スペースオペラとドイツ文学−−または『銀河英雄伝説』とシュトルム

 

 以下は、青木美智子さん(都立大学学生)が書いた文章を、私(三浦)がこのサイト用にアレンジしたものである。

 青木さんやこの文章の由来については後で説明するので、とりあえず読んでみていただきたい。

 19世紀のドイツ文学と、日本人の書いたSFエンターテインメントが関係を持つ、などと言ったら、本当かよと首を傾げる向きも多いだろう。

 しかし、現実の話としてこの両者は結びついているのである。

 田中芳樹の書いたSF小説『銀河英雄伝説』と、19世紀ドイツの写実主義作家シュトルムの代表作『みずうみ』がそうだ。

 『銀河英雄伝説』は1982年にシリーズ第一作が徳間書店より刊行され、正編が全10巻、続編の外伝が4巻に及ぶ長編小説である。

 作家の田中芳樹は学習院大学大学院で明治文学を専攻した人だが、その作品には長ったらしいドイツ人の名前、難解な漢字表記が多く、また挿し絵のないことも特徴となっている。

 それにもかかわらずこの作品は、活字離れが言われて久しい中学・高校・大学生から熱狂的な支持を受け、漫画化、アニメ化、ゲーム化がなされ、シリーズ完結後も読みつがれているのである。

 この『銀河英雄伝説』は西暦2801年に始まり、主人公の青年ラインハルト・フォン・ローエングラムが全宇宙の覇者となり死ぬまでを物語ると同時に、未来の人類がたどる歴史をも描いた一大叙事詩である。

 総勢500人を越す登場人物のほとんどにドイツ人らしき名前がつけられていることも目を惹くし、また「令嬢」にフロイライン、「薔薇の騎士」にローゼンリッター、「自治領主」にランデスヘルなどとルビが振ってあり、ドイツ語が小道具として縦横に利用されている。

 その使われ方が印象的だったため、この作品に熱中した中高生がドイツ語に興味を持ち、大学に進学してからドイツ語を選択するという現象も見られたのである。

 ところで、主人公のラインハルトという名前であるが、ファンの間では当初はナチスドイツのラインハルト・ハイドリヒからとったものだろうという噂がささやかれていた。

 しかし87年にこの作品が映画化された際、作者自身がさる雑誌の対談で、テオドール・シュトルムの『みずうみ』の主人公ラインハルトの名をもらったものである、と明かした。

 この発言を受けて、「シュトルムとは誰なのか?」「『みずうみ』とはどういう作品なのか?」と疑問を抱いたファンは、岩波文庫の『みずうみ』を手にして読んでみたという。

 そしてできればシュトルムのほかの作品も読んでみたいと思ったものの、簡単に入手できる作品集が現在の日本にはないために、シュトルムに関心を抱きながらも先に進めないでいる状況なのだという。

 このように、別の分野からの刺激でドイツ文学への関心が高まることもあるのに、手にしやすいシュトルムの邦訳が『みずうみ』以外にはない、というのは、非常に残念なことである。

 さて、以上の文章は、最初にも紹介した都立大学学生の青木美智子さんが、『日本シュトルム協会会報』第34号(1999年9月)に寄稿したものをベースとしている。

 日本シュトルム協会は、19世紀ドイツの写実主義作家シュトルムに興味を持つ人間が集まって作られた団体で、年間2回の会合、2度の会報発行などの活動を行っている。

 会員は40名ほど。私はその末端に名を連ねる怠惰な会員に過ぎないが、他の会員はいずれも熱心な読者や研究者の方ばかりである。

 大学のドイツ語教員が多いものの、青木さんのような学生、或いは大学院生も会員になっている。

 そして青木さんのような若い会員からは、私のごとき中年男の目の届かない領域を紹介してくれる斬新な投稿があったりするのである。

 この文章は特に注目に値すると思ったので、多くの方々に読んでいただくため、ここに多少アレンジして再録することにした。

 シュトルムの作品は、確かに現在では入手の容易なものというと、岩波文庫と新潮文庫から出ている『みずうみ』くらいしかない。

 あとは、ベネッセコーポレーション(旧・福武書店)の文庫本で『たるの中から生まれた話』が出ている。文庫なので安価。

 それと、シュトルム協会会員の訳した『ある画家の作品』が林道舎から出ている。価格は1650円。

 詩の好きな人は、『シュトルム詩集』が2種類、白凰社と角川書店から出ている。値段はいずれも千円前後。   

 それ以外には、村松書館から『シュトルム全集』が刊行中である。現在4冊が既刊。刊行途中ではあるものの、全集だから、シュトルムの作品をまとめて読みたいという人にはお勧めである。ただし値段が高い。1冊が3900円、残りは8000円(!)。二の足を踏んでしまう値段だが、新潟大学には私がちゃんと入れておいているので、読みたい方は借りて読むことができる。ただし図書館ではなく、教養校舎B棟5階の外国語図書室に収蔵されている。借り出したい方は、私、または教養校舎に研究室がある他のドイツ語教官へお申し出下さい。

 作品ばかりじゃなく、シュトルムの生涯について知りたい人は、宮内芳明著『シュトルム』(清水書院)が700円と手頃な値段だし入手もしやすい。また、ドイツの専門家が書いた本の邦訳、ラーゲ著(田中宏幸他訳)『シュトルムの生涯と文学』(芸林書房、2400円)も貴重な文献である。

 その他、専門的な論文集なども刊行されているのだが、ここでは省く。こういった刊行物を含めてシュトルムに興味のある方、シュトルムについて質問のある方、シュトルム協会に入りたいという方(研究者でなくとも、シュトルム愛好者なら誰でも入れます。年会費3000円)は、私の研究室においで下さい。メールでの問い合わせでも結構。

                                                                         (1999年10月12日)

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