度を変える父。 共和派として捕縛される老教師。 身の安全のために、老教師を罵倒するよう母は少年にささやく……。

 「知らないことだけが役に立つ」と文豪ゲーテは言った。 十歳に満たない少年が体験の意味を知るのは後年になってからだ。

 意味を知らずに体験することの美しさと残酷さとを鮮やかな映像で描ききったこの名作に、どうか映画館で出会っていただきたい。 

                                                                                    (2002年3月4日サイト掲載)

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