映画評2012年

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 2012年に見た映画をすべて紹介。 5段階評価と短評付き。

  評価は、★★★★★=今すぐ映画館に駆けつけるべし (大傑作につき見ないと一生の損)。 ★★★★=十分な満足感が得られる (いい作品だから見てごらんよ)。    ★★★=平均的 (見て損はない)。 ★★=劣る (カネと時間が余ってたらどうぞ)。 ★=駄作 (カネをドブに捨てるようなもの)。 ☆は★の2分の1。

 

165.「大奥 永遠 右衛門佐・綱吉編」 12/29、UCI新潟。 評価★★★ 金子文紀監督作品。 江戸時代に男のみがかかる伝染病がはやり、男女の人口比が崩れて、将軍をはじめ要職には女がつくという架空の物語の映画版第2弾。 ここでは5代将軍徳川綱吉を菅野美穂が、彼女に取り立てられる若い公家を堺雅人が演じている。 史実では5代将軍綱吉は跡継ぎが生まれなかったために生類憐みの令を出したというので悪名高いわけだが、ここでも、女将軍が一人だけいた跡継ぎの女の子に死なれて、実父の入れ知恵もあって生類憐みの令を出すという設定になっている。 ただ、この映画はその悪法を中心に進むわけではなく、若い美男と歓楽を尽くす女将軍の姿を中心にしており、後半は生類憐みの令を出す話にはなるけれど、全体としてまとまりがなく、どこか行き当たりばったりの印象を与える。 この映画の見どころは、唯一、女将軍を演じる菅野美穂の魅力だけ、と言っていい。 彼女が好きな人 (私もそのひとりですが) にはお薦めだが、そうでない人には薦めません。 これで今年の映画は見納め。 一年の最後をしめくくるにはやや物足りない作品かなあ。

164.「任侠ヘルパー」 12/26、WMC新潟。 評価★★★☆ 西谷弘監督作品。 若いヤクザである主人公 (草なぎ剛) が、首都圏のはずれ辺りにある海辺の小ぶりな都市で親分からシマを任されるが、それは身寄りのない、或いは家族から見放された老人を粗末なアパートで預かり、彼らの年金や貯金をしぼりとるというあこぎな商売だった。 最初は老人からカネをしぼりとる仕事にせっせと従事していた彼は、たまたま子供とアルツハイマーの老母とを抱えて苦労している中年女性 (安田成美)、そして同窓生である彼女に想いを寄せている老人福祉が売り物の弁護士兼二世議員の男 (香川照之) と知り合って彼らとかかわるうちに、真に老人のためになる施設にしようと思うようになり、ヤクザ稼業はそっちのけで仕事にのめりこむが、当然ながらその結果ヤクザの親分からにらまれることになり・・・・。 ヤクザと老人福祉という、ちょっと意外性のある組み合わせだけど、案外に悪くない出来だ。 これからの日本は超老齢化社会に突入するし、ワタシも還暦を迎えたことでもあり、他人事じゃないよなと思いながら見ていました。 草なぎ剛のヤクザは、私にはちょっと似合わないような気がするけれど、彼のファンには新境地と思われるかも。

163.「こうのとり、たちずさんで」 12/24、シネ・ウインド。 評価★★★★ テオ・アンゲロプロス監督作品。 シネ・ウインドで数ヶ月にわたってアンゲロプロス特集を組んでおり、毎月一週間だけ、アンゲロプロスの作品をひとつ上映する。 この映画もその特集の一環である。 1991年、ギリシャ・スイス・フランス・イタリア合作。 ギリシャと国境を接した他国から入ってきた難民が問題となるなかで、TV局のプロデューサーはそれをネタに番組を作ろうともくろむが、その難民のなかにかつて大物政治家とされながら失踪した中年男 (マルチェロ・マストロヤンニ) が含まれていることに気づく。 プロデューサーは、その政治家の元妻であるフランス女性 (ジャンヌ・モロー) を呼び寄せたりして、真相に迫ろうとするのだが・・・・。 独特の映像によって綴られる作品で、筋書きはまあそういうふうなのではあるが、肝心なのは謎ときではなく、人間の寄る辺なさと、それをあくまで言葉ではなく映像によって表現しようとするアンゲロプロスの独自性にある。 特に最後近く、国境である川により引き裂かれた同一民族の男女が、川の両岸で結婚式を挙げる (だから、二人は手をつなぐこともできない) シーンが衝撃的。 あくまで芸術としての映画だから、アンゲロプロスの詩情に共感できる人にはお薦めだが、筋書きの不鮮明な映画は不得手という人にはお薦めしません。 私はわりに好きなんですけどね。 

162.「レ・ミゼラブル」 12/23、WMC新潟。 評価★★★ 英国映画、トム・フーバー監督作品。 原作は言わずと知れたヴィクトル・ユゴーの名作で、近年は舞台ミュージカルとしても人気だが、この舞台ミュージカルを実写の映画版ミュージカルにしたもの。 私は舞台版はずいぶん前に東京で一度見たきりだが、あれと比べると映画だから登場人物の服装だとか、当時の街の様子だとかははるかにリアリティがあるし、筋書きも、舞台版はかなり大雑把だったけれど、この映画版は大事なところははずさずに進行するので、原作を知らない人でも理解は容易そう。 出演者も、ジャン・バルジャンがヒュー・ジャックマン、ジャベール警部がラッセル・クロウ、ファンティーヌがアン・ハサウェイ、マリウスがエディ・レッドメイン、コゼット (成人後) がアマンダ・セイフライドなど、有名な俳優が目白押し。 ただし、有名だから役に合っているとは限らない。 私の見るところ、一番の適役は、有名俳優ではないが、エポニーヌを演じたサマンサ・バークスである。 ファンティーヌのアン・ハサウェイも良かった。 しかしそれ以外は少しミス・キャストの印象がある。 ちょっとしたセリフも歌になっていて、クラシックで言うならジングシュピールではなくグランドオペラだけれど、その辺もどうかなという気がした。 総合的に見て、カネと手間隙はかかっているから失望はしないけど、少なくとも原作を全訳で読んでいる人間に満足できるかどうかは疑問。 原作を知らない人にはいいかも。

161.「バレエに生きる パリ・オペラ座のふたり」 12/20、シネ・ウインド。 評価★★★☆ フランス映画、マレーネ・イヨネスコ監督作品。 語り手は、パリ・オペラ座などでダンサーおよび振付師として活躍したピエール・ラコット、そしてその妻となったバレリーナ(エトワール)のギレーヌ・テスマー。 数々のバレエ作品の名シーンが登場する。 私はバレエにはうとい人間だが、バレエの魅力がよく伝わってくる。 特に 『ラ・シルフィード』 は見ていて感激してしまった。 これを機に少しバレエについて勉強しようかなと思ったほど。 またソ連など他国との交流についても触れられているし、海外遠征のシーンも、日本のbunkamuraでの公演を含めて出てくる。 バレエに興味のある人はもちろん、私のようなシロウトでも見て損はない映画である。 

160.「黒部の太陽」 12/15、シネ・ウインド。 評価★★★☆   熊井啓監督作品、1968年。 三船敏郎と石原裕次郎が五社協定を乗り越えてタッグを組んで製作し、主演もした映画として有名。 ビデオやDVDになっていないので (ただし来年に初めてDVDになるらしい)、ときどき何かの機会に上映されるのを待つしかないという、これまたいわくつきの映画。 私も今回初めて見た。 昭和30年代初頭、関西電力が富山県の黒部川に黒部第4発電所(黒部ダム)の建設を計画。 ダムの建設には前もってトンネルを掘る必要があったが、フォッサマグナにぶち当たり、落盤と大量出水の連続で恐ろしい難工事となる。 この難所を突破しようと工事関係者がさまざまな苦労を重ね、また人夫との人間関係や故郷に残してきた家族の病いなどにも悩みながらもついに仕事を成し遂げるまでを描いている。 難工事のシーンがやはり最大の見どころ。 他方、家族物語としては、三船の妻役が高峰三枝子、娘役が樫山文枝、日色ともゑなどそれなりに豪華だが、今見ると通り一遍という印象を受ける。 

159.「スープ 生まれ変わりの物語」 12/14、シネ・ウインド。 評価★★★ 大塚祐吉監督作品。 妻に離婚され、中3の娘 (刈谷友衣子) と二人で暮らす冴えない中年男 (生瀬勝久)。 娘には軽蔑されているし、会社でも若い女子社員 (小西真奈美) の下に格下げされる始末。 ところがある日、その女子社員と二人で出張している途中、路上で落雷に会い、あの世へ。 あの世では現世に生まれ変わるための方策が提示されるが、いったん生まれ変わると前世の記憶を失ってしまうという。 しかし現世に残してきた娘が気がかりな中年男は、何とか記憶を残したまま生まれ変わることはできないかと模索し始めて・・・・。 某宗教団体の信者向けという噂もあるいわくつきの映画だが、映画作品としてはそこそこ面白い。 もちろん、ここで描かれているあの世の、現世とさっぱり変わらない部分を笑いながら楽しめばいいので、本当にあの世を描いた映画だ、なんて信じる必要もないでしょう。

158.「ドリームハウス」 12/12、UCI新潟。 評価★★☆   アメリカ映画、ジム・シェリダン監督作品。 まだ中年ながら出版社を退職し、物書きをしながら妻および二人の幼い娘との暮らしを楽しもうとしている主人公(ダニエル・クレイグ)は、中古の住宅を手に入れた。 しかしそこで家族水入らずの暮らしを始めると、不審な現象が続発する。 やがて、その家ではかつて殺人事件が起こったことが判明。 不審な現象と殺人事件とは何か関係があるのか、主人公は探り始めるのだが・・・・・。 ダニエル・クレイグというと最近は007のイメージが強いけれど、この映画ではちょっと違った側面を見せてくれる。 しかし、話の筋は途中までは謎含みでそれなりだが、途中からちょっと腰砕けというか、やや薄味になってしまう。 もう少し脚本の練りが必要だろう。 残念。

157.「カラスの親指」 12/11、WMC新潟。 評価★★★☆ 伊藤匡史監督作品。 コンマン (詐欺師) の映画である。 したがって冒頭には詐欺のシーンが少し出てくるのだが、なぜかそのあと、詐欺師2人と、ちょっと縁のある子供たち (というか若者かなあ) 3人が同居する話になる。 この前半部分の進行がタルくて、「コンマン映画なのにこの展開は何だ、だから邦画ってのは・・・・」 と思いながら見ていたのであるが、最後になってタルい部分にもそれなりに理由があったのだと分かる仕組みになっている。 2時間40分かかる作品で、もう少し短く作って欲しい気はするが、日本のコンマン映画としてはまあよくできているほうだろう。 なお、3人の子供たちの一人として出てくる能年玲奈 (のうねん・れな。 それにしても最近のアイドルって読めない名前が多いね) が、新鮮な魅力を見せてくれる。 来年のNHK朝のテレビ小説のヒロインにも決定しているそうで、将来有望そう。

156.「プンサンケ」 12/7、シネ・ウインド。 評価★★★ 韓国映画、キム・ギドク制作・脚本、チョン・ジェホン監督作品。 タイトルのプンサンケとは、漢字だと豊山犬と書き、北朝鮮に産する獰猛な狩猟犬の一種だそうである。 一度噛んだ獲物は離さないということで、ここではヒーローを暗示しているのだろうが、同時にこの犬は金正日総書記が北朝鮮と韓国の友好のために韓国側に贈った犬だそうであるから、北朝鮮と韓国の関係をも暗示しているのかもしれない。 それはさておき。 正体不明の運び屋がヒーロー。 彼は北朝鮮と韓国の国境を突破して人やブツを運ぶ仕事をしている。 たまたま、北朝鮮から韓国に亡命している知識人男性の恋人である女性を北から南へ運ぶのだが、それをきっかけに彼と彼女との間に奇妙な愛情のようなものが生じる。 また、亡命知識人をめぐっては韓国の秘密警察が動いており、またひそかに韓国に侵入している北朝鮮のスパイも絡んできて、ヒーローと彼女は二つの勢力に翻弄されてゆき・・・・・。 キム・ギドクの脚本だけあって人間同士の濃い感情は鮮明に描かれている。 ただし、政治が絡む問題で、フィクションにしても喧嘩両成敗的な脚本を書くことが生産的なのかどうか、疑問。 別に韓国に肩入れしろと言いたいのではなく、問題点があればもっと具体的に描いたほうがいいということである。

155.「007 スカイフォール」 12/6、WMC新潟。 評価★★★☆   米英合作、サム・メンデス監督作品。 007シリーズの最新作。 今回は英国以外にトルコや上海などが舞台。 また日本の長崎県にある軍艦島も、日本の島としてではないが撮影に利用され、重要なシーンで出てくる。 さて、本作であるが、最初のトルコでの追跡シーンがド迫力でさすがと思わせ、またボンドガールのベレニス・マーロウも西洋と東洋の混血で私好みの美女なところがさすがと思わせるが、全体の筋書きとしてはやや切り込みに欠ける感じもある。 単なるアクション映画ではなくドラマとしての側面を重視する傾向は、ダニエル・クレイグがボンドとなってから強まっているが、そのドラマの脚本がイマイチなのである。 次回はその点の改善を望む。 とはいえ老舗のシリーズだけあって、料金分の面白さは十分あり、見て損はない。

154.「声をかくす人」 11/30、WMC新潟南。 評価★★★★☆ アメリカ映画、ロバート・レッドフォード監督作品。 実話をもとにしている。 アメリカの南北戦争直後にリンカーン大統領が暗殺されたのは誰でも知っているが、この作品はその犯人と共謀関係にあったとされた中年の夫人が、弁護士の努力にもかかわらず北部の政治的な思惑で死刑にされてしまう過程を追っている。 アメリカ史上、女性の死刑はこれが初めてだったという。 弁護士は元は北軍の軍人で、南部の人間には嫌悪感を持っていたにもかかわらず、弁護をしていくうちに北部の人間にも南部に偏見があることや、夫人が民間人であるにもかかわらず軍法会議で裁かれる不条理さに疑問をつのらせていく様子が克明に描かれている。 また南部の人間を弁護する主人公には裁判の場以外でも色々な妨害行為が行われる。 南北戦争というと 「北部=正義の味方、南部=差別的で悪」 という図式で見られがちだが、本作品はそういう図式を排し、北部の姿勢にも政治的な思惑ゆえに法を無視した部分があったことをはっきりと提示している。 こういう素材を掘り出して立派な作品に仕上げたレッドフォードには敬意を表したい。 本作品は新潟ではWMC新潟南の単独上映でしかも1日2回だけの上映であるが、私が見に行ったときは観客は15人に満たなかった。 こういう映画にたくさん観客が来るようになれば、新潟も民度が高いと言われるようになると思うんだけど。 なお原題は”The Conspirator”(共謀者)で、邦題はやや分かりにくい。 それから、パンフはもう少し中身が欲しい。 専門家としては田中きく代・関学教授が書いているけど、物足りない。 リンカーン大統領の南北戦争指揮については、近年、その残酷さを指摘する本も出ているのだが (『戦争指揮官リンカーン』、文春新書)、そういうことにはノータッチ。 失礼ながら勉強してないんじゃないですか。 これで700円は高すぎる。

153.「ゆめのかよいじ」 11/29、Tジョイ新潟万代。 評価★★☆ 長岡市出身の五藤利弘監督作品。 マンガを原作としつつ、現在は長岡市の一部である栃尾が舞台になっている映画で、全国に先駆けて長岡市と新潟市で上映されている。 東京から叔母の住む栃尾に転校してきた女子高生のヒロイン (石橋杏奈)。 最初はなじめなかったが、木造校舎を保存する運動に同級生 (浅野かや) と奔走するうちに栃尾に愛着を感じるようになる。 しかし、廊下にある置時計を見ると背後に違った制服を着た未知の女子高生 (竹富聖花) の姿が写ることに気づいたヒロインは、ある日生身の彼女に遭遇する。 彼女が着ているのはこの高校がむかし女学校だった時代のもので、彼女はその時代の女学生であった。 なぜその女学生は現代に現れたのか・・・・。 栃尾の町並みや農地などをバックにした作品で、悪くはないのだけれど、展開がやや単調で、物語の醍醐味が感じられない。 数年前に同じ五藤監督がやはり栃尾を舞台に作った 『モノクロームの少女』 もそうで、悪くはないけど脚本が単調というか、全体が淡白に過ぎ、物語の面白さが欠けていた。 今回は石橋杏奈がヒロインで、ほかに美少女ふたりが揃い、俳優陣はそれなりだったと思うのだが、それでも 「詩情」 に頼りすぎている。 もっと脚本を練らないと (具体的には、ヒロインと昔の女学生との関係はもう少し色々あったほうがいいし、栃尾という土地との関係も何か入れておいたほうが、と思う) 映画を見ての満足感に不足があると言わざるを得ない。

152.「009 RE:CYBORG」 11/29、Tジョイ新潟万代。 評価★★★ 石ノ森章太郎原作、神山健治監督作品、2D版にて鑑賞。 有名なマンガのアニメ化。 ただし、001から009までの各キャラクターの外見などは石ノ森の原作とは少し異なっている。 このアニメは、石ノ森の作品ではなく、石ノ森の作品のキャラを借りて独自に二次創作がなされたものなのであり、そういう前提で見るべきだと思う。 そういう前提で見れば、大人の味の009として結構面白い。 唯一の女性キャラクターである003のお色気シーンもある。 ただし、結末のつけ方が・・・・・なんですよね。 安易じゃないですか。 ここ、何とかしてほしい。 

151.「クーリエ −過去を運ぶ男−」 11/27、シネ・ウインド。 評価★★★☆ アメリカ映画、ハニ・アブ・アサド監督作品。 運び屋稼業の中年男である主人公 (ジェフリー・ディーン・モーガン) が、イーヴル・シヴルを見つけ出して渡せと言われてアタッシュケースを預かるが、そのシヴルなる男が何者でどこにいるのかも分からない。 主人公は何とかその男を見つけ出そうとするが、男を追うにつれて殺人や不可解な謎に巻き込まれていき・・・・。 最後があっという結末になるのだが、私の見るところ、むしろ映像の作りだとか、建物内部の様子だとか、街路の雰囲気だとかの、映像面での魅力を評価すべき映画ではないかと思う。 あと、主人公を演じるモーガンの風格も、である。 追うべき相手の名がイーヴルevil=悪、なんてのもいかにも意味ありげではあるけれど。

150.「綱引いちゃった!」 11/27、Tジョイ新潟万代。 評価★★☆ 水田伸生監督作品。 大分市を舞台に、市営の給食センターを民間移行するために解雇されそうになった女性職員たちが、市長と談判し、綱引き競技で勝利して大分市の名を高めたら解雇は撤回すると言われて、綱引きの訓練に励む、というお話。 何ていうのかな、こういう日本映画はものすごくありがちで、展開も小ネタもありがちで、脚本にも緻密さがなくて、そういう日本映画を見て楽しめる人にはいいんだろうけど、私には 「だから日本映画は・・・・」 と言いたくなっちゃう作品でありました。

149.「人生の特等席」 11/23、WMC新潟。 評価★★☆ アメリカ映画、ロバート・ロレンツ監督作品。 久しぶりにクリント・イーストウッドが映画に主演するというので期待して見たのだが、出来栄えはイマイチ。 長年野球選手のスカウトとして活動してきた主人公 (イーストウッド) が、老齢のために目が衰え、解雇の危機に。 他方、早くに妻を失った彼には一人娘 (エイミー・アダムス) がいて、有能な弁護士として活躍しているが、父娘の間は必ずしもうまく行っていない。 父が老齢で仕事も危うくなっていると聞いた娘は、とりあえず父のもとに駆けつけて仕事を手伝うが・・・・。 脚本だとかシーンごとの描写がかなり定型的で、斬新さとか真実味に乏しく、監督は新人らしいのだが、力量不足は明らかだと思う。 残念。

148.「ベティ・ブルー 愛と激情の日々」 11/22、シネ・ウインド。 評価★★★☆ フランス映画、ジャン=ジャック・べネックス監督作品、1986年。 わりに有名な映画のデジタル・リマスター版だが、私もたぶん初見だと思う。 たぶんというのは、タイトルだけは覚えがあるし昔見たかなと思いながら映画館に足を運んだのだが、覚えているシーンが全然なかったので。 (でも、見たはずなのに内容を完全に忘れている映画もあるからなあ。) まあ、何にしても 「愛の暮らし」 を描いた映画であると同時に、ヒロインの素っ頓狂さがいとおしくなる作品である。 こういう女と暮らしてみたい・・・・とは必ずしも思わないけど、でも1ヶ月くらいならいいかな。 でも、こういう女は現実にはいないだろうなあ。 現実の女は計算高いからね (← 実感がこもっている)。 

147.「菖蒲」 11/18、岩波ホール。 評価★★★ ポーランド映画、アンジェイ・ワイダ監督作品。 かつてワルシャワ蜂起の際に二人の息子を失った老婦人。 夫は医師だが、夫は妻の余命がいくばくもないことを知る。 そんなある日、老婦人は輝くような若さにあふれた青年と知り合う。 青年は大学生のガールフレンドの扱いに悩んでいた。 そんな彼に読書の楽しさを教えようとする老婦人。 しかしやがて・・・・。 息子を失った老婦人が若い青年に惹かれるというお話だが、この映画はそういうメインの筋書きだけではなく、主演の女優の夫である撮影監督が製作中に亡くなったことを受けて、夫の容態についての女優のモノローグ、さらにはこの映画の撮影の様子という、三層の構造で映画はできている。 ただし、それが作品の出来栄えに貢献しているのかということになると、いささか疑問。 特に女優が夫について語るモノローグは、映画だけ見ているとあたかも映画内の夫である医師について言っているのかと思われてしまう。 解説を読んで初めて、モノローグの対象である 「夫」 が、作中の夫である医師ではなく、実生活上の夫であると分かる。 この辺が難点か。

146.「黒い画集 寒流」 11/17、新文芸坐(池袋)。 評価★★★☆ 鈴木英夫監督作品、1961年、モノクロ。 東京でも新興の盛り場として注目されていた池袋の支店長に抜擢された銀行員 (池部良)。 夫に先立たれ一人で料亭を切り盛りしている美しい未亡人 (新珠三千代) から店舗拡張のための資金借り出しを依頼されたのをきっかけに、彼は未亡人と恋仲になる。 彼は妻が病気がちで、家庭はうまくいっていなかった。 しかし上司の女好きの常務が彼女に目をつけ、主人公を宇都宮に左遷させて未亡人をものにしてしまう。 怒った主人公は復讐をもくろむが・・・・。 銀行という機構の中で生き、上役にいいようにされ、なおかつ美貌の未亡人にも裏切られる主人公の苛立ちや孤独がひしひしと伝わってくる佳作。 ただ、作中の常務は女好きで豪華なクルマに運転手つきで乗り、ゴルフ三昧だったりして、いくらなんでもこんなにやりたい放題の常務がいるものかなあ、と首をひねるところもある。 銀行の非情さを描くために、上役などの描写はステレオタイプになっている感がある。 松本清張の原作のためかもしれないが。

145.「足にさわった女」 11/17、新文芸坐(池袋)。 評価★★☆ 市川昆監督作品、1952年、モノクロ。 これ以前にも、これ以降にも映画化がなされている素材だそうである。 刑事 (池部良) と、女スリ (越路吹雪) の、あるときは相手を追い、あるときは相手に頼る、奇妙な関係を軸に、どこか勘違いしている作家 (山村聡) などを配して描いたコメディー。 作られた昭和20年代の風俗は今から見るとそれなりに面白いけど、喜劇としてはイマイチの感。 ただしあまり湿っぽくないのはいいかな。

144.「アルゴ」 11/17、丸の内ピカデリー。 評価★★★ アメリカ映画、ベン・アフレックの監督と主演。 1979年、イラン革命の最中に起こったアメリカ大使館員人質事件で、イランから出国できなくなったアメリカ大使館員たちを、CIAが奇抜な作戦で救出するという、実際に起こった出来事をもとにしている。 この事件の真相は、当時も極秘とされ、20年近くたってからようやく明らかにされたという。 実話だと思って見ているとそれなりだけれども、ただし映画ではこういう設定はわりにあるわけで、そういう観点、つまり実話という意識を頭から払いのけて純粋に娯楽映画として見ると、まあ普通の出来かな、とも思える。 ただ、イラン革命当時の現地のぴりぴりした雰囲気はよく出ている。

143.「危険なメソッド」 11/16、TOHOシネマズ・シャンテ(日比谷)。 評価★★★☆ 英・独・カナダ・スイス合作、デヴィッド・クローネンバーグ監督作品。 近代の心理学を打ち立てた二大巨匠であるフロイトとユング。 そのうちユングを主人公に、彼が患者として受け入れた若いロシア女性と男女の関係になってしまうという実際にあった事件をメインにしながら、彼とフロイトとの交友や確執、そして決別を描いている。 ユングって、奥さんが裕福だからリッチな暮らしをしていたのだね。 そういう日常的な部分も含めて、ユングとフロイトの本質に迫ろうとした力作と言えるだろう。 ただし、心理学や精神分析のことを全然知らない人は見てもよく分からないかもしれない。 少なくとも、フロイト理論やユング理論の大雑把な骨格を知ってから鑑賞すると、彼らの生活の土台みたいなものを含めて、いろいろと面白い部分があるだろう。

142.「チキンとプラム あるバイオリン弾き、最後の夢」 11/16、ヒューマントラストシネマ有楽町。 評価★★☆     仏・独・ベルギー合作、マルジャン・サトラピ+ヴァンサン・パロノー監督作品。 イランを舞台に、あるバイオリン弾きの生涯を、一週間で回想するという筋書き。 ただし映画は最初から時代順に展開されるわけではないので、特に前半は分かりにくい。 後半になって、若いころのかなわなかった恋が肝心要な部分だと分かってくる。 どこか夢のような感じの映画ではあるのだが、ふつうならそういう映画は名作と言いたくなるはずなのに、いまひとつ納得できないところがある。 おとぎ話や童話と、現実との境界線がなんとなくうまく引けていないからかも知れないし、バイオリン弾きの芸術家としてのあり方が煮詰められていないからかも知れない。

141.「悪の教典」 11/14、WMC新潟。 評価★★★ 三池崇史監督作品。 すらりと背が高くてハンサムで教え方も上手なので生徒に人気の高校英語教師 (伊藤英明) が、じつは精神に問題を抱えており、過去にも凶悪な犯罪を行った前歴があり、そして・・・・・というようなお話。 前半は人気教師だったヒーローが、後半では一転して・・・・というところが見どころ。 教師が生徒を次々と手にかける、というのは、うがった見方をすれば、「生徒=お客様」 である最近の教育界にあっては、一種憂さ晴らし的な筋書きとも考えられるかな。 人がたくさん死ぬけれど、恐怖みたいなものはあまり感じない不思議な映画。

140.「新しき土」 11/9、シネ・ウインド。 評価★★★ 1937年の日独合作、アーノルド・ファンク監督作品。 ドイツはすでにナチ政権ができて (1933)、日独防共協定も結ばれていた (1936) 時代の、一種の国策映画である。 原節子が17歳でヒロインを演じているというのがミソだそうだけど、私は原節子にはさほど魅力を感じない人間なので、むしろ映画の作りに興味を持って鑑賞した。 筋書きは、貧しい農家の生まれの男の子が裕福な中流家庭の養子となり、長じてはドイツ留学をさせてもらい、その後は家の娘 (原節子) と結婚するはずが、彼 (小杉勇) はドイツ留学中にドイツ女性ゲルダ (ルート・エヴェラー) と恋仲になり、ゲルダと一緒に帰国する。 しかしゲルダは日本の家制度を知って何とか彼と家の娘とを結び付けようと尽力する、というもの。 最後に、火山に身を投げて死のうと思いつめた原節子を、彼が追っていくシーンがちょっとすごい。 またその前に、彼が生家を訪ね、日本式の農作業の魅力を確認するところに、ヨーロッパに留学したエリート青年が日本的なものへ回帰するというテーマがこめられているようだが、日本は土地が狭いということと地震が多い (作品の最後近くで生家は地震で倒壊する) ということで、満州に未来をかけるということになるらしく、実際、最後は満州で機械化された農作業に従事する小杉勇と原節子を映すところで終わっている。 日本の都会の町並みに阪急電車が写っているのだが、当時外国から日本に帰国するときは神戸港を利用したからかと思ったけど、その後もそういう描写があり、火山や農家の描写にしても、日本のどの辺を描いているのかよく分からない、というか、その辺がかなりいい加減な作品のようである。

139.「ウォリスとエドワード 英国王冠をかけた恋」 11/6、WMC新潟南。 評価★★☆ 英国映画。 マドンナが監督と脚本を担当している。 先に映画『英国王のスピーチ』で取り上げられた英国王ジョージ6世の兄エドワード8世の物語である。 王族でありながら、離婚歴のある人妻に恋をし、結局王冠を捨てて彼女と結婚するに至る過程を描いている。 エドワード8世役の俳優も相手のシンプソン夫人役の女優も実物によく似ているし、悪くない演技を披露している。 しかし難点は、この物語が20世紀末にNYで暮らす女性(アビー・コーニッシュ)の視点で描かれていること。 この女性はエリート医師の妻であるが夫とはうまく行っておらず、そうした生活の中でエドワード8世とシンプソン夫人の関係に興味をもつという設定になっているが、彼女のおかれた状況とエドワードやシンプソン夫人のおかれた状況にはあまり並行性が感じられず、なぜ20世紀末のアメリカで暮らす女性の視点で映画が作られなければならないのかが分からない。 明らかに脚本の不備と言わねばならない。 せっかくの素材を生かし損ねたマドンナの罪は重い。

138.「北のカナリアたち」 11/4、WMC新潟。 評価★★★★   阪本順治監督作品。 北海道の北の小さな島。 その島の出身者である女教師(吉永小百合)が教師として赴任してくる。 大学教授だった夫(柴田恭兵)も一緒に島に移り住む。 小学校の六人の生徒たちに合唱の楽しさを教ええる彼女は充実した教師生活を送っていたが、或る事件がきっかけで夫が事故死し、彼女も島にいられなくなる。 その事件をめぐる彼女と生徒たちの関係が、20年後に元教え子が犯した殺人を契機として、改めて問い直されていくことになる・・・・。 北海道の雄大な景観をバックとして、物語は少しずつ展開していく。 謎解きと言うよりは、女教師と六人の教え子たちのたどった人生の軌跡を見る映画として、それなりの水準に達している作品だと思う。 また、すでに六十代後半に達した吉永小百合と、満島ひかり、宮崎あおい、小池栄子といった第一線で活躍している若手女優との競演も見もの。 私は率直に言って阪本監督はあまり買っていないんだが、この映画はよくできていますね。

137.「新しい靴を買わなくちゃ」 11/2、UCI新潟。 評価★★ 北川悦吏子監督作品。 妹(桐谷美玲)に頼まれてパリ旅行に同行したカメラマンの青年 (向井理) は、ふとしたことからパリで暮らす年長の女性 (中山美穂) と知り合い、お互い恋愛感情を抱くようになり・・・・というようなお話なんだけど、パリの観光案内みたいな映画だし、脚本もお手軽なら盛り込まれた材料や内容もさほど濃くなくてテレビドラマの延長線上にあるみたいな映画だし、暇の余っている方、或いは向井理だとか中山美穂のファンであるという方以外にはお薦めできません。

136.「終の信託」 10/30、WMC新潟南。  評価★★★    朔立木原作、周防正行監督作品。 同僚と恋愛関係にありながら裏切られたエリート女医 (草刈民代) が、喘息で直る見込みもない患者 (役所広司) に精神的に救われ、彼に恋愛感情を抱くが、患者は自分の末期治療についてひそかに頼み事をする。 彼女は彼が死ぬ間際にその約束を果たすが、まだ命を永らえることができた患者を殺したとして鬼検事 (大沢たかお) に検挙され、裁判でも有罪になる、というお話。 ・・・・恋愛感情をもって患者の末期治療にあたることがいいことなのかどうなのか、また女医本人はそれでいいかもしれないけれど、患者には妻と子供もいるわけで、彼らが女医の行為を見てどう思ったのかという視点がなぜか欠落していて、ちょっと問題がある映画じゃないかという気がした。 鬼検事の判断はともかくとして、家族にとっての女医が何だったのかを描けていないのは、いかがなものか。

135.「ヴィダル・サスーン」 10/24、シネ・ウインド。   評価★★★☆ アメリカ映画、クレイグ・ティパー監督作品。 美容業に興味のない私は、ヴィダル・サスーンの名すらこの映画で初めて知った程度であるが、映画自体はよくできていて、サスーンの貧しく母子家庭で育った経緯や、その後美容業界でのし上がっていく過程、アメリカに渡って起業家ともなりテレビの司会者まで勤める活躍ぶり、三度結婚した家庭事情、体を常に鍛えて1日14時間働けるようにしておく自己鍛錬ぶりなど、他者からの評価も含めて分かりやすく興味深く作られている。

134.「推理作家ポー 最期の5日間」 10/24、Tジョイ新潟万代。   評価★★★ アメリカ映画、ジェームズ・マクティーグ監督作品。 アメ リカ文学を代表する作家ポー自身が登場する映画。 『モルグ街の殺人』 を初めとするポーの作品を模倣した犯罪が続発する。 果たして犯人は誰なのか、 いかなる意図で模倣犯罪を行っているのか。 やがてポーの恋人が誘拐されてしまい、ポーは作品を書くことで犯人の意図に迫ろうとする・・・。 と書く とすごく面白そうな感じがするのだが、実際に見てみるとさほどではない。 ミステリーというよりはサスペンスとして楽しむのが正解かも。

133.「アイアン・スカイ」 10/20、UCI新潟。 評価★★★☆ ドイツ・オーストラリア・フィンランド合作、ティモ・ブオレンソラ監督作品。 近未来の世界。 再選を目指すアメリカの女性大統領は、選挙民にウケようとして黒人宇宙飛行士の乗ったロケットを月の裏側に飛ばす。 ところが月の裏側にはナチスの基地が作られており、かつての復讐戦を行うべく着々と準備を進めていた。 事態を知った世界連邦 (国連を暗示している) は何 とか対処しようとするが、アメリカを初めとする大国同士の利害が対立してぐずぐずしているうちにナチスが月から攻めてきて・・・・。 かなりはちゃめちゃな設定だが、ナチスの定型が滑稽になぞられていて笑えるだけではなく、現在の地球を牛耳っているアメリカを初めとする国家がいかにエゴイス ティックでいい加減かという点についても風刺が相当に効いていて、なかなかに楽しめる映画となっている。

132.「最終目的地」 10/18、WMC新潟。評価★★★ アメリカ映画、ジェームズ・アイヴォリー監督作品。 ある作家の伝記を書くのに遺族の了承を得ようとしているアメリカ人青年が、なかなか得られず、遺族が住む南米の都市を訪ねていく。 そこには未亡人(ローラ・リニー)だけでなく、故人の愛人(シャーロット・ゲンズブール)とその子供、そして近くの屋敷には故人の兄(アンソニー・ホプキンス)とその同性の愛人(真田広之)が住んでいた。 故人の屋敷に滞在することになった青年は、アメリカの都会とはテンポの違う暮らしに戸惑いつつも馴染んでいくが・・・・・。 ちょっと不思議な筋立ての作品で、雰囲気も南米の田舎の、どこか浮世離れした感覚に満たされていて、特にわくわくするとかどきどきするとか固唾を呑むとかいうことはないのだが、見終えてみると変な感慨のようなものが残る。 少し変わった映画が好きな方にはお薦め。

131.「最強のふたり」 10/15、WMC新潟南。   評価★★★☆    フランス映画、エリック・トレダノ+オリヴィエ・ナカシュ監督作品。 大富豪だが妻を失い、事故で首から下は不随になってしまった男。 介護役を募ったところ 多数の応募があったが、選ばれたのは刑務所から出たばかりの下層階級黒人であった。 その理由は 「彼は私に同情していない」 から。 こうして一見ミスマッチングな二人の生活が始まる・・・・。 実話がもとになっているそうだが、奇妙な面白さがあると同時に、身障者をどう扱うのが正解かという重いテーマをも含んでいる映画だが、あまり深刻にならずに楽しんで見るのがいい。 新潟ではWMC新潟南の単独上映だが (その後、WMC新潟での上映が決定)、平日の夕刻に見に行ったら客は比較的入っていた (と言っても20〜30人くらいだけどね)。

130.「炎の肖像」 10/13、シネ・ウインド。   評価★★★   下と同じく 「タイガース&ジュリー」 特集の一本。 タイガース解散後のジュリーが主演。 1974年、藤田敏八+加藤彰監督作品。 ジュリーが同名のロック歌手を演じている。 虚無的な生き方をしている彼は、喧嘩をしてぼろぼろにされたり、大型トラックの運転手に救われたりしているが、そのうち過去に付き 合っていて死んだ女性の妹およびその友人 (原田美枝子、秋吉久美子) と出会って・・・・。 あまり一貫した筋書きがなく、場当たり的な進行だが、まあ沢田研二にイカれている人にはいいだろう。 私としては、若い頃の原田美枝子と秋吉久美子が出ているところがいいなと思った。 特に、私は原田美枝子は昔から好きじゃないのだが、この映画では変に色っぽく映っていて、監督の撮り方がうまいからなのか、或いは私も年をとって許容範囲が広がってきたのかな、と首をひねりました。

129.「ハーイ、ロンドン!」 10/13、シネ・ウインド。 評価★★★ シネ・ウインドの 「タイガース&ジュリー特集」 の一本。 1969年、岩内克己監督作品。 トッポが脱退して代わりにシローが入った頃のタイガースの演奏シーンが盛り込まれている。 物語の筋書きは、あまりに多忙なので暇がほしいと願う彼らに、悪魔である藤田まことが接近、自由な時間を与える代わりに制限時刻までに帰って来れなかったら魂をいただくという契約書にサインをさせる。 最初は短時間の契約でその辺に遊びに行くだけだった彼らだが、やがて1週間の契約でロンドンへ。 それは、たまたま知り合った女 の子 (久美かおりが 「世界はボクらを待っている」 に続いてヒロインを演じている) の亡き父がロンドンで作った曲の楽譜を探し求めるためであっ た。 ・・・というような筋書きで、まあ筋書きがアレなのは 「世界はボクらを待っている」 と同じだけど、藤田まことが悪魔を好演しているのが見所か な。 久美かおりも第一作より少し洗練されている。

128.「テイク・ディス・ワルツ」 10/5、WMC新潟南。 評価★★ カナダ映画、サラ・ポーリー監督作品。 料理人である夫と結婚して5年、夫はそれなりに優しく愛情を示してくれるし、特に不自由をしているわけではない妻 (ミシェル・ウィリアムズ) が、しかし結婚生活に満足できず、たまたま知り合った近所の若い男に惹かれていく、という筋書きの映画。 うーん・・・・妻の気持ちは分からないでもないのだが、展開がトロくて遅くて、私には退屈であった。 私が監督ならもう少しスピーディに作るな。 最後のあたりは、妻の新しい生活が始まったのか、それとも幻想を抱いているのか、よく分からない。 でもまあ、主演のミシェル・ウィリアムズは魅力的かな。

127.「リンカーン弁護士」 10/5、UCI新潟。 評価★★★☆ タイトルのリンカーンは、弁護士の名ではなく、弁護士が乗っているクルマがリンカーンだという意味。 暗黒世界の人間とも通じていてあの手この手で稼いでいる弁護士 (マシュー・マコノヒー) が、依頼されて裕福なお坊ちゃんである青年の弁護を引き受ける。 娼婦殺しの嫌疑をかけられているのだが、青年は無罪を主張している。 事件を調べていくにつれ、弁護士は青年がウソを言っているらしいと分かってくるが、さらにそこには弁護士が以前に担当した事件も絡んでいた。 しかし弁護を引き受けた以上、青年を無罪にするよう努力しなければならない。 どうすればいいのか・・・・。 まとまりのよいエンタメである。 見て損はないが、後に何かが残るといった類の作品ではない。 弁護士の元妻である女検事役のマリサ・トメイが、やや年をとっているが (1964年生まれ)、結構魅力的だ。

126.「クレイジーホース・パリ 夜の宝石たち」 10/3、UCI新潟。 評価★★★☆ フランス・アメリカ合作、フレデリック・ワイズマン監督作品。 タイトルのクレイジー・ホースはパリでヌード・ショーを見せるキャバレーの名。 この映画は、そのヌード・ショーの様子、それからその舞台裏を映したもの。 いかにヌード・ショーをエロティックに、なおかつ面白く単調にならずに繰り広げるか、経営側は何を考えどういうやり方をしているのか、ヌードダンサーにはどういう選考基準があるのか・・・・・などなどが分かりやすく描かれている。 男としては見ていて楽しいし、こういう世界の裏側まで見せてくれるので、一見に値する映画だと思う。

125.「それでも、愛してる」 9/30、シネ・ウインド。 評価★★☆   アメリカ映画、ジョディー・フォスター監督&主演作品。 エンジニアであるヒロインはおもちゃを作る企業の社長である夫 (メル・ギブソン) と二人の子供に囲まれて幸せな生活を送っていた。 ところがあるとき、夫がうつ病に。 夫は死を決意したりするが、ひょんなことからビーバーの人形を手につけて、人形を介して人と会話を交わすようになった。 最初はそれを受け入れていた妻は、しかし段々疑問を抱くようになり、やめてくれと強く迫るのだが・・・・。 この映画、メル・ギブソンが健闘している。 ビーバー人形を介してしゃべるところの演技力がすごい。 他方、ジョディー・フォスターはもともと推し付けがましさというか、「私は私」 と常時つぶやいているような感じがして好きではないのだが、この映画でも妻役がどこかいやらしい感じに仕上がっている。 最初からそういうつもりで演出したり演技したりしたのかも知れないけれど、ああ、やっぱりジョディー・フォスターってヤな女だな、と思ってしまいました。

124.「日本侠客伝 刃(ドス)」 9/26、浅草名画座。 評価★★★ 1971年、小沢茂弘監督作品。 わけあって九州から金沢に流れてきた松吉(高倉健)は、飢えと渇きに斃れかけ、たまたま街なかの家に入って水を所望する。 出てきたのは若く美しい女性(十朱幸代)で、水だけでなく、食事を与え、さらには花嫁道具である高価な布製品まで金銭代わりに与えるのであった。 彼女は本来は名門家の令嬢であったが、家が零落して売りに出され、彼女自身も芸者になろうというところであった。 松吉は彼女の美しさと親切さに打たれ、立派な男になろうと決心する。 金沢の交通業者に雇われて必死に働く彼。 しかし憧れの彼女はやがて政争に巻き込まれて、悪質な政治結社に入った弟を身請けするために我が身を犠牲にしようとする。 松吉はそれを救い、直後に姿を消す。 4年後に金沢に戻ってきた松吉は以前に決心したように立派な男になっていたが、憧れの女性は若い政治家の許嫁となっていた・・・・。 高倉健の、最初は泥臭く洗練されない姿と、4年後に金沢に戻ってきたときの、健さん風の風格の違いが、なかなか面白い。 準主役で池部良が出ている。 自由民権運動初期の政争のすさまじさもなかなかリアルに描かれている。 

123.「男はつらいよ 寅次郎の縁談」 9/26、浅草名画座。 評価★★ 1993年、山田洋次監督作品。 シリーズ第46作。 寅次郎の甥の満男が、大学卒業を間近にしながら就職が決まらず、今度こそと思った会社からも不採用の通知が来て、ショックで家出してしまう。 瀬戸内海の島にいるという葉書が舞い込んだので、たまたま柴又に戻っていた寅さんが連れ戻そうと瀬戸内海に出かけるのだが、そこで満男が泊まっている民家に美しい女性 (松坂慶子) がいるのを知り、・・・・・。 前半はなかなか快調なストーリー展開で悪くないが、瀬戸内海の島に行ってからの筋書きがどうも冴えない。 満男にも若い看護婦のガールフレンドができているのに、なぜか最後は東京に帰ってしまうし、寅さんと松坂慶子の仲もなんだかよく分からないうちに離ればなれになってしまう。 脚本が不出来と言うしかない。

122.「博徒対テキ屋」 9/26、浅草名画座。 評価★★★ 1964年、小沢茂弘監督作品。 浅草を仕切っているテキ屋 (片岡千恵蔵) の長男である竜太郎 (鶴田浩二) は、ふとしたことから自分が母の不義でできた子であることを知り、家を出て放蕩に明け暮れる一人暮らしをしている。 年の離れた次男 (松方弘樹) はまだ家を継ぐには若いが、そこに杉屋デパート (松屋を暗示しているとか) の進出というニュースが入り、浅草の商人たちが大騒ぎになっているところに、別の場所から悪質な博徒も進出してくる。 そうしたごたごたの中で、浅草商人のために必死で動く父を見て、竜太郎も何とか父の力になろうと思うが、彼を慕う女 (島倉千代子) との約束もあった・・・・・。 ほかに次男の恋人役で藤純子が出ている。 お約束の展開だが、片岡の風格、鶴田の放蕩ぶり、松方の若さがそれぞれにいい味を出しているし、ヒロイン二人も魅力的。 藤純子はこのとき17歳、デビューの翌年だった。 島倉千代子はこのとき26歳、作中に彼女の歌も流れている (ただし歌うシーンはない)。

121.「ソハの地下水道」 9/26、TOHOシネマズ・シャンテ。 評価★★★ ドイツ・ポーランド合作、アグニェシュカ・ホランド監督作品。 第二次大戦中のポーランド。 ナチスドイツに支配されてユダヤ人は行き場を失い、一部は地下水道(下水道)に逃げ込んだ。 その手引きをしたのが、迷路のような地下水道に精通したポーランド人であった。 彼はユダヤ人からカネをせびりながら、商売として彼らに安全な場所を教え、食料を運んでやったりする。 しかしやがてユダヤ人にカネが尽きるときが来た。 そのとき彼は・・・・。 という、実際にあった話をもとにした映画。 あくまでカネ目当てでユダヤ人を救った中年男が、やがてそれとは別の心情に目覚めてしまうところがよくできている。 ただし舞台は下水道だから、あまり派手なシーンはなく、見るのにはそれなりに辛抱が要る。 また、当時のポーランドの複雑な民族事情もからんでいて、単純に普通のポーランド人・ユダヤ人・ナチスという三分法ではいかない部分もあり、この辺はパンフレットで知識を補っておかなくてはならない。

120.「そして友よ、静かに死ね」 9/25、テアトルシネマ銀座。 評価★★★ フランス映画、オリヴィエ・マルシャル監督作品。 主人公は、小学生時代にロマ (ジプシー) だからという理由でいじめられかけていたが、そのとき救ってくれた少年がいた。 爾来、ふたりは親友となり、成長後はギャングとして銀行を襲ったりして、それなりの暮らしをしていた。 あるとき、アジトに警察の手が入り、仲間たちは捕縛され、二人も裁判で懲役刑を課せられてしまう。 誰かが内通したらしいのだが、裏切り者は誰か。 ・・・・映画は、刑期を終えて出獄後、静かに妻と老後の生活を送っている主人公のもとに親友が助けを求めてきて、妻からはもうかかわらないよう要求されながらも、友情のために友を助ける主人公を淡々と描き、合間合間に過去の二人の映像がさしはさまれるという手法をとっている。 あくまで友情に殉じる老ギャングの姿が印象的だ。

119.「ディクテーター 身元不明でニューヨーク」 9/25、新宿武蔵野館。 評価★★★☆   アメリカ映画、ラリー・チャールズ監督作品。 最初に、「金正日に捧ぐ」 という文字が出ている。 ただし舞台は中東の某国。 石油で大もうけしている国の独裁者がしたい放題の毎日。 しかしNYの国連総会に出ることになるが、そこで側近によるクーデターが。 追い出された独裁者は、フェミニストで市民運動家の若い女の子と仲良くなり・・・・。 かなりはちゃめちゃなストーリーだが、そこそこ面白い。 何より、最後近くで実権をふたたび握った彼が、「民主主義より独裁のほうがずっといい」 と言って、その理由を 「1%の国民に富を集中できるし、金持ちに有利な政治ができるし・・・・」 と挙げていくところが抱腹絶倒。 まさにアメリカ民主主義社会で起こっていることが列挙されているのだ。 ホントに、民主主義と独裁のどちらがいいんでしょう??

118.「コッホ先生と僕らの革命」 9/25、TOHOシネマズ・シャンテ(日比谷)。 評価★★★ 19世紀末の、普仏戦争でフランスを撃破してドイツ統一を成し遂げたばかりのドイツ帝国。 ナショナリズムの高揚は、ギムナジウムにも及んでいる。 そこに、英国の大学で学んだ若い教師が赴任してきて、英語の授業をしようとするが、排外意識に燃える生徒たちは真面目に勉強しようとしない。 そこで当時ドイツでは未知のスポーツだったサッカーを教えつつ英語も勉強させようとする。 頑迷固陋なPTAや一部の教師の圧力にも負けずに、新しいスポーツを通じてフェアプレイの精神を伝えようとする若い教師と、生徒たちの物語。 ・・・・そこそこ面白いんだけど、物語が定型にはまっていて、その定型からはみ出す部分がない。 ハリウッドの名作 『いまを生きる』 と似ているようで、どこか違う。 話の展開がご都合主義なところも目立つし、善玉と悪玉がはっきり分かれ過ぎている。 ふだん映画をあまり見ていない人には歓迎されるかもしれないが、映画をよく見る人にはどこか物足りなさが残るかも。 

117.「ル・コルビュジエの家」 9/25、K’sシネマ(新宿)。 評価★★★★ アルゼンチン映画、ガストン・ドゥプラット+マリアノ・コーン監督作品。 アメリカ大陸に一軒しかないという、有名な建築家ル・コルビュジエの設計した家に住む、わりに著名なデザイナーである男。 妻と娘と三人で暮らしているが、娘との仲はうまく行っていない。 ある日、隣りに住む男が壁をぶち抜いて窓を作ろうとし始める。 その窓ができると、デザイナーの家は丸見えになってしまう。 妻がヒステリーを起こしかけて、デザイナーは何とか隣家の男と交渉をして窓作りをやめさせようとするのだが、その男はインテリであるデザイナーとはものの考え方や行動様式が著しく異なっており・・・・・。 インテリと非インテリが交渉するとどうなるかというコメディで、そこにル・コルビジェの家が絡んでいるところが変に面白い。 最後も、ちょっと唸るようなラスト。 奇妙な味の佳作で、新潟でも上映して欲しい。

116.「ライク・サムワン・イン・ラブ」 9/25、ユーロ・スペース(渋谷)。 評価★★☆ アッバス・キアロスタミ監督が日本を舞台に、日本人俳優を使って撮った映画。 エッチなバイトをしている女子学生と、彼のボーイフレンドである中卒で自動車修理工場を経営している若者、それに80代の元大学教授の3人の奇妙な成り行きと人間関係を描いている。 そもそもは、元大学教授が女子学生をバイトで雇い、しかしエッチな行為を行うのではなくて――年齢からして出来なくなっているのではないか――料理を作ってやったり一緒に話をしたりしたいと思っているのだが、女子学生のほうはそれが理解できない。 他方、彼女はボーイフレンドにはエッチなバイトをしていることを秘密にしているのだが、彼のほうは疑っていて、しかしたまたま元大学教授と彼女が一緒にいるのに出くわして、元大学教授は祖父なのだと誤解してしまい・・・・。 と書くと入り組んだ話なのかと思われそうだが、筋書きは単純で、進行も淡々としている。 何かが足りない、何か物足りない、そんな印象が残る映画。

115.「スリーピング・タイト 白肌の美女の異常な夜」 9/23、シアターN(渋谷)。 評価★★★★ スペイン映画、ジャウマ・バラゲロ監督作品。 副題から川端康成の 『眠れる美女』 みたいなお話かと思い、エロティックな表現が存分になされているのかと期待して見に行ったのだが、そちらではむしろ期待はずれだった。 この映画、主人公は冴えない中年男で、妻も恋人もおらず、家族と言っては老いた母が寝たきりで病院に収容されており、彼は時々見舞いに行っている。 さまざまな職を転々としてきた彼は、今はマンションの管理人をやっている。 その住人の一人に美しい若い女性がいる。 彼女には恋人もいるのだが現在は仕事の都合でアメリカ滞在中であり長距離になっているところ。 主人公は管理人の特権を利用して夜中に彼女の部屋に入り込み、彼女に麻酔薬をかがせてもてあそぶ――ここんところでの描写が残念ながらほとんど省略されている――のみならず、部屋に細工をして、彼女が自分に頼らざるを得ないように仕向けていく。 また匿名で彼女にメールや手紙を送り、心理的に追い込んでいく。 ・・・・これは、たんに冴えない男が美女に恋着するお話ではなく、そのような行為を通じて人生に何の魅力も見出せない男が世界に復讐をするというお話なのである。 その意味で 『太陽がいっぱい』 に少し似ているが、主人公はアラン・ドロンみたいな美男ではないし、明瞭な上昇志向があるわけでもない。 ただ、高級マンションの住民たちを酷い目にあわせることに自分の生き甲斐を見出していくという、しょうもない、しかし現代社会には存在しそうな人間をエンタメ (ですよね、これは) としてきっちり描いた作品として面白い。

114.「籠の中の乙女」 9/22、イメージフォーラム(渋谷)。 評価★★★ ギリシア映画、ヨルゴス・ランティモス監督作品。 妻と息子1人、娘2人を自宅から外に出させないようにして暮らしている中年男。 必要な物質はすべて男が外部から持ち込むことになっている。 時には、思春期に達した息子の性欲処理のために男の勤める会社の若い女子社員を連れ込んだりもする。 自宅とその庭以外の世界に踏み入ることを禁じられて育った息子と娘には、異常な思い込みが生じる。 しかし、娘のうちの一人は外部に出たいと思い、こっそり父のクルマのバッグルームに忍び込み・・・・。 設定が異常だけれど、展開はそこそこ。 発想のSF的な面白さを十分に活かせなかったような印象もある。 ただ、セックス描写などはあくまで乾いたタッチで行われており、異常を平静な雰囲気の中で描くことが目的だったのかなとも思う。

113.「恋山彦」 9/22、新文芸坐(池袋)。 評価★★★☆ やはり大川橋蔵特集の1本。 1959年、マキノ雅弘監督作品。 江戸五代将軍綱吉の時代。 山奥の平家の落ち武者部落に住む跡取り息子 (大川橋蔵) が、嫁 (大川恵子) をもらうが、その嫁はかつて三味線の名手である父と江戸に住んでいたところ、権力者である柳沢吉保に楽器を狙われ、父を惨殺された過去があった。 それを知った跡取り息子は、天皇家より格が低い将軍なるものを懲らしめるとして、江戸に出て行く・・・・。 ちょっと奇想天外な筋書きで、特に主人公が、天皇家から直接政権を任された平家より、徳川将軍家を格下と見て詰め寄るシーンが見もの。 ほかに、大川橋蔵の一人二役で江戸に住む浪人者が登場するなど、設定の面白さが光る作品である。

112.「月形半平太」 9/22、新文芸坐(池袋)。 評価★★★ 上京したら池袋の文芸坐で大川橋蔵特集をやっていて、1日だけ見る機会があった。 1961年、マキノ雅弘監督作品。 江戸の幕末期、幕府打倒を狙う長州藩は、薩摩藩と手を組もうというグループと、それに反対するグループの内訌が起こっていた。 大きな目的を達成するために大同団結を訴える藩士の一人が月形半平太 (大川橋蔵) だったが、芸者に養われて享楽的な生活を送る彼に反発する藩士も多かった。 やがて薩長連合に反対するグループはわなをしかけて彼を殺そうとする・・・・。 主役の大川は、殺陣では歌ったり酔っ払ったりしながら敵を斬る場面が多くて、人を食っている。 何人もの芸者にもてまくるところも、質実剛健的な武士のイメージからは遠い。 なお準主役で里見浩太朗が出ているが、若い頃の彼は昨今の老人的貫禄のある姿とは異なり、スマートで、そう言われないと誰だか分からないほど。

111.「ただ君だけ」 9/20、WMC新潟。 評価★★★☆ 韓国映画、ソン・イルゴン監督作品。 かつてボクシングをやっていた男。 訳があってやめていたが、偶然、視力がほとんどない若い女と知り合い、惹かれ合うようになる。 そして彼女が視力をなくした事故の原因に自分が関わっていたことを知った彼は、仲間から誘われていたタイでの危険な格闘技に出場してカネを稼ぎ、彼女に視力を回復させようと決心する・・・・・・。 ラブストーリーであり、それ以上でもそれ以下でもないが、最近の日本や欧米ではあまりストレートなラブストーリーが作れなくなっていることを考えると、こういう素直な恋愛物が作れる韓国映画界は貴重な存在と言えるかもしれない。 話には偶然が多いけれど、気にしないで見ましょう。 ヒーローとヒロインもそれなりに魅力的。

110.「ヴァージニア」 9/19、シネ・ウインド。 評価★★★ アメリカ映画、フランシス・コッポラ監督作品。 さほど売れていないホラー小説家が、訪れた町でかつて起こったミステリアスな事件を知り、またその幻想にとりつかれて、事件の真相を探り始める、というお話。 この町には実は有名な作家のE・A・ポーもからんでいて、夢の中にポーが現れ、事件の解決に向けて助言をしてくれる、という設定もある。 また当時に、売れないホラー作家自身にも娘を亡くした過去があり、その過去と事件が二重写しになる。 必ずしも分かりやすい映画ではないが、現実と幻想がないまぜになった、一見に値する作品だとは思う。

109.「バイオハザード X リトリビューション」 9/17、UCI新潟。 評価★★★ アメリカ映画、ポール・アンダーソン監督作品。 このシリーズ、第2作しか見ていなくて、今回久しぶりに行ってみました。 なぜ第2作の次に今回の第5作に行ったかというと、このシリーズに詳しくて勘の鋭い方ならお分かりのように、ヒロインのミラ・ジョヴォヴィッチには私は趣味がなくて、サブのヒロインとして登場するシエンナ・ギロリーには趣味があるから。 というわけでギロリーに期待して行ったのであるが、彼女、ちょっと感じが変わってきている。 第2作ほどの魅力を残念ながら見出せなかった。 代わってアジア系の第三のヒロインであるリー・ビンビンががんばっていたのが救いか。 全体としてはまあまあ、退屈せずに見られるから、合格点かな。 クローンのジョヴォヴィッチが何百体と並んでいるシーンが、ある意味、恐い。

108.「夢売るふたり」 9/14、UCI新潟。 評価★★★☆   西川美和監督作品。 九州から上京して料理屋をやっていたカップル(阿部サダヲ、松たか子)が、火事で店を失くしてしてしまい、新しい店を持つためにはかなり資金が要るということで、夫がおとりになって三十路女性相手の結婚詐欺を次々と繰り広げる、というお話。 筋書き的には途中ちょっと飛んでいるな、と思えるところがあり、やや脚本の展開に難があるが、後半、重量挙げ選手である女性だとか、公務員ながら息子がいる女性が登場するにおよんで、話がかなりシリアス度を増してくる。 もともとはコミカルな話かと思って見に行ったのだけれど、少なくとも後半は違う。 その辺をどう評価するかでこの映画の評価も違ってくるけれど、私は脚本の難点は難点として、後半のシリアスは買う、という見方をしました。 

107.「孤島の王」 9/12、シネ・ウインド。 評価★★★★ ノルウェー・フランス・スウェーデン・ポーランド合作、マリウス・ホルスト監督作品。 1915年のノルウェーを舞台に、不良少年の矯正施設として使われている島で少年たちが管理側に対して起こした反乱――これ自体は実際にあった事件だそうである――を描いている。 灰色の、色彩に乏しい島の、規律がやかましく管理人による性的な暴行も行われた施設の様子だとか、不良少年たちの表情、管理者側の事情などなどが、なかなか興味深い映像となって展開されている。 札付きの不良として島に送られてきたばかりの少年と、何年かをここで過ごし近々放免される予定の少年との友情なども面白い。 お薦め。 

106.「踊る大捜査線 THE FINAL 新たなる希望」 9/8、UCI新潟。 評価★★★ 本広克行監督作品。 シリーズ物として長らく続いてきた――ただし私は映画ヴァージョンしか見ていないけれど――作品の最終版。 筋書き的にはやや物足りない感じもする。 特に前半はなかなか話が進まず、ギャグも上滑り気味でちょっとどうかな、という感じ。 後半になると誘拐事件がらみで少し面白くなってくる。 唐突な箇所ややや安易な箇所もあるけれど、初心忘るべからずで締めくくりました、ということで、悪くない終わり方ではあるでしょう。 

105.「映画 ひみつのアッコちゃん」 9/1、WMC新潟。 評価★★★ 赤塚不二夫原作のマンガを、オリジナル脚本で実写映画にしたもの。 河村泰祐監督作品。 不思議なコンパクトの力で本来小学校5年生だったアッコは二十歳の女性 (綾瀬はるか) に変身。 たまたま化粧会社の社員 (岡田将生) と知り合い、その会社で冬休みにアルバイトをすることに。 やがて会社のっとりの陰謀に巻き込まれて・・・・・というような筋書きだけど、良い意味でマンガチックなコメディで、出来は悪くない。 ただし、クライマックスの株主総会のあたりはいくらなんでも筋書きが無理筋で、あそこをもう少し工夫して欲しかった。 しかし全体として、見て損はない映画にはなっているかな。 私は綾瀬はるかは必ずしも好きではないので、点数はちょっと辛めになっているかも。 彼女のファンならお薦めのレベルか。

104.「ワン・デイ 23年のラブストーリー」 9/1、WMC新潟。 評価★★ アメリカ映画、ロネ・シェルフィグ監督作品。 若い男女 (アン・ハサウェイ、ジム・スタージェス) が、大学卒業間近の頃から知り合いになり、しかし友人以上恋人未満の関係を20年にもわたって続け、途中で男はできちゃった婚をするがすぐに離婚、女もコメディアン志望の青年と同棲するがやがて別れ、結局長い長い遠回りをした後結ばれるが、しかし・・・・・・。 23年間の男女関係を、毎年の7月15日に絞ってたどっているけれど、何しろ2時間という枠で23年間毎年二人を映すのでどうも味が薄いし、二人の関係がなぜすっきり結ばれないのかもよく分からない。 アイデアと企画が空振りなんじゃないかな。 最後も陳腐だし、ちょっとがっかりの1本でした。

103.「ルルドの泉で」 8/28、シネ・ウインド。 評価★★☆ フランス・ドイツ・オーストリー合作、ジェシカ・ハウスナー監督作品。 2009年ヴェネツィア国際映画祭5部門受賞作。 聖母の泉が湧き病人を治す奇蹟が起こるとされるルルドの泉。 そこにはたくさんの病人がやってくるが、手足の麻痺で車椅子生活を送るクリスティーヌもその一人だった。 そして彼女に奇蹟は起こり、立てるようになる。 しかし当地を訪れた病人全員に奇蹟が起こるわけではないし、信心深くても全然治癒の兆しがない人もいれば、ヒロインのように特に信心深くなくても奇蹟が起こることもある。 この映画は、ルルドに集う人々(病人、その付き添い、修道院のシスター、などなど)、そこで行われている行事、治癒が起こるかどうかを見守る人々の思惑、など、聖地の実際が分かるという意味ではまあ興味深い。 ただ、そういう現実を描いているという意義は分かるけど、非常に淡々としていて、ドラマティックな盛り上がりなどは意図的に排除しているようで、実際はこういうものなんだろうと思うけど、だからどうしたのと言いたくなる気持ちも起こらないではない。 治癒をあくまで心の治癒として説明している聖職者たちもご苦労だなとは思うし、ヴォランティアでシスター役をやっているけれど必ずしも職務熱心ではない現代娘を 『ミッション・インポッシブル ゴースト・プロトコル』 で童顔の女殺し屋を演じて一躍知られるようになったレア・セドゥーがやっているのも、まあ見ものではあるのだが。 なお、ルルドの泉の成立については、ジェニファー・ジョーンズ主演の 『聖処女』 という映画がアメリカで第二次大戦中に作られており、これは掛け値なしに面白い作品なので、興味のある方はどうぞ。

102.「るろうに剣心」 8/24、UCI新潟。 評価★★★☆ 大友啓史監督作品、原作はマンガ。 明治初期、幕末に尊皇派に雇われて殺し屋をやり、人斬り抜刀斎と恐れられた青年 (佐藤健) が、名を改めて流浪の旅をしていたが、色々な事情から新時代に大もうけをたくらむ一派に付け狙われ、もう人を斬らないという内心の誓いを破らざるを得なくなる・・・・・というようなお話。 殺陣シーンが迫力満点で、ヒーローの佐藤健もサムライというよりは現代的なイケメンだけどそれなりに魅力的で、悪くない映画だと思う。 ただし、殺陣以外の物語展開はややお粗末だし、ヒロイン二人 (武井咲、蒼井優) もイマイチ魅力的ではない。 あくまで殺陣で見るべき映画である。

101.「桐島、部活やめるってよ」 8/20、Tジョイ新潟万代。 評価★★★ 朝井リョウ原作、吉田大八監督作品。 高校を舞台に、桐島というバレーボール部員をめぐって生徒たちが右往左往したり、色々な思惑を抱いたり、という筋書きだけど、桐島自身は登場しない。 むしろ、桐島という生徒を空虚な中心として、今どきの高校生たちの生態を描いた映画と見るべきだろう。 女の子同士の友情や確執、スポーツ部員の悩み、文化部の活動、男女関係の思惑、などなど、色々な側面が出てきているけれど、私の見るところ中心は映画部の活動で、それ以外はやや外面的というか、表層的な風俗描写にとどまっているように思われた。 何人もの注目株の若手俳優が出てきているので、若い俳優を見て楽しみたい向きにはいいかも知れない。

100.「ダークナイト・ライジング」 8/15、WMC新潟。 評価★★★★ アメリカ映画、クリストファー・ノーラン監督作品。 「バットマン・ビギンズ」「ダークナイト」と続いた新バットマン・シリーズの完結編。 前回の事件後数年たっているという設定で、バットマンであるウェインは退屈な毎日を送り、体調も思わしくない。 そんな彼の屋敷にキャットウーマンが盗みに入る。 それを前兆として、凶悪なベインのためにゴッサムシティは混乱に陥り、ウェインも破産してしまう。 ウェインは久しぶりにバットマンとなり、事件を解決しようとする・・・・・。 筋書きは悪くなく、単に正義と悪の対決というのではなく、副人物の設定がしっかりしており、一種の群像劇となり得ているのが本作の優れたところだと思う。 また最後近くで意外な展開があるのもいい。 重厚で見ごたえがある作品である。 ただ、バットマンとベインの対決シーンにはいささか物足りなさを覚える。 本来、バットマンは肉体の力だけでなく、様々な道具を駆使して悪と対決するところに妙味があるはずなんだが、この映画では正義も悪もレスラーかボクサーみたいで、ひどく単純なのだ。

99.「アベンジャーズ」 8/14、UCI新潟。 評価★★☆  アメリカ映画、ジョス・ウェドン監督作品。 『アイアンマン』、『インクレディブル・ハルク』、『マイティ・ソー』、『キャプテン・アメリカ』というマーベル・コミックス出身のスーパーヒーローが一堂に会すビッグ・プロジェクトがついに実現・・・・という触れ込み。 何ていうのかなあ、こういうのっていかにもアメリカ的というか、ハリウッドが考えそうなことだと思うんだよね。 たくさんヒーローが集まれば面白くなるっていう、きわめて子供っぽいというか、あっけらかんとした発想に基づく映画。 だけど前半は見ていてさほど面白くなく、後半は戦闘シーンだからそれなりだけれど、どうも敵方の迫力がイマイチだ。 子供ならこういうのを歓迎するんだろうけど、大人が見て楽しめる映画じゃない・・・・なんて書くと、こういう映画が好きな大人の方々から叱られるでしょうか。 すみません。

98.「Another」 8/13、UCI新潟。 評価★★★ 綾辻行人原作、古澤健監督作品。 都会から地方都市の中学3年3組に転向してきた男の子(山崎賢人)。 しかし窓際のいちばん奥の席にすわっている女子(橋本愛)を、他の生徒たちは見えないという。 やがて彼女はクラスの全員から無視されているのだと判明。 それは、この中学の3年3組に過去から続く伝統であり、それにはそれなりの理由があった・・・・。 ちょっと面白い設定で、途中までは結構興味津々で見ていたのだが、原作のせいか監督のせいか知らないが、設定の面白さが十分に活かされているとは言えない。 ヒロインは親ではない女性と一緒に暮らしているのだが、そこについても何の説明もないし、その設定から何かが起こるわけでもない。 せっかくのイケメンの山崎くんと美少女の橋本さんも、どうせならもっと様々な表情が見られるように撮影上の工夫も欲しかったところ。 惜しい。

97.「おおかみこどもの雨と雪」 8/10、ポレポレいわき。 評価★★★☆ 細田守監督作品、アニメ。 狼男と結婚して二児を設けた若い女性が、夫に早く先立たれ、一方狼男の血を受け継ぐ子供たちは都会で育てるのは無理と判断して、人口流失の続くド田舎の廃屋に引っ越して、必死に農業などをやりながら子供たちを育てるが、やがて姉は人間として生きる道を選び、恋した男子に自分の秘密を打ち明け、弟のほうは狼として生きる道を選択して家から出て山に入っていく、というお話。 ほどほど面白いし、退屈せずに見ていられるけれど、決定的な何かが足りないという気もする。狼男の戸籍はどうなっていたんだ、なんて細かいことは気にしないで見ましょう(笑)。

96.「ル・アーブルの靴みがき」 8/4、シネ・ウインド。 評価★★☆ フィンランド・フランス・ドイツ合作、アキ・カウリスマキ監督作品。 フランスの港町ル・アーブルを舞台に、妻と暮らしている平凡な靴みがきの老人が、不法移民の黒人少年をかばって警察から疑われる羽目になり、ほぼ同時に妻が不治の病 (とは夫は知らないが) で入院する、というような筋書き。 ただし、話の進行はリアリスティックというより、どこか大人向けの童話めいていて、まったりゆったりしており、最後はどちらもハッピーエンドとなる。 だけど、警察の鬼警視まで主人公に同情的になるという筋の運びは、いくら童話だってご都合主義過ぎませんかね? 私は、何となく腑に落ちないものを感じました。 ル・アーブルの下町の様子は、それなりに面白かったけれど。  

95.「グスコーブドリの伝記」 8/3、UCI新潟。 評価★★☆ 宮沢賢治の有名な原作を、杉井ギサブローが登場人物を全部ネコにしてアニメ化したもの。 杉井は以前、『銀河鉄道の夜』 でも同じことをやっていた。 で、まず絵は非常によく描きこまれていてすばらしい。 なんだけれども、どうも脚本がイマイチなのである。 幻想風に行きたいのか、ドラマティック・ヒューマンな感動風に行きたいのか、どうもはっきりしない。 登場人物 (猫物?) たちのセリフにも魅力が乏しくて、声優にわざわざ有名俳優を持ってくる必要もないんじゃないかと思える。 思い切って原作を料理しないと、有名原作のアニメはうまくいきませんよ、前作の 『銀河鉄道の夜』 もそうだったけどね。

94.「メリダとおそろしの森」 8/1、WMC新潟。 評価★★  アメリカ映画、マーク・アンドリュー&ブレンダ・チャップマン監督作品のディズニー・ピクサー・アニメ。 2D吹替版にて鑑賞。 王女様が母である王妃のしつけをうるさがり、婿を決める集いから抜け出して森の奥の魔女に頼みごとをしたところ、異変が・・・・・というような筋書きなんだけれど、話がきわめて狭苦しくて (要は母と娘の確執のお話なんですよ)、壮大な展開とは無縁であり、アメリカ・インテリ女性の安易な精神分析志向をそのままおとぎ話風にしたみたいで、愚作というしかない代物。 こんなの、カネとって見せるなよ、と言いたくなった。

93.「アメイジング・スパイダーマン」 7/28、UCI新潟。 評価★★★ アメリカ映画、マーク・ウェブ監督作品。 2D版にて鑑賞。 2002年に始まったサム・ライミ監督による3部作とは別の、新シリーズ第一弾である。 平凡な高校生が、特殊な蜘蛛に噛まれたことで、超能力を持つスパイダーマンとなり、悪と戦うというお話。 前シリーズと比べると、主人公のいじめられっ子的性格が薄れ、ヒロインも、前シリーズでは主人公の隣家の娘で飲んだくれの父を持つ中流階級下層の女の子でなかなか主人公に恋してくれなかったのが、今回は高級マンションに住む警察幹部の娘で、作中ではわりにすんなり主人公と恋仲になってしまうなど、「冴えない高校生がヒーローに」 というコンセプトがやや薄れているのが残念である。 とはいえ、見ていればそれなりに面白いし、アクションも前シリーズより速くなっているのは、時代の流れか。 見て損はないかな。

92.「別離」 7/27、シネ・ウインド。 評価★★★★ イラン映画、アスガー・ファルハディ監督作品。 アルツハイマー病の老父をかかえる家族。 妻は離婚して外国で働こうとする。 一人娘と一緒に家に残った夫はやむをえず家政婦を雇うが、思わぬ事件が勃発し・・・・・。 脚本がかなりよくできていて、スクリーンから目が離せなくなる。 とはいえ、アルツハイマー病のとにかく手間のかかる老人を抱える家族、そして家政婦として雇われる女性も家庭の問題を秘めいてるので、登場人物たちを見ているとどうにもやりきれない気分になってくる。 日本人はイランのことはあまり知らないわけだけど、この映画を見るとクルマがかなり街中にあふれていて世俗化・近代化も進んでいる一方で、イスラム教による縛りもそれなりにあり、日本と似ているところ、異なるところがそれぞれに興味深い。 この監督の前作 「彼女が消えた浜辺」 は脚本にやや納得できない部分があったけど、本作はその難点も解消され、秀作の部類に入るだろう。 アカデミー賞最優秀外国語映画賞やゴールデン・グローブ賞外国語映画賞を受賞しているのも納得。 とはいえ、いわば純文学で、見ていて楽しい映画ではないので、そのつもりで。 それにしても、こういう老人になるよりはぽっくりと逝きたいものだ、と60歳を目前にしたワタシは考えてしまいます。

91.「ピナ・バウシュ 夢の教室」 7/25、シネ・ウインド。 評価★★★ ドイツ映画、アン・リンセル監督作品。 私はダンスにうといので、ピナ・バウシュの名もこの映画を見るまで知らなかった。 40人のティーンエイジャーが集まり、「コンタクトホーフ」という舞台作品の訓練を10ヶ月にわたり受ける様を描いている。 指導は主として協力者である二人の中年女性ダンサーによっているので、バウシュ自身はそれほど多く出てこない。 この映画の見どころは、むしろ集まった少年少女たちのさまざまな表情や家庭環境、そして容姿や踊りの個性がじっくりと捉えられているところであろう。 現在のドイツは多民族化しているが、この映画でも黒人やジプシーの少年が登場するなど、かなり多様な人物像が見られる。 彼らが最後に見事な舞台を見せるところでは、それなりに感動がある。 

90.「ヘルタースケルター」 7/20、UCI新潟。 評価★★★ 蜷川実花監督作品。 いうまでもなく沢尻エリカ主演で話題。 徹底的な整形で美女となり、日本一のアイドルにのし上がったヒロインだったが、後輩アイドルの追い上げや、手術後に服用していた薬の後遺症で・・・・・。 率直に言って、沢尻エリカを見るだけで、他はまあどうでもいい映画である。 逆に言えば彼女の頑張りが目立つし、他の俳優は刺身のツマである。 特に検事役で出てくる大森南朋は、救いようがないので、削ってもらいたい。 沢尻エリカは雑誌などではかなり叩かれているけれど、映画で見るとやっぱり美形だし、俳優は性格が悪かろうが何だろうがとにかくスクリーンで輝けばそれでいいのだから、まあこの映画もこれでいいんじゃないか。 ただし、監督が通俗に徹することができない弱さを見せているのが難点だけど。

89.「崖っぷちの男」 7/16、UCI新潟。 評価★★★☆ アメリカ映画、アスガー・レス監督作品。 ホテルのかなり高い階から窓の外に出て自殺しようとする男。 警察が駆けつけ、説得に当たる。 しかし、その男にはある目論見があった・・・・。 というような筋書きで、途中の展開はやや強引な感じもするし、主人公がらみの犯罪の真相が明らかになっていく過程はご都合主義の匂いもあるけれど、長すぎず、まあまあ面白い映画とは言えるでしょう。 女刑事役で出てくるエリザベス・バンクスが、いかにもの美人ではないけれど、見ているうちに魅力的に思えてくるところが不思議。

88.「先生を流産させる会」 7/13、シネ・ウインド。 評価★★★ 内藤瑛亮監督作品。 日本で実際にあった事件をもとに、監督なりに脚色を施して映画化した作品。 若い女教師の戦闘的な態度と、ふてぶてしい女子生徒たちの闘いが見もの。 モンスターペアレントも登場する。 低予算映画の限界はあるけれど、教育映画にありがちな偽善性があまり感じられないところがいい。

87.「裏切りのサーカス」 7/11、UCI新潟。 評価★★★ 英・仏・独合作、トーマス・アルフレッドソン監督作品。 70年代のヨーロッパを舞台に、英国の諜報部サーカスが、内部にソ連のスパイが潜入しているとの情報をつかみ、それが誰なのかを、退職した職員に探らせる、というお話。 原作小説はかなり込み入ったストーリーらしいので、私もこの映画の作品サイトをあらかじめよく読んだ上で見に行ったのであるが、筋書きによく分からない部分があり、またスパイものとしての満足度もさほど高くはなかった。 見るべきところは、主人公を演じるゲイリー・オールドマンの風格と、しばしば言及されているのにも関わらず彼の妻が全然姿を見せないという作りの奇妙さ、だろうか。

86.「サニー 永遠の仲間たち」 7/6、WMC新潟南。 評価★★★ 韓国映画、カン・ヒョンチョル監督作品。 夫および高校生の娘と暮らす中年主婦が、たまたま母を見舞いに行った病院で高校生時代の親友と再会し、ガンで余命いくばくもない友のためにかつての仲間たちを探すというお話。 回想シーンで彼女たちの高校生時代が再現される。 時代的には全斗換大統領の時代だから、1980年代ということのようで、ヒロインが高校生だったときに兄は反体制運動に奔走しているし、家族で囲む食卓もまだあまり洗練されていないのに対して、中年のヒロインが夫や娘と朝食をとるシーンではかなり洗練されていて、時代の変化もそれなりに分かるようになっている。 ただ、高校生時代の仲間たちは、女子高生7人とはいっても、対立するグループと抗争をやってたりして、女子高校生的な乙女チックな物語には程遠い。 そこそこ面白いが、しっとりした情緒だとか、文芸物的な味わいを期待してはいけない。 最後はもう一工夫欲しかった。 ヒロインの中年女性を演じるユ・ホジョンがなかなか魅力的だ。

85.「ラム・ダイアリー」 7/3、UCI新潟。 評価★☆ アメリカ映画、ブルース・ロビンソン監督作品。 60年代のプエルトリコを舞台に、そこの新聞社に新規採用されてやってきた記者が巻き込まれる事件を描いている・・・・らしい。 最近のジョニー・デップ主演作って感心したことがないんだが、これもひどかった。 テンポが悪く、筋書きが支離滅裂、どこにポイントがあるのかわからず、だらだら続いていくだけ。 退屈きわまりなし。 こんなの、金とって見せるなよ、と言いたくなる。 見どころは、ヒロインとして登場するアンバー・ハードの美しさのみ。

84.「SHAME シェイム」 7/1、Tジョイ新潟万代。 評価★★★   英国映画、スティーヴ・マックィーン監督作品。 会社勤めの青年が、ネット上のセックス情報にのめりこみ、また娼婦とのセックスには意欲的だが、本当に愛情を持った女性との交渉ができず、また兄の愛情を求めてくる妹を邪険に扱ってしまう、というような、現代青年の孤独感を描いた映画。 雰囲気的には 「タクシー・ドライバー」 に似ているところがある。 ちょっと純文学的で、筋書きは必ずしも起伏に富んでおらず、娯楽として見て楽しかったり面白かったりする作品ではないので、そのつもりで。 

83.「臨場 劇場版」 6/30、WMC新潟。 評価★★★ 橋本一監督作品。 犯罪で殺された被害者の検死をする役目の検察官 (内野聖陽) が活躍するミステリー。 ここでは、かつて殺人を犯しながら刑法39条 (精神障害者の犯罪は罪に問われない) を盾に無罪になった青年の、当時の担当弁護士と、裁判で証言台で無罪を主張した精神科医が殺される事件を扱っている。 とすると、今回の犯人は、かつて身内を殺されながら刑法39条により犯人が無罪となってやり場のない怒りに駆られている遺族では、ということになるのだが・・・・。 ミステリーとしてはそこそこ面白い。 なので一応合格点にはしておくけど、主役の内野聖陽がやたら粋がった動作をする割には、実際の働きはさしたることもなく、またラストがどうしようもなく日本的ないい加減さに満ち満ちており、日本の映画ってこういうところがダメなんだよな、と言いたくなっちゃう。

82.「少年と自転車」 6/29、UCI新潟。 評価★★☆ フランス・ベルギー・イタリア合作、ジャン=ピエール・ダルデンヌおよびリュック・ダルデンヌ監督&脚本。 母がなく父にも見捨てられ施設に暮らす少年 (トマ・ドレ) が、ふとしたことから知り合った女性 (セシル・ド・フランス) に週末だけ里親になってもらったものの、悪い仲間と付き合って事件に巻き込まれ、しかし里親の女性は少年を見捨てず・・・・というようなお話。 ・・・・うーん、見ていて、少年の可愛げのなさにうんざりし、女性の辛抱強さにびっくりし、筋書きにあんまり説得性を感じなかった。 自分の生んだ子ならともかく、他人の子供にどうしてあんなに辛抱強く向き合えるのだろうか。 しかも、そのために彼女は付き合っていた男性とも別れるのである。 また少年も途中までは可愛げがなくて反抗的なのに、最後でくるっと従順になってしまい、ご都合主義の匂いが感じられる。 これでカンヌ映画祭グランプリだとすると、よほど他にまともな作品がなかったか、或いは審査員に見る目がなかったんだね。 ・・・・なんか、ここ1週間の映画はハズレばっかりだなあ。 困っちゃう。

81.「図書館戦争 革命のつばさ」 6/27、Tジョイ新潟万代。 評価★★☆ 有川浩原作 (小説)、浜名孝行監督によるアニメ劇場版。 私は原作もテレビアニメも未読未見。 ただ、昨年度この原作小説で卒論を書いた学生がいたので、こういう作品があるということと、大筋は知っていた。 ・・・・だけど、卒論を読んだときにも思ったんだけど、設定に説得力を感じないんだよね。 日本という法治国家・先進国において、武力を持った団体が2つあって、お互いに全面戦争にならずに拮抗しているという設定に、である。 法治国家である以上、どちらかが非合法とされるはずで、つまり設定や筋書き自体がチャチだから、このアニメを見ていてもどっか醒めてしまい、フィクションの世界に入っていけないのだ。 また、絵の面から見てもアニメとしての魅力があまりないし、この作品に限定しての筋書きも、英国やアメリカやオランダが変に理想化されているみたいで、40年は古い、と言いたくなってしまう。

80.「ベニスに死す」 6/23、シネ・ウインド。 評価★★☆ イタリア・フランス合作、ルキノ・ヴィスコンティ監督作品、1971年。 トーマス・マンの小説を映画化したものとして有名だが、ウインドに来たので久しぶりに見てみた。 これで3回目かな。 でも、私はどうもこの映画は世評と違い、駄作だと思う。 主人公の恋情がイマイチうまく表現されていない。 ここがいちばん肝心なところで、いくら美少年が登場しても、それだけではこの作品は作品として立たないのだ。 そもそも、『ファウストゥス博士』 の要素を中途半端に入れたところからしてマズかったんじゃないか。 原作のほうがはるかに素晴らしい。 もっとも今どきだから活字の本なんか読まない (読めない) 輩がこの映画をほめているのかも知れないなあ。

79.「天皇ごっこ 見沢知廉・たった一人の革命」 6/22、シネ・ウインド。 評価★★☆ 自殺した作家見沢知廉を扱ったドキュメンタリー。 彼と交際があった人や、彼に興味を持つ人たちにインタビューをして作品が構成されているが、一部、監督による創意 (?) をこらした映像も入っている。 だけど、この監督の創意が余計。 ふつうにドキュメンタリーとして作ったほうが良かったと思うし、インタビューには (私の知らない) 舞台女優が使われているが、なぜか彼女が見沢の妹だというフィクションが導入されていて、これまた余計なのである。 余計なことはしないで普通に作っていれば、インタビューを受ける人たちは鈴木邦男だとか雨宮処凛だとか中島岳志だとかのそれなりの人達だし、またそれ以外の非有名人の発言も面白いので、標準レベルまでは行ったと思うんだが。

78.「スーパー・チューズデー 正義を売った日」 6/22、UCI新潟。 評価★★☆ アメリカ映画、ジョージ・クルーニー監督・主演。 アメリカの大統領選挙に打って出た民主党所属の某州知事 (ジョージ・クルーニー)。 彼を取り囲む選挙対策スタッフたちは共和党の対立候補に負けないよう必死の努力を続ける。 ところが思いがけない事件が起きて・・・・。 クルーニーがばりっとしてカッコいい大統領候補を演じているところがミソだけれど、筋書きは意外に単純で、あんまり面白みを感じない。 もう一ひねりないとフィクションとしては合格点に達しないでしょう。 クルーニーって、これまでも映画の製作だとかに携わっていて、ここでは監督も兼ねているけれど、従来も彼が製作などに関わった作品ってあんまり買えないのが多いんだよね。 映画を作る才能はないんじゃないだろうか。 私としては、ハンサムなのを生かして普通に娯楽映画の主演でやってくれたほうがいいと考えますけど。

77.「シグナル 月曜日のルカ」 6/20、WMC新潟。 評価★★★ 谷口正晃監督作品。 夏休みに地方都市の実家に帰省した大学生 (西島隆弘) は、名画座でアルバイトをすることきなる。 映写技師の手伝いが仕事だったが、その映写技師は若い女性 (三根梓) で、名画座の中に住んでおり、3年間外に出たことがなかった。 やがて彼は彼女の秘密を知るようになるが・・・・・。 名画座を舞台にしたちょっと変わった映画。 名画座の雰囲気と彼女の秘密がややズレているような気もするが、筋の進行はたくみで、またヒロインを演じる三根梓もなかなかの美少女 (といっても20歳ですけど) で、悪くない映画になっていると思う。 名画座の支配人役の井上順もいい味を出している。

76.「11.25 自決の日 三島由紀夫と若者たち」 6/16、シネ・ウインド。 評価★★☆ 若松孝二監督作品。 三島由紀夫が盾の会のメンバーと自衛隊の建物で幹部を人質にしてたてこもり、演説をしたあと三島が自決した1970年の有名な事件を再現した映画。 そこに至るまでの過程を、かなり事実関係を綿密に調べた上で映像化している。 ただし、それで三島の自決に納得がいくかどうかはまた別。 むしろ事実関係に囚われすぎていて、三島の持つ複雑さや、作家としての独特な感性や思考がうまく表現されていないように思われた。 これは三島を演じた井浦新の責任も大きい。 三島を演じるには10年早いという感じかな。

75.「おとなのけんか」 6/15、UCI新潟。 評価★★ 仏・独・ポーランド合作、ロマン・ポランスキー監督作品。 お互いの子供がケンカをして、その処理をしようと一方の両親が他方の両親宅を訪れた。 最初は大人らしくおだやかな話し合いが行われていたが、やがて・・・・。 という筋書きで、面白そうだと期待して見に行ったのだけれど、残念ながら、でした。 もっと破天荒な、はちゃめちゃなところがないと、喜劇にならないんじゃないか。 筋の進行にも不自然なところがあり、不出来な一品になってしまいました。

74.「さすらいの旅路」 6/11、シネマヴェーラ渋谷。 評価★★★ やはり中川信夫監督特集の1本、1951年。 売れない男性歌手 (龍崎一郎) と、その彼に献身的に尽くす恋人 (若山セツ子)。 やがて男性歌手は飲み屋に勤める恋人の客となったレコード会社の重役とコネを作り、女性歌手とコンビでヒット曲を生み出すが、彼と女性歌手が事実上の夫婦だというゴシップを流されて・・・・。 戦後、ようやく世の中が安定してきた頃の日本の芸能界や世間の様子が何となく懐かしい映画。 ヒロインの若山セツ子が、最近では見当たらなくなった可憐で楚々とした大和撫子を演じていて、なかなかいい。 若山は恵まれない生涯を送ったようで、全盛期の名声のわりには今日顧みられることが少ないが、この映画では魅力を十二分に発揮している。 

73.「八百万石に挑む男」 6/11、シネマヴェーラ渋谷。 評価★★★☆ 中川信夫監督特集の1本、1961年。 徳川8代将軍吉宗時代に起こった天一坊事件を描いている。 まず、天一坊 (中村嘉葎雄) が本当に将軍の御落胤なのか、ニセモノなのかが微妙で、本人にも真相が途中まで分からないという設定になっているところがうまい。 また天一坊を担ぎ出す側の総元締め的な役を演じる市川右太衛門が、派手な切りあいシーンはないが、圧倒的な迫力で存在感を見せている。 吉宗の首席家老役の山本聡、江戸奉行・大岡越前役の河原崎長十郎もなかなかいい味を出している。 筋書きも役者も充実した見ごたえのある時代劇。

72.「青春群像」 6/11、早稲田松竹。 評価★★☆ フェリーニ特集の1本。 イタリア・フランス合作、1953年。 フェリーニが若い頃の作品で、自伝的な要素も入っているそうだが、あまり面白いとは思えない。 小さな町で、職もなく (職を得られず) のらくらしている青年たちの姿が描かれているのだが、中心になるのは、町のミス・コンテストで一位になった美少女を結婚前に孕ませて、やむを得ず結婚し、就職口もあてがわれるが、そこのお上さんに手を出したり、またそれ以外の女性にも手を出すろくでもない男である。 そういうロクデナシが破滅するのかと思うとそうでもなく、何となく元のサヤに収まってしまうところが、今日的な目で見ると生ぬるい作品に見える原因となっている。 

71.「8 1/2」 6/11、早稲田松竹。 評価★☆ フェリーニ特集の1本。 イタリア映画、1963年。 映画監督 (マルチェロ・マストロヤンニ) の創作上の苦しみだとか女関係だとかを描いている、自伝的でわりに有名な映画だけど、全然面白いとは思わなかった。 雑然としていて、筋書きに求心性がなく、だらけきって、女優もクラウディア・カルディナーレとかアヌーク・エーメだとか大物を何人も使っているけれど魅力的には映っておらず、何やってるのかなあ、有名になるとこんなグウタラな代物を作ってもほめられちゃうものなのかなあ、と思いました。

70.「ミッドナイト・イン・パリ」 6/10、ル・シネマ(渋谷)。 評価★★★☆ アメリカ・スペイン合作、ウッディ・アレン監督作品。 脚本家だが小説家をめざしている青年 (オーウェン・ウィルソン) が、婚約者 (レイチェル・マクアダムス) およびその両親とパリを訪れている最中に、1920年代にワープして、当時パリに住んでいたヘミングウェイやピカソといった著名な芸術家と知り合い、また彼らの愛人であった魅力的な女性 (マリオン・コティヤール) に惹かれていく、というお話。 誰がどの芸術家をやっているかという配役を見る楽しみもあり、また展開もコミカルで、芸術の黄金時代を懐かしむ気持ちや、アメリカ人とパリ・ヨーロッパの関係を考えさせるところもあり、軽めだけれど面白い映画に仕上がっている。 新潟でも上演して欲しい・・・と書きかけて、改めて調べたら、シネ・ウインドでやるようだ。 といっても9月下旬まで待たされるのが玉に瑕だが (だから新潟は映画後進地域だっていうのだよ。 仙台と山形と富山はすでに5月下旬から公開、青森と盛岡と福島と金沢だって7月から公開ですぞ!)、やらないよりはやったほうが断然いい。 新潟の映画ファンはお見逃しなく。 

69.「私が、生きる肌」 6/10、TOHOシネマズ・シャンテ(日比谷)。 評価★★☆ スペイン映画、ペトロ・アルモドヴァル監督作品。 妻を事故で、娘を男関係のもつれから失った医師(アントニオ・バンデラス)。 彼は人造の皮膚や膣を用意して、ある人物を絶世の美女に仕立て上げ、愛人にしようとする。 ではその人物とはもともとは誰だったのか・・・。 筋書きの展開のさせ方は途中まではそれなりに巧みで、観客を惹きつけるところもあり、おっと思うシーンもあるのだけれど、肝心の部分がちょっと・・・なのである。 監督の真意が分からないし、それまでの展開が全然説得力を持たないというか、何を考えてこういう映画を作ったのか分からない、と言いたくなってしまうのである。

68.「キリマンジャロの雪」 6/10、岩波ホール(神保町)。 評価★★★ フランス映画、ロベール・ゲディギャン監督作品。 長年労組で活動してきた初老の男性が、会社の合理化首切りに際してクジ引きで馘首該当者を決めることにし、自分の名もクジに入れて自ら引き当てる。 というわけで仕事を引退した彼と妻は、子供や周囲の人々から長年ご苦労様ということでアフリカ旅行のチケットと旅行経費をプレゼントされる。 ところが、友人夫妻とトランプをやっていたところに押し込み強盗が入り、チケットとお金を強奪されてしまう。 だが、捜査が進むと、犯人は意外にも・・・・。 老いた労組活動家が、最近の若年労働者と考え方の相違に悩んだり、家族のあり方を改めて思案したりする映画。 筋書きには、強盗シーン以外はどぎついところがなく、淡々として進んでいく。 悪くはないけど、ほどほどのところで収めたのかなあ、問題を突き詰めていないなあ、とも感じた。

67.「オレンジと太陽」 6/8、岩波ホール(神保町)。 評価★★★★ 英・豪合作、ジム・ローチ監督作品。 ジム・ローチ監督は、ケン・ローチの息子。 本作は、英国から多数の子供がオーストラリアへ送り込まれ、酷使されていたという事実、そしてそれを発見した英国の女性福祉公務員 (エミリー・ワトソン) が被害者の実態やこの事件の事実関係を調査する過程をたどっている。 18世紀や19世紀の話ではなく、というよりその頃から 「児童移民」 は行われていたのではあるが、しかし第二次大戦後も1970年頃まで行われていたというのだから驚いてしまう。 おまけに、カトリック教会の神父たちもこの仕事に関わりを持っており、移民である児童たちに苛酷な労働を強いたり性的な虐待を行ったりもしていたのである。 いわゆるヨーロッパ先進国って何だったんだろう、という深い疑問に囚われてしまう映画である。 加えて、調査を進めるヒロインは数々の嫌がらせまで受けるのだ。 開明的とされる英国 (とオーストラリア) の一面を知るためにも是非にとお薦めしたい佳作である。 ただし、児童移民の実態や数など事件の詳細については、映画は必ずしも十分には触れていないので、その方面に興味のある方はパンフレットで補う必要があろう。 新潟でも上映してほしい、と思ったら、期日は未定だがシネ・ウインドでやるようである。 映画ファンはお見逃しなく!

66.「ファウスト」 6/8、シネスイッチ銀座。 評価★★★ ロシア映画、アレクサンドル・ソクーロフ監督作品。 言わずと知れたゲーテの 『ファウスト』 を映画化したもの。 といってもあの長大な作品をそのまま映画にするのは無理だから、主として第一部をソクーロフ流に料理して、第二部は申し訳程度に出てくるだけ。 映像に独特の味があり、中世的な雰囲気がよく出てはいる。 が、何しろソクーロフである。 常人の感性ではついていけない部分があって、そこが何とも・・・なのである。 長所としては、ヒロインのマルガレーテを演じるイゾルダ・ディシャウクがとてもかわいい。 ファウストとのベッドシーンもあって、ここがまた・・・。 ま、怖いもの見たさ、という覚悟のある方にはお薦めします。 世界名作を気軽に映像で、という方にはお薦めしません。 新潟では、期日は未定だが、シネ・ウインドで上映予定のようである。

65.「ジェーン・エア」 6/7、TOHOシネマズ・シャンテ(日比谷)。 評価★★★★ 英米合作、キャリー・ジョージ・フクナガ監督作品。 シャーロット・ブロンテの有名な小説の映画化。 この映画、まずヒロインを演じるミア・ワシコウスカがとても魅力的だ。 「自立する女」 風の言葉を吐くのだけれど、どこか幼さを残した顔立ちが口から出る言葉を裏切っているようで、そのアンバランスが男を惹きつけてやまないのである。 最近のヨーロッパ映画の中でも出色のヒロインというべきであろう。 そのほか、時代を再現するかのような屋敷内の様子や、英国の荒涼たる風景、光と影を強調した表現など、映像面でも十分楽しめる作品になっている。 文学ファンにも映画ファンにも薦められる佳作である。 ・・・が、作品サイトによると今のところ新潟での上映予定はないらしい。 新潟の映画館は何をしているのだろうねえ・・・ (追記: その後、Tジョイ新潟万代で上映された。)

64.「海燕ホテル・ブルー」 6/1、シネ・ウインド。 評価★★ 若松孝二監督作品。 現金輸送車を襲って懲役刑をくらった主人公。 出所して、この犯罪を立案しながら当日来なかった仲間の居所を突き止める。 その裏切り男は伊豆大島で小規模なホテルを経営していた。 主人公が訪ねていくと、白いワンピースを着た若い女と一緒に暮らしていた。 なぜ当日来なかったのかと問い詰められた裏切り男は、女と別れたくなかった、と告げる。 主人公は裏切り男を殺して自分がホテルの主に収まるが・・・・。 神秘的な雰囲気の白いドレスの女を中心にすえた幻想的な作品、を狙ったのだと思うけど、試みは部分的にしか成功していない。 ダメなところを3点挙げる。 まず白いドレスを着た女を演じる片山瞳が美しくない。 せいぜい三流エロ映画のヒロインを演じる程度の美しさしかないのでは、彼女の魅力にイカれて男たちが狂っていくという筋書きが納得できない。 第二に、作中、反原発のアジ演説を一箇所入れているのは余計。 作品を薄っぺらにするだけ。 第三に、最後に男たちを 「おばかさんたち」 と女に言わせているのも余計。 これで全体がさらに薄っぺらになってしまった。 若松監督も、『実録・連合赤軍』 は良かったけど、『キャタピラー』 で失速し、この 『海燕ホテル・ブルー』 では失墜かなあ。 ダメだね。  

63.「君への誓い」 6/1、WMC新潟南。 評価★★★★☆ アメリカ映画、マイケル・スーシー監督作品。 交通事故で記憶を失った妻 (レイチェル・マクアダムス)。 何とか記憶を取り戻させようと努力する夫 (チャニング・テイタム)。 ・・・・というと、何となく型にはまった定番のラブストーリーを予想するだろうけど――私も実はそう思っていたのだけれど――違うんだな、これが。 ネタバレになるから詳しくは書かないけれど、この映画はヒロインの生き方を描き出すことに最重点が置かれている。 そこにあるのは、上流の保守的な価値観に染まった人達と、それに反逆して自分の足で歩こうとする若者との対立である。 そう、1970年代に一世を風靡した 『ある愛の詩』 も、ラブストーリーではあるけれど、同時に青年が裕福な実家に反逆するお話だった。 この映画も、親の言いなりに生きてきて、自分に目覚めて生き方を模索する若い女性の姿を浮き彫りにしていて、十二分に見ごたえのある作品となっている。 ふだん映画をあまり見ないカップルのデートムービーではなく、映画をよく見る人向けの傑作と言うべきでしょう。

62.「虹色ほたる 永遠の夏休み」 5/30、WMC新潟南。 評価★★★    宇田鋼之介監督作品。 ひとりで田舎にカブトムシ取りに出かけた少年が、タイムスリップして、ダム湖の底に沈んだ村が実在した1970年代に戻り、その村でひと夏を過ごす、というアニメ。 小学生が夏休みを田舎で過ごすという設定や道具立てには特に新鮮味はないが、独特な絵柄で少年や少女の思いを綴っていく作品として、まあまあ面白みがある。 ただ、失った父親の記憶や、ひと夏を一緒に過ごす女の子の家族関係など、ちょっと展開が不十分なところもある。 最後の展開もやや強引だが、ラストはこうしないとダメなんでしょう。

61.「ガール」 5/30、WMC新潟南。 評価★★★☆ 深川栄洋監督作品。 29歳から30代後半までの年齢層の女ともだち4人を主人公に、それぞれの恋・仕事・子育ての悩み等々を描いた映画。 ヒロインを、麻生久美子、吉瀬美智子、板谷由夏、香里奈が演じている。 家族設定で言うと、夫あり子なしキャリアウーマンが一人、未婚キャリアウーマンが一人、離婚して仕事をしながら一人っ子を子育て中がひとり、未婚で恋人ありが一人だから、子供があまり出てこず、日本の少子化傾向を象徴する映画、というひねくれた見方もできなくはない。 しかし4人のそれぞれの悩みや健闘ぶりはそれなりに面白く、見ごたえのある映画になっている。 必ずしも女性映画ではなく、男性映画ファンでも楽しめます。

60.「ポエトリー アグネスの詩」 5/26、シネ・ウインド。 評価★★★ 韓国映画、イ・チャンドン監督作品。 祖母と孫の中学生男子が二人で暮らしている。 しかし孫が中学でいじめに関わり、いじめられた女の子が自殺する事件になってしまった。 犠牲者の家族に示談で済ますには、いじめに関わった数人の親が大金を用意して支払うしかないが、祖母には蓄えがなかった。 そこで・・・・・というのが一応の筋書きだけど、この映画は筋書き重視、或いはテーマ性重視ではなく、すでに記憶力もあやしくなっている祖母が、さまざまな問題をかかえながらもそれなりに生きていく様子を、あわてず騒がず淡々とした調子で描写していくところに特徴がある。 しかし、あっ、というシーンもあって、単に日常性に寄り添う作りとはなっていないところがミソか。 ヒロインを演じる老女優 (ユン・ジョンヒ) も結構かわいい。 

59.「ドライヴ」 5/25、UCI新潟。 評価★★★ アメリカ映画、ニコラス・ウィンディング・レフン監督作品。 小さな自動車整備工場に勤める青年 (ライアン・コズリング)。 抜群の運転テクニックを活かして時々犯罪者を助けるアルバイトもやっている。 同じアパートに住む若い子連れ女 (キャリー・マリガン) と知り合い、一緒に出かけたりするようになるが、彼女には刑務所に入っている夫がいた。 やがて夫は出所してくるが、昔の悪い仲間に借金があり、再度犯罪行為に手を染めてしまう。 そしてその際に運転手を務めた青年も巻き込まれて・・・・・。 淡々とした作りで、余計な説明はせず、ストイックに生きる青年と、彼に気があるのかないのかよく分からない子連れ女の交流と、青年が巻き込まれていく犯罪者たちのコネクションを描いている。 青年や女の気持ちをあからさまにせずに、不明なところも残したまま描く手法がこの映画には合っていて、それなりに見ごたえはある作品となっていると思う。

58.「ダーク・シャドウ」 5/23、UCI新潟。 評価★★☆ アメリカ映画、ティム・バートン監督作品。 18世紀、英国から新天地のアメリカに渡り漁業会社を興して成功した家族の御曹司が、彼に恋をしながら思いを遂げられなかった下層階級出身の女=魔女によってヴァンパイアにされてしまい、棺に閉じ込められてしまう。 200年後、1970年代のアメリカに甦ったこのヴァンパイア (ジョニー・デップ) が、対抗する漁業会社の社長に納まっている魔女 (エヴァ・グリーン) と闘いながら、自らの末裔が経営する漁業会社を守ろうとする・・・・というようなお話。 そこに、主人公が18世紀に愛し合い、魔女により殺され、しかし20世紀に別の女性として甦り、主人公の末裔の家に家庭教師として雇われる若い女 (ベラ・ヒースコート) が絡む。 うーん・・・・最初のあたりはワクワクしながら見ていたんだが、どうも後半の脚本がまずく、面白くない。 ヴァンパイアや魔女の能力設定だとか、そういうところをもっとちゃんとやらないとダメなんじゃないか。 行き当たりばったりの筋書きや展開にはがっかりしてしまう。 唯一注目すべきは、デップの恋人役で出てくるベラ・ヒースコート。 私もこの作品で初めて見たけれど、ちょっと他に類似した女優が思い浮かばない美形。 今後が注目される。

57.「バッド・ティーチャー」 5/20、WMC新潟。 評価★★ アメリカ映画、ジェイク・カスダン監督作品。 三十路を迎えた女 (キャメロン・ディアス) が、玉の輿結婚をもくろんで失敗し、中学の教員をやむを得ず続けるが、新任の男性教員が裕福な家庭のお坊ちゃんであることに気づき、接近を図るものの・・・・。 うーん・・・・教師もののコメディということで、バッドな教育をするのに生徒たちはかえってグッドに成長してしまうというような話なのかと思っていたら、そうじゃなく、三十路女が結婚相手を見つけるまでの悪あがき (?) のお話なんですね。 教師としてはタイトルどおりバッドそのものだし、そちらの方面での筋書きはかなりいい加減。 バッド・フィルムじゃないかな。

56.「僕等がいた 後篇」 5/18、UCI新潟。 評価★★★ 三木孝浩監督作品。 前篇を受けて、矢野 (生田斗真) は東京に出て母と暮らし、釧路に残った七美 (吉高由里子) とはメールで愛情を確かめ合う。 しかしやがて矢野からのメールが途絶える。 矢野が思いがけない運命が待ち受けていた。 やがて七美も上京するが、ふたりが会う機会はない。 そして就職してから・・・・。 というふうにわりに筋書きは面白くできている。 あり得るかどうかはともかく、まあ楽しんで見られます。 ただし最後近くになるとちょっと展開がゆるくなり、或いはダレてきて、お決まりの結末はかなり強引につけたという感じかな。 女優陣では、ヒロインの吉高由里子も悪くないが、後篇から登場する比嘉愛未がなかなかチャーミング。 それと矢野の母親役の麻生祐未。 もともと美人な女優は中年になっても美人ですね。

55.「名探偵コナン 11人目のストライカー」 5/12、WMC新潟。 評価★★★ 静野孔文監督作品。 このシリーズの最新作。 今回のキーワードはサッカー。 サッカーの有名選手が登場し、ご本人が声を入れているそうだが、サッカーに趣味のない私は三浦和良しか知りませんでした。 前回作は推理モノとしては物足りず、アクション・アニメみたいになってしまっていたけど、今回は推理モノとしてはまあまあか。 最初のあたりでサッカーと爆破シーンが交錯するあたりはやや分かりにくいけど、あとは筋書きが自然に展開していく。 ちょっとほろりとさせる面もあって、ほどほどよくできているのではないかと思う。 

54.「KOTOKO」 5/11、シネ・ウインド。 評価★★ 塚本晋也監督作品。 精神のバランスを崩した若い女性の、子育てや男との付き合いをめぐる葛藤を描いている。 ただし、最後にちょっとした仕掛けあり。 うーん、塚本監督を私はわりに買っているのだが、今回はちょっと、という気がした。 同じようなシーンの繰り返しだし、精神を病んだ女性の妄想というより、ありきたりな想像力が生んだ平板な、カッコつきの「衝撃作」じゃないかなあ。 ヒロインを演じるのはCoccoという歌手 (私は全然知らなかった) で、塚本監督の女の趣味は私と合うとこれまでは思っていたんだが(黒澤あすかや、Hitomiなど)、例外もあるな、と感じました(笑)。

53.「バルバラ (Barbara、日本未公開)」 5/5、City Kinos (ミュンヘン)。 評価★★☆ ドイツ映画、Christian Petzold監督作品。 1980年の東ドイツを舞台に、訳あって首都から田舎へ飛ばされた女医が、監視を受けながら職務を遂行していくうちに、入院している子供たちと心を通わせ、また自分を監視している男性医師のそれなりの誠実さや人間性に理解を持ち、さらには東ドイツから北海を経て (西側である) デンマークに逃亡しようとする患者の計画に協力する、というお話。 監督はもともと東ドイツから西側に逃亡した人間の息子であり、こうした内容の映画を作る意思は持ち合わせていたが、たまたま著名なオーストリー作家ヘルマン・ブロッホ (日本では長篇 『ウェルギリウスの死』 などで知られている) の短篇小説 『バルバラ』 を読み、この小説が1920年代の共産主義国家内で抵抗者として活動しつつも男性医師に恋をする女性を描いているところから、設定を1980年のドイツに移して映画化したのだそうである。 ただし、この映画は映像よりもセリフに筋書きの進行説明を任せている部分が大きいので、見ていて分かりにくかった。 東ドイツ内で女医が逃亡計画に協力しているところは理解できたけど、細かいところは聞き取れず、この映画ではその細かいところが大事なのである。 ここでの筋書き説明はあとでドイツ語版ウィキペディアを読んで部分的に補足したものである。 ただ、「今なぜ東ドイツの1980年なのか」 と言いたくなってしまう映画でもあり、あまり評価する気にはなれない。

 追記: その後、 「バルバラ」 は2012年のベルリン国際映画祭で銀熊賞 (監督賞) を受賞したこともあり、日本にも輸入されて 「東ベルリンから来た女」 の邦題で2013年1月より、ル・シネマほかで上映されることが決定した。

52.「王妃と侍医 (Die Königin und der Leibarzt、日本未公開)」 5/4、City Kinos (ミュンヘン)。 評価★★★ デンマーク・スウェーデン・チェコ・ドイツ合作、Nikolai Arcel監督作品。 18世紀のデンマークを舞台に、若い君主クリスティアン7世の侍医となった男 (マッツ・ミケルセン、「007/カジノ・ロワイヤル」〈2006年〉でジェームズ・ボンド〔ダニエル・クレイグ〕の敵役をやって世界的に知られるようになった) が、啓蒙主義時代の風潮をバックに、王に対しては旧弊を排し新風を吹きこむ政策を提言して実行に移させ、他方では若く美しい王妃 (Alicia Vikander) と姦通して子供までもうけるが、宮廷内の保守派から反発され、姦通も露見して、死刑台の露と消えるまでを描いている。 宮廷内が主たる舞台になっている映画チックな作品で、セリフはドイツ語だったので細かいところは分からなかったけれど大筋はつかめて、まあまあ楽しめた。 若い王妃は不倫の果実である娘とともに幽閉され、王との間の実子である皇太子とは引き離されてしまうが、彼女の死後、皇太子とその異父妹が再会を果たすところで映画は終わっている。 

 追記: その後、「王妃と侍医」 は日本でも2013年4月末よりル・シネマなどで 「ロイヤル・アフェア 愛と欲望の王宮」 の邦題で上映されることが決定した。

51.「ルート・アイリッシュ」 4/25、銀座テアトル・シネマ。 評価★★☆ 英・仏・ベルギー・西・伊合作、ケン・ローチ監督作品。 英国の民間企業がイラク戦争で軍事行為を受け持っていたという実態を描いている。 イラクで殺された男の親友が、男の妻とともに真相を追うというミステリーじみた筋書きだが、私の見るところ、それがかえって素材をありきたりで芸がないものに堕落せしめている。 むしろドキュメンタリーとして映画を作ったほうが訴える力が強くなったのではなかろうか。 特に、殺された男と真相を追う主人公との、ほとんど同性愛に近い友情だとか、その主人公が故人の妻と反発しあいながら真相を追っていくうちに関係してしまうとか、そういうところが凡庸な映画らしさにしかつながっていないのである。 「戦争の民営化」 は、アメリカについては堤未果の 『貧困大国アメリカ』 で指摘され日本でも知られるようになったが、英国についてはあまり情報がなく――少なくとも私は知らなかった――興味深いテーマであるだけに、残念。 

50.「アンネの追憶」 4/25、有楽町スバル座。 評価★★★ イタリア映画、アルベルト・ネグリン監督作品。 アンネ・フランクとその家族が何者かの密告によりアムステルダムの隠れ家から連行され、強制収容所で過ごしつつ、やがて死を迎えるまでを描いている。 一家の中で最後まで生き残った父が娘の意思を継ぐ形で戦後語り部としての仕事をするところや、アンネの親友がやはり収容所に入れられながら生き延びていき、戦後は娘時代に夢想したように孫に囲まれて長生きしたという事実もテロップの形ながら示されている。 悪い映画ではないが、筋書きや表現が正攻法一色でストレートに過ぎ、もうちょっとひねったほうが面白い作品になったのではないか、という気持ちも残った。 作中、戦後の子供たちを相手にアンネの父親は体験を語るのだが、この映画自体も子供向けなのかなあ、という印象がないではない。

49.「僕たちのバイシクル・ロード」 4/21、シネ・ウインド。 評価★★★☆ 英国映画。 英国の青年二人が地球上のすべての大陸を自転車で旅しようとする実話を、彼らが撮った映像をメインにして映画化した作品。 主演と監督と撮影は、その二人の青年ジェイミー・マッケンジーとベン・ウィルソンである。 ヨーロッパからユーラシア大陸を東へ横断し、シンガポールから船でオーストラリアへ、そして南極に上陸した後、南米から北米大陸へ渡り、アフリカを経てヨーロッパに戻るまで約3年を要している。 途中の様々な景観や人との出会い、また病気になったり、危険な場所を通ったりと、見どころは多い。 誰もがこんな旅を体験できるわけではないが、見ると自分でも旅をしたくなること必定の映画である。 なお中学生以下は無料で見られます。

48.「灼熱の魂」 4/14、シネ・ウインド。 評価★★★★ カナダ・フランス合作、ドゥニ・ヴィルヌーヴ監督作品。 中東系カナダ人女性が亡くなり、双子である息子シモンと娘ジャンヌに遺言を残すところから話は始まる。 遺言は、双子に父と兄を探すよう求めていた。 遺言の求めに懐疑的なシモンを残して、ジャンヌは母の故郷であるレバノンに旅立つ。 そこから、思いもかけない母の前半生が徐々に明らかになってくる。 そして問題の父と兄は・・・・・。 ミステリー仕立ての映画だが、問題はレバノン内部の宗教や因習がらみの複雑な事情とそこに生じた悲劇である。 レバノン内戦が絡んでいるので日本人にはやや分かりにくいところもあるが、国内が宗教上の対立から二分され、残酷な殺戮や刑罰、そして戦いの中で街が荒廃している様子は言い知れぬ重みをこの映画に与えている。 パンフが売り切れだったのが残念だが、一見に値する映画で、お薦め。

47.「アーティスト」 4/14、UCI新潟。 評価★★★ フランス映画 (ただし英語)、ミシェル・アサナヴィシウス監督作品。 今年のアカデミー賞作品賞を取った映画。 モノクロ・スタンダードサイズに加えて、原則的に無声、と、意図的に古い形式によっている。 内容も、無声映画時代に大人気を博した男優が、トーキーの時代になじめず零落していくのに対して、その男優に憧れて映画界に入った若い娘が新しいトーキー映画で人気を博し、大女優にのし上がっていく過程を描いている。 しかし彼女は、いわば恩人である男優が忘れられず、何とか零落から救おうとして・・・という筋書き。 まあ悪くはないし見ていて素直に感動できる面もあるけれど、形式の古めかしさが内容の古めかしさにもつながっていて、何でこれでアカデミー賞なのかなあ、という気がしないでもない。 空疎な3D作品よりマシかも知れないけど、だからといってモノクロや無声ならいいというわけでもなかろうに。

46.「僕達急行 A列車で行こう」 4/13、Tジョイ新潟万代。 評価★★★ 森田芳光監督の遺作となった映画。 鉄道オタクの青年2人 (松山ケンイチ、瑛太) を主人公にしている。 リアリズムよりは遊び心をメインにした映画であり、筋書きはちょっとメルヘンチックなところがある。 また主たる登場人物がみな列車の愛称を苗字にしているなど、とにかく鉄道オタクには楽しめるようにできている。 「こんな会社はありえない」 などとウルサイことは言わないで、遊び心を楽しむのに徹すべき作品。

45.「ブリューゲルの動く絵」 4/7、シネ・ウインド。 評価★★★ ポーランド・スウェーデン合作、レフ・マイェフスキ監督作品。 有名な画家のブリューゲルの作品をもとに、その絵がどのように描かれたか、また当時の農民の暮らしや風俗などを映画にしたもの。 映像は意識的にブリューゲルの作品に合わせて作られている。 キリストの受難を描いた絵が主たる材料になっているが、ブリューゲルの絵画では――彼の絵にはよくあることだが――たくさんの人物が出てきていて、肝心のイエスや受難がよくよく見ないと分からないようにできている。 この映画では大切なことに人々は目を向けないとブリューゲル自身に語らせているのだが、はたしてそれがこの映画の真意なのか、受け取り方が微妙な作品だと思う。

44.「ヘルプ 〜心がつなぐストーリー〜」 4/5、UCI新潟。 評価★★★★ アメリカ映画、テイト・テイラー監督作品。 1960年代のアメリカ南部を舞台に、黒人差別が横行する様子と、そういう実態を本にして出版することにより現状を打破しようと考えるジャーナリスト志望の若い白人女性、そして本作りに協力する黒人のメイドたちを描いている。 リンチだとか虐殺などの重い黒人差別ではなく、日常的にメイドとして使われている黒人女性に対する差別や白人女性たちの日ごろの挙動などを、大声で叫ばずにゆったりと静かに提示していく作風がなかなか好ましい。 差別する側である白人上流婦人たちの暮らしぶりなども、それなりに興味深い。

43.「サラの鍵」 4/2、UCI新潟。 評価★★★★☆   フランス映画、ジル・パケ=ブランネール監督作品。 第二次大戦期のフランス。 ナチス・ドイツに敗れたフランス側は迎合するように自らユダヤ人狩りを行った。 この事件についてはすでに映画 『黄色い星の子供たち』 が作られているが、本作品はこの事件そのものにとどまらず、事件が広い領域にわたって及ぼした様々な影響を描いているところに特徴がある。 或るユダヤ人家族が強制的に連れ去られるときに幼い弟を鍵のかかる戸棚の中に隠した少女を主人公に、彼女が弟を戸棚から出すために強制収容所から脱出するまで、そしてその後の経緯を描きつつも、このユダヤ人狩りによって空いた住宅を取得したフランス人家族の家族史や、主人公の少女がその後どうなったかをも含めて、大戦期のユダヤ人狩りが予想外に広く様々な人々の運命を動かしてゆく過程が明らかにされている。 見ごたえのある充実した映画だが、新潟ではユナイテッドの単独上映であるのに加えて上映期間が短く、4/6までしかやっていない。 映画ファンはお見逃しなく!

42.「戦火の馬」 3/30、WMC新潟。 評価★★★☆ アメリカ映画、スティーヴン・スピルバーグ監督作品。 第一次大戦期の英国。 貧しい小作農の少年は父がセリで入手した馬を可愛がっていたが、戦争が始まって馬が大量に必要になったのと、家が経済的に困窮していたことから、馬を売らなくてはならなくなる。 売られた馬は騎馬隊で将校の愛馬となるが、第一次大戦ではそれ以前の戦争とは違い機関銃が浸透していたためすでに騎馬隊による戦いは時代遅れになっていた。 馬はやがて大砲などの重い武器類を運ぶ役目に転用されるが、脱走兵に利用されたのを機会に軍から離れて・・・・。 名馬がたどる数奇な運命、というような筋書き。 そこそこ面白いし映像も迫力に富んでいる。 戦争になる前の、英国の小作農の暮らしぶりも興味深い。

41.「昼下がり、ローマの恋」 3/29、シネ・ウインド。 評価★★★ イタリア映画、ジョヴァンニ・ヴェロネージ監督作品。 3話のオムニバス形式。 第1話では婚約者をローマに残して辺鄙な町に出張した若い弁護士の男がその町で人妻に誘われて・・・・・というお話。 第2話は、中年後期の人気男性キャスターが精神科医だという若い女に誘われるのだが、その女には奇行が目立ち・・・・。 第3話ではアメリカの大学を退職した老教授 (ロバート・デ・ニーロ) がローマに転居し、そこの友人の娘 (モニカ・ベルッチ) の悩み事相談に乗っているうちに仲良くなって・・・・・。 どの話も、男が女と仲良くなるお話で、こういうふうに人生が進むと楽しくていいんだけどな (ただし第2話はちょっとコワい)、と思わせる映画です、はい。

40.「サルベージ・マイス」 3/29、Tジョイ新潟万代。 評価★★☆ 田崎竜太監督作品。 広島市が舞台になっている。 個人がたいせつにしていながらなぜか失くしてしまった美術品を元の持ち主に返してあげることを使命とする美少女を主人公にした少女アクション映画。 売りは美少女二人 (谷村美月、長野じゅりあ) が、大の男たちをばったばったと倒すところで、そういう意味ではまあまあよくできていると思う。 ただ、美術品が悪の一味に奪われて、というなら分かるのだけれど、なぜか公共の美術館に置かれていたりするので、本来の持ち主に返すというその意味がよく伝わってこないのが難点。 あと、最後に西洋人の大ボスと闘うところは、もう少し時間と手間をかけてほしかったかな。

39.「マリリン 7日間の恋」 3/26、UCI新潟。 評価★★★★ 米英合作、サイモン・カーティス監督作品。 有名なアメリカ女優であるマリリン・モンローが1956年に英国の名優ローレンス・オリヴィエと一緒に映画を撮影するために英国を訪れた。 この映画はそのときの撮影の模様をたどりながら、同時に第三助監督 (つまり使い走り) だった英国青年とモンローが一時期仲良くなるという秘めた実話を描き出している。 邦題や原題の"MY WEEK WITH MARILYN"からすると青年とモンローの恋愛模様が中心かと思うが、この映画で大事なのはむしろ、マリリン・モンローという女優の本質が英国俳優たちとの、必ずしもすんなりいかない関係の中で明らかにされてくるというところなのだ。 なかなか進まない撮影など、この辺の事情がよく映像化されているし、英国俳優側の反応を含めてかなり面白い映画に仕上がっている。 マリリン・モンローを演じたミシェル・ウィリアムズも好演。 モンローの魅力、そして人間としての弱さや悩みをよく表現している。 映画を見慣れた人にお薦めできる佳作である。

38.「ゴモラ」 3/22、シネ・ウインド。 評価★☆  イタリア映画、マッテオ・ガッローネ監督作品。 イタリアの犯罪組織カモッラを、ドキュメンタリーのような――本物のドキュメンタリーではない――手法で映画化した、という触れ込みの作品で、カンヌ国際映画祭で審査員特別賞を受賞した。 だけど、見ていてもあんまり面白みを感じない。 あちらのドキュメンタリーというのは日本と違って説明だとか解説を付けないやり方が多く、この映画もそういう手法で作られており、見ていても何が何だかよく分からないのだ。 したがってひどく退屈なのである。 もっと親切に作ってほしい。

37.「僕等がいた 前篇」 3/20、WMC新潟。 評価★★★ 三木孝浩監督作品。 原作はマンガだそうだが、そちらは未読。 釧路を舞台に、高校生の男女 (生田斗真、吉高由里子) の恋愛を描いている。 女の子のほうはまあ普通の家庭の普通の子だけど、男のほうは成績抜群でイケメンなので女子に人気があるけど家庭的には問題ありで、なおかつ前の恋愛を引きずっているという設定。 それで言うと、まあ普通の青春恋愛劇じゃないかな、という印象だった。 これは前篇で、このあとの後篇がどうなっていくのかよく分からないが、総合的な評価は後篇を見てからということで。 

36.「ヒューゴの不思議な発明」 3/15、WMC新潟南。 評価★★☆ アメリカ映画、マーティン・スコセッシ監督作品。 舞台はパリで、時代設定はたぶん両大戦間。 父を亡くし、パリ駅の大時計室に住む叔父に引き取られたヒューゴは、父がむかし買い取った壊れたロボットの修理に熱を上げている。 やがてロボットの修理が完成すると、ロボットは手を動かして図面を作成する。 その図とは・・・・・。 というような筋書きなんだけど、率直に言って筋書きが練れていない。 大時計室の機械仕掛けや修理の対象であるロボットは少し前の時代のメカ好き少年ヒューゴに似合うのだけれど、ところが後半の筋書きはロボットでも機械でもなく、映画愛の話になってしまう。 そもそも、ヒューゴは何も発明などしていないのである。 原題は単に 「ヒューゴ」 なんだけどね。 だから邦題をつけた奴は懺悔しなさい! なお、私は2D版で見たけれど、機械の動く様子などを楽しみたい人は3D版のほうがいいかも。 しかし、繰り返すが、筋書き的には期待を裏切る映画である。

35.「シャーロック・ホームズ シャドウゲーム」 3/10、UCI新潟。 評価★★★ アメリカ映画、ガイ・リッチー監督作品。 先に作られたホームズ映画の第二弾。 前回と同じく、推理モノと言うよりはアクション映画になっている。 今回はワトソンの結婚相手や、ホームズの兄のマイクロフト、果てはモリアーティ教授まで出てきてサービス満点。 映画としてはそれなりに面白いが、私のようにホームズ映画は推理に主眼を置かなくては、と考える頑迷固陋な人間にとってはいささかヨコシマな感じである。 こういう映画ならわざわざホームズだのワトソンだのといった名前を出さなくてもいいんじゃないのかなあ。

34.「ヒマラヤ 運命の山」 3/9、シネ・ウインド。 評価★★★☆ ドイツ映画、ヨゼフ・フィルスマイアー監督作品。 原題は「ナンガ・パルバット」で、ヒマラヤの高峰の名。 1970年にこの山に未踏のルートから挑んだ登山隊の模様を描いている。 登山シーンや、登山家同士の人間模様も悪くないが、この映画の見どころはやはり山そのものであろう。 そして現地人の表情もそれなりに捉えられていて、ヒマラヤ登山がヨーロッパの登山家だけではなく、シェルパを初めとする現地人によっても担われているという当たり前の事実を痛感するのである。 そういう意味で、単なる登山映画に留まらないところを評価すべきであろう。

33.「見えないほどの遠くの空を」 3/8、シネ・ウインド。 評価★★★   榎本憲男監督作品。 大学の映画サークルに所属する若者のお話。 サークルで映画作りをしていて、唯一の女子部員にヒロインの役を依頼していたが、脚本を書いた学生と彼女が意見が合わず、もめていたところ、彼女は事故で死んでしまう。 映画作りも中断してしまうが、脚本を書いた学生はほどなく、彼女とそっくりの女性に出会う・・・・。 シロウトっぽい映画で、まあお金をかけていないからしかたがないんだろけど、筋書きは途中から 「えっ?」 という方向に行く。 この辺をどう受け取るかは微妙なところだけど、最終的にはうまく着地させたのではないだろうか。 ヒロインの岡本奈月がなかなかチャーミングだ。 若い人にはジンとくる作品かも。

32.「江戸川乱歩の陰獣」 3/4、神保町シアター。 評価★★★   加藤泰監督作品、1977年。 東京の映画館にかかっていたので、ずいぶん久しぶりに (たぶん20年ぶりくらいに) 見てみた。 江戸川乱歩の小説 『陰獣』 をもとにした映画。 大正期の東京を舞台に、本格推理作家 (あおい輝彦) が、謎の変格推理作家・大江春泥に敵愾心を燃やすなか、たまたま美しい人妻 (香川美子) と知り合って、かつての恋人に脅迫されて困っているという相談に応じているうちに、殺人事件が・・・・というような筋書き。 変格推理作家とは原作者の乱歩自身を暗示しているところがあって、実際に作中で乱歩の 『パノラマ島奇談』 を連想させる作品をもとにした芝居が演じられるのも面白い。 乱歩ものの映画化作品としてはまあまあ悪くない出来だと思う。

31.「ヤング≒アダルト」 3/4、TOHOシネマズ・シャンテ(日比谷)。 評価★★☆ アメリカ映画、ジェイソン・ライトマン監督作品。 田舎町から都市に出て作家となった女性 (シャーリーズ・セロン)。 しかし作家と言ってもゴーストライターで、一時期ヒットを飛ばしたもののブームは終わりかけており、バツイチで年齢も37と崖っぷち。 そこに、むかし付き合っていて今は別の女性と結婚した男から、赤ん坊が生まれたというメールが入る。 彼とヨリを戻そう、と不意に決心したヒロインは、入念にお化粧して愛車に乗り故郷の田舎町へ向かうのだが・・・・。 崖っぷちヒロインが思い込みでイタい行動に走る様が面白い、はずの映画なんだろうけど、あんまり笑えないし、他方、彼女を迎える田舎町の住民たちも、米国の田舎者ってこんなふうなのかもしれないが、変にお互い親密でプライヴァシーもないし、共感できない。 かろうじて、ヒロインの同級生でむかしイジメにあって身体に障害が残る男が、ヒロインの過去と現在に理解を示して、まともさを見せているのが救いか。 しかし全体の印象はイマイチである。

30.「人生はビギナーズ」 3/4、TOHOシネマズ・シャンテ(日比谷)。 評価★★ アメリカ映画、マイク・ミルズ監督作品。 老いた父を看護し看取った男 (ユアン・マクレガー) が、父の生き方を回想しながら自分の今後をも模索するというお話。 父は結婚して一児 (つまり主人公) をもうけたものの、実はゲイで、老いて妻に先立たれてからそれを告白し、そして男友達を作って自分なりの老後を楽しんだ。 ・・・・・最近ゲイの映画が多いなと思うんだが、この映画はどうも焦点が定まっていない。 主役の影が薄く、といってその父が主役なのかというと、そこまではいっていない。  主役にはフランスから来た恋人 (メラニー・ロラン) もできる。 だけどその関係が何となくだらだらと描かれていて、彼と彼女にはそれぞれ問題があるらしいのだが、そこがどうもはっきりしない。 父を演じたクリストファー・ブラマーがアカデミー賞助演男優賞を受賞したようだけど、作品の出来は芳しからずである。

29.「J・エドガー」 3/3、丸の内ピカデリー。 評価★★★★ アメリカ映画、クリント・イーストウッド監督作品。 アメリカFBIの長官として何代もの大統領に絶大な影響力を持った実在の人物J・エドガー・フーバーの半生を描いた映画。 州の分権主義が強いアメリカでは、州と州にまたがる犯罪を調査する警察の構築や権限強化、さらには科学的な捜査法の確立などはようやく二十世紀になって進められた。 多少強引さを伴いつつ、それらを推し進めたエドガーを、ブルーノ・ディカプリオが演じている。 話は、功なり名とげたエドガーが、作家を雇って自伝を口述しつつ過去を振りかえる、という手法で展開される。 公的な任務だけではなく、母との関係など私的な側面をはじめ、彼の右腕となった男性との関係や、長年秘書を務めた女性との関係にも光が当てられる。 そして年代が交錯するなかで、作家に生涯を口述するエドガーの虚栄も暴かれてゆく。 この辺の手の込んだ進行は、イーストウッド監督の円熟ぶりを示すものであろう。 主演のディカプリオも、様々な年齢の主役を好演している。 また、アメリカの歴史の思わぬ一面がうかがわれるところも面白く、例えばF・D・ルーズヴェルト大統領夫人のエレノアが不倫行為を働いていた、なんて話も出てくる。 新潟でも早く上映してほしいものだ。

28.「汽車はふたたび故郷へ」 3/3、岩波ホール(東京・神保町) 評価★★☆ フランス・グルジア合作、オタール・イオセリアーニ監督作品。 監督の自伝的な作品、という触れ込みの映画なんだけど。 かつてソ連の一共和国だったグルジアに生まれ育ち、やがて映画監督になるが、検閲で思うように映画が作れないためフランスに移住する。 しかしフランスでも商業主義の口出しなどがあって、やはり思うように映画が作れない。 結局彼はふたたび故郷の土を踏み・・・・・。 というような筋書きらしいのだが、実は映画を見ていてそういう筋書きは必ずしもはっきりとは分からない。 子供時代の思い出はともかくとして、その後の人生がかなり韜晦してというか、リアリズムをハズして語られているので、「ソ連の思想統制もケシカランが、フランスの商業主義だとか自称映画人の介入もケシカラン」 というふうに憤りたい人には向かない。 人魚(?)が出てきたりして、なんかよく分からないけど面白いと思える部分もあるので、期待せずに見たほうが楽しめそう。

27.「渇き」 3/2、神保町シアター。 評価★★★ 島耕二監督作品、1958年作。 公務員で課長の夫 (佐分利信) を持つ人妻 (山本富士子) が、夫との冷え切った仲に飽き足らず、年下の学生 (川崎敬三) の求愛に応えてしまい、やがて妊娠して・・・・という不倫ドラマ。 佐分利信の横柄な夫ぶりと、山本富士子の美しい人妻ぶりが見もの。 昭和33年の作だけど、東京に一軒家を構える課長の家にもまだテレビはない。 ただし女中は一人いる。 また学生が、父が会社重役である女友達とのコネを利用して就職活動をしているなど、当時の世相もうかがえる。

26.「執炎」 3/2、神保町シアター。 評価★★★☆ 蔵原惟繕監督作品、1964年作。 浜辺の網元の息子 (伊丹一三) と山間の平家の落ち武者部落の娘 (浅丘ルリ子) が恋に陥り結婚するが、やがて戦争で引き裂かれるというお話。 この映画で評価すべきは、まずすぐれた映像である。 モノクロながらきわめて優れたカメラワークで、人々の暮らしや恋する男女を魅力的に生き生きと捉えている。 そして男女二人の恋物語は、戦前戦中の日本の男女というより、御伽噺の世界の出来事のように、どこか現実離れした美しさとはかなさをたたえており、そこがこの映画にどこか超越的な魅力を付与していると言えるだろう。 地上にはかないながら天国的な場所を実現した二人の物語。

25.「ミラノ、愛に生きる」 3/1、シネマ・ジャック&ベティ(横浜・黄金町)。 評価★★☆ イタリア映画、ルカ・グァダニーノ監督作品。 ミラノの企業家一族。 創業者である祖父は誕生日のパーティで引退を表明し、長男とその息子 (つまり孫) を後継者に指名する。 孫は意中の女性ができたばかりでこのパーティに彼女を連れてくる。 長男の妻はロシア人だが、今はすっかりイタリアになじんでいる。 一見順調そうな大家族だが、グローバル化のなかで長男が会社を売ろうとし、孫がそれに反対するという確執が生じる。 また、孫は友人が新機軸のレストランを開こうとするのを支援するが、母 (長男の妻) がその男と不倫に走ってしまい・・・・・。 イタリアの裕福な企業家の大家族の揺らぎや、新しい時代の女たちの生き方を描いた映画らしいのだが、見ていて印象が散漫だ。 大家族やその屋敷が舞台なのだけれど、家族ひとりひとりの独自の表情や生活を表現するところまではいかず、他方で不倫に走るロシア出身の嫁が主人公と言うには彼女についての描写が不足していて、作品全体の統一感が損なわれている。 料理だとか、不倫の現場だとか、見せ場はいくつかあるが、全体の統制感に難あり。

24.「ニーチェの馬」 3/1、シネマ・ジャック&ベティ(横浜・黄金町) 評価★★★☆ ハンガリー・フランス・スイス・ドイツ合作、タル・ベーラ監督作品。 人里離れた荒地に住む父と娘、そして一頭の馬。 嵐が続くなか、ある日父が仕事で馬を厩から出そうとしたが馬は動こうとしない。 やむなく自宅にこもって暮らす父と娘。 灯りは油のランプ、食事は毎回ゆでたジャガイモだけ。 それに焼酎を少し飲むだけの暮らし。 手仕事以外に娯楽らしい娯楽もない。 そうしたなか、やがて井戸が枯れてしまう。 水がなくなって果たして父と娘は・・・・・。 父と娘と馬の原始的で単調な暮らしを、単調なままにモノクロで2時間半にわたって描いた映画。 見ていると奇妙に哲学的な気分になってくる。 仕事に出ようとしない馬をも含め、生きることに意味があるのか、と沈んだ気分になる。 なお、邦題は、哲学者ニーチェがイタリア・トリノの町で発狂した直後に、酷使されていた馬に歩み寄って涙を流したという故事が作品冒頭で紹介されていることによっている。 原題は 『トリノの馬』。 ベルリン国際映画祭で銀熊賞 (審査員グランプリ) と国際批評家連盟賞を得た作品だが、よくも悪くも評論家や批評家が評価しそうな映画ではある。 

23.「でんきくらげ」 3/1、神保町シアター。 評価★★☆ 増村保造監督作品、1970年。 結婚せずに自分を生んだ水商売の母およびその愛人である中年男と同居している若い娘 (渥美マリ) が、中年男に犯されてしまい、それを機に母と同様の水商売に手を染め、そこでしたたかに男たちと渡り合っていく、というお話。 当時若さの頂点にあった渥美マリの魅力をどう見せるかがポイントになる作品だけど、彼女の肉感的でありながら男を翻弄するようなイメージがそれなりに出てはいると思う。 ただ、こういう映画はヒロインの肉体をどれだけ魅力的に見せるかということも大事なはずで、そこから見るとやや物足りない面もある。 女が男より母のほうを気にしているという筋書きは、女の或る本質を衝いているかも。 

22.「ヒミズ」 2/27、UCI新潟。 評価★★★ 園子温監督作品。 原作はマンガらしく、そちらを読んだ人からは批判も出ているようだが、私は未読で、あくまで独立した映画作品として見た。 東日本大震災に見舞われた地で、暴力的な父と浮気な母を持つ中学生 (染谷将太) がボート屋を経営しながらも生きにくさを実感する中で、彼に興味を持つ同級生の女の子 (二階堂ふみ) や、大震災で家を失い敷地内に仮宅を作って暮らしている隣人たちと交流しながら、なんとか生きていく、というお話。 園監督と言うとやはり 『冷たい熱帯魚』 だけれど、あそこにも出てきた役者がこちらにも登場しているということもあって、何となく雰囲気が似ているし、暴力性がかなりきつめに表現されている。 半ば過ぎまでは多少のわけの分からなさもあって芸術としては悪くないかなと思えたけれど、終盤はややステレオタイプ的に収斂してしまっている。 でも、大震災後の生き方を模索するお話でもあるから、あんまり絶望的なラストにはできなかったのかも。 主演の若い二人・染谷将太と二階堂ふみが新鮮だ。 

21.「パリの哀愁」 2/24、シネ・ウインド。 評価★★★ 1976年、出目昌伸監督作品。 シネ・ウインドの 「ジュリー・アーリータイムス」 という特集の1本として、下↓の 「世界はボクらを待っている」 などと一緒に上映された。 タイガースが解散したあとの映画で、沢田研二がパリに画学生として留学し、そこでフランス人の人妻 (クローディ-ヌ・オージェ) と恋愛するというお話。 映画としては、事実上の音楽映画である 「世界はボクら・・・」 よりよくできている、と言っても展開はかなり映画チック、つまりご都合主義的だけどね。 相手役のオージェはボンドガールだが、「サンダーボール作戦」 でショーン・コネリーの相手を務めたのは1965年であり、それから10年余りを経て三十台半ばになっているので、体つきはやや太めになり、容姿的に衰えが見えるのはやむを得ない。 もっとも、年上のフランス人人妻とジュリーが愛し合うというコンセプトの映画だから、これでもまあいいのかも知れない。 ちゃんとベッドシーンもあるし、オージェのおっぱいも見られます(笑)。 また、ジュリーには日本人の若い娘 (浅野真弓) が思いを寄せているという設定になっており、オージェが死んだと誤解したジュリーが故郷の金沢に帰ってからは彼女との結婚話も出るのだが、そこにオージェが訪ねてきて・・・・というように、オージェとジュリーの日本でのシーンも盛り込まれている。 最後は、ちょっと意表をつく展開になる。

20.「世界はボクらを待っている」 2/23、シネ・ウインド。 評価★★★ 1968年、和田嘉訓監督作品。 グループサウンズとして当時人気絶頂を誇ったタイガースを主役にしたアイドル映画の一種。 タイガースの中でも女の子たちの憧れの的だったジュリーこと沢田研二と、地球に不時着した宇宙船の王女シルヴィー (久美かおり) の恋愛と別れが主筋で、そこにタイガースの演奏シーンがたくさん盛り込まれている。 というか、どちらかというとタイガースの演奏シーンのほうが充実しており、当時のヒット曲を網羅しているのは勿論、あまり知られていない曲も歌われている。 対してジュリーとシルヴィーの恋愛劇のほうは学芸会的だし、映像もチャチ。 グループサウンズの全盛期は私の中高時代と重なっており、私もこういう映画が作られたことは知っていたが、見たのは今回が初めてである。 当時、ジュリーの相手役の久美かおりは雑誌のグラビアで見ただけで、そのときは 「きれいなお姉さん」 という感じだったけど(彼女は私より3歳年上)、今回スクリーン上で見ると、鼻がぼてっとしていて、さほど魅力的とは思えなかった。 意外だったのは、松本めぐみが出ていること。 彼女は当時、松下電器がスポンサーの人気テレビ番組 「ズバリ当てまショー」 のアシスタントとして知られ、のちに加山雄三と結婚・引退した。  それから、今回改めて思ったけど、タイガースのメンバー、ミリタリー・ルックが似合ってますね。 戦後の平和主義ニッポンではミリタリー・ルックを問題視する声もあったと記憶するけど、カッコいいのは否定しようがない。 なお、私が見に行った回は私以外はオバサンばっかりで、終わると拍手が起こりました。

19.「メランコリア」 2/23、Tジョイ新潟万代。 評価★★★ デンマーク・スウェーデン・仏・独・伊合作、ラース・フォン・トリアー監督作品。 惑星が地球と衝突するという終末論的なお話。 最初、ワーグナーの 「トリスタンとイゾルデ」 の音楽をバックにセリフのない映像が流され、そのあと2部構成で物語が展開されるが、物語自体は、特に婚礼を描く第1部が分かりにくく、分かろうとせずにイメージ優先で見ていたほうがよさそう。 シャルロット・ゲンズブールとキルスティン・ダンストが姉妹を演じているけど、やせぎすで色気が全然ない前者と、豊満で色気を撒き散らしている後者はどうも姉妹には見えない。 そういうちぐはぐさを含めて面白いと思えるかどうかが、こういうゲージツ的な映画を見る場合の鍵でしょう。 なお、タイトルは地球と衝突する惑星の名。

18.「キツツキと雨」 2/20、WMC新潟南。 評価★★☆   沖田修一監督作品。 山村できこりをして暮らす中年男 (役所広司) が、たまたま山村にロケに来た映画製作者たちと出会い、若くて気弱な監督 (小栗旬) と交流し彼に勇気を与えていく、というお話。 作りは最近の邦画にありがちで、あまりセリフによって個人的な事情や人間関係を明示することはせず、何となく流れていて、いわゆる 「ゆるい」 作品になっているみたい。 だけど、こういう映画って、私は評価しないんですよね。 だいたい、作中の映画がゾンビ映画なんだけど、いかにもおざなりで、こんな映画を作っていたら監督が嫌になるのも当たり前じゃないか、それを無理に励ます必要なんかないんじゃないか、と思えてくるのです。 といっておふざけをメインにした笑劇というには足りないしね。 こんな映画を評価していたら、邦画はますますダメになるばかりじゃないかなあ。

17.「ものすごくうるさくて、ありえないほど近い」 2/20、WMC新潟。 評価★★☆ アメリカ映画、スティーブン・ダルドリー監督作品。 9・11で父を亡くした少年が、父の遺品の中から鍵を発見し、その鍵で開く鍵穴を求めてNY市内を探索する、という筋がメイン。 ここに、少年と母が住む建物の向かい側に住んでいる祖母と、その同居人の話が絡んでくる。 お話は要するに父を亡くした少年が様々な人々と出会うことで人生の意味を見出し生きる力を回復していく、ということなんだろうけれども、作品に緊張感がないというか、何となくだらだら流れていて、しかも――ネタバレになるので曖昧に書くけど――筋書きが観客の予想を裏切るように展開する。 ここんとこ、私としては疑問。 どこか製作側に計算違いがあるという印象が消えなかった。

16.「ふゆの獣」 2/16、シネ・ウインド。 評価★★☆ 内田伸輝監督作品。 若い男女4人の四角関係を扱った低予算映画。 映像や音声はかなりナマのような、つまり日常的にありそうな感じがよく出ている。 ただし登場人物たちの関係だとか会話、特にメインになる二人の鍵をめぐるダラダラした会話には、あまり説得性を感じなかった。 ヒロイン格のユカコを演じる加藤めぐみがチャーミングなのが救い。 彼女にもう少しメジャーなところからオファーが来るよう期待したい。  

15.「逆転裁判」 2/16、Tジョイ新潟万代。 評価★★★ 三池崇史監督作品。 もとはゲームだったのを映画化したものだそうな。 そのせいか、実写映画だけれど登場人物たちはどこかマンガチックで、あまりリアリズム的に動いたり考えたりはしていない。 そういうものと割り切って見れば、謎自体はそれなりによくできているので、ミステリー映画としては合格点を付けられると思う。 ただし筋書きは原作のゲームとあまり変わりがないらしいので、原作ゲームを知っている人は見なくてもいいかも。

14.「ドラゴン・タトゥーの女」 2/14、UCI新潟。 評価★★★☆ アメリカ映画、デヴィッド・フィンチャー監督作品。 原作はベストセラーの小説で、一度スウェーデンで映画化され、それをアメリカでリメイクしたものだそうだけど、私は原作もスウェーデン版も未読未見。 やや長尺の映画だが、エンタメとしてよくできていて、飽きずに見続けることができる。 もっとも、最初は容疑者も多くて混沌とした謎に見えるけれど、最後のあたりは結構シンプルに解決されていくので、そこに納得するかどうかが評価の分かれ目かもしれない。 それは別にして、スウェーデンの寒そうな景色が雰囲気づくりに貢献しているし、主役のダニエル・クレイグやルーニー・マーラの魅力も十分だから、映画としての満足度は高いと思う。

13.「ALLWAYS 三丁目の夕日 ’64」 2/13、UCI新潟。 評価★★★ 山崎貴監督作品。 シリーズ第3作目で、今回は東京オリンピックがあった1964年 (昭和39年) を舞台にしている。 話のメインになるのは子供や若者の巣立ちである。 六ちゃん (堀北真希) には結婚相手が登場し、淳之介は作家として立つ。 時代風俗としては、鈴木オートがオリンピックを機にカラーテレビを入れているのが目に付く。 あの頃カラーテレビが本格的に売り出されたらしいのだが、私は地方都市育ちのせいか、見たことがなかったなあ。 とはいえ、茶川 (吉岡秀隆) の家ではオリンピックでようやく白黒テレビが入るというのだから、これまた極端。 白黒テレビは地方都市でも昭和35年くらいに一気に普及したと記憶する。 個人的には茶川が実家に帰るとき乗っている気動車の急行列車 (一等車 〔当時はグリーン車という名ではない〕 もつないでいる) がなつかしかった。 あの頃の気動車急行は国鉄の花だったね。 少し気になったのは、医師役の三浦友和に 「これからは・・・・な時代だ」 というような解説的なセリフを吐かせていること。 今から振り返ってなら色々言えるけど、実際に昭和30年代に生きていた人間に未来がそんなにはっきり見えるわけないでしょ。

12.「アジアの純真」 2/10、シネ・ウインド。 評価★ 片嶋一貴監督作品。 ・・・・・この映画、悪質なプロパガンダ映画である。 北朝鮮拉致問題で、拉致被害者やその支援者を戯画化して描き、他方で拉致問題で日本人の対朝鮮感情が悪化していく中で在日朝鮮人の少女が日本人に殺害されるという架空の事件をメインにして、あたかも被害者は在日であり加害者は日本人であるかのごとくに筋書きを展開している。 表現の自由もあるからこういう映画を作るのは勝手だが、まともな映画では断じてない。 こういう映画を持ってくるシネ・ウインドの見識には疑問符が付く。 新潟に来ない優れた映画も多い中、何でこんな駄作を上映しなくてはならないのか。 ウインドには時々、特にマイナーな邦画できわめて質の低い作品が来る。 マイナー作品でも優れている場合もあるけれど、株主であり会員でもある私としては、作品選定にもっと注意を払うよう希望したい。

11.「麒麟の翼」 2/4、UCI新潟。 評価★★★☆ 東野圭吾原作、土井裕泰監督作品。 中年のサラリーマンが何者かに刺されて殺されるという事件を、ふたりの刑事が追うミステリー映画。 ミステリーとしてなかなかよくできている。 派遣だとか、学校のイジメなどの社会問題もそれなりに取り込まれている。 派手なアクションシーンはないが、人間を描いたドラマとしても見ごたえがあり、お金を払って劇場で見て損のない映画だと思う。

10.「グレン・グールド 天才ピアニストの愛と孤独」 1/31、シネ・ウインド。 評価★★★☆ カナダ映画、ミシェル・オゼ+ピーター・レイモント監督作品。 一世を風靡したカナダのピアニスト・グールドを扱ったドキュメンタリー。 グールドを扱ったドキュメンタリー映画は以前にも作られているが、本作は彼の私生活や女性関係などにも踏み込んでいるところが興味深い。 彼はふつうに女性と結婚して家庭生活を送ることができなかったようで、子持ちの人妻と深い仲になり、彼女も子供を連れてグールドのもとに来るのだが、晩年のグールドが薬物中毒もあって奇矯になってくると彼のもとを去り、夫のところに帰る。 私はこういう、その時々で風向きのいい男につくというタイプの女は嫌いなんだが、グールドはその意味では女には恵まれなかったんだろうなあ、と思いました。 映画は、そういう批判意識は排して作られてますけどね。 薬物中毒も、たぶん舞台に立ったりするために習慣になっちゃったんだろうなと。 まあ、こういう私生活だけでなく、演奏シーンもたっぷり盛り込まれており、グールドとの解釈の違いから指揮者のバーンスタインが公演直前に客の前で弁明したというので有名なブラームスの第一ピアノ協奏曲の演奏場面も出てくるので、クラシック・ファンには見逃せない映画と言えるだろう。 

9.「ジョニー・イングリッシュ 気休めの報酬」 1/27、UCI新潟。 評価★★☆ 英国映画、オリバー・バーカー監督作品。 喜劇役者ローワン・アトキンソンが主演で、「007」 や 「ミッション・インポッシブル」 といったスパイ・アクション映画のパロディ。 しかし、あまり笑えなかった。 そもそも、喜劇的なシーンがそう多くないのである。 笑えなくてもパロディとしてよくできていればいいのだが、その辺もどうだろう。 救いは、女性心理学者役で出てくるロザムンド・パイクがチャーミングなこと。 彼女とのキスシーンでは、アトキンソンがうらやましかった(笑)。

8.「赤い靴」 1/25、シネ・ウインド。 評価★★★★ 1948年の英国映画、エメリック・プレスバーガー監督作品。 敏腕のバレエ監督レルモントフが、新人のバレリーナを発掘し、これまた自分が発掘した若い作曲家を採用して新作 『赤い靴』 を製作・上演、大成功を収めるが、バレリーナと作曲家が愛し合うようになって・・・・・という、芸術と生活の相克を描いた作品。 『赤い靴』 の上演シーンがきわめて秀逸で、当時の映画技法を最大限に活かし、舞台だけでは得られない効果を上げている。 また、レルモントフと若い二人の関係には、芸術家同士の確執や嫉妬も見え隠れしており、これまた興味深い。 当時のことで画面サイズはスタンダードだが、非常に見ごたえのある映画だ。 映画ファンは必見。

7.「がんばっぺ フラガール! フクシマに生きる。彼女たちの今」 1/20、WMC新潟南。 評価★★★ 小林正樹監督によるドキュメンタリー。 東日本大震災で東北地方太平洋岸の3県はいずれも大きな被害を受けた。 ここでは、福島県いわき市のリゾート施設スパ・リゾート・ハワイアンズに焦点を当てている。 数年前、映画 『フラガール』 で脚光を浴びたが、施設が破損してフラガールたちも仕事を失い、やむをえず全国行脚の旅に出る。 その中のサブ・リーダーである女性は、原発事故で住めなくなった双葉町の出身であり、彼女の家族は千葉県に一時避難していたが、この映画では最終的にいわき市に家を借りて生活を立て直すことになる。 家族が一時的に双葉町に帰るシーンがあるが、無人になった町では牛やダチョウが闊歩している (ダチョウは、隣りの大熊町が輸入して飼育していたらしい)。 やはり原発事故で避難せざるを得なくなった広野町の住民が、スパ・リゾート・ハワイアンズの無事だったホテル部分を間借りしていた話も出てくる。 しかし、震災の半年後、スパ・リゾート・ハワイアンズは営業を再開し、広野町の住民たちも再度住居を移さざるを得なくなる。 この映画は、そのようにフラガールや原発事故で故郷を離れざるを得なくなった住民たちを丹念に追っている。 そして最後は営業を再開したスパ・リゾート・ハワイアンズでフラガールたちが踊るところで締めくくっている。 ナレーターは、映画 『フラガール』 に主演した蒼井優。 新潟市ではワーナーマイカル・シネマズ新潟南の単独上映だが、私が見に行った金曜夜の回は、私を入れて2人しか客がいなかった。 東日本大震災の与えた影響を知るためにも、多くの新潟市民に見て欲しい映画である。

6.「恋の罪」 1/20、UCI新潟。 評価★★ 園子温監督作品。 R18指定 (つまり、成人映画)。 女性のバラバラ殺人事件を担当した女刑事は、自分も実は不倫にはまっていた。 事件を追ううちに、関係者が自分と似た境遇にあったことが段々明らかになってきて・・・・・。 という筋書きだけ読むと面白そうに思えるかもしれないけど、見ていて疲れました。 いや、おっぱいも陰毛も隠さない女優たちがセックスシーンを熱演しているので、最初は目の保養になっていいなと思いながら鑑賞していたんだけど、筋書きや人物の設定がいい加減と言うか、途方もなくて、説得性に乏しく、セックスシーンも仕舞いには単調に見えてきて、ちょっとこれは、という気になってしまいました。 あと、女優3人 (水野美紀、神楽坂恵、冨樫真) がいずれも私の好みからするとイマイチなのも難。 水野美紀じゃなく水野真紀ならよかったと思うのだが、国会議員夫人にセックスシーンはちょっとアレか・・・・。 それにしても、「恋の罪」 ってタイトルが分からない。 誰も恋なんかしていないのだ。 「セックスの罪」 なら分かりますが。

5.「マイウェイ 12,000キロの真実」 1/18、Tジョイ新潟万代。 評価★★ 韓国映画、カン・ジェギュ監督作品。 戦前、日本に併合されていた時代の朝鮮でマラソンを趣味とする朝鮮と日本の少年が出会ってライバルとして成長し、やがてノモンハン事件で軍人として再会。 二人はソ連の捕虜となったあと今度はソ連軍の一員として戦い、次にナチスドイツの捕虜となって今度はドイツ軍に・・・・・というような運命の変転と、朝鮮人青年と日本人青年の対立と友情を描いている・・・・・ということになっている映画。 だけど、はっきり言ってこれ、駄作ですね。 理由は簡単。 朝鮮人青年は正義、日本人青年は差別的で悪、という図式があまりにも鮮明で、友情もへったくれもないのである。 最後のあたりでどうにか友情みたいになるけれど、とってつけたようで、要するに脚本がお粗末過ぎるのである。 時代考証にも問題が多い。 戦闘シーンはかなり迫力があるが、延々と続くので飽きてくる。 韓国映画は最近質が上がっていると思っていたけど、これは残念ながらダメ。 なお、副題に 「真実」 とあるが (映画の最初でも 「事実にもとづく」 とテロップが出る)、映画のもとになった話はこういう、朝鮮人と日本人の対立と友情っていうようなお話じゃ全然ないので、ミスリーディングであり、問題がある。

4.「エッセンシャル・キリング」 1/13、シネ・ウインド。 評価★★★ ポーランド、ノルウェイ、アイルランド、ハンガリー合作、イエジー・スコリモフスキ監督作品。 アメリカ軍らしき軍隊に追われた男 (ヴィンセント・ギャロ) が必死に逃亡するお話。 といっても、特定の国や政治的背景をもとにした映画というよりは、逃亡そのものをテーマにしているような映画で、男はただひたすら逃げ惑うのである。(ただし、男がイスラム教徒であることは、おりおり見る夢で示されている。) 最初は平原の中に雨などで深くうがたれた狭い峡谷のような場所から始まり、やがて東欧らしい雪の深い景観に移ってゆく。 男は飢え、アリや小さな木の実を食べたり、魚釣り師から獲物を奪ったり、あげくのはてには赤ん坊におっぱいを与えている母親を襲ったりする。 そして最後に、呑み助の夫を送り出してひとり自宅にこもる聾唖者の女を前に意識を失う。 この聾唖者の女を、エマニュエル・セイナー(セニエ) が演じている。 かつて 『フランティック』 で彼女の美しさにしびれた私だが、中年になった彼女とこの映画で再会できてうれしい。 今でもきれいですね。

3.「宇宙人ポール」 1/13、シネ・ウインド。 評価★★★☆ 米英合作、グレッグ・モットーラ監督作品。 英国人の宇宙人オタクな男二人が、アメリカでUFOの聖地とされる名所に観光旅行に行ったところ、本物のエイリアンに出会ってしまい、そのエイリアンが無事に故郷の星に帰れるよう、協力するというお話。 話自体がスピルバーグの『E.T.』のパロディなのだが、そもそもこの宇宙人は第二次世界大戦後まもなくアメリカに不時着したところを捕えられ、スピルバーグが上記の映画を作るときにもアイデア面で協力したということになっているなど、SF映画やその方面の民間信仰が随所にちりばめられていて、エイリアン・オタクならかなり楽しめそう。 あいにく当方はそういうオタクではないので、よく分からないところもあったが、何にしても深刻ぶらず遊びに徹しているところがいい。 出てくる女優も魅力的。

2.「ミケランジェロの暗号」 1/9、UCI新潟。 評価★★★☆ オーストリー映画、ウォルフガング・ムルンバーガー監督作品。 ナチス時代のウィーンが主舞台。 ウィーンで美術商を営んでいるユダヤ人一家。 父の後を継ぐ予定の長男は、父が息子同然に育てた非ユダヤ人の青年と親友のつもりでいた。 しかしオーストリーがナチに支配されると、その青年は一家を裏切ってナチのSS(親衛隊)所属となる。 おりしも、ミケランジェロの知られざる作品をその画商が入手したというニュースが流れ、ナチはヒトラーがムッソリーニと会見する際の手土産にしようとそのミケランジェロ作品を入手しようとする。 しかし本当の隠し場所を知っていたのは画商のみで、しかも彼はナチに拉致された直後に死去していた。 画商が息子に残した言葉に実は隠し場所の暗示が・・・・・。 というような筋書きだが、話はナチ時代のオーストリーで、ユダヤ人の青年と、その友人であったはずの非ユダヤ人青年の憎悪と愛を交錯した関係に焦点が当てられている。 すこしフィクションすぎると思われるところもあるが、そこはまあ、オーストリーは同じドイツ語圏でもドイツほど厳密じゃないからということで、エンタメとしてはそこそこよくできていると言えるだろう。

1.「源氏物語 千年の謎」 1/6、UCI新潟。 評価★★★ 鶴橋康夫監督作品。 言わずと知れた日本の古典を、若い旬な俳優を使って映画化したもの。 源氏を生田斗真が、紫式部を中谷美紀が、藤原道長を東山紀之が、源氏を囲む女たちを真木よう子、田中麗奈、多部未華子、芦名星らが演じている。 何しろ長大な原作の一部を再現したものなので、紫の上などは登場しない。 いろんな女優の咲き乱れるがごとき絢な映像を素直に楽しめばよく、あんまり考えたりつっこんだりしないで見るべき映画じゃないだろうか。 ただ、女としての色っぽさから言うと、源氏を囲む女たちより紫式部の中谷美紀がいちばんだったと思うし、男としては、若い生田斗真より、中年の藤原道長を演じた東山紀之のほうが重みがあってなかなかよかった。

 

 

 

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