映画評2007年

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 2007年に見た映画をすべて紹介。 5段階評価と短評付き。

  評価は、★★★★★=すぐ映画館に駆けつけるべし (大傑作につき見ないと一生の損)。 ★★★★=十分な満足感が得られる (いい作品だから見てごらんよ)。    ★★★=平均的 (見て損はない)。 ★★=劣る (カネと時間が余ってたらどうぞ)。 ★=駄作 (カネをドブに捨てるようなもの)。 ☆は★の2分の1。

 

167.「椿三十郎」 12/31、UCI新潟。 評価★★★ 黒澤明の有名な映画のリメイク。 森田芳光監督作品。 三船敏郎がやった主役は織田裕二が、仲代達矢がやった敵役の用心棒は豊川悦司が演じている。 織田は三船に比べて軽いし、豊川には仲代ほどの鋭さはないが、役者が変わっている以上無い物ねだりをしても始まらないわけで、織田の軽い剽軽さはそれとして、豊川の独特の妖艶な雰囲気はそれとして評価すれば、決して悪い出来の映画ではないと思う。 しかしお姫様役の鈴木杏は、私は好きなんだけど、時代劇にはどうも合わない気が・・・・。 杏ちゃん、現代劇にもっと出て下さいな。 というわけで、本年の映画はこれで見納めでした。

166.「カンナさん大成功です!」 12/30、WMC新潟。 評価★★★ 韓国映画。 キム・ヨンファ監督作品。 ヒロインは歌唱力抜群だが、デブでブスであるため美人歌手の吹き替えに甘んじている。 ハンサムなプロデューサーに思いを寄せているが、あるとき彼が美人歌手を相手に自分の悪口を言っているのを聞いてしまう。 一大決心をしたヒロインは、全身の整形手術を受けてスレンダーな美女に生まれ変わる。 そして別人を装って好きなプロデューサーに近づくのだが・・・・・。 それなりに楽しんで見ることができる映画である。 ヒロインの歌もうまい (ヒロインを演じた女優が自ら歌っているそうである)。 ただ、憧れのプロデューサーとヒロインの関係は、必ずしもすっきり割り切れていない。 そこがいい、という見方もありそうだが、エンタメ映画としてはもう少しすっきりさせたほうがいいんじゃないか。

165.「魍魎の匣」 12/28、Tジョイ新潟万代。 評価★★★☆ 京極夏彦の小説 (私は未読) を映画化したもので、やはり2年前に映画化された京極の 『姑獲鳥の夏』 と登場人物が共通している。 今回は昭和20年代に起こったバラバラ殺人事件に端を発して、美人映画女優やマッドサイエンティストがからむおどろおどろしいお話である。 昭和20年代の日本の街の風景を中国までロケに行って再現している。 おしまいのあたりにもう少しおどろおどろしい雰囲気が欲しかったと思うし、原作を読んだ人には多分物足りなく感じられそうだけど、映画は小説とは別物であり、この種の映画は基本的に私は好きなので、そういう評価をします。

164.「キャンディ」 12/28、シネ・ウインド。 評価★★☆ オーストラリア映画。 ニール・アームフィールド監督作品。 麻薬中毒の男女カップルを描いている。 無軌道な若い男女の生活ぶりに主眼がおかれた映画だけど、あんまり新鮮味もなく、高くは買えない。 ただし、ヒロインのアビー・コーニッシュがすごくいい。 巷ではポスト・ニコール・キッドマンとも言われている美女であり、私も今年10月末に 『プロヴァンスの贈りもの』 で初めて知って注目したが、彼女を見るためにある映画だと思えば、一見の価値はありそう。

163.「恋空」 12/24、UCI新潟。 評価★★★ 話題の映画であるが、やっと見てきました。 今井夏木監督作品。 高校生同士の恋愛を扱っているが、今風にケータイを多用しているところがまあ目新しいけど、基本的にこの種の作品はパターンが決まっており、「純愛」 を貫くためには・・・・・・になるしかない、ということなんですよね。 毀誉褒貶がかまびすしいけど、出来はそんなに悪くない――素晴らしいと言うほどでもないけど――と思う。 ただ、ヒロインの親の態度が、どうもイマイチ不可解なのである。 もう少し毅然とした姿勢が望ましいですよね。中流家庭の女子高校生の親としては。 これは、逆にヒーローの側の親がヒロインの親と対照的な存在のように――あんまり鮮明には描かれていないけど――思われるので、劇的な効果を高めるためにもそういうふうに描くべきじゃないか、ということなので、別段、道徳的な意味合いではありません。 誤解なきよう。

162.「ナショナル・トレジャー リンカーン暗殺者の日記」 12/22、UCI新潟。 評価★★★ 3年前に公開された第1作の続編。 宝探しのエンターテインメント映画。 前回同様、ニコラス・ケイジとダイアン・クルーガーが奮闘している。 今回はリンカーン大統領暗殺者がらみで秘宝の在処を探るというお話。 エンタメとしては過不足なくできており、何も考えずに2時間楽しめる。 ケイジの母親役としてヘレン・ミレンが出てきているのが目新しいか。 悪役のエド・ハリスも悪くない。 ただ、ダイアン・クルーガーはやや美貌に衰えが見えるような・・・・・。

161.「魅惑の巴里」 12/15、早稲田松竹。 評価★★★☆ 下 (↓) とおなじく早稲田松竹のミュージカル映画特集2本立ての1本。 1957年制作、アメリカ映画。 ジョージ・キューカー監督 (「マイ・フェア・レディ」 の監督である) 作品。 三人の美人ダンサーを抱えた舞踊一座。 しかし彼女たちの結婚・引退をきっかけに一座は解散してしまう。 ところがその一人が自叙伝を出版したことから、他の元ダンサーから名誉毀損の訴えが出される。 果たして自叙伝に書かれたことは事実か、それとも・・・・。 構成的にはちょっと芥川龍之介 『藪の中』 を思わせるところがあり、しかしお色気コメディとして笑いながら気楽に見ることのできる映画である。 ミュージカルではあるが歌のシーンはそれほど多くないので、普通のコメディとして十分通用する。 3人のダンサーはそれぞれに美しいが、私は特にケイ・ケンドールに惹かれました。

160.「リリー」 12/15、早稲田松竹。 評価★★★ 研究会その他の用事で上京し、早大で研究会のある日、近くの早稲田松竹で時間つぶしに見てみた映画。 この映画館は今月はミュージカル特集なのだそうで、私はミュージカルはあまり好きではないが1300円で2本立てで安上がりだし、ということで見たところ、これが結構拾い物だった。 1953年、アメリカ映画、カラー、スタンダード・サイズ。 ポール・ギャリコ原作、チャールズ・ウォルターズ監督作品。 フランスを舞台に、父を亡くして天涯孤独な田舎育ちの少女と、大戦で足を負傷してダンサーをやめサーカスで人形遣いをやっている屈折した青年との恋物語である。 青年の操る人形たちが重大な役割を担っていて、この部分が秀逸だと思う。 少女役は本当に田舎っぽくて特に美貌でもない女優なのだが、これがこの場合ぴったり合っている。 ミュージカルということだけど、歌のシーンはきわめて少なく、普通の映画として楽しめる。 

159.「エンジェル」 12/14、シャンテ・シネ(日比谷)。 評価★★★★ フランソワ・オゾン監督最新作。 英仏合作。 第一次世界大戦前後の英国を舞台に、田舎の中流下層階級育ちの少女が、作家になることを夢見て、やがてその夢を実現し、憧れていた豪邸を購入し、ハンサムな画家と結婚もするが、やがて・・・・・というような筋書き。 ヒロインの造型が非常に面白い。 唯我独尊で他の作家もほとんど読まず、自分の想像力だけをもとに小説を次々執筆し、出版社の忠告などは全て無視するのだが――途中、夫から 「君が現実に興味があったとはね」 と皮肉られるシーンがある――それでいて独特の魅力がある。 このヒロインを演じるロモラ・ガライがすばらしい。 彼女、『ダンシング・ハバナ』 で初めて見てその魅力に注目したが、ここに来て実力を遺憾なく発揮している。 脇役陣も達者な役者が勢揃い。 お薦めである。     なお、パンフによると原作小説ではヒロインはもっとイヤな女らしい。 邦訳も出ていて、映画が面白いからちょっと読んでみたくなるが、パンフに引用されている訳文を見たら意欲が減じてしまった。 まだ作家として売り出す前、憧れの豪邸に住んでいる家族が娘つきの女中を求めているから応募してみては、という話をせっかく伯母が持ってきたのに、ヒロインはつっぱねるのだが、そのセリフがこう訳されている。 「本気であたしに、その役立たずで間抜けな女の子の代わりに、その子が自分でまともにできるようなことをやってあげるように言っているわけ?」  ・・・・・・うーん、こういう訳文じゃ、読む気になりませんよ、訳者のK・A先生! せめてこんな程度 (→) には訳してくれないと。 「本気であたしにそんなこと言ってるの? 身の回りのことなんか、自分でやらせりゃいいのよ。 どうせおバカで役立たずの女なんだから、できることってったらその程度でしょ」 

158.「サラエボの花」 12/13、岩波ホール(東京・神保町)。 評価★★★  ボスニア・ヘルツェゴヴィナ映画。 ヤスミラ・ジュバニッチ監督作品。 現代サラエボで生活する母子家庭(母と娘)を描いている。 母はさしせまった娘の修学旅行のためにカネを作らねばならないが、友人や親戚はみなかつかつの暮らしで借金を頼むことができない。 一方、父はユーゴ内戦で死んだと聞いていた娘は、それなら修学旅行の費用免除措置があると学校で教えられ、父が戦死したという証明書を取ってくれるよう母に頼むのだが・・・・・。 母娘だけでなく困難な生活を送るサラエボの人々の表情が伝わってくる作品である。 といっていたずらに悲惨さを強調するのではなく、笑いもあれば、中年同士の淡い恋もあるし、生徒のイジメだってある。 母娘に関しては筋書きは読めるが、サラエボの人々を描いた群像劇として見るべき映画であろう。

157.「ぼくのピアノコンチェルト」 12/13、銀座テアトルシネマ。 評価★★★ スイス映画。 フレディ・M・ムーラー監督作品。 天才少年ヴィトゥスの生活を描いている。 IQが180もある男の子が学業やピアノの腕前で人を驚かしつつ、しかしそれなりに悩みを抱えて・・・・というようなお話。 祖父との交流がなかなかいい味を出している。 ただしそれほど奇想天外な映画ではなく、娯楽としての枠に収まっている。 なお原題は少年の名前 「ヴィトゥス」 であり、邦題だけ見ると音楽映画と思うかも知れないが、音楽も重要な要素ではあるものの必ずしも音楽だけを扱っているわけではないので、そのつもりで。 少年の幼い頃を演じる子役が可愛い。

156.「トランシルヴァニア」 12/12、シネ・ウインド。 評価★★★☆ フランス映画。 トニー・ガトリフ監督作品。 ロマの娘が、姿を消した恋人を追ってルーマニアにやってくる。 しかし恋人はもうお前を愛していないとそっけない態度。 すでにお腹に胎児をかかえた彼女は、さすらっていくうちに一人の男と出会い、一緒に放浪生活を始める・・・・。 筋書きは単純だが、映像がきわめてよくできている映画であり、ヒロインを映し出す場面場面がくっきりとした印象に観客に残す。 そうしたすぐれたイメージのなかで、彼女の放浪はあざやかないろどりを帯びてくるのである。 視覚重視で映画を見る人にはお薦めできる作品だ。

155.「白い馬の季節」 12/12、シネ・ウインド。 評価★★☆ 中国映画。 内モンゴルで長らく放牧で暮らしていた家族が、砂漠化によって草地が消滅してしまいそれまでの生活を変えなければならなくなる様を描いている。 放牧の仕事にこだわる夫、子供を学校に通わせるためにも都市に移り住んだ方がいいと主張する妻。 環境の変化によってもたらされたごたごたをユーモアも含めて描いている。 ただしちょっと冗長で、もう少し削った方がいいと思うし、途中、一度は夫の援助要請を断った友人の画家が売った馬を取り戻すのに協力するあたりは、筋書きの展開がよく分からなかった。

154.「サンダカン八番娼館・望郷編」 12/6、シネ・ウインド。 評価★★★☆ 山崎朋子原作のノンフィクションを熊井啓監督が1974年に映画化したもの。 からゆきさんと呼ばれた、戦前の日本から東南アジアに娼婦として売られた女 (若年期=高橋洋子) の体験、そして老いて戦後日本にひっそりと暮らす彼女 (老年期=田中絹代) から実体験を聞き出そうとする女性史研究者(栗原小巻) の苦労を描いている。 栗原小巻がどうも研究者に見えないのが難点だけど、田中絹代と高橋洋子は好演しており、歴史の狭間で忘れ去られた人間の苦闘をこのような形で残そうとした原作者や映画監督に敬意を払うべき労作である。

153.「オール・アバウト・マイ・マザー」 12/6、シネ・ウインド。 評価★★★ 1999年のスペイン映画。 ペドロ・アルモドバル監督作品。 女手一つで息子を育てていた女性。 息子も一人前になって、父親のことを知りたがる。 ヒロインが父について語る覚悟を決めた矢先、息子は事故で死んでしまう。 その悲しみを胸に、ヒロインはバルセロナに向かう。 バルセロナには息子の 「父」 がいるのだが・・・・。 と筋書きをたどるだけではこの映画の面白さは伝わらない。 実際に見ていただくしかないが、T・ウィリアムズ 『欲望という名の電車』 がコラージュのごとく随所にちりばめられ、加えてヒロインの過去と現在の演劇体験もあり、バルセロナでのヒロインの行動にそれらが少なからず影響を及ぼすなど、かなり重層的な作りになっている。 そういう意味では、映画的な、或いは演劇的な面白さを秘めた作品と言える。

152.「パンズ・ラビリンス」 12/1、UCI新潟。 評価★★★★☆ メキシコ映画。 ギレルモ・デル・トロ監督作品。 内戦期のスペインを舞台に、フランコ側の将校のもとに再婚して嫁いだ母にしたがって義父の勤務地に引っ越した童話好きの少女が、現地人を抑圧する義父の横暴や、その圧制に苦しめられる人々の姿を見ながらも、自分は妖精によって地下の国に招かれていると信じつつ生きる様を描いている。 最後で、過酷な現実と、少女の内的な夢想世界が見事に融合するところが素晴らしい。 悪役である義父や、彼に苦しめられる現地人を演じる俳優たちも好演。 新潟では東京に遅れること2ヶ月、やっと本日封切りである。 この傑作をなるべく沢山の新潟県人に見て欲しい。 ただし映像にはわりにグロテスクなところが目立つので、小さい子供は連れていかないほうが良いし、大人でもそういう映像が不得手な方には薦めません。

151.「マイティ・ハート 愛と絆」 12/1、UCI新潟。 評価★★☆ ブラッド・ピット製作、マイケル・ウィンターボトム監督作品。 9・11直後のパキスタンのカラチ。 インタビューに出かけた米国人ジャーナリストは、行方不明となる。 その妻であるフランス人ジャーナリスト (アンジェリーナ・ジョリー) は、出産を間近に控える身でありながら、必死に夫の行方を探そうとする・・・・・。 実際にあった事件をもとにした映画だそうである。 そのせいか、作りはドキュメンタリー風で、カラチの街や人の様子をちりばめたり、ヒロインやその友人が事件の真相を追う様をきわめて散文的に、つまり物語風ではなく、追っている。 バックグラウンドミュージックも意図的に控え目に用いるだけ。 しかしそれで迫真性が出ているか、というと、どうも疑問。 ドキュメンタリー的な映画としても面白みが希薄なのだ。 この辺、映画的な面白さを意図的に回避した制作側の読み違えじゃないか、という気がする。 真摯な作品ではあるのだが。

150.「ディスタービア」 11/30、WMC新潟南。 評価★★★ D・J・カルーソー監督作品。 教師を殴って自宅謹慎処分にされてしまった男子高校生。 おまけに、自宅から一定距離以上離れると警察に通報が行く機器まで身体につけられてしまう。 退屈さをまぎらわすために双眼鏡でご近所ののぞきを始めた彼は、それがきっかけて隣りに引っ越してきた魅力的な女子高校生と仲良くなったりもするが、逆の側の隣の男は、犯罪に手を染めている疑いが・・・・・。 有名なヒチコックの『裏窓』を思わせる設定だが、この映画は犯罪者をのぞくところだけがポイントなのではなく、隣の女子高校生の水着姿だとか、総合的な (?) のぞきがテーマなのだと思う。 そう理解して見れば、娯楽作品としてそれなりに面白い。

149.「ライセンス・トゥ・ウェディング」 11/30、WMC新潟。 評価★☆ アメリカ映画。 ケン・クワピス監督作品。 結婚すると決めた男女が、牧師 (ロビン・ウィリアムス) のもとに式の依頼に行くが、引き受ける代わりに結婚講座を受けることを強いられてしまう。 しかし講座を受けて行くにつれ、二人ははたしてお互いが自分にふさわしい相手なのかどうか疑問を感じていき・・・・・というような、コメディのはずなのだが、全然面白くもおかしくもなかった。 牧師が若い二人を盗聴しているのは、人権侵害じゃないかと思うし、二人が牧師から学ぶことがはたして必要だったのか、映画を見ても納得がいかなかった。 失敗作でしょう。

148.「オフサイド・ガールズ」 11/29、シネ・ウインド。 評価★★ イラン映画。 ジャファル・パナヒ監督作品。 女性が男性のスポーツを見ることを禁止しているイラン。 しかしサッカーのワールドカップの本戦出場がかかった一戦をどうしても見たいという少女たちが、変装するなどして競技場にもぐりこもうとする・・・・・。 設定が面白そうなので期待して見に行ったのだが、残念でした。 展開はきわめて現実的で、したがって面白くなく、まあ世の中ってこんなものかな、という感想が湧いてくる程度。 もっとユーモラスでコミカルなお話かと思っていたので、肩すかしを食った気分である。  

147.「逃亡くそたわけ 21歳の夏」 11/29、シネ・ウインド。 評価★★☆ 絲山秋子原作、本橋圭太監督作品。 福岡市の精神病院から逃げ出した男女二人が、南九州に向けてクルマで旅をするというロードムービー。 主役は妄想に悩む女子学生 (美波) で、それにひきずられるように気の弱い会社員 (吉沢悠) がお供する、という構成。 美波はなかなかの熱演で存在感があるし、映像にもそれなりに工夫が凝らされているが、吉沢悠の役がありきたりで、そのせいで精神病院から抜け出した二人という設定の割りには緊張感が薄いし、またなぜか追っ手の影もなく、平板な進行になりがちなのが残念である。 ただ、この映画を見ると、マルクスやヴィトゲンシュタインやヘーゲルなど哲学の勉強になるかも知れない (笑)。 

146.「犯人に告ぐ」 11/26、UCI新潟。 評価★★★☆ 雫井脩介原作、瀧本智行監督作品。 神奈川県警勤務の警視である主人公 (豊川悦司) は、6年前、少年誘拐犯罪を担当し、犯人に逃げられた上に誘拐された少年を殺されるという苦い経験をつんでいた。 そのために僻地に飛ばされた彼だったが、川崎で少年連続殺人事件が起こり、かつての上司に呼ばれて事件を担当することになる。 事実上の手がかりがほとんどない中で、彼は敢えてテレビのニュースショウに出演して犯人に呼びかけるという手段に出る・・・・・。 重厚な作りで構成もなかなか良くできており、退屈せずに最後まで見ることができる映画である。 署内の人間関係なども面白い。 ただ、逮捕の手がかりが犯人の凡ミス――緻密なはずの犯人がなぜこんな凡ミスをしたのか――によってもたらされるというところが、せっかくの傑作に傷をつける結果となっている。 これがなければ★★★★は行っていたと思うのだが。

145.「フランドル」 11/22、シネ・ウインド。 評価★★☆  フランス映画。 ブリュノ・デュモン監督作品。 2006年カンヌ国際映画祭審査員グランプリ受賞作。 フランスの田舎での男女の営みから始まって、兵役によって戦場に送られた男がさまざまな罪を犯したり恐怖の体験をしたりする様子が、そして他方では残された女が妊娠中絶や精神的惑乱などの体験をする様が描かれている。 映像の力が非常に強い反面、整合性のある筋書きはあるようなないようなであり、チラシなどの解説もどうもあまり信用できない印象がある。 ある意味、純粋な (つまり映像をメインとして拵えた) 映画だと思うけれど、背後には案外、映像人間にありがちな単純な世界観がひそんでいるような気配もあり、その辺をどう受け取るかによって評価は大きく変わりそう。 まあ、批評家あたりが喜びそうな映画ではあるけれど。

144.「ALWAYS 続・三丁目の夕日」 11/16、Tジョイ新潟万代。 評価★★★ 山崎貴監督作品。 大ヒットした第1作の続編。 基本的な登場人物には変わりなく、昭和30年代半ばの東京の庶民の暮らしを追っている。 第1作で中途半端なままに置かれていた人々の運命にそれなりの決着をつけているところはいいけど、やや展開には甘さがあるかな、という気もする。 でもまあ、見て悪くはない映画でしょう。

143.「エドワード・サイード OUT OF PLACE」 11/16、シネ・ウインド。 評価★★★ 今年9月に49歳で亡くなった映画監督・佐藤真。 『阿賀に生きる』で新潟県民にもおなじみだった人であり、このたびシネ・ウインドで佐藤監督を追悼してのプログラムが組まれ、その作品がまとめて上映された。 私はその中からこの映画を見てみた。 『オリエンタリズム』 などで知られるパレスチナ出身の知識人サイードは2003年に亡くなったが、その生の軌跡を追った作品である (2005年製作)。 彼の生まれた町や、暮らした別荘、アメリカでの勤務大学などなどを追跡している。 映像を通じてサイードをはぐくんだものの一端に触れることができ、大変貴重な体験をさせてもらったという気がする。 サイードに関心を持つ人は必見の映画であろう。 

142.「自虐の詩」 11/14、Tジョイ新潟万代。 評価★☆ 堤幸彦監督作品。 東北は気仙沼出身で家庭環境に恵まれずに育った女 (中谷美紀) が、途中色々な経験を経て、大阪の貧民街でヤクザ上がりの短気な男 (阿部寛) と暮らす様をコミカルに描いている・・・・・・つもりなのだろうけれど、私には全然笑えなかった。 貧乏暮らしを貧乏たらしく描いてわざとらしいし、何というのか、日本映画の気色の悪さ、安っぽさが鼻について、見始めてから10分もたたないうちに 「パスした方が正解だったかな」 と後悔した。 要するに趣味が合わないということなのだろうけれど、こういう映画を好む人とはお友達になりたくありません・・・・・というか、あちらから断られるだろうけどねえ (笑)。

141.「グレン・グールド 27歳の記憶」 11/7、銀座テアトルシネマ。 評価★★☆ タイトル通りの映画。 もともとはテレビ放映用の30分フィルムを2本つなぎ合わせたもの。 都会を避けてカナダの田舎に住んでいる27歳のグールドの様子とか、ピアノの選び方とか、CBSでの録音の模様などが映し出されている。 CBSの録音って、今はどうか知らないが昔のは非常にデッドで、響きを無視している感じがしたけれど、ああいう場所で録音していたらそりゃデッドになるわな、と思いました。 私はグールドというピアニストは必ずしも好きではないが、まあまあ面白かったかな。 でも30分フィルム2本つなぎ合わせて1200円はちょっと高いのではないかい?

140.「レディ・チャタレー (ディレクターズ・カット版)」 11/6、シネマライズ(渋谷)。 評価★★★ フランス映画。 パスカル・フェラン (女性) 監督作品。 D・H・ロレンスの有名な小説の何度目かの映画化である。 英国の名門貴族に嫁いだ女性が、夫が第一次大戦で下半身不随になって満たされない生活を送っているうちに、領地内の森番と知り合って不倫を重ねつつ生きる喜びを取り戻す、というお話。 自然の中で二人が生きる喜びを発見するあたりの描写はたいへん良くできており、悪くない出来だとは思うが、キャストに今ひとつ納得がいかない。 まあ、これは私の先入見かも知れないけど、ヒロインのマリナ・ハンズは上流夫人にはどうも見えないのである。 変に色っぽいが品位が今ひとつ。 相手の森番も野性味が不足しており、むしろ人間的な弱さがうかがわれる。 もっとも、そこが女性監督の狙い目で、男を単に女の救い手として描くのではなく、相互に 「癒し」 を与え合うという物語にしたかったのではあろう。 ただ、それで映画としての説得性が高まるかどうかは、また別の話だと私は言いたいのである。

139.「アフターウェディング」 11/5、シネカノン有楽町2丁目。 評価★★ デンマーク・スウェーデン合作。 スザンネ・ビア監督作品。 インドで貧しい子供たちのために活動する男 (マッツ・ミケルセン。 先頃公開された 『007 カジノ・ロワイヤル』 で敵役としてジェイムズ・ボンドとポーカーで対決した人)。 彼は援助を求めて故郷デンマークの富豪を訪れる。 富豪はカネを出し渋るが、たまたま娘が結婚式を控えており、式に出て行けと勧める。 男は気が進まないままに結婚式に列席するが、そこで意外な人物に出会う・・・・・。 うーん、何か焦点が曖昧な映画なのだ。 人道支援のお話、かつての恋人同士の再会の話、死を目前にした人間のお話、などなどいくつものテーマが突き詰められないままに混在しており、虻蜂取らずの印象を残す。 あと、女性監督のせいかどうか知らないけど、女性の登場人物の追いつめ方が不足しているようだ。

138.「ヴィーナス」 11/4、シャンテ・シネ(日比谷)。 評価★★☆ 英国映画。 ロジャー・ミッチャル監督作品。 かつては二枚目俳優としてならした男 (ピーター・オトゥール) も今は老いて端役でかろうじて食べている毎日。 たまたま仲間の老俳優のところに田舎から姪 (ジョディ・ウィッテカー) がやってきた。 彼女の若い魅力に惹かれた男はあの手この手で接近を試みるのだが・・・・・。 一方では老いが若さに惹かれるというテーマを、他方では田舎者の娘を都会人が教育するという 「マイ・フェア・レディ」 的なモチーフが盛り込まれている。 私は最初は前者だけの映画かと思って見に行ったのだが、実際に作品に接してみると、ヒロインがかなり田舎っぽく、これは 「マイ・フェア・レディ」 なのだろうと見当がついた。 ただ、その辺が中途半端で、私としては田舎者の娘の滑稽さと、その若さに惹かれながら娘から利用される老人の滑稽さをもっと出していくべきだと思うのだが、実際の作りは結構老人にやさしいのである。 老人を慰める映画になっているわけだが、私だったらはっきりと残酷喜劇にしますけどねえ。

137.「タロットカード殺人事件」 11/3、シャンテ・シネ(日比谷)。 評価★★★  ウッディ・アレンが前作 『マッチポイント』 に続いてスカーレット・ヨハンソンと組み英国を舞台にした映画を作った。 ロンドンで起こった連続殺人事件。 ある事情から犯人は某貴族ではないかとの情報を得たマスコミ志望の女子学生 (スカーレット・ヨハンソン) が、手品師 (ウッディ・アレン) と組んでその貴族に接近し彼の内実を探ろうとする・・・・・・というようなお話。 ミステリーとしては上出来とは言いかねるが、喜劇としてはそれなりに面白い。 でもせっかくのスカーレット・ヨハンソン、もっとお色気シーンが欲しいんだけどなあ。

136.「長江哀歌」 11/1、WMC新潟南。 評価★★★ 中国映画。 ジャ・ジャンクー監督作品。 2006年ヴェネツィア国際映画祭のグランプリ作品。 三峡ダムによって沈んだ地域や、これから沈む地域を舞台に、ダム建設の仕事ゆえにばらばらになった家族を追い求める人々の姿や、これから沈む建物を破壊する仕事に従事する人々、長江の景観などを、淡々とした調子で描いている。 一応家族物語的な筋書きはあるが、やはりこの映画は三峡ダムをめぐる地域と時代を大きな目でとらえた作品と見た方がいいだろう。 途中2箇所、「えっ」 という映像も出てくるが、全体としては悠長迫らざると言いたくなる進行で、正直言うと少し退屈なところもあった。

135.「私たちの幸せな時間」 11/1、WMC新潟南。 評価★★☆ 韓国映画。 ソン・ヘソン監督作品。 裕福な家庭に育ちながら、ある事情から自殺を企てたりしてすさんだ生活を送っているヒロイン (イ・ナヨン)。 そんな彼女はある日、カトリックのシスターをしている伯母に誘われて刑務所の死刑囚に会いに行く。 囚人は強盗殺人の罪に問われた若者 (カン・ドンウォン) だったが、シスターらに冷笑を浴びせかける。 しかしヒロインはなぜか彼に惹かれ、週一回の面会日に彼に会いにゆくようになる。 そして二人は、やがてお互い同士の過去を知り、心を通わせるが、死刑の期日は容赦なく迫っていた・・・・・。 非常に重いテーマの作品であり、その意欲は買いたいが、残念ながら出来はもう一つである。 こういう物語は普通の恋愛ものと違って脚本を精緻に作っておかないと観客を納得させられないものであるが、どうも韓国映画の悪い面が出ているようで、構成があまりきっちりできていない。 死刑というテーマに関連した副次的なお話を付け加えすぎているような印象もある。 惜しい。 ヒロインのイ・ナヨンはちょっときつめだけれど中山美穂に似た美貌で魅力的。

134.「グッド・シェパード」 10/31、WMC新潟。 評価★★★ ロバート・デ・ニーロ監督作品。 戦前から戦後にかけてのCIAの活動を、名門イェール大学を出て学友とのコネで何となくその仕事についた男 (マット・デイモン) を中心に描いている。 マット・デイモンはおそらく意識的に無表情な演技をしており、周囲の個性的な面々が目立つようになっている。 他方、主人公とその家族の物語という側面もある。 3時間近い長尺の映画ではあるが、退屈はしない。 ただし、非常に面白いかというと、さほどでもないし、スパイの映画なのにあまり意外性がないところはマイナスだろう。

133.「プロヴァンスの贈りもの」 10/30、WMC新潟南。 評価★★★ リドリー・スコット監督作品。 ロンドンで違法すれすれの辣腕ディーラーとして活躍している男 (ラッセル・クロウ)。 彼は少年時代にフランスはプロヴァンスの叔父のところで楽しい時間を過ごした貴重な記憶を持っていた。 その叔父が亡くなり、近親者である主人公に叔父のブドウ園が遺産として残された。 しかし大人になった今の彼はカネにしか興味がなく、ブドウ園を売り飛ばそうと考えつつ久しぶりにプロヴァンスに向かうのだが・・・・。 仕事一筋の男が異なった価値観にめざめていくという、まあお定まりの筋書きだが、悪くない映画ではある。 ただ、もう少し緊密な構成があれば、傑作になっていただろうに、脚本がゆるめなのが惜しい。 準ヒロインとして登場するアビー・コーニッシュが私好みの美人。 

132.「ミリキタニの猫」 10/27、シネ・ウインド。 評価★★★ リンダ・ハッテンドーフ監督作品。 ニューヨークの路上で絵を売って暮らしている労務者風の老日系人。 ふと彼に興味を抱いた監督が、ドキュメンタリー風に彼を追った映画。 最初は浮浪者的な三流画家の話かと思ってみていたが、やがて彼の経歴が次第に明らかになっていく。 アメリカで生まれ、親の出身地である広島で育ち、しかし兵役につくのが嫌で画家になりたくてアメリカに渡るが、戦争勃発後日系人は強制収容所に入れられる。 そこでの体験や、天涯孤独と思われた彼だったが実は姉がアメリカに生きており、別に親戚もいることが分かるなど、彼が次第に生き甲斐を見いだしていく様を丹念に追っていて、なかなか悪くない映画だと思いました。 なお、ミリキタニは彼の姓で、三力谷と書くらしい。 変わった姓もあるものですね。

131.「馬頭琴夜想曲」 10/26、シネ・ウインド。 評価★☆ 木村威夫監督作品。 日本の修道院の前に捨てられていた赤ん坊が修道女によって 「世羽 (よはね)」 と名付けられて育てられる話であるが、あまり筋らしい筋がなく、途中で幻想的な展開になる。 が、いかんせん、低予算映画の限界がモロ見えで、またそれを克服するだけの力量が監督にないので、残念無念の出来ばえとなっている。 本来なら★1つでもいいのだが、唯一、先頃亡くなったモデルの山口小夜子さんが出ているのが救いになっているので、☆1つ分加点する。 山口さん、実に美しく魅力的で蠱惑的なのだ。 うーん、惜しい人を亡くしましたよねえ。

130.「エクスマキナ」 10/26、Tジョイ新潟万代。 評価★★★ 士郎正宗の原作、ジョン・ウーのプロデュース、荒牧伸志の監督によるアニメ。 数年前に作られた 『アップルシード』 の続編である。 ヒロインの戦闘美少女デュナンが、恋人のブリアレオス (元は人間だったが、負傷してサイボーグになっている) の不調のため、新たに作られたアンドロイドが、人間時代のブリアレオスにそっくりで、しかも彼と戦闘のパートナーになるよう上司から命令されて悩み、なおかつそこに地球支配をたくらむ新たな敵が・・・・というような筋書き。 筋書きそのものにはあまり新鮮味がないが退屈するほどではなく、ヒロインは魅力的なので、まあ平均的な出来と言えるだろう。

129.「ヒートアイランド」 10/26、Tジョイ新潟万代。 評価★★★ 片山修監督作品。 渋谷に集う若者グループ。 その一員がふとしたことから中年男とケンカして奪ったバッグには大金が入っていた。 実はそのカネは非合法の賭博のあがりを強奪したもので、中年男は強奪者の一人だったのだ。 この若者グループと強奪者たちの2組に加えて、このカネを奪われた関西ヤクザ、地元渋谷をしきるヤクザ、そして正体不明ながらこのカネを狙う2人組の、合計5グループがからみあったドラマである。 三すくみならぬ五すくみのお話がそれなりに面白い。 ただ、クライマックスの戦闘シーンの迫力が今ひとつなのが惜しい。 登場人物はどれも一癖あって、そこのところは映画的な楽しみを感じさせてくれる。

128.「ストレンヂア 無皇刃譚」 10/19、WMC新潟。 評価★★★ 安藤真裕監督作品のアニメ。 戦国時代の日本を舞台に、なぜか中国から渡ってきた剣士たちに狙われる少年と、偶然少年と知り合った混血の武士との奇妙な道中を、そして闘いを描いている。 全体の構成が、少年が狙われる理由とその背景の描写にあてられており、作品の骨格がしっかりしているという印象がある。 ただし、飄々とした作りで、キャラクターにはあまり感情移入がしやすいとは言えないので、まあまあ面白いのだが、見終えた後に心に充実感が残るというようなところがあまりない。 値段分はあるけど、値段を上回るほどでもない、といったところか。

127.「大統領暗殺」 10/15、UCI新潟。 評価★★☆ ガブリエル・レンジ監督作品。 2007年10月のある日、ブッシュ大統領が暗殺される――という設定で、暗殺とその後の展開をドキュメンタリー風に作った映画。 まあ、かなり悪趣味な作品と言えるが、最初のあたりはまあまあ面白かった。 特にブッシュ大統領の演説などのシーンは秀逸。 しかしその後の展開となると、FBIの捜査や犯人とされた男、あとから現れた真犯人などなどの設定が安易で、つまり制作側の政治的意図が丸見えなので、要するにプロパガンダだったのね、で終わってしまうのである。 また側近のインタビューも、いつも同じ背景で同じ静寂さの中で行われ、しゃべりかたも整っているので、ドキュメンタリーらしい雑然たる臨場感が出ていない。 残念でした。

126.「インランド・エンパイア」 10/13、シネ・ウインド。 評価★☆ ディヴィッド・リンチ監督作品。 映画女優が尋ねてきた見知らぬ女に催眠術のようなものをかけられて、現実と夢想の間をさまよい、そこに映画製作がからむという大筋だが、現実と夢想の間の区別が付きにくく、というか、もともとそういう狙いで作っているようだが、その筋書きの迷路があまり魅力的とは言えず、しかも3時間もかかるので、途中から眠くなってきて参った。 筋書きが分かりにくい映画を作るのにリンチは向いていない。 汝自身を知れ、と言いたい。

125.「魔笛」 10/12、UCI新潟。 評価★★☆ モーツァルトのオペラをケネス・ブラナーが映画化したもの。 ただし時代と場所を第一次世界大戦期のヨーロッパとしているために歌詞やセリフは多少変えている。 英語での歌唱。 もともと『魔笛』は筋書きが支離滅裂で、モーツァルトの音楽のすばらしさでもっているようなオペラだけど、この映画では設定変更が中途半端で、ますます筋書きが分かりにくくなっている。 もともとのオペラを知らない人には、ちょっと楽しみにくい映画だと思う。

余白に。 最近の新潟映画界。 映画館というのは絶えず作られたり閉じたりしているものではあるが、新潟市でも動きがある。 この10月末に新しいシネコンが新潟南にオープンする。 市内のシネコンとしては4軒目。 ただしこれがワーナーマイカルで、ワーナーマイカルはすでに新潟市内にあり、同じ営業元のシネコンが新潟程度の町の中に2軒あるというのもいかにも芸のない話だ。 ワーナーマイカルはメンズデーがないので、新潟市にあるユナイテッドシネマやTジョイに比べて明らかにサービスで劣っており、こういうサービスの悪いシネコンが増えるのは歓迎できない。 また上映作品の多様化という面から見ても、例えばMOVIXなどの新潟県内になかったシネコンに来て欲しかったと思うのは私だけではあるまい。 サービスと言えば、Tジョイは今まで6回見ると平日1回無料になるポイントカードを出していたが、これを10月限りで廃止するようだ。 サービス低下である。 そのTジョイは、11月に長岡市内にシネコンをオープンする。 長岡市としては初めてのシネコンであるが、どうして新潟県内のシネコンは多様化しないのだろうか。 ワーナーマイカルが3軒 (新潟、新潟南、県央)、Tジョイが2軒 (新潟、長岡) となり、上越市のJ-MAXシアターを入れて、県内にシネコンが7軒になるけれど、営業元としては4種類しかないわけで、特定シネコンの寡占 (?) 状態にあると言わねばならない。 現在、近隣県では上映されるのに新潟県にはなぜか来ない、という映画は少なくない。 これを何とかするためにも、県内シネコンの多様化が望まれる。 私は、見たいけど新潟市内に来ないという映画があるとすると、上越市はいささか遠いけれど、長岡くらいなら見に行ってもいいと思っているので、その長岡にできるシネコンが新潟市にもあるTジョイと聞いてがっくりきた。 それ以前に、新潟市4軒目のシネコンがワーナーマイカルと聞いてがっくりきているので、いわばダブルパンチを喰らったような心境である。

124.「エディット・ピアフ 〜愛の讃歌〜」 10/8、UCI新潟。 評価★★★ オリヴィエ・ダアン監督作品。 仏英チェコ合作。 一世を風靡したシャンソン歌手エディット・ピアフの伝記映画である。 私は彼女については名前以外はほとんど知らなかったが、なるほど、貧しい生い立ちから始まって、天性の歌のうまさを芸能界筋に発見されてスターになるが、しかし酒浸りや薬物中毒が治らなくて・・・・というあたりの、栄光と悲惨さの組み合わせがなかなかよく伝わってくる映画だとは思う。 ただ、作り方として、時間軸をやたら混合させているけど、そういう小手先の技巧が必要だったのかどうか疑問。 あと、歌のシーンももっと入れて欲しい。

123.「クローズド・ノート」 10/7、UCI新潟。 評価★★★★ 行定勲監督作品。 主役の沢尻エリカが舞台挨拶での態度が悪かったというので叩かれ、ついでに映画そのものも叩かれているような気配があるけど、そういう事件とは切り離してみれば、それなりによくできた作品だと言える。 大筋は最初のあたりで何となく読めるのだが、展開はきわめて周到で、個々のエピソードもうまく作られており、サブヒロインの竹内結子演じる小学校教師もさわやかで、まあ今どきこんなに生徒たちがみな素直でクラス運営がうまくいくものかなあという気もするけれど、そこは映画なのだから、これはこれで良いのではないかと思う。 助演の永作博美と板谷由夏も好演。

122.「スキヤキウエスタン ジャンゴ」 10/6、UCI新潟。 評価★★ 三池崇史監督作品。 源平合戦から数百年、源氏と平家がなぜかピストルを持って西部劇風に対立しながら宝探しをし、そこにさすらいのガンマン (伊藤英明) だとか、現地に住む一家 (桃井かおり、木村佳乃、ほか) が絡むという、はちゃめちゃな設定の映画。 全員英語でしゃべっている。 というわけで、はちゃめちゃだから面白いかというと、これがつまらないのである。 制作側は、設定の面白さだけで観客が満足すると思ってないですか? それだけで2時間満足できるわけがない。 もっとちゃんとした脚本でやってもらわないと。 特に日本人男優はどうしたって西洋人男優に比べて肉体的に貧弱で、つまり写ってるだけでそれなり、ってわけにはいかないんだから、よーく考えて作って下さいよね。 

121.「恋するマドリ」 10/6、シネ・ウインド。 評価★★★☆ 大丸明子監督作品。 同居していた姉が突然結婚したために、それまで住んでいた住まいを出て新しくアパートに移った女子学生 (新垣結衣) と、その上の階に住む研究者 (松田龍平)、そしてヒロインがもともと住んでいた住居に引っ越した女性 (菊地凛子) との奇妙な関係を描いている。 ヒロインの新垣結衣が初々しく、他の二人も好演で、筋書きもそれなりに面白く、悪くない出来の映画だと思いました。

120.「夜の上海」 10/5、Tジョイ新潟万代。 評価★★★ チャン・イーバイ監督作品、日中合作映画。 日本のカリスマ・スタイリスト(本木雅弘)が中国・上海の催し物に招待されて出かけたが、色々あって迷子になってしまい、うろうろしているとところを若い女 (ヴィッキー・チャオ) の運転するタクシーにはねられて、幸い怪我はなかったものの、その後の二人が奇妙な友情を結ぶ様を淡々と描いている。 主役二人は悪くなく、まあまあ面白いのだけれど、サブの筋書きがきわめて平凡で、サブのヒロインである西田尚美にも魅力がなく、全体の印象を損なっているのが残念である。

119.「アコークロー」 10/3、シネ・ウインド。 評価★★☆ 岸本司監督作品。 東京育ちながら訳あって沖縄の恋人のもとに嫁いできたヒロイン (田丸麻紀) が、地元の怪奇譚に興味を持つうちに、やがて思いがけない事情から自分が怪奇現象に見まわれる、というお話。 うーむ、話があまり練れておらず、唐突な部分がめだち、説得性 (ホラーに説得性もクソもないと言われそうだが) があまり感じられない。 また地元の怪奇譚とヒロインの襲われる現象とのつながりもイマイチ不明。 ヒロインの田丸麻紀は、私は初めて見たけど、ちょっと中山美穂に似たセクシー美人なので、今後に期待したいけど。

118.「酔いどれ詩人になるまえに」 9/23、バウスシアター(吉祥寺)。 評価★★ 実在のアメリカ作家チャールズ・ブコウスキーの自伝をもとに、ベント・ハーメル監督が映画化した作品だそうである。 しかし、あまり面白みを感じなかった。 主人公を演じるマット・ディロンにはたしかに味がある。 彼のファンには悪くない映画かも知れない。 だけど彼がまごうことなき詩人であり、彼には才能があり、その作品を生み出す彼の仕事ぶりはすばらしいのだ、とこの映画を見ていて感じられるかというと、どうもそうではない。 だらしない男のだらしない遍歴がだらだらと続くだけのように見える。 文学が立ち上がる現場そのものを映像化するのは難しい、という真理があらためて実感できてしまう映画ではないか。

117.「キャプティビティ」 9/23、Q−AXシネマ(渋谷)。 評価★★★ ラリー・コーエン原作・脚本、ローランド・ジョフィ監督作。 モデルをやっている美女 (エリシャ・カスバート) が薬物で意識を失わされて何者かに誘拐され監禁される。 その何者かは正体を見せず、彼女をさまざまな方法でいたぶる。 やがて隣室に同様に閉じこめられている青年を発見した彼女は、何とか彼と力を合わせて脱出しようとするのだが・・・・・。 かなりグロなシーンが連続するので、そういうのが嫌いな人にはお薦めできない。 作品全体は見終えてみるとかなり周到な計算のもとに作られているのが分かるが、私の趣味としてはいたぶられるのが美女なのだから、もう少しセクシーさを表に出せないものかな、と思いました。 

116.「処女監禁」 9/23、シネマヴェーラ渋谷。 評価★★★ 1977年製作のポルノグラフィー。 関本郁夫監督作品。 美しいOLに片思いして彼女のあとをつけたり写真に収めたりしている青年。 ついにある日青年は彼女を自室に監禁して・・・・・というお話。 コメディ的なところもあって、まあまあ楽しんでみることができる。 でもタイトルに偽りあり。 彼女は処女じゃなく、既婚者の恋人がいて、青年に監禁される前に恋人とのベッドシーンがちゃんとあるんですよね。

115.「震える舌」 9/23、シネマヴェーラ渋谷。 評価★★★★ 1980年、野村芳太郎監督作品。 東京郊外の団地に住む若夫婦 (渡瀬恒彦、十朱幸代) と小さな女の子。 女の子はしかし泥遊びをしていて傷口から菌が入り破傷風にかかる。 その少女の病名が分かるまで、そして分かってから大学病院に入院しての闘病生活を描いている。 何度か瀕死状態になる少女、そして看病する若夫婦もしだいに心が乱れてくる。 たいへんな迫力をもった作品で、見ているとぐったり疲れてしまう。 担当女医役の中野良子が非常によい。 この役は彼女のためにあるようなものだし、彼女のおかげで映画が暗さ一辺倒にならずに救われている。 私なら助演女優賞を上げるなあ。

114.「題名のない子守唄」 9/22、シネスイッチ銀座。 評価★★★ イタリア映画。 ジュゼッペ・トルナトーレ監督作品。 北イタリアの都市に住む夫婦と幼い少女の3人家族に、女中として意図的に雇われた異国の女。 彼女にはそこに勤める理由があった。 その理由とは何か? 話の展開はなかなか巧みであり、観客を飽かせない。 分かってしまうと話は実は単純なのだが、語りのうまさがそれをカヴァーしている。 ただしヒロインの過去がいかにもB級映画的な安っぽさに満ちており、それが話の現在のシリアスさといささか齟齬を来しているような気もする。

113.「ルネッサンス」 9/17、UCI新潟。 評価★★☆ イギリス・フランス・ルクセンブルク合作のアニメ。 白黒。 未来のパリを舞台に、巨大企業の優秀な女性社員が誘拐された事件を調べる刑事が、やがて意外な真相にたどりつくまでを描いている。 白黒で構成された画面には独特の雰囲気があり悪くはないが、事件の真相そのものにはあまりダイナミズムが感じられず、また予告編を見たときには未来都市パリの立体的な構成が幻想味をともなって観客を魅了してくれそうな予感がしたのだが、そこまで行かなかった気がする。

112.「アヒルと鴨のコインロッカー」 9/17、UCI新潟。 評価★★ 伊坂幸太郎の小説を中村義洋監督が映画化したもの。 私は原作は未読だが、あえて嫌われそうな言い方をするならば、世の中のことをろくに知らない人間にはほどほど面白く感じられるかもしれないが、多少なりとも現実を知っている人間からすると、冗談じゃないよ、と言いたくなる映画である。 ネタバレになるから詳しいことは書けないけど、比喩的に表現すると、誰でもちょんまげさえつければ武士になれるとか、きれいな服さえ着れば誰でもスターになれるとか、日本の若者の悩みは世界中の若者と共通なんだとか、そういうことを信じられる人しかこういう映画は評価しないだろうな、ということです。

111.「レッスン!」 9/14、Tジョイ新潟万代。 評価★★★ リズ・フリードランダー監督作品。 下層階級の若者たちで荒れるNYの公立高校を舞台に、ふとしたきっかけからこの高校のおちこぼれ生徒に社交ダンスを教えようと決心したダンス教師 (アントニオ・バンデラス) が苦労しながら生徒たちにやる気とプライドを持たせていく様を描いている。 ダンス映画という見方もできるが、私はむしろ 「教師と生徒たち」 の映画として見た。 そうしてみると、この種の作品にありがちなご都合主義もあるとはいえ、なかなか悪くない出来だと思う。 アントニオ・バンデラスのダンス教師ぶりが堂に入っているし、彼のダンスシーンは見ものと言える。 新潟ではわずか2週間の上映で、評判が浸透しないうちに終わってしまったのが残念である。 

110.「スケッチ・オブ・フランク・ゲーリー」 9/12、シネ・ウインド。 評価★★☆ シドニー・ポラック監督作品。 奇妙な建築で知られるフランク・ゲーリーの人となりと建築をたどった一種のドキュメンタリー映画である。 私は必ずしも建築に趣味がないのであまり正当にこの映画を評価できない恐れがあるが、なるほど、世の中にはこんな変な建築もあり、しかもそういう建築家が銀行から設計を依頼されることもあるのだ、と変な感心の仕方をしてしまいました。 でも、正直、ちょっと眠かったな。

109.「ヱヴァンゲリヲン 新劇場版:序」 9/10、UCI新潟。 評価★★★ かつて大人気を博したアニメが、4部作劇場アニメとなって戻ってくるそうで、その第一部である。 私はエヴァンゲリオンは、TV版とマンガ版はまったく見ておらず、映画版も1つ見たきりだが――この新作アニメ、どうなのかなあ、なんか展開が性急で、シンジがエヴァ初号機に乗るまでの過程が短すぎ説明不足のような気がする。 その後の展開はまあまあだが、根源的な面白さというか、よく分からないなりに全体がこちらの体に染み渡ってくる、という印象はなかった。 まあ世代の違いもあるかも知れませんがね。

108.「腑抜けども、悲しみの愛を見せろ」 9/10、UCI新潟。 評価★★ 吉田大八監督作品。 女優になろうとして東京に出た娘 (佐藤江梨子) が、両親の事故死で石川県の田舎に帰ってくるところから始まるお話。 彼女の、才能がないのに女優になろうとするカンチガイぶりと、そのカンチガイが実家で過去と現在に引き起こす騒動を描いている。 うーむ、なんかイマイチ面白さが感じられない。 サトエリは健闘しているし、下着姿も見せてくれるので悪くないんだけど、周囲の彼女に対する態度が私には納得できないのだ。 何でもっと毅然とした態度がとれないのかなあ。 東京人の彼女への接し方を描いた短い部分の方がはるかにうなずけた。 逆に言うと、大半の部分はうなずけなかった、ということですね。

107.「天然コケッコー」 9/5、UCI新潟。 評価★★★ 山下敦弘監督作品。 複々式学級しかできないような田舎を舞台にして、東京から転向してきた中2の男の子と、地元の中2の女の子の交情を中心に、少年少女およびその親の生活を描いている。 最初、ポイントがつかめなくて展開もトロイので退屈して見ていたが、だんだんペースが分かってきたというか、体が合ってきたというか、ほどほど面白いと思えてきた。 でも、今どきは昔と違って田舎も情報が行き渡っているし、東京との格差があまりなくなっているから、本質的なというか、野蛮なまでの面白さは出てこないんじゃないかなあ。

106.「街のあかり」 9/4、シネ・ウインド。 評価★★☆ フィンランド映画。 アキ・カウリスマキ監督作品。 ガードマンをやっている冴えない青年。 金も地位もガールフレンドもない。 しかしこのままで終わる気はなく、何とか成り上がりたいと思っている。 そんな彼にある日、魅力的な女性が近づいて来るのだが・・・・・。 淡々とした短いシーンの連続で作られており、人生の砂を噛むような味気なさを描いた作品かと思ってみていたが、味気なさに徹しきれないところがあって――最後がそうですね――そこら辺、ちょっと甘いんじゃないのと言いたくなるのが難点かなあ。

105.「レベル・サーティーン」 9/4、シネ・ウインド。 評価★★★ タイ映画。 マシュー・チューキアット・サックヴィーラクル監督作品。 楽器会社の営業マンである青年プティットは、営業成績が悪いのでクビになってしまう。 加えてローンが払えずにクルマを取り上げられ、故郷の母からはカネを無心され、八方ふさがり。 そこに未知の人物から電話がかかってくる。 課題を一つこなすごとに懸賞金を出すというのだ。 最初は脇の壁にとまっているハエを叩きつぶすという易しい仕事だったが、次第に課題はエスカレートしていき・・・・・。 途中かなりグロテスクなシーンが出てきて、見ていてあまり気分のいい映画ではないが、アイデアはいいし、また最後もハリウッドなどとは違って無理なハッピーエンドを用意していないところが 「芸術的」 で、まあ悪くないような気がする。

104.「オーシャンズ13」 9/1、WMC新潟。 評価★★☆ スティーヴン・ソダーバーグ監督作品。 シリーズ3作目だそうだが、私は前2作を見ておらず、シリーズとしては初めて見た。 仲間を裏切ってラスベガスに豪華ホテルを開いた男に復讐する話だが、うーん、展開が緩慢でタルい。 この種の映画はテンポが大事だと思うんだが、その辺がダメなんですよね。 また悪役のアル・パチーノはなかなかいいが、クルーニーやブラピやデイモンなんかは、スターが揃いすぎているせいか、なんかもう一つ生彩が感じられない。

103.「ツォツィ」 9/1、WMC新潟。 評価★★☆ 南アフリカ映画、2005年製作。 ギャビン・フッド監督作品。 2006年アカデミー賞外国語映画部門賞受賞作。 タイトルのツォツィとは不良という意味。 犯罪行為で生きているハイティーンの少年が、金持ち主婦のクルマを奪って逃走したところ、車内には赤ん坊がいて、やむを得ず赤ん坊を自分で育てようとする話である。 まあまあ面白いのであるが、しかし筋書きに根本的な欠陥がある。 なぜ主人公が赤ん坊をクルマの中に残しておかなかったのか、ということ。 無頼漢の彼が赤ん坊をクルマの中に残しておく気になれない、という場面に説得力が感じられないのだ。 彼の目当ては車内の金品なので、赤ん坊が気になるなら電話でもかけてクルマを乗り捨てた場所を通告しておけば済むことだろうと思ってしまう。 ヒューマンな映画というだけで評価するのはどうかなあ。

102.「ベクシル 2077日本鎖国」 8/31、Tジョイ新潟万代。 評価★ 曽利文彦監督、アニメ。 副題にあるように、日本が近未来に鎖国して、そこにアメリカのSWORD隊員が侵入したところ・・・・・というような筋書きだが、はっきり書くけど、救いがたい映画である。 フィクションだからといって、どういう設定でもどういう結末でも許されるものではないと思うが、製作者たちにはそういう意識は皆目ないらしい。 このアニメを作った連中はバカなんじゃないか、と言っておこう。 映画業界には知性も思考能力もない奴が結構いるような気はしていたが、この作品はそれを白日の下にさらしたのだ。 

101.「華の乱」 8/29、Tジョイ新潟万代。 評価★★★☆ 1988年製作、深作欣二監督作品。 20年近く前の作品だが、Tジョイで一週間だけリヴァイヴァル上映されたので見てみた。 大正時代の日本を舞台に、作家・有島武郎 (松田優作) と歌人・与謝野晶子 (吉永小百合) をメインとして、俳優やアナーキストや文学者などなどが多数登場し、当時の作家や思想家の生活と活動を描いている。 筋書きは現実とフィクションがないまぜになっており、通俗的ではあるが映画的な面白さに満ちている。 主役2人はややミスキャストのような気がするけど――松田優作はたくましすぎて有島武郎の上品さと内面の激情を表現するにはもう一つだし、吉永小百合は逆にヤマトナデシコすぎてやはり与謝野晶子の情熱やたくましさを表現するにはイマイチの感――松坂慶子 (松井須磨子) や池上季実子 (波多野秋子) や風間杜夫 (大杉栄) などの脇役が生彩を放っており、なにより与謝野鉄幹のダメ男ぶりを見事に表現している緒形拳がいい。 私はこの映画を見て、有島や晶子について改めて本を読んでみたくなりました。  

100.「殯(もがり)の森」 8/29、シネ・ウインド。 評価★★★ カンヌ映画祭でグランプリを取ったというので話題の河瀬直美監督作品。 老人ホームで亡き妻を思いながら暮らしている男。 そこに新米看護士としてやってきた若い女性は、自分の過失から子供を死なせ離婚した過去があった。 ある日、彼女はクルマに男を乗せて遠出をするが、人里はなれた狭いあぜ道で脱輪してしまう。 男はやがて森の中に入っていき・・・・というような筋書き。 とどかぬ人への想いが虚空にさまようとしばしば狂気の淵に導かれる、という事情が、道筋もはっきりしない森の中をさまよう男女二人の姿で表現されている。 すごい秀作とは思わないけど、一見に値する作品であろう。

99.「キサラギ」 8/24、Tジョイ新潟万代。 評価★★★★ 佐藤祐市監督作品。 自殺したB級アイドル如月ミキの一周忌に、彼女のファンでファンサイトを通じて知り合った男たち5人が集まった。 しかし彼らが話を進めるうちに、彼女は自殺したのではなく殺されたのではないか、という疑惑が濃厚になってくる。 しかも犯人は彼らの中にいるかもしれない・・・・・・。 演劇タッチの作品で、脚本が非常によくできており、男たち5人の性格付けも面白く、最後までスクリーンから目を離せない。 お薦めできる映画である。

98.「コマンダンテ」 8/24、シネ・ウインド。 評価★★★ オリヴァー・ストーン監督によるドキュメンタリー映画。 キューバのカストロにインタヴューして作られている。 カストロのある種の人間的魅力だとかカリスマ性はよく伝わってきて、その意味では面白いと思った。 ただしカストロの話の内容は、政治家として当然ながら自分に都合のいいことしかしゃべってはいないわけだから、この映画での彼の発言を聞いて 「なるほど、そうだったのか」 と思い込むのはナイーヴにすぎるだろう。

97.「銀河鉄道999」 8/22、Tジョイ新潟万代。 評価★★★ 松本零士原作のアニメ。 1979年製作。 私が映画をよく見るようになったのは80年代に入ってからで、この有名なアニメは未見だった。 今回、Tジョイで1週間だけリヴァイヴァル上映されたので見てみた。 機械伯爵に母親を殺された主人公の少年が、謎の女性メーテルの助力で銀河鉄道の切符を手に入れ、それに乗って機械の体を手に入れられる遠い惑星までメーテルとともに旅をする様を描いている。 うーむ。 ある世代にとってはアニメ体験の根幹をなす作品なのだろうけれど、私のようにそうでない世代の人間が時間をおいて見ると、筋書きのご都合主義だとか、説明の不十分さだとか、女性がみな同じ顔であることだとか、肝心の機械伯爵への復讐場面が物足りないことだとか、気になるところかいくつか目に付いた。 あと、手塚治虫なら 「ロボット差別」 というテーマがあったわけだが、ここでのように、機械の体が優越性のあかしで人間がそれにコンプレックスを持つという設定は、那辺から来ているのだろうか。 今調べてみたら、宮崎駿の 『ルパン三世 カリオストロの城』 は同じ79年製作で、これは新潟では84年に 『超時空要塞マクロス 愛おぼえていますか』 と併映されたので、私もその時に見ているのだが、同年製作とはいえ、時代の流れが宮崎に移行していったことがよく分かる、と言うと銀河鉄道ファンに怒られるかしら。

96.「夕凪の街 桜の国」 8/22、UCI新潟。 評価★★☆ 佐々部清監督作品。 広島への原爆投下を経験した昭和30年代の家族の暮らし、およびその後関東に居を移した家族の子供たちの世代の物語。 原爆というテーマ自体は目新しくないので、何か独自の視点だとか目新しい材料だとかがあるのかと思ったが、そういうわけでもなく、また筋書きに曖昧なところもあって、イマイチという印象であった。

95.「怪談」 8/16、WMC新潟。 評価★★☆ 中田秀夫監督作品。 たまたまこの日、職場の冷房が故障してしまい、暑苦しい一日を過ごしたので、夕刻、タイトルがタイトルだし監督も監督なのでさぞ怖い映画なのだろうと思いつつ見にいってみたのであるが、残念でした。 江戸時代、富本節の女師匠である豊志賀 (黒木瞳) は、年下の男・煙草売りの新吉 (尾上菊五郎) に惚れて同棲を始めるが、実は双方の亡父は因縁を持つ間柄だった・・・・・。 というところから始まって、新吉が豊志賀を捨てて別の女たちを次々とたぶらかしていくなかで、命を断った彼女の怨みが随所に現れるという筋書きなのだけれど、何というか、さっぱり怖さが伝わってこない。 いっそ怪談じゃなくて、江戸のプレイボーイの話にしちゃったほうが良かったのでは?

94.「ピアノの森」 8/15、WMC新潟。 評価★★★★ マンガを原作とするアニメであるが、私は原作は未読。 予想外に (というと失礼だけど) よくできた作品だった。 父が高名なピアニストなので幼少期からピアノを習っている少年が、全国コンクールを控えた時期に事情があって愛知県の都市に引っ越し、そこで森の中のピアノを弾くという少年と邂逅する。 そこから始まる二人の友情と、ピアノコンクールに向けて競い合う二人の姿をさわやかに描いている。 脇役として、かつては天才ピアニストとして讃えられながら事故にあって引退し今はこの都市で小学校音楽教師をしている中年男性や、お嬢様育ちでピアノコンクールに出場する少女などが出てくるが、各人それなりに味があって悪くない。 

93.「赤い文化住宅の初子」 8/9、シネ・ウインド。 評価★★ タナダユキ監督作品。 文化住宅、なんて言葉を聞くと昭和20〜30年代のイメージである。 なんでも 「文化」 と付ければ高級感が出ると思っていた時代。 ここでの文化住宅とはボロいアパートに過ぎない。 そのボロアパートに兄と妹が住んでいて極貧の暮らしをしている。 父は家出、母は病死という設定。 兄は高校を中退して働いているが、妹が進学高校をめざしているのが気に入らず、中卒で働くよう圧力をかける。 まったくろくでなしである。 なんか時代設定がいつの話かと思うだろうが、これで現代のお話なのだある。 そしてその妹にはどういうわけだか (と映画を見ていると思っちゃうんだけどねえ) イケメンで優等生のボーイフレンドがいるのである。 なんかつりあっていないし、ヒロインは赤毛のアンが嫌いだ、みんなヒロインを好きになるのはご都合主義だと批判しているんだけど、こういうボーイフレンドがちゃんといるって映画の設定自体、赤毛のアンみたいじゃないですか。 ヒロインは暗い感じの女の子で、特に美貌とも言えず、それでどうしてこんなにモテるのだろう。 ・・・・・要するに、変にアナクロっぽく、説得力を感じない映画というのが、私の結論です。

92.「舞妓Haaaan!!!」 8/1、WMC新潟。 評価★★★☆ 映画サービスデーなので夏枯れだけど何か、ということであまり期待せずに見てみたのだが、案外面白かった。 水田伸生監督作品。 平凡なサラリーマンが熱烈な舞妓ファンであるところから始まる喜劇。 最初は普通の人間にも分かるように舞妓の世界を解説しながらストーリーが進み、やがてはちゃめちゃな中にも笑いと悲しみが交錯する独特の展開を堪能できる。 各人物もはまり役であり、先頃亡くなった植木等も短いながら登場して独特の味を見せてくれる。 合掌。

91.「ドルフィンブルー フジ、もう一度宙へ」 7/20、Tジョイ新潟万代。 評価★★☆ 前田哲監督作品。 実話による映画だそうである。 沖縄の水族館に長らく飼われていたイルカ 「フジ」 が、病気で尾鰭の周縁部分が腐食し、その部分を手術で切り落とされる。 尾鰭が小さくなってしまったフジはうまく泳げなくなる。 そこで水族館員は、人工の尾鰭を付けられないかと考え、ブリヂストン社に相談、やがて・・・・・というようなお話。 人間ドラマの部分がかなりいい加減というか、幼い作りで、まあこういう映画はイルカがジャンプするところとか泳ぐところがあればいいという考え方なのかもしれないけど、大人が見ても満足する作品にはイマイチ足りない印象でした。 ・・・・それにしてもこのところ、夏枯れであんまり見たい映画がないんだよなあ。

90.「今宵、フィッツジェラルド劇場で」 7/14、シネ・ウインド。 評価★★★ ロバート・アルトマン監督の遺作。 ミネソタ州のフィッツジェラルド劇場で長らく続いた生ラジオ番組のための公開ミュージックショー。 このショーが、劇場を資本家が買収したために最後を迎える。 その日の芸人たちの様子や、訪れた資本家、舞台裏に登場する謎の女などなどを描きながら、一つの時代の終わりと芸人たちの悲喜こもごもの人間模様を描いた作品。 飛び抜けて面白いとは思わないけれど、まあそれなりに見られる映画になっていると思う。 

89.「明日、君がいない」 7/6、シネ・ウインド。 評価★★★☆ オーストラリア映画。 ムラーリ・K・タルリ監督作品。 監督が制作当時19歳だというので話題になった。 高校生たちの蹉跌と悩みに満ちた日常、そして自殺者が出る様子を、アメリカの高校銃乱射事件を素材とした 『エレファント』 の手法を真似て描いている。 作りは結構意識的というか、観客への一種のトリックをひそませながら構成されており、ややあざとい感じもしないではないし、またオーストラリアの高校生ってこんなに同性愛が多いのかなあとか、人口構成は白人が今でも大多数なのかなあという疑問も湧かないではないが、それなりに印象に残る映画だとは言えそうだ。 

88.「きみにしか聞こえない」 7/6、Tジョイ新潟万代。 評価★★★☆ 乙一原作、荻島達也監督作品。 同級生とうまくつきあえず孤立している首都圏の女子高校生 (成海璃子) が、ある日おもちゃのケータイを拾ったことを機に、長野在住の青年 (小出恵介) と心の通話をすることが可能になる。 彼と会話することで次第に心を開き、前向きに生きられるようになっていく彼女。 同時に別の成人女性とも時々通話ができるようになる (ここにちょっとした 「実は・・・」 がある)。 やがて彼女は東京に出張してくる青年と会う約束をするが・・・・・。 孤独な若者が心の対話を通じて生きる力をつけていくというお話だが、なかなかうまくできていると思う。 映像も印象的。 ただ、青年の描き方がやや優等生すぎて、彼にも悩みがあるのだが、それが隠れ気味になるのが惜しい。

87.「アポカリプト」 7/1、WMC新潟。 評価★★★☆ メル・ギブソン監督作品。 15世紀の中米のマヤ王国とその周辺部を舞台に、西洋人が渡来する直前の現地部族同士の戦い、奇怪な宗教、家族を守ろうと戦う若者の姿などを描いている。 当時の現地部族の姿や言葉や仕草などが面白く、まあどこまで歴史的事実に忠実なのかは分からないが、それなりに楽しめる映画になっていることは確かだ。 もっとも、時代と場所を変えた 「ダイ・ハード」 みたいな感じではあるが。 メル・ギブソンは 『パッション』 ではやたら残虐なシーンばっかりで、この人は真性サディストなんじゃないかと思われたが、そしてこの映画にもそういう面は多少出てはいるが、エンタメ性があるので作品の出来は悪くないと言えるだろう。

86.「ドレスデン、運命の日」 6/30、UCI新潟。 評価★★★☆ ドイツ映画、ローラント・ズゾ・リヒター監督作品。 第二次大戦末期、敗色濃いドイツ。 その東部に位置する美しい古都ドレスデンは、1945年2月の英国軍の集中爆撃によって一夜にして灰燼に帰し、多くの市民 (数万とも数十万とも言われる) が死亡した。 この歴史的事件を縦糸に、数日前に撃墜されて負傷した英国人パイロットの青年と病院勤務の若い看護婦との恋というフィクションを横糸にして描いた映画。 ヒロイン (フェリシタス・ヴォール) はなかなか可愛いが、英国人パイロットをそれと知りつつこっそり看護するのはいいとして、彼と恋に陥る過程はやや説明不足で、二人の関係も都合がよすぎる感じ。 むしろヒロインの婚約者 (ベンヤミン・サドラー) が好演だと思う。 彼を含めヒロインを取り巻く人々やその動きがなかなかに面白い。 後半、爆撃のシーンが長々と執拗に続き、実際相当すごかったんだなあ、という印象を否応なく抱かされる。 残っているドキュメンタリーフィルムを適宜挿入する手法もとられていて、それなりに効果的。 ただ前半と合わせて2時間半という上映時間はやや長いような気がする。 もう15分くらい削るとまとまりのある映画になったのではないか。 しかしともあれドレスデン空爆という歴史的事件を一本の映画に収め、充実した作品に作り上げたことを評価すべきであろう。    

85.「パラダイス・ナウ」 6/29、シネ・ウインド。 評価★★ フランス・ドイツ・オランダ・パレスチナ合作、ハニ・アブ・アサド監督作品。 イスラエル占領地のヨルダン川西岸地区の町ナブルスを舞台に、二人のパレスチナ人青年がパレスチナ人組織に依頼されて自爆攻撃遂行を志願する、という重いテーマを扱った映画である。 実は前半、睡魔に襲われてうつらうつらしてしまい、筋書きをよくたどれなかった。 後半は目がさえて、いったん自爆に出かけながらアクシデントで二人が離ればなれになってしまい・・・・・というあたりから後はきちんと見たのだけれど、映画として説得性があるかどうか、疑問。 問題は二人の青年の行動と思惟なわけだが、映像と言葉によって示されるものに観客を説得する力があるのか、私としては首をかしげざるをえなかった。 町の様子などは興味深かったけれども。

84.「華麗なる恋の舞台で」 6/29、シネ・ウインド。 評価★★★☆ イシュトヴァン・サボー監督作品。 原作はモームの『劇場』(私は未読)。 1930年代のロンドンを舞台に、中年の舞台女優 (アネット・ベニング) がたまたま知り合ったアメリカ人青年に夢中になり恋の情熱で女優としてのマンネリを脱却しかかるが、青年は若い恋人を売り出してくれるよう彼女に頼み・・・・・というような筋立て。 アネット・ベニングが快演で、若い男に夢中になって舞い上がったり、彼に若い恋人がいると知って落ち込んだりする中年女優を見事に見せてくれる。 夫役のジェレミー・アイアンズや男の友人役のブルース・グリーヌッド、ヒロインに付き添って演技を指示するマイケル・ガンボンなど、彼女を囲む男優がまた良い。 まとまりのある佳品である。

83.「Watch with me――卒業写真」 6/22、Tジョイ新潟万代。 評価★★☆ 瀬木直貴監督作品。 40代のカメラマン(津田寛治)は不治の病にかかり余命幾ばくもない。 死に際は故郷の久留米に帰って過ごそうと決意し、妻 (羽田美智子) が教師を辞めて付き添っていく。 実は彼には中学時代思い出に残る少女がいた・・・・・。 というわけで、メインは中学時代の思い出の異性なのかと思って見に行ったのだが、メインはむしろ末期医療なのだった。 でも、主人公は妻が献身的だし、故郷には帰る家が残っているし、昔の同級生も 「いい人」 ばっかりだし、つまりきわめて恵まれた人なのであって、どうも話としてリアリティが感じられないのである。 中学時代の思い出の異性を演じる少女も、申し訳ないが私の好みに合いませんでした。

82.「13/ザメッティ」 6/22、シネ・ウインド。 評価★★★ 2005年フランス映画、ゲラ・バブルアニ監督作品。 モノクロ、シネマスコープ・サイズ。 グルジアからフランスに移民してきた青年。 しかしろくな仕事がなく老いた父や体の悪い兄を抱えて生活苦に。 たまたま仕事先で偶然手に入れた封筒に入っていた列車の乗車券とホテルの宿泊券でパリにおもむいた彼は、そこで仕事にありつく。 しかしそれはロシアン・ルーレットを用いた賭に出る仕事だった・・・・。 モノクロの画面が効果的で、お話としてもそれなりに面白い。 ただしワン・アイデアで作られた作品だから、複雑な展開を期待すると失望する。

81.「ラストラブ」 6/18、UCI新潟。 評価★★☆ 藤田明二監督作品。 かつてニューヨークでジャズのサックス吹きとして著名だった中年男 (田村正和) は、妻を病で亡くしたことをきっかけに日本に戻り、友人の旅行会社に勤めながら小学生の娘を育てる毎日。 ある日ひょんなことから県庁勤務の若い女性(伊東美咲)と知り合い、ニューヨークに団体旅行客を連れていくとき飛行機の中で再会する。 彼女は婚約者がいて、ニューヨークに飛んだのは結婚式場を吟味するためだった。 ところが彼女は滞在中に婚約者から婚約解消の電話を受けてショックを受け、たまたまそれを慰めた田村正和と接近して・・・・・というようなお話。 うーん、なんか手軽なテレビドラマを見ているような感じだなあ。 田村正和は団塊の世代を映画の中でも自称しているが、とすると小学生の娘がいるというのはどうも年齢的に無理があるような気がするんだけど、どうでしょう。 その他の面でも、あたりさわりのない進行で、物足りなさが残る。  

80.「女教師狩り」 6/17、シネマヴェーラ渋谷。 評価★★★ 75・76と同じ日活ロマンポルノ特集、東京最終日の夕方、時間があったので1本だけ見てみました。 1982年、鈴木潤一監督作品。 湘南の高校の美人教師 (風祭ゆき) は東京で編集者をしている妻子持ちの愛人がいる。 しかし受け持ちの男子生徒が暴行の嫌疑を受けて退学してしまう。 やがてその嫌疑が冤罪だと判明。 それで・・・・というようなお話。 まず、ヒロインがすらりとした美人なのがいい。 編集者との濃厚なセックス描写もリアル。 副ヒロインで出てくる女子高生も美形で、彼女が男子生徒と2度にわたって繰り広げるシーンも書き割りがよく考えられていて、美的。 今回3本見たロマンポルノの中では一番の出来だと思うけど、フィルムが痛んでいるのが残念。

79.「ロストロポーヴィチ 人生の祭典」 6/15、イメージフォーラム(渋谷)。 評価★★★ アレクサンドル・ソクーロフ監督作品。 先頃亡くなったロシアのチェリスト・ロストロポーヴィチと夫人のヴィシネフスカヤの生涯や芸術観を綴った映画。 日本語タイトルにはロストロポーヴィチの名しかないが夫婦に等量の時間を割いている。 広い交友関係や初演曲を小沢征爾指揮のウィーンフィルと練習しているところなど、クラシックファンには興味深く見られる映画である。

78.「あるスキャンダルの覚え書き」 6/15、シャンテシネ(日比谷)。 評価★★☆ 英国映画。 リチャード・エア監督作品。 下層階級が多い地区の学校教師を勤める初老の女性 (ジュディ・デンチ)。 ある日、新任の若い女教師 (ケイト・ブランシェット) が15歳の男子生徒と関係を持ってしまったことを知り、その秘密を武器に彼女と友達づきあいを始める。 実は彼女は以前にも同様の関係を同僚女性と持ったことがあった・・・・・。 うーん、デンチが主役のなずなんだろうけれど、描き方が配分の適切さを欠いていて、ブランシェットの放縦な行為がわりに前面に出ていて、作品の統一感を損なっている。 また、デンチがブランシェットに目を付ける理由がイマイチよく分からない。 オールドミスの無聊と孤独を慰める相手として、ブランシェットが向いているようには見えないからだ。

77.「恋する夏の日 私。恋した」 6/14、新宿トーア。 評価★★☆ 広木隆一監督作品。 母をガンで喪った女子高校生のヒロイン (堀北真希) は、自分も同じ病に冒されて余命幾ばくもないと知り、以前住んでいた銚子の町へ旅立つ。 かつて好きだった10歳ほど年上の男性 (窪塚駿介) に再会するためであった。 彼は優しく彼女を迎えてくれるが、世間的にはぱっとしない職業を営んでおり、しかも子持ち年上女 (高岡早紀) と不倫関係にあった。 そこでヒロインは・・・・というようなお話である。 一種の青春映画であるが、カメラワークが独特で、やや素人めいた映し方をしているのが内容とマッチして新鮮な感じがする。 ただ、筋書きは途中で意外な方向に行きそうでいて実は行かなかったりして、もう少し練って欲しいと思った。 最後のシーンも、イメージ優先で、理屈から言うと余り釈然としない。  

76.「桃尻娘」 6/13、シネマヴェーラ渋谷。 評価★★☆ 同じく日活ロマンポルノ特集の1本。 橋本治原作、小原宏裕監督作品、1978年製作。 女高生レナはある日、あっけなく初体験をしてしまう。 一方彼女の親友裕子は男関係に悩んだあげくに失踪してしまう。 レナは友達の後を追って、信州、金沢、京都へ・・・・・というような筋書き。 原作者の橋本治もちょい役で登場している。 お話としてはなかなか面白い映画なのだけれど、肝心の女高生2人がぱっとしないのが難点。 特に裕子役はどう見てもイモっぽく、この時代、キレイな女の子はなかなか脱がなかったのかなあ、なんて考えてしまいます。 むしろ旅の途中で会う若夫婦の妻役の片桐夕子が流石といえるシーンを見せてくれる。

75.「鍵」 6/13、シネマヴェーラ渋谷。 評価★★ 上京したら渋谷の名画座で日活ロマンポルノの特集をやっていた。 これはその1本で、谷崎潤一郎の有名な小説を原作とした1974年の神代辰巳監督によるもの。 観世栄夫・荒砂ゆき主演。 『鍵』 は何度か映画化されており、私は97年の池田敏春監督 (柄本明・川島なお美主演) のは見ているが、これは初めて。 ううむ、ヒロインがあまり美貌に優れず、したがって夫が妄想をふくらませていく様がもう一つ説得性をもって迫ってこない。 妄想は映像よりもブンガクでこそ膨らむのではないか、などと思ってしまう。 あと、どうせなら怪しげな娘にも脱がせたらどうかと考えてしまう私なのでした。

74.「300 〈スリーハンドレッド〉」 6/11、UCI新潟。 評価★★☆  アメリカ映画。 ザック・スナイダー監督作品。 古代ペルシャ戦争に材料を取った映画で、レオニダス王に率いられたスパルタ軍精鋭部隊300名がペルシャの大軍相手に奮戦し、全員戦死するまでを描いている。 何というのか、じつに単純な戦争映画で、スパルタは自由を守る側、ペルシャ軍は東洋的専制と色分けされている。 こうまであっけらかんとしているとかえって爽快なくらいだけれど、私のようにひねくれた人間にはどことなく不気味な感じが残ってしまうのである。

73.「監督・ばんざい!」 6/9、WMC新潟。 評価★★★ 北野武最新作。 暴力映画は作らないと宣言した映画監督のキタノタケシが、代わりに小津安二郎ばりの家族映画を初め様々な映画を作ろうと試みるがことごとく失敗し、最後には映画と現実が入り乱れて何がなんだからわからなくなり・・・・・というような作品。 まあ北野武らしいと言えばらしいが、おちゃらけやユーモアやバカふざけがある一方で、全体を虚無感が通底しており、楽しくも淋しい映画だと言うべきだろうか。

72.「そのときは彼によろしく」 6/8、Tジョイ新潟万代。 評価★★ 平川雄一朗監督作品。 小学生時代に仲が良かった男女3人。 その一人智史 (山田孝之) は子供時代から夢見ていたようにアクアプランツの店を開いているが、経営状態はあまり良くない。 ある日、そこに見知らぬ若い女性 (長澤まさみ) が訪ねてきていすわってしまう。 彼はほどなく彼女が有名モデルであることを知るが、実は彼女こそ小学生時代の幼なじみの少女だった。 その彼女はなぜ今になって彼を訪ねてきたのか・・・・・。 全体としておとぎ話タッチの作品であるが、それと承知して見ていてもどこか物足りない。 設定や進行が甘すぎて、登場人物も善意の人間ばっかりであり、いくら何でも芸がなさすぎると言いたくなってしまうのである。 後半の進行も切れ切れになっていて今ひとつ。

71.「約束の旅路」 6/8、シネ・ウインド。 評価★★★☆ フランス映画。 ラデュ・ミヘイレアニュ監督作品。 1984年、スーダンにたどりついたエチオピア難民たち。 しかし生活は困窮を極めている。 夫や子供に死なれ、ただ一人生き残った男の子と暮らす母親は、エチオピア難民のうちユダヤ人とされる人々だけがイスラエルに移住できるところに目を付け、ユダヤ人のふりをしてイスラエルに行き生き延びて何者かになるよう子供に命じる。 少年はイスラエルでリベラルで裕福なフランス系ユダヤ人家庭に引き取られて育てられる。 しかし自分のアイデンティティに悩み、学校や社会でも様々な事件に遭遇してゆく・・・・。 物語としてはやや類型的で甘いところもあるが、背景にある社会問題や民族問題がきわめて重く、欠点を十二分に補っている映画である。 旧約聖書のシバの女王伝説に端を発する黒人のユダヤ人という存在、イスラエル社会内部に見られる様々な出自のユダヤ人同士の確執、アフリカと中東地域の錯綜した関係などなど、盛り込まれた内容は豊富で多岐に渡り、考えさせられるところの多い作品と言える。

70.「パイレーツ・オブ・カリビアン ワールド・エンド」 6/4、UCI新潟。 評価★★ ゴア・ヴァービンスキー監督作品。 第1作から数えて3作目だけれど、登場人物が多くて筋書きが分かりにくいし、全体的にごたごたしており、3時間近い上映時間も長すぎる。 もう少しすっきり作ってほしいものだ。 それと、ジョニー・デップの役どころがもう一つ曖昧というか、アイロニカルな態度なりの味が出ていないのも問題だろう。

69.「ルワンダの涙」 6/2、シネ・ウインド。 評価★★★★ 英国映画 (正確にはドイツとの合作)。 マイケル・ケイトン=ジョーンズ監督作品。 90年代に起こったルワンダ大虐殺事件を描いている。 この事件を題材にした映画としてはすでに 「ホテル・ルワンダ」 があるが、あれとはやや視点を異にし、ルワンダに滞在している白人宣教師や教師、駐留している国連軍に主たる光を当てている。 大虐殺が進む中、事態を収めるどころか撤退してしまう国連軍、地元民を置き去りにして逃げ出す白人たち。 "Where are you going?" と地元民少女が逃亡する白人教師に問いかける言葉は、かの有名な小説 『クオ・ウァディス』 を想起させる。 20世紀はナチによるユダヤ人虐殺を経たにもかかわらず、なお大虐殺を阻止することができなかったという事実は重い。

68.「主人公は僕だった」 6/1、WMC新潟。 評価★★☆   アメリカ映画。 マーク・フォースター監督作品。 数字に強い国税局職員である主人公。 ある時、小説の語りが耳に聞こえてくる。 その小説は彼自身を主人公にしているのだった・・・・。 アイデアは悪くないのだが、それを踏み越えていないという映画である。 特に前半はテンポが悪く、もたついている。 後半は少し面白くなるが、盛り上がると言うほどではない。 主人公を演じるウィル・フェレルが悪くないだけに惜しい。

67.「ブラックブック」 5/29、UCI新潟。 評価★★★★ ポール・バーホーヴェン監督作品。 ナチス時代のオランダを舞台に、ユダヤ人であるが故にナチに家族を惨殺された美しい女性 (カリス・ファン・カウテン) がレジスタンス・グループに身を投じ、グループの要請でナチス将校に近づいていくが、本当に彼を愛してしまい・・・・というようなお話。 第二次大戦中のナチスへのレジスタンスについては、例えばフランスなどでもその神話性が明らかになりつつあるが、この映画でもレジスタンス・グループの内実をかなりシビアに描いており、また戦争直後の 「戦犯」 へのすさまじい報復ぶりや、連合軍とナチス将校の奇妙な癒着など、連合軍やオランダの正当性を相対化する視線がたいへん刺激的である。 映画としては古典的な作りだが、裏切りにつぐ裏切りを描いた本作ではそうしたスタイルは一種安定性を確保するために必要だったのだろう。 内容の斬新さとスタイルの古典性で充実した作品に仕上がっている。 新潟ではわずか2週間の上映で終わったのは惜しい。 新潟の映画ファンは何をやってるんだろうねえ。  

66.「ラブソングができるまで」 5/25、Tジョイ新潟万代。 評価★★★ マーク・ローレンス監督作品。 かつて大人気を誇ったロック・スター (ヒュー・グラント) が、たまたま知り合った若い女性 (ドリュー・バリモア) の作詞の才能に気づき、彼女と協力してヒット曲を生み出し、あわせて彼女と恋仲になっていく様を描いている。 手慣れたハリウッド映画という印象で、それなりに面白くはあるけれど、おきまりのラブコメディーで斬新さは感じられない。 ただ脇役に工夫が凝らされているところが買いか。 脇役の一人、人気絶頂の少女ミュージシャン (ブッディストの歌手という設定!) 役で出てくるヘイリー・ベネットが魅力的だ。 

65.「ダニエラという女」 5/25、シネ・ウインド。 評価★★☆ フランス映画。 ベルトラン・ブリエ監督作品。 世界一の美女と言われるイタリア女優モニカ・ベルッチを主演にしている。 娼婦の彼女を、冴えない男が宝くじに当たったからと買いに来る。 そこから始まる二人の関係。 しかしフランス映画だけあって、ストレートな描き方と言うよりは、ちょっとひねった物語になっている。 モニカは巨乳を始めとして裸身を惜しみなく見せているので、女優はやっぱりこうじゃなくちゃいけないと納得してしまうけれど、映画としての充実度はイマイチの印象もある。 

64.「パッチギ! ラブ&ピース」 5/21、UCI新潟。 評価★★☆ 井筒和幸監督作品。 一昨年作られて評判になった第1作の続編で、やはり在日の生活を描いている。 ただし、登場人物には或る程度連続性があるが、前作のカップルがそのまま登場するわけではないので、在日の別の家族を取り上げた作品と考えたるべきかもしれない。 場所も京都から東京に移っており、時代は1974年から75年にかけてである。 映画的な面白さは前作同様それなりにある。 ただし、ヒロインのキョンジャの生き方には多少の不自然さがあり、制作側が政治性を優先させたための無理な設定が感じられる。 また時々挿入される戦争時のシーンも、ちょっと薄っぺらい感じがした。 井筒監督の政治的認識は、はっきり言って小学生並みであるから、せっかくの映画的な充実度がそれによって減じたことを惜しむ。 もっと自分の才能の本質を自覚した方がいいんじゃないかなあ。 第1作でも政治性によって多少作品の純度が損なわれていたが、ここではそれがひどくなっており、第2作は第1作を超えられないという映画界の法則 (?) は、この作品においても守られてしまったのでありました。

63.「初雪の恋〜ヴァージン・スノー」 5/18、Tジョイ新潟万代。 評価★★★ 日韓合同映画。 カン・サンヒ監督作品。 イ・ジュンギと宮崎あおいの主演。 陶芸家の父親が京都に滞在するため韓国から日本の高校に転校してきたイ・ジュンギが、ふとしたことから宮崎あおいと知り合い、お互い言葉がよく通じないながらも恋におちいるというお話である。 ありがちなストーリーだけど、前半はそれなりに面白い。 イ・ジュンギの動と宮崎あおいの静の対比も悪くない。 ただ、後半の物語展開はやや性急かつ希薄で、もうすこしじっくり練った筋書なら傑作になったのにと惜しまれる。 イ・ジュンギは 『王の男』 で下手な女優をしのぐ美しさを披露して注目されたが、本作では全然違った役柄だけどやはり魅力的である。 半分は彼を見るための映画かも知れない。

62.「檸檬のころ」 5/18、Tジョイ新潟万代。 評価★★ 岩田ユキ監督作品。 栃木県の田舎町に住む高校生たちの群像を描いた青春映画。 才媛で吹奏楽部の指揮者を務める栄倉奈々と、物書きになりたいと考えている谷村美月の2人のヒロインを中心に、栄倉と中学生時代に同級で彼女に思いを寄せる野球部員、逆に栄倉が好きな野球部のエース (ただし勉強はダメ) などが登場する。 しかし脚本が弱く、登場人物たちの関係や心の動きが刹那的にしかとらえられておらず、大人が見るには物足りない映画と言うしかない。 最近の日本映画、脚本がナッテナイ作品が目立つような気がするのだが、どうだろうか。

61.「善き人のためのソナタ」 5/13、UCI新潟。 評価★★★★☆ 2007年アカデミー賞外国映画部門賞受賞作のドイツ映画。 フロリアン・ヘンケル・フォン・ドナースマルク監督作品。 1980年代半ばの東ドイツを舞台に、政府の思想統制に懊悩する芸術家たちと、彼らの言動を盗聴する作業に没頭する秘密警察 (シュタージ) を描いている。 芸術家のカップルを盗聴するうちに、彼らの享受する音楽や詩に魅せられていく秘密警察署員。 そのために本来上司に届け出るべき問題発言をも見逃してやるようになる。 やがて芸術家は西ドイツの雑誌に東ドイツの暗部を投稿しようとする。 言うまでもなく重大な国家機密違反行為だが、その時に秘密警察署員は・・・・・。 ベルリンの壁崩壊後に明らかになった膨大なシュタージの盗聴行為を、映画の形で分かりやすく描くのみならず、その中に現れた矛盾や人間的な葛藤に迫った秀作で、深い感銘が残る。 未見の方は是非!! 新潟では今週金曜日(5/18)までしかやっていないので、良質の映画を見逃したくない方はお急ぎ下さい! (5/16追記。 ワタシがここでほめたから、というわけでもないだろうが、この映画の上映期間は1週間延びて5/25までとなりました。 お見逃しなく!)

60.「祇園の姉妹」 5/11、シネ・ウインド。 評価★★★ 昨秋東京でやっていた溝口健二特集が、作品限定で新潟にもやってきた。 これはそのうちの一本で、昭和11年作。 性格の正反対な祇園の芸者姉妹を描いている。 義理人情を大事にし、没落し財産を失って転がり込んできた元旦那に親身に尽くす姉 (梅村蓉子)、自分の境遇を呪って、男に敵愾心を抱きつつ次々と男を利用してのしあがろうとする妹 (山田五十鈴)。 結局二人とも男の身勝手の犠牲にされてしまうのだが、両者の対照や、戦前の祇園の様子が面白い。

59.「オーロラ」 5/11、シネ・ウインド。 評価★★☆ フランス映画。 バレエのダンサーが主役を演じているおとぎ話風のお話である。 或る王国で踊るのが大好きなプリンセスが、国家財政の逼迫から裕福な外国の王子と政略結婚させられそうになるが、本人は自分の肖像画を描いてくれた若い画家に惹かれていく、というお話。 物語としては他愛がなく、かといってバレエシーンで魅了するほど踊りに満ち満ちている映画でもないので、中途半端な印象が残る。

58.「名探偵コナン 紺碧の棺 (ジョーリー・ロジャー)」 5/6、UCI新潟。 評価★★★ おなじみのシリーズ。 高3の次男と中1の娘を連れて見に行ってみた。 ここ2、3年、このシリーズの出来はイマイチの感があったが、今回はまあまあかな、という印象。 もっとも最後のところはもう一ひねり欲しい感じだが、宝探しという古典的なモチーフはやはり作品に緊張感をもたらすのだなあ、と思う。

57.「クィーン」 5/3、WMC新潟。 評価★★★★☆ スティーヴン・フリアーズ監督作品。 元皇太子妃のダイアナが事故で死んだとき、英国王室はすでに離婚により縁が切れた人間のことだからと、これを無視する態度をとった。 しかし大衆は死んだダイアナを称揚し、何らの公式的弔意も示さない王室を強く非難した。 王室不要論まで登場するに及んで、労働党から首相になったばかりだったブレアが女王に妥協を進言して事態を収めていく様を克明に描いている。 大人が見る映画として実に面白い。 緊迫感に満ち、女王役のヘレン・ミレンを初め、フィリップ殿下、ブレア首相、ブレア夫人などいずれも芸達者な役者が演じていて、微妙な人間関係の綾だとか、英国王室の日常生活なども垣間見ることができ、映画の楽しみを満喫できる作品と言える。

56.「バベル」 5/1、WMC新潟。 評価★★☆ アレハンドロ・ゴンザレス・イニャリトゥ監督作品。 舞台をアメリカ、メキシコ、モロッコ、そして日本にとり、遠く隔たった地域の人々が実は意外なつながりのなかで事件に際会する様子を描いている。 ブラッド・ピットやケイト・ブランシェット、ガエル・ガルシア・ベルナル、役所広司、菊地凛子が出演し、菊地がアカデミー賞の候補になったりして話題を呼んだ映画である。 というわけで期待して見たわけだが、残念ながらイマイチであった。 構想としては面白いのだが、最後にまとまった感銘だとか印象だとかがあまり残らない。 菊地凛子はヌードを披露しているけれど、脱ぐ必然性があるのだろうか、と思ってしまう。 他の人物の運命にしても、何となく後味がよろしくない。 うーん・・・・・・

55.「神童」 4/30、WMC新潟。 評価★☆ 萩生田宏治監督作品。 音大を目指してピアノの練習に励む松山ケンイチは、ある日ふとしたことで中学生の成海璃子と知り合う。 彼女は抜群にピアノがうまかったが、行動に変わったところがあった・・・・・。 というようなお話なのだが、さっぱり面白くない映画であった。 筋書きに納得のいかないところが多くて脚本のお粗末さがきわだっているし、主人公二人にもとりたてて魅力がない。 何て言うのかな、この程度でいいだろうと思って作ったのなら、客をバカにしていると言うしかないのである。 

54.「悪夢探偵」 4/27、シネ・ウインド。 評価★★★☆ 塚本晋也監督作品。 自殺願望者の夢の中に入って自殺に導くと思しき犯罪が続発。 犯人に迫ろうとする女刑事 (hitomi) は敢えてキャリアの座から現場に降りてきたエリートだったが、夢の中に入り込む能力を持つ青年 (松田龍平) を知り、協力を依頼する・・・・・。 塚本監督の映画らしく、女優への執拗な視線がなかなかいい。 hitomiは歌手だそうだけど、塚本監督の抜擢は間違っていなかった。 エリート女性刑事のさまざまな表情が実にセクシーに捉えられている。 脱がせるところまでいかなかったのが、ちょっと残念かな(笑)。  

53.「ブラッド・ダイヤモンド」 4/13、Tジョイ新潟万代。 評価★★★★ エドワード・ズウィック監督作品、レオナルド・ディカプリオ主演。 内部抗争に明け暮れるアフリカ国家を舞台に、不正に輸出されるダイヤモンドとその利権に群がる男たちを描いている。 ディカプリオがダイヤモンドの密売人を演じてなかなか味がある。 そこに内部抗争のために息子をさらわれて悲嘆にくれる黒人男性が絡んできて、ハリウッドだから何となく先は見えるけれども、それなりに観客を惹きつけ離さないだけの筋書きと迫力に満ちた画面が展開される。 背景にあるダイヤモンドをめぐるアフリカの惨状はこの映画に一種の社会性を与えているが、メッセージ的には欧米で平和に暮らしている市民が受け入れやすい安易さも感じられて、あくまでメッセージ映画としてではなく第一級の娯楽作品として見るべき映画だと思う。 

52.「アルゼンチンババア」 4/12、WMC新潟。 評価★★ よしもとばなな原作、長尾直樹監督作品。 私は原作は未読だが、よしもとばななの作品だというので何となく雰囲気は予想がつく。 しかしこの映画がそうした雰囲気を出せているかというと、全然ダメなのである。 まず、妻に先だだれてそれんを受け入れられず失踪する中年男に役所広司が扮しているのだが、この人、どうもこういった軟弱男を演じるには向いていないと思う。 人間的な弱さがまるっきり感じられない。 次に、タイトルロールを演じる鈴木京香も、ババアと言うには若くてキレイすぎるし、この世から一歩浮いている感じが出ていない。 筋書きの展開にもよしもと作品らしい不思議さがない。 おまけに変なイルカ・イデオロギーが入り込んでいるし (これは原作のせいなのかな)、とてもじゃないけど評価できません。 唯一救いなのは、役所広司の娘を演じる堀北真希。 彼女の魅力で評価は☆プラス。 じゃなけりゃ★☆のところだなあ。

51.「あかね空」 4/9、UCI新潟。 評価★★☆ 浜本正幾監督作品。 江戸時代、京都から江戸にやってきて豆腐屋を開いた男 (内野聖陽) と彼に好意を寄せやがて女房になる女 (中谷美紀)、そしてそれを囲む人々の物語である。 まあそこそこ面白いけれど、あっと驚くようなところはなく、テレビの時代劇でも出てくるようなお話が継ぎ合わされただけ、という印象もある。 内野聖陽の一人二役は見ものかもしれない。

50.「デジャヴ」 4/9、UCI新潟。 評価★★★ トニー・スコット監督作品。 デンゼル・ワシントン、ポーラ・パットン主演。 予告編を見て漠然と予想していたのとはちょっと違った作品だった。 予告編では主演のワシントン演じる刑事がデジャヴの才能があり・・・・・と受け取れる内容だったのだが、本編では――ネタバレになるので比喩的な言い方をするならば――カラクリを被害者側からでなく犯人側から見るとこうなります、みたいな感じだった。 まあ、それはそれでハリウッドがお金と手間暇かけて作った映画だからそれ相応に面白いのではあるが・・・・・。

49.「13の月」 4/5、シネ・ウインド。 評価★★☆ 池内博之監督作品。 都会の仕事をやめてふらりと故郷に戻ってきた柏原崇。 かつて彼と恋仲だった大塚寧々は子持ちの開業医 (津田寛治) と結婚しようとしていた。 彼と彼女の間には昔或る事件があって、二人が結ばれなかったのもそのせいだったのである。 しかし、実は彼がいま突然故郷に戻ってきたのにも重大な理由があった・・・・・。 というようなお話なのだが、もう一つ物足りない感じがするのは、柏原と大塚の間に昔あった出来事がきちんと説明されていないからである。 私も映画を見ているだけではよく分からず、改めてネットなどで調べてみなくてはならなかった。 つまり、この映画は久しぶりに再会したかつての恋人同士の関係を情感優先で描写しており、なぜ二人が結ばれなかったのか、彼らが罪悪意識とどう戦ったのか、という肝心要――と私は思いますけど――のところはすっとばしているのである。 それは結局、大事なのは彼ら二人だけであって、他の登場人物はあくまで彼らの刺身のつまでしかない、という印象を呼び起こす。 つまり映画として出来がイマイチだ、という印象につながっていくのである。 なお、吉沢京子が柏原崇の母役で出ているのがいい。 顔にはだいぶシワが増えたし、体重管理のできないのはこの人の昔からの欠点だけれど、それでも相変わらず魅力的。 もっと映画に出て下さい。

48.「明日へのチケット」 4/5、シネ・ウインド。 評価★★★ エルマンノ・オルミ、アッバス・キアロスタミ、ケン・ローチという三人の著名監督によるオムニバス映画。 舞台は共通で、ドイツ語圏からローマに向かう国際急行列車。 そこに乗り合わせた客たち――空港の閉鎖でインスブルックから列車で帰国することになったイタリア人教授、つきそいの若い男性を従えた太った横柄な中年女性、スコットランドからサッカー見物に来た若い労働者3人組、そしてアルバニアの移民家族・・・・・。 それぞれの人生とそれぞれの仕事とそれぞれの課題をかかえた彼らをめぐるエピソードから、各監督の作風や物の見方が浮かび上がってくるのが興味深い。 私としては、真ん中のキアロスタミ監督担当部分に、欧米女性に対する異文化からの批判意識を感じて面白いと思ったのだけれど、どうだろうか。 

47.「ホリデイ」 4/1、WMC新潟。 評価★★★ ナンシー・マイヤーズ監督作品。 仕事一辺倒で疲れてしまい彼とも別れた米国女性 (キャメロン・ディアス) は、2週間の休暇をとって英国女性 (ケイト・ウィンスレット) とその期間だけ持ち家を交換する。 実は英国女性の方も思いを寄せていた男性に失恋したところであった。 二人は環境が変わったことにとまどいながらも新しい友人を見つけたり新しい恋を見つけたりしながら自分のそれまでの生き方を見直していく・・・・・てなお話で、まあいかにもハリウッド的な映画であり、それなりに楽しく見ることができて悪くはない。 悪くはないのだけれど、だけどもう一つツメが甘いんじゃないかと言いたくなるのは、女性監督の作品だから (そして私が男だから) かも知れない。 雰囲気で映画を見る人には結構買える作品じゃないかとも思うが、ワタシはどうしても論理性を求めてしまうもので・・・・・。 

46.「蟲師」 3/30、Tジョイ新潟万代。 評価★☆ 大友克洋が実写映画を作ったというのでどんなものかと期待して見に行ったが、これがトンデモな映画であった。 何か勘違いしているとしか思われない。 脚本が全然なってないし、ヤマもなければオチもない、というと 「やおい」 みたいだけれど、本当に文字通りそんな感じなのである。 カネ返せ、と叫びたい。

番外.「ハサミを持って突っ走る」 3/27、飛行機の中。 評価★★ 下↓に同じ。 アメリカでは原作がベストセラーになって日本でも邦訳が出ているようだが、この映画は今秋頃に日本公開予定だとか。 ライアン・マーフィ監督・脚本。 一家の息子の視点から、母があやしげな精神科医にかかって家族がめちゃくちゃになってしまう様を描いている。 母役がアネット・ベニングで、彼女、『真実の瞬間』 に出ていた頃はきれいだったけれど、この映画ではかなり老けたなと思う。 まあそれでも腐りかけの果実みたいな魅力もないではない、と言ったら失礼かな。 お話としては率直なところ面白みを感じなかった。

番外.「プレステージ」 3/27、飛行機の中。 評価★★☆ 英国から帰ってくる飛行機の中で見た映画。 日本では今年6月に公開されるのを3カ月も早く飛行機の中でやっているのはどういうわけなのかな。 クリストファー・ノーラン監督作品。 筋書きは、手品師同士の、人間関係および手品トリックをめぐっての確執で、そこに科学者が奇妙な形で絡むのであるが、何となく古い映画を見ているような印象があった。 つまり、科学者も手品師と類似のものと見られていた時代の感覚が甦ってくる、と言えばいいのかな。 そういう映画が好きな人にはいいかもしれない。 スカーレット・ヨハンソンが出ているが、どうも通り一遍の役で、彼女、こういう役を続けていてはいけないと思うんだがなあ・・・・。

番外.「ドリームガールズ」 3/21、飛行機の中。 評価★★★☆ 下↓に同じ。 なかなかよくできた映画だと思う。 歌も迫力がある。 ただし、いかにもハリウッドと言いたくなる作品だから、何と言うのかな、ある種のパターンを越えた面白さみたいなものはないんですよね。 ないものねだりかもしれないけど。

番外.「プラダを着た悪魔」 3/21、飛行機の中。 評価★★★☆ このコーナーでは映画館で見た映画のみ取り上げる原則であるが、たまたま英国行きの飛行機の中で見た映画について、番外として感想を記しておく。 これは最近日本公開されたが、何となく見そびれていた作品。 ファッション雑誌界の大物で仕事一辺倒のメリル・ストリープの助手に偶然からアン・ハザウェイがなり、やがて認められるが、相手の生き方に疑問を感じて離れる、というお話。 結構面白く、ハリウッド映画のいいところが出ている作品、と言ったらいいかな。 でも私個人の好みで言うと、アン・ハザウェイより、もう一人の先輩助手を演じるエミリー・ブラントのほうがいいな。 彼女をヒロインにした映画を見たい! 

45.「動脈列島」 3/20、ラピュタ阿佐ヶ谷。 評価★★★☆ 同じく、「ミステリ劇場へようこそ」 シリーズの一本。 増村保造監督作品、カラー、1975年製作。 名古屋在住の青年医師 (近藤正臣) は、新幹線の騒音に悩まされる庶民の看護医療に従事し、新幹線公害訴訟をも支援していたが、担当患者が死んだことをきっかけに、より直接的・効果的に国鉄に抗議する方策を考え、新幹線を爆破すると予告の手紙を出す。 これを受けた警察と国鉄は必死に犯人を捜し出そうとする・・・・・。 警察の特捜責任者を田宮二郎が、国鉄総裁を山村聡が演じ、正義感故の犯罪に手を染める近藤正臣の情念に対して、あくまで理性的に事件を解き明かそうとする田宮二郎、国鉄のかかえる矛盾を率直に訴える山村聡と、3人揃った役者が各人各様の味をうまく出していて、製作後30年を経た今でもお薦めできる映画だと言えるだろう。 

44.「黒の奔流」 3/20、ラピュタ阿佐ヶ谷。 評価★★★  同じく、「ミステリ劇場へようこそ」 シリーズの一本。 松本清張原作、渡辺祐介監督作品、カラー、1972年制作。 出世願望の強い若手弁護士 (山崎努) が殺人罪に問われた旅館女中 (岡田茉莉子) の弁護を引き受け、見事無罪を勝ち取る。 その功績が認められて恩師の令嬢 (松坂慶子) との婚約も成立、彼の未来は順風満帆に見えたが、ふとしたことから女中と関係を結んでしまい・・・・・というようなお話。 何とかのし上がろうとする青年のぎらぎらした欲望を山崎努がよく表現しているし、この頃の松坂慶子 (彼女はワタシと同年だからこのとき20歳だったはず) は実に初々しく良家の令嬢にぴったりだし、岡田茉莉子はこのとき39歳で、中年にさしかかった女の微妙さと怖さをうまく出している。

43.「脅迫(おどし)」 3/20、ラピュタ阿佐ヶ谷。 評価★★ 3/8にも東京で見た 「ミステリ劇場へようこそ」 シリーズから3本を立て続けに見てみた。 これは1966年制作の深作欣二監督作品、モノクロ。 一流企業に勤めるサラリーマンが妻と男の子と住む家に、世界的な医学博士の孫を誘拐した二人組が入り込み、居座った。 果たしてサラリーマン一家の運命はいかに・・・・・という映画だが、筋書き的には工夫が足りず、あまり面白いとは感じられなかった。 当時のエリートサラリーマンってクラウンに乗っていたのかなあとか、あの頃は 「ローン」 とは言わず 「月賦」 と言っていたんだっけな、とか、風俗面で懐かしいところや疑問点はありましたけれどね。 

42.「絶対の愛」 3/19、ユーロスペース(渋谷)。 評価★★★ 韓国の巨匠キム・ギドクの最新作。 下↓の渋谷実特集2本の直後、同じ建物のすぐ下の階に入っているユーロスペースで見た。 なぜか恋人に飽きられたと信じ込んだヒロインは、整形手術を受けて別の顔の主に生まれ変わる。 やがて彼女はかつての恋人に再接近、首尾良く仲良くなるのだが、彼女がかつての恋人だと知った彼は、今度は自分が整形手術を受け・・・・・・・。 前半は、まあ面白いけれどギドクにしては通俗的な筋書きだなと思っていたが、後半の展開がかなり迷路がかっていて、そこで本領発揮といったところか。 何となく安部公房の 『他人の顔』 を思い出した (小説の方。 映画化もされているが私は未見)。 なお、キム・ギドクはこの作品を最後にもう韓国では映画製作はしないと宣言している由。 どうなるのだろうか・・・・・ 

41.「仰げば尊し」 3/19、シネマヴェーラ渋谷。 評価★★★ 下↓と同じく同じく渋谷実特集の一本。 1966年制作、カラー、シネマスコープサイズ。 瀬戸内海の島で長らく教師を勤める男 (森繁久弥) のもとに、かつての教え子が訪ねてくる。 久しぶりの再会を喜んで酒をふるまい自宅に泊めるが、翌日早朝、教え子は自殺してしまう。 実は彼は妻と別れて別の女性と関係しており、そのことで悩んでいたのだった。 教師は教え子の遺骨を持って上京してその女性と会い、また在京しているかつての教え子を訪ねて近況を知っていくのだが・・・・・・。 『24の瞳』のパロディとして作られた映画だそうで、長年教師稼業を務めた初老の男が、社会に出た教え子たちのままならぬ生き方に直面して・・・・・というユーモアと苦みに満ちた、悪くない作品だと思う。

40.「霧ある情事」 3/19、シネマヴェーラ渋谷。 評価★★☆ 渋谷に比較的最近できた名画座・シネマヴェ−ラに初めて行ってみた。 渋谷実特集の2本立てである。 私は渋谷は名前も知らなかったけれど、生誕100年に当たる、戦後日本を代表する映画監督の一人だったという。 さて、本作は1959年制作のカラー映画、シネマスコープサイズ、舟橋聖一原作。 会社重役 (加東大介) の愛人である若い女性 (岡田茉莉子) を中心とした人間模様のごたごたを描いている。 最後は岡田が、彼女を慕う若い学生 (津川雅彦) と逃避行に、という展開。 岡田と津川が結ばれるまでに結構時間がかかるので、同情してしまいます (笑)。

39.「ラストキング・オブ・スコットランド」 3/17、有楽町スバル座。 評価★★★☆ ケヴィン・マクドナルド監督作品。 独裁・大量虐殺で知られるウガンダのアミン大統領をモデルに、スコットランド出身の若い医師が無鉄砲にアフリカで暮らし始め、ふとしたことから大統領と知り合い顧問医師に迎えられてからの体験を描いている。 独裁的な大統領の様々な側面が、若い白人医師の目を通して丹念に描かれており、どちらかというと 「ホテル・ルワンダ」 のようなドキュメンタリーに近い作品と言うよりは、独裁者の性格を描いた映画と言った方がよさそう。 いずれにせよ、主演二人はそろって好演で、悪くない作品だと思う。

38.「トリノ、24時からの恋人たち」 3/16、シネ・ウインド。 評価★★★ イタリア映画。 ダヴィデ・フェラーリオ監督作品。 簡単に言ってしまうと男2人女1人の三角関係のお話だが、語りや進行がヨーロッパ映画らしく一癖あるのに加え、男の一方は映画マニアという設定で、古いサイレント映画と話の筋が微妙に交錯しており、三角関係の話だと腑に落ちるまでしばらくかかるところが、まあまあ面白い。 難を言えば女があまり魅力的とは思えないことと、性格的にも無責任というかあんまり頭がよくなさそうなので、何でこういう女に男が二人もほれなきゃならないのか、よく分からないところかなあ。

37.「パフューム ある人殺しの物語」 3/12、UCI新潟。 評価★★★★ パトリック・ジュスキント原作 (私は未読)、トム・ティクヴァ監督作品。 独仏西合作。 鋭い嗅覚を持って生まれた若者が、やがて香水作りを天職と定め、究極の香水を作るために殺人をおかしていく、という筋書き。 かなりグロテスクな映像が入っているし、筋の展開にはハリウッド映画と違ってシニカルなところがあるので、人により好き嫌いが別れそうな映画ではあるが、私は評価する。 特に処刑場の広場のシーンと最後のシーンが素晴らしい。 ヒロインのレイチェル・ハード=ウッドが非常に美しく、撮影当時15歳とは思えぬ若々しい色気を見せてくれる。 スカーレット・ヨハンソンに強力なライヴァル出現。

36.「女の中にいる他人」 3/8、ラピュタ阿佐ヶ谷。 評価★★ 下と同じ特集で上映された映画。 エドワード・アタイア原作、成瀬巳喜男監督作品。 1966年制作、モノクロ・スタンダードサイズ。 鎌倉で中流上層の暮らしを営む平凡な家族。 しかしその夫 (小林圭樹) の親友 (三橋達也) の妻 (若林映子) が何者かに殺されるという事件が起こる。 それ以来態度がおかしくなった夫を案じる妻 (新珠三千代)。 やがて事件の真相が明らかになったとき、妻は・・・・・というようなお話だけれど、事件のからくりそのものは最初から見えており、心理サスペンスといってもあまり意外性も、また迫真性も感じられない。 私としてはむしろ、当時の鎌倉に住む中流上層家庭の暮らしぶりだとか、そういった風俗面に注目しながら見ていました。

35.「死者との結婚」 3/8、ラピュタ阿佐ヶ谷。 評価★★★☆ 上京したらラピュタ阿佐ヶ谷で 「ミステリ劇場へようこそ」 という特集を組んでいたので、そのうち2本を見てみました。 これはW・アイリッシュ原作を高橋治監督・脚本により映画化したもの。 1960年製作、モノクロ・シネマスコープサイズ。 未婚のまま妊娠して男に捨てられたヒロイン (小山明子) は四国に向かう船から身を投げて死のうとする。 そんな彼女を寸前で止めた青年は、四国の裕福な実業家の長男であった。 彼は米国留学中に知り合った日本女性と当地で結婚し、妊娠した若妻を連れて実家に帰る途中だった。 若夫婦に慰められて何とか生きていこうかと考え直すヒロイン。 しかしその直後、船は事故で沈没してしまい、ヒロインが意識を取り戻したとき、若夫婦が揃って死亡し、自分が妻の方と取り違えられていることを知る。 やがて出産した彼女は裕福な実業家の家庭に迎えられ、大切な孫を生んだ嫁として大事に扱われるのだが・・・・・。 アイリッシュ原作だけあって日本人離れしたダイナミックな筋立てだが、同時に登場人物たちが昭和30年代にはまだ残っていた奥ゆかしい日本人的な身振りや話し方をしており、言うならば混血児の優秀さがうまく出ている映画だと思う。 ヒロインの小山明子がたいへん美しいが (こういう美人を捨てる男なんていないだろうなあ、と思っちゃうのが玉に瑕か)、彼女はこの映画を撮った直後に大島渚と結婚している。

34.「赤い鯨と白い蛇」 3/8、岩波ホール(東京神保町)。 評価★★★ せんぼんよしこ監督作品。 下↓と同じく鯨がタイトルに入っているので見てみました。 老いたヒロイン (香川京子) は二十代の孫娘 (宮地真緒) を伴って房総半島の長男宅に向かう途中で電車を降り、昔住んでいた家を見に行く。 そこには今は縁もゆかりもない中年女性 (浅田美代子) とその小学生の娘が住んでいたが、家そのものはまもなく取り壊されることになっていた。 なつかしさのあまり話し込んでいると、そこにやはりこの家に以前住んでいたというセールスウーマンの女性 (樹木希林) が訪ねてくる。 女たちは実はそれぞれにしがらみや過去からの課題を抱え込んでいた・・・・。 途中まではなかなか面白い映画で、特に樹木希林がうまい。 上品なユーモアも感じられる。 ただ、最後に各人がしがらみを解決していくあたりは、やや性急でご都合主義の印象もあって、惜しい。 なおタイトルの 「赤い鯨」 は、老ヒロインの若かった時代、戦争末期に交流があった青年士官が、軍事機密のために潜水艦をそのように言い換えていたところから来ており、実物の鯨は出てきませんでした。 

33.「モーツァルトとクジラ」 3/7、シネスイッチ銀座。 評価★★☆ 最近なぜか鯨をタイトルに掲げた映画が目立つ。 鯨イデオロギーを研究している私としては気になるので、上京を機に見てみた。 これは2004年制作のアメリカ映画。 ピーター・ネス監督作品。 自閉症 (アスペルガー症候群) で社会への不適応に悩む人たちが主人公。 彼らはお互い励まし合うためにサークルを作っているのだが、そこで出会った男女が自閉症故の困難さを克服して結ばれるお話である。 タイトルは、二人が初デートするのがカーニバルで仮装する必要があり、そこでヒーローは鯨のぬいぐるみを着、ヒロインはモーツァルトの音楽が好きなのでこの作曲家の恰好をする、というところから来ている。 ほかにサークル仲間とホエール・ウオッチングに行こうという話も出てくるが、結局実現しない。 鯨イデオロギーはさておき、映画としては自閉症の人たちを材料にして前向きな生き方を提示しようというところには好感が持てるが、男女二人の恋愛譚としてはやや物足りない感じがした。 あと、主役二人に光が当たりすぎて、他の人たちがいかにも脇役という設定もどうもね。 群像劇になっていたら説得力が増したと思うなあ。 

番外 : 映画 『めぐみ――引き裂かれた家族の30年』 をめぐって。 新潟市にはシネコン3館と並んでシネ・ウインドという単館系の映画館がある。 八十数名しか入らない小さな映画館で、ハリウッドや日本の大手映画会社の一般受けする映画とは違った、どちらかというとマイナーでマニアックな、或いは映画を沢山見ている人にも楽しめるような種類の映画を上映している。 私もこの映画館ができて間もなく会員となり、現在まで色々な映画を見せてもらったし、また昨年度はドイツ特集を組んでもらうなど、お世話になっている。
 この映画館はまた 『月刊ウインド』 という雑誌を出している。 雑誌と言っても表紙と裏表紙を入れて28ページというパンフレット的なものだが、上映する映画の解説をはじめ、演劇なども含めた各種情報やエッセイなども掲載されている。 この雑誌の出たばかりの3月号に 「特集 2006年の映画を振り返る」 という記事が載った。3人の執筆者が自由に昨年の映画を回顧するという体裁である。
 その1人、野上純嗣氏がこんなことを書いている。 「『めぐみ』 は意図的な右より自民党の安易なプロパガンダ映画の臭いが漂っていた」。 私はこれを読んでびっくりした。
 『めぐみ』 は、周知のようにジェーン・カンピオンの製作総指揮、クリス・シェリダンとパティ・キムの両監督によって制作された。 日本の自民党が作ったわけではない。 彼らは自発的に、北朝鮮によって拉致された横田めぐみさんを初めとする人たちや、その家族の方々への人間としての同情・共感からこの映画を作ったはずである。 それとも、野上氏はこの映画が自民党の働きかけで作られた証拠でもお持ちなのだろうか? お持ちなら提示していただきたい。
 無論、『めぐみ』 がドキュメンタリー映画としてどの程度の出来であるかは、また別の問題である。 私の意見を言うなら、長らく拉致問題を放置していた政治家やマスコミの責任をもう少し丹念に追ってもらいたかったというところだが、いずれにせよどこが 「自民党の安易なプロパガンダ映画」 なのか、分からないと言うしかない。
 私がそもそも一番問題だと思うのは、『めぐみ』 が日本人によってではなく、外国人によって作られた、という事実である。 日本人の映像関係者はいったい何をしていたのか? いや、日本人によるドキュメンタリー制作も今になって進行中らしい (下記URL↓参照) けれど、いずれにせよ外国人に先んじられたという事実は消えないのであり、それを恥ずしいと思うことの方が先決であろう。 そして野上純嗣氏は、職業は 「映像作家」 であるはずである。 映像作家として恥ずべきこの事実をどう思うのか、ちゃんと明らかにしてもらいたいものだ。

  http://kouzanji.s220.xrea.com/ 

32.「叫」 3/2、Tジョイ新潟万代。 評価★★★ 黒沢清監督作品。 下の作品↓に続けて見てみた。 というか、新潟のような地方都市では作品によっては東京とは上映期日がずれるので、時としてこういうことになる。 奇妙な殺人事件を追う刑事 (役所広司) が、もしかすると自分が真犯人かも知れないと思い始め・・・・・というような物語。 まず、『LOFT』 と本作を連続して見ると、両者の類似がはっきり分かる。 つまり黒沢清はマンネリに陥っているということですね。 筋書きの展開はしかし、こちらのほうがめりはりがはっきりしていて冗長さがなくいいと思うが、ところどころ必然性がよく分からないシーンがあったりして (伊原剛志が消えるシーンとか)、何となくすっきりしないところが残る。 葉月里緒菜が不気味な役で登場。 彼女、ほおが少しこけてきて、この役にぴったりですね。

31.「LOFT」 3/2、シネ・ウインド。 評価★★☆ 黒沢清監督作品。 若い女流作家のヒロイン(中谷美紀)は作品が書けず、気分を変えるために田舎に転居する。 転居先の隣の建物には、千年前のミイラを研究する大学教授 (豊川悦司) が住んでいた。 やがて彼女の周囲では不気味な現象が起こり始め・・・・・。 うーん、全体的に冗長で、もう少し削った方がいいと思うし、肝心要のミイラがうまく筋書きとリンクしておらず、せっかくの設定が活かされていない。 最後近くは展開がドタバタ調になって雰囲気が台無し。 最初の当たりは期待させるのだけれど、見終えてみるとイマイチと言うしかありません。 

30.「長い散歩」 3/1、WMC新潟。 評価★★★ 奥田瑛二監督作品。 家庭不和に悩みながら学校校長を退職した男 (緒形拳) が、ひとり引っ越したアパートの隣室で母親 (高岡早紀) にないがしろにされている幼女を見かね、彼女を連れて旅に出る話。 警察には誘拐で追い回されるが、本人たちの善意と社会常識とのギャップに焦点が当てられている訳ではなく、老人と幼女の魂の交流に重きが置かれている。 まあまあの出来だとは思うが、こういうお話というのは他にもあるわけで、映像やエピソードも定型を出ておらず、目新しさは感じられない。 決まり切ったお話が好きな人にはいいかも知れない。

29.「ダーウィンの悪夢」 3/1、WMC新潟。 評価★★ フーベルト・ザウパー監督作品。 フランス・オーストリア・ベルギー合作。 ドキュメンタリー映画。 アフリカはタンザニアが抱える諸問題を取り上げている。 ヴィクトリア湖の富栄養化やもともと生息していなかった巨大魚が放たれたことによる生態系の乱れ。 国内の貧富の差、武器が巨大魚の輸出と引き換えに密輸入されている疑い、などなど。 しかしドキュメンタリーとしてあまり出来がいいとは言えない。 問題の所在がきちんと提示されず、提示されてもデータや学者の発言によってきちんと裏打ちされず、何となくの疑惑が、現場の長々とした映像とともに語られるだけ。 『不都合な真実』 を見てドキュメンタリーの作り方を勉強してほしい。

28.「あなたになら言える秘密のこと」 2/27、UCI新潟。 評価★★★☆ イザベル・コヘット監督作品。 工場に勤めながらも勤務態度が真面目すぎたために長期休暇を取るよう勧告されたヒロイン (サラ・ポーリー)。 しかし彼女はリゾート地の海辺から見える石油発掘基地で看護婦を募集していることを知り、その仕事を始める。 火災で重傷を負い、当面は目が見えない男 (ティム・ロビンス) の看護が仕事だった。 やがて彼女は彼と心を通わせ、自分の秘密を打ち明ける。 休暇が切れた彼女は彼の前から姿を消すが、回復した彼は彼女を忘れられず後を追う・・・・・。 静かに進行する独特の雰囲気を持った映画で、同じ監督の前作 『死ぬまでにしたい10のこと』 よりはるかに上出来。 主役二人以外の脇役もいい。 というわけでなかなかの作品だと思うが、新潟市では2週間だけの上映で、2週目は1日1回だけ。 私が見に行ったときは観客が私を入れて4人しかいなかった。 新潟市民の映画への嗜好を何とかしてもらいたい、なんて嘆息してしまう私なのであった・・・・・。

27.「ジュウブンノキュウ 9/10」 2/27、シネ・ウインド。 評価★☆ 東條政利監督作品。 甲子園を目指しながら惜しくも地区予選決勝で敗れた高校野球のメンバーたち。 7年後に集まって再会を祝う。 しかし話をするうちに記憶のズレが露見する。 そもそもこのチームはぎりぎりの9人しかいなかったはずなのに、タイムカプセルとして埋め今回掘り出した木箱には、10人分の鍵穴があった。 メンバー一人1個ずつ鍵を持っているので、とするとメンバーは10人だったのか? ・・・・・というような筋書きで、前半はなかなか面白かったのだが、色々な設定をした割りには最後の解決が実に駄目、というかどうしようもない結末で、脚本力の貧しさが露呈している。 こんなことやったら、信用されなくなりますよ。

26.「楽日」 2/24、新潟市民プラザ(にいがた国際映画祭) 評価★☆ 2003年制作の台湾映画。 蔡明亮 (ツァイ・ミンリャン) 監督作品。 かつては客であふれていたが今はうらさびれて一部雨漏りもしている映画館の閉館前日を描いている。 老朽化した映画館の内部描写は何となくタルコフスキーの 『ストーカー』 を思わせるけれど、ああいった神秘的なきわどさはなくて、独りよがりと思われる箇所も目立ち、どうも面白みに欠ける映画だ。 2003年のヴェネツィア国際映画祭で批評家連盟賞を受けているそうだけれど、まあ批評家が喜びそうな映画ではあるかもしれないね。

25.「夢遊ハワイ」 2/24、新潟市民プラザ(にいがた国際映画祭) 評価★★★ 2004年制作の台湾映画。 徐輔軍 (シュー・フーチュン) 監督作品。 兵役終了間近の主人公は、幼なじみの女の子が死ぬ夢を見る。 たまたま脱走兵が出て、捜索を命じられた彼は、同僚と二人で故郷に旅し、幼なじみの行方を探す。 彼女は心を病んで入院していた・・・・・。 なかなか面白い設定で、切なさとユーモアに満ちており、ロードムービーとして悪くない出来だと思う。

24.「ココシリ」 2/23、新潟市民プラザ(にいがた国際映画祭) 評価★★★ 2004年制作の香港・中国映画。 ルー・チューアン監督作品。 チベットを舞台に貴重なチベット・カモシカの毛皮を狙う密猟者たちと戦う地元のパトロール隊の活動と苦悩を描いている。 チベットの広大な風景とそこの住民たちの様子、厳しい気候、そして密猟者との熾烈な戦いぶりが印象的だ。

23.「萬世流芳」 2/21、シネ・ウインド(にいがた国際映画祭) 評価★★★ 1943年制作、モノクロ、満映と中華電映などの合作。 東京国立近代美術館フィルムセンター所蔵で、今回のにいがた国際映画祭で特別に2回だけ上映された。 李香蘭こと山口淑子の出世作として有名な映画である。 何でもこの先DVDなどになる見込みもなく、きわめて貴重な上映なのだそうだ。 フィルムもかなり傷んでおり、ところどころ声だけで全然画面が出ない (真っ黒) シーンもあったが、とにかく約2時間半堪能しました。 内容は、アヘン戦争前夜の英国人の横暴とそれに抗して立ち上がる中国人たちの物語である。 当時は撮影に使える西洋人俳優がいなかったらしく、英国人役は中国人がかつら (これだけならまだしもだが) と付け鼻で演じており、最初は冗談かと思ったけれどそうではないようで、ちょっと滑稽な感じがした。  

22.「深海」 2/21、シネ・ウインド(にいがた国際映画祭) 評価★★☆ 2005年制作の台湾映画。 鄭文堂 (チェン・ウェンタン) 監督作品。台湾・高雄を舞台に、刑務所を出所した若い女性が、服役中に姉妹のようにしていた年長女性のもとにころがりこんで仕事を手伝うが、男との関係がうまく結べずに完全依存型になってしまう性格のためにさまざまな葛藤を経験する、というお話。 ヒロインのターシー・スーはアイドル歌手でもあるそうで私好みの美形だけれど (若い頃の水野真紀にちょっと似ている)、映画としては描写が淡いせいかイマイチの感。 どうせならヒロインをもっと壊してしまった方が面白くなったのではないか。 

21.「ヴェラ・ドレイク」 2/20、新潟市民プラザ(にいがた国際映画祭) 評価★★★ マイク・リー監督作品。 2004年のヴェネツィア国際映画祭で金獅子賞をとったという映画。 英仏NZ合作。 新潟の商業館に来なかったので、今回の映画祭で上映された。 舞台は1950年頃の英国。 まだ戦争の余韻が残っていた時代。 平凡な中年主婦のヴェラ・ドレイク。 家事にたけて気配りにもすぐれた彼女は、娘が婚約して幸せそう。 しかし実は彼女は望まない妊娠をした女性を堕胎させる仕事をひそかにやっていた。 やがてそれが発覚して、家族はショックを受ける・・・・。 センセーショナルな作りを排して、淡々と日常生活の一環として行われていた堕胎、そしてその結果としての裁判を描いている。 問題作といったものではなく、むしろ人間の普通のあり方を提示した映画、といった印象を受けた。  

20.「不都合な真実」 2/19、UCI新潟。 評価★★★☆ 数年前のアメリカ大統領選挙で惜しくも敗れた民主党のアル・ゴア。 彼は地球温暖化問題に早くから興味を持っており、その後アメリカ国内や海外で温暖化を阻止しなければ地球全体が危うくなるというティーチングを行っている。 この映画はその内容を分かりやすく紹介し、アル・ゴア一人では回りきれない地域の人々にもこの問題の重大性を知ってもらおうというものだ。 地球温暖化については学者にも懐疑論があるが、この映画を見ると温暖化はやはり事実であり、しかも今から手を打たないと将来大変なことになると納得できる。 問題の所在を分かりやすく伝えるすぐれたドキュメンタリーとして、またいい意味でのプロパガンダ映画として、一見をお薦めする。 ただし、パンフレット (¥600) は余り中身がないので、買わない方がいい。

19.「7人のマッハ!!!」 2/18、新潟市民プラザ(にいがた国際映画祭) 評価★★★ 2004年制作のタイ映画。 バンナー・リットグライ監督作品。 小さな村の住民たちを人質にとって政治犯釈放を要求するテロリストたちと戦う国家特殊部隊所属の刑事、そして村人たち。 アクションが痛快な娯楽映画だ。 最後にNGシーンや撮影のからくりが披露されていて、本編の作りとあわせて香港映画の影響が感じられる。

18の付け足し。 本日 (2月17日) から、第17回にいがた国際映画祭が始まった。 ……会場は新潟市民プラザとシネ・ウインド。 私は市民プラザで昼過ぎから上映される18を見に行ってみたのだが、オープニング・セレモニーとしてタイの伝統舞踊が披露され、またタイ女性による伝統衣裳紹介があった。 新潟県内に住むタイ人は300人に及ぶそうで、そんなにいるのかと私もびっくり。 衣裳紹介で舞台に並んだタイ人女性のなかには、新潟大学や日本歯科大学新潟校で学ぶ大学生・大学院生も含まれていた。 またタイ人女性の中には新潟県選出の衆議院議員・西村智奈美さん (民主党) もなぜか入っていた。 西村さんはタイに留学したことがあるという話であった。 映画に先立ってロビーではタイのお菓子や飲み物がふるまわれ、伝統楽器が展示されるなど、タイ・ムード一色となった。    ……無論、この映画祭ではタイ映画だけでなく、世界各国の映画が上映される。 この中には、ヨーロッパ映画 『戦場のアリア』 も含まれている。 昨年評判になったのに、ついに新潟の商業館には来なかった作品だ。 映画祭でリクエストを募っていたので、私がリクエストしたところ、選んでもらえた。 それに加え、選出作品をリクエストしたというので3回分の招待券までいただいてしまった。 だから言うわけではないが、みなさん、『戦場のアリア』 を初めとして、映画祭を見に行きましょうね!     

18.「親友」 2/17、新潟市民プラザ(にいがた国際映画祭)。 評価★★★ 2005年制作のタイ映画。 コムグリット・ドゥリーウィモン監督作品。 タイ国内で大ヒットしたが、日本では未公開だそうである。 今回、にいがた国際映画祭で上映された。 長髪を切り落として海岸地帯に旅に出た美大生ムー。 ところが観光船の屋上から転落して骨折してしまい、入院生活を送る羽目に。 しかし美人看護婦ヌイと出会って快方に向かう。 彼女と付き合い、やがて愛情を告白されるが、彼には首都に残してきた思い出があった・・・・・。 現代タイの青春映画として悪くない出来だと思う。

17.「unknown」 2/16、シネ・ウインド。 評価★★★ アメリカ映画。 サイモン・ブランド監督作品。 使われなくなった工場の中で目覚めた男たち5人。 傷を負っている者あり、椅子に縛り付けられている者あり。 しかし彼らは自分が何者でなぜここにいるのか分からない。 出入口を開けることができず外に出られない彼らは、やがて落ちていた新聞から、自分たちが身代金目的の誘拐犯と誘拐された被害者らしいことを知る。 工場内に残されていたボンベから特殊ガスが漏れたために一時的に記憶喪失に陥ってしまったのだ。 いったい誰が犯人で誰が被害者なのか・・・・・・。 設定はなかなか面白いと思うし、展開もまあ悪くないが、もう少し心理的なサスペンスとしてうまく作れたのではないか、という気もする。 最後に意外性もあって、それなりの映画だとは思うけれど。

16.「Dear Friends」 2/16、Tジョイ新潟万代。 評価★★★☆ モバイル文学のYoshi原作、両沢和幸監督作品。 美貌を武器に学校をさぼり享楽的な生活を送っている高校生リナ (北川景子)。 友だちなんて自分のために利用するもの、と割り切っている。 ところがある日、重病に冒されていることが判明して入院する羽目に。 そこに現れたのは 「私はあなたの友だち」 と言う同級生 (本仮谷ユイカ) だった。 リナは彼女に見覚えがなかったが・・・・・。 ベタでストレートな映画だが、これが結構面白い。 ストレートなところが生きており、主演・北川景子が態度のデカい女高生役を実に見事に演じている。 やや芸のない箇所もないではないが、意外な収穫、と言うべき作品である。

15.「暗いところで待ち合わせ」 2/12、UCI新潟。 評価★★★★ 乙一原作、天願大介監督作品。 事故で視力を失い、父にも死なれて (母とは子供の頃に離別) 一人暮らしを余儀なくされた若い女性ミチル (田中麗奈)。 自宅内のことはよく分かっているので盲目でもそれなりに暮らせていた。 しかしある日、近所の工場に勤めていたものの訳あって警察に追われる身となった中国人青年 (チェン・ボーリン) が家にこっそり入り込んでくる。 やがて彼女は彼の存在に気づき、二人は奇妙な同居状態となるが・・・・・。 盲目ながら自宅で一人暮らしをする女性を演じる田中麗奈が好演。 これは彼女の代表作となるかもしれない。 また、作品自体も、そうした彼女を丁寧に捉えつつも、同時に筋書き上の工夫も取り込んでおり、すぐれた出来映えとなっている。 お薦めできる映画だが、新潟ではユナイテッドの単独上映なのに2週間しか上映されず、それも2週目は1日1回なのは残念。 私は2週目の月曜日 (祝日、メンズデー) に見に行ったのだが、客は結構入っていた。 分かってる人は分かってるのだね。 でももっと沢山の新潟市民に見に行って欲しいな。 明日 (2月16日、金曜) までだから、このサイトを見てその気になった人は是非。   

14.「海でのはなし。」 2/10、シネ・ウインド。 評価★☆ 大宮エリー監督作品。 大学非常勤講師の西島秀俊と自分の家庭に秘密があることが分かって悲しむ宮崎あおいのお話だけれど、きわめてお手軽で内容の薄い映画である。 音楽もうるさいし、全然センスが感じられない。 カネ返せ、と言いたい。

13.「エコール」 2/10、シネ・ウインド。 評価★★★ フランス映画。 ルシール・アザリロヴィック監督作品。 少女だけを集めて教育する隔離された施設。 教師も家政婦も女だけ。 そこで教育を受けた少女たちの中から、特に美しい少女が選ばれて外に出ていく・・・・・。 ちょっと面白そうな設定と筋書きだけれど、案外に健全というか、審美的ではないというか、異端的なヤバさが薄いのである。 設定は異常なのだけれど、少女たちを見つめる視点にエロスが感じられないのである。 女性監督の限界ですかね。 やっぱりこういうのは、男の嫌らしい視点が必要なのかな、なんて思いました。 

12.「幸福な食卓」 2/8、WMC新潟。 評価★★☆ 瀬尾まいこ原作、小松隆志監督作品。 父が自殺を図ったが未遂に終わり、母が家を出てしまった家庭を舞台に、中学から高校に進学したばかりのヒロイン (北乃きい) と、大学進学をやめて農業に従事する兄 (平岡祐太) の姿を描いた映画。 ・・・・・だが、どうも変なのである。 父が自殺未遂、母は家出、となればかなり悲惨な状況を思い描くが、この映画からはそういう雰囲気が全然感じられない。 父(羽場裕一)は仕事をやめ 「お父さんを辞める」 と宣言したものの、どういうわけか自宅にとどまって普通に暮らしているし、母 (石田ゆり子) は家出したものの近くのアパートに住んでいてよく食事を作りに寄っていくのだ。 食卓には母やその他の家族構成員が作ったおいしそうでお金もかかっていそうな料理が食事ごときちんと載っている。 学校ではヒロインはボーイフレンド (勝地涼) ができるし、兄にも少し変わってるが恋人 (さくら) ができる。 万事が順調なのだ。 どうしてこんなに健全な家庭を映画にしたんでしょうか??

11.「夏物語」 2/1、WMC新潟。 評価★★★ 韓国映画。 チョ・グンシク監督作品。 60歳を越える老教授(イ・ビョンホン)がなぜ独身を貫きとおしたのか、それには過去の恋物語があった――というので、40年近く前、1969年の体験談を回想するという形式の映画。 反体制の政治運動が盛んだった当時の韓国。 若かったユン・ソギョン(のちの老教授、イ・ビョンホンの二役)はノンポリの大学生だったが、同級生に誘われて電気も通っていない田舎に奉仕活動に出かける。 そしてそこで出会った娘ジョンイン (スエ) と恋に陥るのだが・・・・・。 若い二人の恋愛譚としては悪くないが、政治的な雰囲気が強かった1969年を舞台としている割には時代と主人公との関わりが曖昧で、そのせいでソウルに戻った二人が学生運動に巻き込まれて逮捕されてからの展開が説明不足になっている。 時代背景をきちんとふまえた脚本が欲しかったところだ。 

10.「魂萌え!」 2/1、WMC新潟。 評価★★★☆ 阪本順治監督作品。 夫に急逝された中年主婦 (風吹ジュン) が、夫に愛人 (三田佳子) がいたことを知り、新しい生き方をしようと様々な試みをするお話。 一つ一つのエピソードに新奇さはないが、丹念な積み重ねによって全体の仕上がりは結構うまく行っているような気がする。 脇役もなかなかの健闘ぶり。 それにしても風吹ジュンは、私と同年齢のはずだが、相変わらず魅力的ですねえ。

9.「マリー・アントワネット」 1/29、UCI新潟。 評価★★★ ソフィア・コッポラ監督作品。 監督が監督だから期待しないで出かけたが、まあまあ面白いかな、という映画だった。 ヒロインを演じるのはキルステン・ダンストで、彼女はどう見ても貴族顔ではなく、中流の女の子というイメージだから、オーストリアの王女がフランスの王室にお輿入れしたというより、アメリカの中流家庭に育った少女がなぜかフランスの王子と結婚しヴェルサイユ宮殿で暮らすようになりました、というような視点と感覚で物語は進む。 ただ、そういう新しい切り取り方を意識して徹底していればまだしも、どうもそうなってはいないので、中途半端な感じもする。 つまり、そこいら辺がソフィア・コッポラの駄目なところだと思うんだよね。 素材がいいから何とか標準的な出来にはなったというところかな。

8.「それでもボクはやってない」 1/26、Tジョイ新潟万代。 評価★★★★☆ 周防正行監督作品。 フリーターの青年が満員電車の中で身に覚えがないのに痴漢扱いされて警察に長期間拘留され、挙げ句の果てに裁判でも有罪になってしまうという非常に怖いお話である。 身に覚えがなくても罪を認めれば簡単に示談になって自由の身になれるのに、あくまで身の潔白を主張すると飛んでもない目に会う、というきわめて残酷な現実を観客に提示しており、検察や裁判官の予断やいい加減さもたんねんに描かれていて、きわめてリアルかつ説得力あふれた作品になっている。 いわゆる不条理劇よりよほど不条理な映画であり、そこらのホラー映画よりよほど怖い。 周防監督、やりましたね! 大いにお薦めである! 

7.「パプリカ」 1/25、Tジョイ新潟万代。 評価★★★★ 筒井康隆原作 (私は未読) の今敏によるアニメ映画化。 オタク的な天才科学者 (性格的には子供のまま) が発明した、他人の夢にシンクロナイズできる機器を使って治療を行う千葉敦子は、ふだんは冷たい美貌で男をはねつけるサイコセラピストだが、患者の夢の中では奔放な別人格の女性に変貌していた。 やがて何者かによってこの機器が盗まれ、悪用されようとする。 そうした中で、捜査にあたる警察や研究員たちの欲望=夢と現実との境界線が崩れていき・・・・・。 今敏のアニメは前作の 『千年女優』 も面白かったが、このアニメもいわばその続編的な意味で面白い。 ヒロイン千葉敦子は、夢の中で奔放な女パプリカとなる時よりも、ふだんの冷たい美貌のほうが素敵で、萌えてしまいます(笑)。 

6.「僕は妹に恋をする」 1/22、UCI新潟。 評価★★☆ 人気マンガの映画化だとか。 安藤尋監督作品。 二卵性双生児の兄 (松本潤) と妹 (栄倉奈々) が恋をするお話。 何というか、話としてはある意味凡庸だから、脇役の活躍が期待されるわけで、兄妹それぞれに言い寄ってくる異性がいるという設定になっており、一方の平岡祐太はなかなかいいと思うんだけれど、他方の小松彩夏はイマイチの感。 栄倉奈々を含め、女の子のキレイさがこの映画では不足している。 原作は女の子向けマンガらしいので、映画も女の子向けなのかなあ。 あと、主役二人のセリフがあまりにお粗末なのに愕然。 気持ちさえ通じ合えば言葉はいらない、ってものでもないでしょう。 もっとセリフを磨いてほしい。

5.「リトル・ミス・サンシャイン」 1/22、UCI新潟。 評価★★★ 米国映画。 ジョナサン・デイトン + ヴァレリー・ファリス監督作品。 夫は 「勝ち組を目指せ」 と言いながら仕事がうまくいかず、妻の兄は 「全米一のプルースト学者」 を自称するが同性愛者で自殺未遂、祖父は色狂いのため養老院も追い出され、長男は飛行士になりたくて口をきかないという願掛けをしていて、下の娘はリトルミス・コンテストに出場しようとしている・・・・・というようなはちゃめちゃな一家が、リトルミス・コンテストに出る小さな娘に同行して一緒にオンボロ・バンに乗り込んで出かけるが・・・・・・というようなストーリー。 マイナー系の作品なのにアメリカでは大ヒットしたとか。 だけどそんなにすごい映画という気はしない。 まあ、悪くはないかな、程度。 もっと喜劇色を強くすると私好みになったと思うんですがね。

4.「犬神家の一族」 1/19、Tジョイ新潟万代。 評価★★★ 横溝正史の金田一耕助ものの映画化。 市川崑監督が76年に作った映画の、同じ監督による30年ぶりのリメイク。 大金持ちの犬神家の当主が残した遺言状をめぐって、三人の娘、その息子、当主の恩人の孫娘などがからんで繰り広げられる連続殺人事件を扱っている。 まあまあ面白いとは思うけれど、探偵役の石坂浩二をはじめ、どうも登場人物がみな年をとっている印象がある。 ヒロインの松嶋菜々子ですら33歳である。 30年前の元の映画では、ヒロインの島田陽子は23歳だった (私は未見。ネットで調べた結果)。 もう少し若い俳優を使って欲しい。

3.「鉄コン筋クリート」 1/8、UCI新潟。 評価★★★☆ 日本製アニメ。 昭和30年代を思わせるレトロな書き割り (市電、当時のクルマ、商店街など) のもと、少年ふたりの恋愛にも似た友情関係と、街のなかに生きる警察やヤクザなどの面々、それに外部から襲いかかって街を改造しようとたくらむ一派が入り乱れて展開される物語。 丹念に書き込まれた街の様子が雰囲気を出しているし、現実と幻想がないまぜになったような物語も悪くない。 少年のアナーキーな心情と、しかし当時のサブカルチャーにあったヒロイズムが、うまく融合しているようだ。 ただし主人公の少年たちの絵柄は独特なので、好き嫌いは分かれそう。 実は私もあまり好きとは言えないのだが、それを上回るだけの別のよさがあったから、ということでこの評価。 

2.「敬愛なるベートーヴェン」 1/7、WMC新潟。 評価★★★ アニエスカ・ホランド監督作品。 ベートーヴェン (エド・ハリス) が第九交響曲を初演するに際して、写譜と指揮を手伝った若い音楽家志望の女性 (ダイアン・クルーガー) がいた、という架空の設定をもとに展開されるお話。 ベートーヴェンの曲がふんだんに使われているし、エド・ハリスの好演もあってそれなりの映画になってはいるが、あくまでフィクションですから、そのつもりで見ないといけません。 あと、最後の盛り上がりがやや不足の感もある。

1.「名犬ラッシー」 1/2、WMC新潟。 評価★★☆ 有名な小説の映画化。 前に一度映画化されていて、そのリメイクらしいが、私は最初のは未見。 貧しい家庭で育てられたコリー犬が経済的理由から金持ちの公爵に売られ、やがて英国も北端のスコットランドに移送されるが、そこを脱出して数百キロの道のりをへて元の飼い主のところに戻ってくるお話である。 それなりに面白く見られるけれど、原作にあった老夫婦とのエピソードが省かれているのは物足りない。 主役のコリーはなかなかの名演 (?)。

 

 

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