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映画 『命をつなぐバイオリン』 に寄せて 戦争に翻弄される悲しみ 東欧の少年少女 音楽を通じた友情」 

〔新潟日報2013年3月15日朝刊文化欄〕

 

 音楽を通じて友情をはぐくむ少年少女三人を描いた映画である。東欧の美しい自然や街並み、子供たちのリアルな演奏シーンなど、予備知識なしでも楽しめる佳作だが、時代背景を知っていれば理解が深まり、感銘も大きなものになるだろう。

 舞台は一九四一年のウクライナ。ウクライナは現在でこそ独立国だが、昔から近隣の大国や諸民族に翻弄され、国家として存在していた期間は長くない。第一次大戦末期のロシア革命に乗じて独立国となったものの、やがてソ連に武力で吸収されてしまう。そのソ連は三九年にナチス・ドイツとの間に独ソ不可侵条約を結ぶが、直後に両国はポーランドに侵攻、ここに第二次大戦が始まるのである。

 映画の出だしでは独ソ間は中立で、ウクライナに戦火は及んでいない。ウクライナに居住する少年バイオリニストのアブラーシャとピアニストで作曲もする少女ラリッサは、モスクワに演奏旅行をしてスターリンに賞賛される。二人はユダヤ人だが、東欧は古来ユダヤ人の多い地域であった。

 そんな二人に憧れるのが、ドイツ人の少女ハンナである。醸造業者の父がウクライナで事業を興したためにこの地に来ており、やはりバイオリンを習っていたが、ユダヤ人の二人に近づき、やがて友情で結ばれる。

 しかし四一年六月、ドイツは不可侵条約を破ってソ連へ侵攻する。ソ連の一部であるウクライナではドイツ人は敵性外国人となり捕縛されるはずのところを、ハンナの一家はアブラーシャの一家に教えられて森に隠れる。だがほどなくドイツ軍はウクライナを占領、ユダヤ人を収容所送りとする。今度は逆にユダヤ人一家をハンナの一家が救う番になる。

 時代に翻弄される人々の姿は大人であっても痛々しいが、この映画ではそれが少年少女であるだけにいっそう悲しい。ナチスの非道な大佐も音楽好きで、それが少年少女の運命を左右してしまう筋書きは、最後まで観客を捉えて放さない。どうか劇場でごらんいただきたい。

三浦淳(新潟大学教授、独文学専攻)

 

 

 

 

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