映画評2006年

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 2006年に見た映画をすべて紹介。 5段階評価と短評付き。

  評価は、★★★★★=すぐ映画館に駆けつけるべし (大傑作につき見ないと一生の損)。 ★★★★=十分な満足感が得られる (いい作品だから見てごらんよ)。    ★★★=平均的 (見て損はない)。 ★★=劣る (カネと時間が余ってたらどうぞ)。 ★=駄作 (カネをドブに捨てるようなもの)。 ☆は★の2分の1。

 

157.「硫黄島からの手紙」 12/29、Tジョイ新潟万代。 評価★★★★☆ クリント・イーストウッド監督作品。 11月に公開された 『父親たちの星条旗』 と2部作で、第二次大戦末期、硫黄島での日米の死闘を、第一部とは逆に日本軍の立場から見ている。 日本軍のいい面と悪い面、軍人の中にも様々なタイプがいるところを丹念に描いており、栗林中将 (渡辺謙) と西中佐 (井原剛介) の開明派と、伊藤中尉(中村獅童)らの精神派との対立がある一方で、元パン屋の下っ端兵士 (二宮和也) が重要な役どころを務めるなど、筋書き上の工夫もある。 第一部と合わせてきわめて充実した作品であり、今年のナンバーワン映画であることを疑わない。 また、アメリカ人としてきわめて公正な視点でこの映画を作ったクリント・イーストウッドに敬意を表したい。 今年の最後を締めくくるにふさわしい作品だったなあ。

156.「ストロベリーショートケイクス」 12/29、シネ・ウインド。 評価★★ 矢崎仁司監督作品。 4人の若い女性を主人公に、現代に生きる彼女らの悩みや行動を描いた作品だそうである。 私は中越典子が出るので見に行ってみたのだが、感心しなかった。 彼女は結婚願望が強いOLという役どころだけれど、相手役の男に全然存在感がなく、なんで彼女がこういう男に惚れるのか分からない。 そういうタイプの女だという設定なのかもしれないけれど、それならもっと早くマシな男を捕まえているんじゃないだろうか。 4人のなかではイラストレーター役の岩瀬塔子がいちばん存在感があり、しっかり描かれていた。 あとは単なるうわべだけの風俗描写映画の域を出ていない。 

155.「大奥」 12/25、UCI新潟。 評価★★★ 七代将軍家継治下の江戸および江戸城を舞台に、大奥総取締の絵島 (仲間由紀恵) が、敵対する城内派閥の差し向けた歌舞伎役者・生島 (西島秀俊) と恋に陥るまでのきわどい展開を追う作品。 豪華絢爛たる衣裳や、多数の女優陣が顔を揃える派手やかさ、CGもうまく駆使した背景が印象的だが、肝心の二人の恋模様があまり説得的とは言えない。 特に仲間由紀恵の表情がどんな場面でもモノトーンなのにはあきれかえった。 この人、恋をした経験が全然ないんじゃないか、そんな気がしてくる。 主演のボンクラぶりを除くと、それなりの作品だと思うんだけれど・・・・。

154.「武士の一分」 12/22、Tジョイ新潟万代。 評価★★★ 藤沢周平原作、山田洋次監督作品。 藩のお毒味役の武士 (キムタク) が毒に当たって失明してしまい、やがて将来を案じた愛妻が悪徳武士にだまされたことを知り・・・・・というようなお話。 おそらく意図的に過度な感情移入や劇的な表現を避け、古典的なたたずまいの映画に仕上げた感がある。 登場人物も予測をはずれた動きや発言はしない。 それだけに、まあ悪くはないのだけれど、すごく充足感を覚える、というほどでもない。 すべてはお約束の範囲内に収まっているのだ。 

153.「王の男」 12/18、UCI新潟。 評価★★★☆ 韓国映画。 イ・ジュニク監督作品。 16世紀の韓国、固い友情で結ばれた旅芸人チャンセンとコンギルの二人 (カム・ウソン、イ・ジュンギ)。 彼らはある時漢城にやってきて、王 (チョン・ジニョン) の前で芸を披露し気に入られ、王宮に住まうことを許される。 やがて王は女をも凌ぐ美貌のコンギルに入れあげて政治をないがしろにし始め・・・・。 まず、見物はコンギルを演じるイ・ジュンギの美貌である。 これほどの美形の男優はなかなかいないと思う。 他の二人の主役も好演。 王の乱れぶりと、芸人二人の微妙な友情とが印象に残る佳作と言える。

152.「ただ、君を愛してる」 12/15、Tジョイ新潟万代。 評価★★★ 新城毅彦監督作品。 大学に入学した誠人(玉木宏)はふとしたことから子供っぽい同級生・静流 (しずる・宮崎あおい) と知り合う。 彼女と奇妙な友情で結ばれながらも、美人の同級生みゆき (黒木メイサ) に恋する誠人。 やがて彼は静流と写真の趣味を共有するようになるが・・・・・。 学生同士の三角関係のお話で、少女マンガのように子供っぽい平凡な女の子が恋に勝利するのだが、それだけに終わらない 「えっ」 が含まれていて、まあまあ面白く見ることはできる。 ただ、宮崎あおいが演じる女の子の感情の起伏はよく描かれているけれど、黒木メイサのほうは優等生過ぎるし、玉木宏の役も何だか間抜けな男の子という印象が強く、これは彼らの演技力の問題ではなくシナリオが悪いのだろうが、本当の意味での 「感動」 にはやや足りない作品だと思う。

151.「めぐみ――引き裂かれた家族の30年」 12/15、Tジョイ新潟万代。 評価★★★ 横田めぐみさんの拉致問題を扱ったドキュメンタリー映画である。 めぐみさんが北朝鮮の工作員に拉致されたのが新潟市ということもあり、東京と同時上映開始でしかも2館上映となった。 私は上映開始後2週間位してから見に行ってみたのだが、結構客は入っていた。 ただ、年輩の方が多く、日頃映画館には来つけていないな、と思われる人が目立ったのは残念。 ドキュメンタリーとしてはやや物足りない印象が残るのは、めぐみさんが拉致されたと日本国内で正式認定されるまでにだいぶかかっているところにも問題があるのに、その点にあまり触れていないからだろう。 また、この映画が日本人によって作られず、アメリカ人によって作られたというあたりに、私は日本の映画界の闇を見たい気持ちになるのを押さえることができない。 何はともあれ、多くの人に見て欲しい映画である。 

150.「007 カジノ・ロワイヤル」 12/8、Tジョイ新潟万代。 評価★★★☆ ダニエル・クレイグがジェイムズ・ボンド役をつとめるというので話題の映画である。 彼は 「いかにもハンサム」 というのではなく、ちょっと酷薄な印象があり、それがかえって悪と闘うときの迫力につながっているように思えた。 最初からアクションの連続で、またいつものように世界各地――今回はバハマ、ヴェネチア、コモ湖、モンテネグロなど――を駆けめぐる大サービスぶり。 オカネを払って見る価値のある作品であることは保証します。 「?」 を付けたいのは、やや長すぎることと、ヒロインのエヴァ・グリーンが全然肌をさらしていないこと。 ボンドガールはちゃんと脱ぐか、せめて水着姿を見せなきゃ失格ですよ (笑)。

149.「手紙」 12/8、Tジョイ新潟万代。 評価★☆ 東野圭吾原作 (私は未読)、生野慈朗監督作品。 見るつもりがなかったのだけれど、評判になっているようなので行ってみた。 が、残念でした。 いささかゴーマンな言い方をすると、ふだんあまり映画を見ていない人には 「泣ける」 かもしれないが、或る程度映画を見ている人にはとてもじゃないが感動どころではなく、アラが目立って仕方がない作品なのである。 兄が人殺しをして服役しているために周囲からも差別されがちな弟の生き様、ということなのだが、主人公の心情とか生き方に過度に光が当てられており、その分、周辺の人物像がすごく浅いのである。 筋書きにもご都合主義的なところが目立つ。 服役囚である兄も含めて、結局主人公にとっては自分以外はどうでもいいんじゃないか、と思えてくるし、それは煎じ詰めれば脚本と監督の力量の問題だろう、と言うしかない。

148.「デスノート 後編 The last name」 12/5、Tジョイ新潟万代。 評価★★★ 今年前半に公開された前編はエンターテインメントとして非常に面白かったので期待していたのだが、後編は普通の面白さであった。 デスノートに関するルール、ちょっと増えすぎではないか。 もう少し少ないルールであっと言わせないといけないのに、あっと言わせるネタに困ってルールをむやみに増やしているような印象がある。 それと、死神の性格付けも一定の枠にはめてもらいたい。 変に気まぐれで動かれると説得力が出てこないし。

147.「麦の穂をゆらす風」 12/3、シネカノン有楽町。 評価★★★ ケン・ローチ監督作品。 英独伊アイルランド合作。 カンヌ映画祭パルムドール。 1920年頃にアイルランドの英国から独立した際の闘いや内部抗争を扱っている作品である。 英国の横暴さに対して武器を取って立ち上がったアイルランドの青年たち。 家族や仲間に犠牲を出しながらも戦い抜き、やがて独立を勝ち取る。 しかしその独立は、彼らが望んだような完全な独立ではなく、英連邦の一員としての不完全な独立であり、英国とアイルランドの妥協の産物だった。 ここで仲間たちは分裂する。 あくまで完全独立を目指す者たちと、とりあえず妥協もやむなしとする者たち。 そして悲劇が起こる・・・・。 映画では英国軍人の横暴非道ぶりが容赦なく描かれ、よくある「英国は紳士の国」ふうの思いこみを覆してくれること請け合いである。 アイルランドの若者たちの内部抗争や微妙な人間関係もよく捉えている。 最初は武装闘争に懐疑的だった主人公が、やがて闘争に打ち込み、最後は完全独立派となってしまう運命の皮肉も悪くない。 ただ、淡々とした作りのせいか、どこかかすかにではあるが物足りなさが残るのである。 私だけかも知れないが。 

146.「サラバンド」 12/1、ユーロスペース(渋谷)。 評価★★☆ ベルイマンの最新作というので話題である。 映画としては作りがシンプルで、ちょっと舞台での会話劇みたいな感じもある。 ただしそれで面白いかというと、単調さが目立ち、あまり映画的な感興を感じなかった。 人間関係のどうしようもなさ、がテーマなのかも知れないが、非常に単純化された書き割りのなかで限られた登場人物の会話が続くのはやや退屈だ。 そういう退屈さが北欧のどうしようもない絶望につながるのだ、ということなのか。 でも、そういう退屈な絶望とは私はあんまり相性が良くないもので・・・・。

145.「キング 罪の王」 12/1、アミューズCQN(渋谷)。 評価★★★ ジェームズ・マーシュ監督作品。 軍隊を除隊した青年(ガエル・ガルシア・ベルナル)は、育ててくれた母をすでに亡くしており、まだ見ぬ父に会いに行く。 父は彼の母とは結婚しないままに付き合い、その後別の女性との間に家庭を作り、一男一女の父となっていた。 説教師をしている父は、現在の家庭を守ろうとして青年に近づくなと厳命する。 青年は同じ町内でピザ屋に勤め、まだ高校生である父の娘 (異母妹) に近づく。 何も知らぬ彼女は青年とつきあい始める。 やがて・・・・というような話で、話自体は面白く退屈しないのだが、青年の意図が奈辺にあるのかがよく分からない。 映画の宣伝では復讐となっているが、どうもそうは思われないのだ。 説教師たる父の偽善性への批判はありそうだが、それだけに終わる映画ではない。 けれども、終わらないで何なのかというと、よく分からない。 青年の狂気、或いはカミュの 『異邦人』 のような理由なき何とやらなのか・・・・・。

144.「椿山課長の7日間」 11/29、WMC新潟。 評価★★★ 下↓と同じく浅田次郎原作の映画化。 河野圭太監督作品。 デパートに勤務する中年男・椿山課長 (西田敏行) は急死してしまう。 しかし生前にし残した仕事が気にかかっていた彼は、天国へ行く前段階のところで願い出て、3日間だけ地上に戻してもらう。 ただし似てもにつかない美女 (伊東美咲) の姿で。 地上に戻った彼を待っていたのは、意外な事実だった・・・・・。 筋書きは結構よく考えられているし、副人物もそれなりに活躍して映画を面白くしている。 だから悪い作品ではないのだが、どうも主人公のおかれた立場が・・・・ネタバレになるので書けないけれど、最後のメデタシメデタシがとってつけたようで納得できなかった、と言っておこう。 

143.「地下鉄(メトロ)に乗って」 11/23、WMC新潟。 評価★★★ 浅田次郎原作、篠原哲雄監督作品。 一代の企業家ながら強引で家族を顧みない父 (大沢たかお) に反発して家を出、姓を母方に変えて生きている男 (堤真一)。 家督を継いだ弟から父が危篤だから会いにきてやってほしいと言われても肯んじない。 ところがある日、地下鉄の駅を出ると、そこは彼が少年時代を送った昭和39年、すなわち東京オリンピックが開催される直前の東京だった。 やがて彼はしばしば過去にタイムスリップして父の過去の姿を知るようになるのだが・・・・。 タイムスリップものであるが、家族小説的なところもあり、また主人公が単なる正義漢でなくそれなりに父と似たところがあるという設定になっているのも悪くない。 ただ、彼の愛人 (岡本綾) がからむのだが、その処理が何となく後味が悪いのである。 そこがどうもね。 

142.「日本以外全部沈没」 11/22、UCI新潟。 評価★★☆ 筒井康隆が小松左京 『日本沈没』 のパロディとして書いた短篇を映画化したもの。 河崎実監督作品。 世界中が海の底に沈んだのになぜか日本だけは沈没を免れた世界。 外国から押し寄せる難民たちを狩る警察。 若い外国人メイドを雇ってウハウハしている日本人男性。 かろうじて日本で生き延びる外国首脳に優越感を持って接する首相。 原作にこだわらず時事ネタも入れたりしてなかなかだけれど、オカネを使っていないのが見え見えなのと、最後はブラックになりきれずに 「みんな仲良く」 に収斂してしまうところが、イマイチか。

141.「父親たちの星条旗」 11/17、Tジョイ新潟万代。 評価★★★★☆ クリント・イーストウッド監督作品。 第二次大戦末期、日本が守備隊をおく硫黄島に米国軍が攻め込んで激しい攻防が繰り広げられたが、その様子と、その際にたまたま山上に星条旗を立てているところが写真で米国紙に報道されたために英雄扱いされた兵士たちが帰国して戦争宣伝に利用されていく過程を、老いた元兵士が過去を回想する形で描いている。 攻防戦の過酷さについては『プライヴェート・ライアン』以来一般的になったリアルで容赦ない描写がなされており、星条旗を立てた兵士たちの運命にも戦意高揚政策の裏を見抜く冷静な視線が注がれている。 また、インディアンの兵士への人種差別など、当時米国が抱えていた矛盾にも光を当てている。と言って、いわゆる反戦映画なのではなく、あくまで人の世の裏表を冷徹に見据えているところが素晴らしいと思う。 お薦めである。

140.「ゲームの規則」 11/16、シネ・ウインド。 評価★★★ ジャン・ルノワール監督作品。 1939年製作、モノクロ・スタンダードサイズ。 第二次大戦前夜、妻と愛人の間で悩む貴族、彼の妻に思いを寄せる飛行士、貴族の友人、召使いなどなどが、貴族の別荘に集まりそこで繰り広げる人間模様を描いている。 私としては貴族の館の内部の様子や、狩りの描写が面白かった。 なるほど、狩りってのはこういうふうにやったのか、と納得。 それにしても、恐らくここでは兎や鳥などを実際に射殺して映画を作ったのだろうから、今なら動物愛護団体から厳重な抗議が寄せられるだろうなあ、昔はよかった、なんて変なことを考えてしまった。 最終的には悲劇が起こるのだが、むしろここで見るべきは戦前フランス上流階級の暮らしぶりや交際の仕方などだと思う。

139.「虹の女神」 11/13、UCI新潟。 評価★★★ 熊澤尚人監督作品。 大学時代に映画研究会で映画作りに熱中していたヒロイン (上野樹里) がふとしたことからダメ男の男子学生 (市原隼人) と知り合い、何となく付き合いを続けていき、彼は卒業後も彼女の世話で同じ職場に勤めるようになるなど、冴えない関係が続いていくが、やがて彼女は外国に旅立つ・・・・てな話である。 と聞くとつまらなそうな感じがするが、いくつかの章に分かれており、現代風な男女関係としては結構面白いような気がする。 ダメ男の彼が怖い年増女につかまったりする話もあって、退屈しない。 ただ、水準を超える作品になっているかというと、ううむ・・・・なのである。 ヒロインの妹役で出てくる蒼井優があいかわらず存在感のある演技を見せている。

138.「カポーティ」 11/11、UCI新潟。 評価★★ ダン・ファターマン脚本・制作、ベネット・ミラー監督作品。 実在の作家トルーマン・カポーティを主人公に、彼が 『冷血』 のモデルとなった殺人事件に取材するうちに次第に殺人犯と奇妙な友情を結び、作家たることと友情との矛盾に悩むさまを描いている。 ・・・・が、はっきり言って面白くない。 主役のフィリップ・シーモア・ホフマンはたしかに好演で、最初は彼の演技やカポーティの独特のキャラがそれなりに面白く感じられるが、肝心の殺人犯との交流になるとどうもいけない。 作家たることと殺人犯との友情の狭間、みたいなものがうまく描かれておらず、浅い印象しか残さない。 殺人犯の描写も、一家4人を惨殺した犯人にしちゃあ全然迫力や恐さが感じられず、それは結局、殺人事件の本質にこの映画が迫り得ていないことを示しているのではないか。 なんでこんなフツーの人間が4人も殺したのか、分からずじまい。 多分、これって映画になりにくい素材だったのを無理に映画にしちゃったのも敗因なのではないだろうか。 私は途中から眠気をこらえるのに必死でした。

137.「ブラック・ダリア」 11/6、UCI新潟。 評価★★☆ ブライアン・デ・パルマ監督作品。 第二次大戦後間もない頃のロサンゼルスを舞台に、ボクサー上がりの2人の警察官が奇妙な友情に結ばれながら殺人事件などの解決を模索するさまを描いている。 映像の作りや進行などからすると或る意味古風な映画なのかもしれないが、筋書きは錯綜していてきわめて分かりにくい。 というか、実は全体の鍵となるトリックは、私には最初から見えちゃったのだが、その後の人物の出入りがかなり恣意的な感じなのである。 余り筋書きにこだわらずに、登場人物のポーズやイメージに重きをおいて見る人にはいいかもしれない。 スカーレット・ヨハンソン、全然魅力が活かされていないですね。

136.「ヘイヴン 堕ちた楽園」 11/2、シネマGAGA!(渋谷)。 評価★☆ フランク・E・フラワーズ脚本・監督作品。 製作と主演がオーランド・ブルーム。 税金が課せられない 「楽園」 であるケイマン諸島に住む青年の恋愛譚と、訳あって米国から高飛びしてきた父娘の運命との交錯を描いているが、はっきり言って失敗作である。 それぞれの話が恐ろしく単純でつまらないし、ではその交錯で複雑さや問題性が出ているかというと、さにあらず、なのだ。 こんな凡作を作ってしまうのでは、オーランド・ブルームの製作者としての資質が疑われても仕方がなかろう。 東京滞在の最後に見た映画がこんな出来とは・・・・・。 ベルイマンの 「サラバンド」 とどちらにするか迷ったのだけれど、失敗だったかな・・・・・ 

135.「チャーミング・ガール」 11/2、イメージ・フォーラム(渋谷)。 評価★★★ 韓国映画。 イ・ユンギ監督作品。 郵便局に勤める若い女性 (キム・ジス) の日常を淡々と追いながら、次第に彼女の過去や心の動きを浮かび上がらせていく作品。 端的に言って、これはヒロインのキム・ジズを見るための映画である。 非常な美人で私好みだが――南果歩さまとシム・ウナを足して2で割ったみたいな美貌ですから――手だけは筋が浮き出ていて美しいとは言いかねる。 が、そのアンバランスがまたいい。 当初は東京で見る予定に入れていなかったのだが、チラシで彼女の美貌に撃たれてしまい、見る気になったもの。 私と女優の趣味が類似している方にはお薦めします。 

134.「トリスタンとイゾルデ」 11/1、新宿武蔵野館。 評価★★★☆ リドリー・スコット製作、ケヴィン・レイノルズ監督による、有名な素材を用いたハリウッド映画。 イングランドとアイルランドという敵対しあう国に身を置きながら激しい恋に陥ったトリスタン (ジェームズ・フランコ) とイゾルデ (ソフィア・マイルズ) の悲劇を描いている。 古代イングランドの、今からするとかなり野蛮に見える風俗などを再現しており、あの頃の 「国王」 とか 「宮殿」 とはこんなものだったのかな、と思えてくる。 トリスタンを演じるフランコと、マルク王を演じるルーファス・シーウェルがなかなかいいが、イゾルデのソフィア・マイルズはちょっと美貌度が足りない感じ。 いくら古代の蛮族でも、悲劇のヒロインでお姫様なのだから、もっとキレイな女優を出してくれないとね。 

133.「上海の伯爵夫人」 11/1、新宿武蔵野館。 評価★★★★ ジェームズ・アイヴォリー監督作品。 カズオ・イシグロ原作、英米独中合作。 1930年代の上海を舞台に、戦争の迫り来る中、事故で家族と視力を失い失意の中で生きる元アメリカ外交官 (レイフ・ファインズ) が、革命で故国ロシアを追われダンスホールで働いている倫落の伯爵夫人 (ナターシャ・リチャードソン) と知り合い、「夢のバー」 を作ろうとする話である。 彼に側面から協力する謎の日本人 (真田広之) など脇を固める役者もいいし、動乱の時代に翻弄されながらもはかない夢に賭けようとする人間の営為が観客の胸を打つ。 レイフ・ファインズや真田広之の味は言うまでもないが、ヒロインのナターシャ・リチャードソンも悪くない。 ナターシャなんて名だからてっきりロシア人かと思ったら、パンフによると英国人だそうで、ジョエリー・リチャードソンの姉だとのこと。 妹は 『チャタレイ夫人の恋人』 のヒロインをやったりしてその美貌が世界的に知られているが、姉は美貌度では妹に負けるように思うけれど、この映画の役にはぴったりである。 新潟でもぜひ上映して欲しい。

132.「黒い雪」 10/31、イメージ・フォーラム(渋谷)。 評価★★★ 武智鉄二監督作品。 1965年製作、モノクロ。 東京に行ったら、イメージフォーラムで 「武智鉄二全集」 をやっており、そのうちこの1本だけを見てみた。 いわく付きの映画で、1965年当時猥褻だという批判を受け、裁判にもなり、三島由紀夫や大島渚が弁護に立ち、最終的には無罪となったが、映倫審査のあり方について議論を呼んだ作品である。 その頃私は中一で、新聞の投書欄に 「見たけれどひどい映画でした」 なんて意見が載ったりして、そうなるとかえって見たくなるわけだが、カネも勇気もなくて行けず、それっきりになっていた。 今回ほぼ40年ぶりに見ることができたが、今の基準からすると特に猥褻さは感じないし、こんなものかな、という気がする。 青年のアプレゲール風の怠惰と孤独感、米軍に対して無力な日本人、女たちの媚態と生活感などなど、時代の色が明確に表現されている。 ただ、途中で、捕縛された青年のところにタクシー運転手と娘が訪ねてきて、運転手が戦時中の 「罪」 を告白し、娘と青年との結婚を宣言するところには、ひどく違和感を覚えた。 全体から浮いているのだ。 退廃の中の 「聖なるもの」 の顕現 (エリアーデ言うところのヒエロファニーという奴だ) を表現しようとしたのだろうが、映画の流れに合っているのかどうか・・・・・。

131.「クリムト」 10/31、ル・シネマ(渋谷)。 評価★★★ ラウル・ルイス脚本・監督作品。 墺仏独英合作。 19世紀末から20世紀初頭にかけて活躍した画家クリムトを主人公にした映画だが、伝記的な作品ではなく、彼の芸術家としてのポリシーのようなものを、幻想を通じて描き出そうとしているようだ。 したがって、あらかじめクリムトについて或る程度知識を仕入れてから見に行った方がいいだろう。 でないと、わけが分からない、ということになるかも。 ただし、それを別にしても、作品としての完成度が高いと言えるかどうかは微妙。

130.「幸せのポートレート」 10/29、ギンレイホール(飯田橋)。 評価★☆ トーマス・ベズーチャ監督作品。 コチコチのキャリアウーマン(サラ・ジェシカ・パーカー)が婚約者の家庭を訪れるが、彼の家族とうまく折り合えず・・・・というような筋書き。 違う世界に育った人間同士の意志疎通の難しさという普遍的なテーマを扱っているが、他方、「彼の家族」 には同性愛者同士の男男カップル (それも白人と黒人の) がいたり・・・・というような米国ならではの 「政治的正しさ」 の要素も入っていて、何となく米国リベラル派の宣伝映画を見せられているような感じがしてくる。 つまり、お堅いキャリアウーマンに対して自由闊達な家族、という構図のはずが、実は後者には政治的正しさという縛りが入っているために、かえって不自由な印象がしてしまうので、その辺はおそらく制作側の読み違いではないか、という気がする。 あと、ヒロインのサラ・ジェシカ・パーカーが女として全然魅力的ではなく、見ていて 「なんでこんな女優がヒロインの映画を2時間も見てなきゃならないんだ」 と思ってしまうのが大難点。 いくら何でも、もう少しマシな女優、いなかったのかね?

129.「2番目のキス」 10/29、ギンレイホール(飯田橋)。 評価★★★☆ ファレリー兄弟監督作品。 平凡な高校教師 (ジミー・ファロン) と仕事のできるキャリアウーマン (ドリュー・バリモア)。 たまたま教師が生徒を企業見学に連れていった時に出会った二人は恋に陥る。 だが、教師にはひとつ重大な趣味があった。 野球のレッドソックスの熱烈なファンであり、余暇はすべてレッドソックスを中心に回っていたのだ。 彼女は彼の趣味を理解しようと努力するが・・・・という筋書きのコメディ。 高校教師のレッドソックス・ファンぶりがなかなか面白く、またバリモアのキャリアウーマンも女性らしさを前面に出していて、必ずしも 「仕事一本槍」 的雰囲気ではなく、作品全体が軽やかで暖かく、喜劇としてもデートムービーとしてもそれなりに楽しめる映画になっている。 ドリュー・バリモアは、以前映画で見たときはイモ姉ちゃんだと思ったけれど、久しぶりに見たらずいぶん美しくなっていて、びっくり。    

128.「サンキュー・スモーキング」 10/28、シャンテ・シネ(日比谷)。 評価★★★☆ ジェイソン・ライトマン脚本・監督作品。 タバコ会社への批判をかわす役割の宣伝マンを主人公に、タブーの多いアメリカ社会の中で生きる人間の生態をユーモラスに描いている。 一方で映画界に働きかけてタバコを吸うシーンを増やさせようとするタバコ会社の策謀をあばいているが、他方でタバコや酒などをスケープゴートにして自分の選挙区の特産品にはめをつぶる議員のご都合主義をも批判しており、多面的で含みの多い作品になっている。 主人公とその息子との父子関係もユニークで面白い。

127.「太陽」 10/25、UCI新潟。 評価★★★ ソクーロフが昭和天皇を取り上げているというので話題の映画。 戦局が思わしくないなかで御前会議を開き、また好きな生物学研究にいそしむ天皇 (イッセー尾形) の姿から始まり、敗戦によりマッカーサーと会見して人間宣言をするあたりまでを、必ずしも伝記的とは言えない、ソクーロフならではの独特の映像と手法で綴っている。 ただ、外国人から天皇がどう見えるかという、一種のオリエンタリズムを渇望してこの映画を見ると、多少失望しそう。 ソクーロフにしてはかなり普通の映画なのだ。 イッセー尾形は、天皇役にはやや品が足りないような気がする。 皇后役の桃井かおりも、最後にちょっとしか出てこないけれど、同じ印象。 侍従役の佐野史郎は悪くない。

126.「家の鍵」 10/23、UCI新潟。 評価★★☆ イタリア映画。 ジャンニ・アメリオ監督作品。 かつて産褥で妻を失い生まれてきた赤ん坊にも障害があって、ショックのため我が子を手放し親戚に預けてしまった男。 十年以上の時が流れ、別に家庭を作った彼だったが、ある機会に障害児である我が子と再会し、彼を引き取る決心をする・・・・・。 体にも知能にも障害がある子供との辛抱強い付き合いの中で愛情をはぐくんでいく主人公の姿はそれなりのものだが、材料が材料だけに基本的に善意によって芯が形成されている映画で、正直言って私は途中で眠気をもよおしてしまった。 主人公が現在別に持っている家族が姿を見せないのも、作品の重層性を損なっているように思う。

125.「紙屋悦子の青春」 10/23、UCI新潟。 評価★★★☆ 黒木和雄監督作品。 終戦間近の九州を舞台に、兄夫婦と暮らす紙屋悦子 (原田知世) が、ひそかに思いを寄せている海軍将校とは彼の特攻隊出撃により別れ、その友人である将校と婚約するさまを描いている。 長回しの映像に独特の味があり、当時の日本人の生活を淡々と描いていて、見ていて飽きることがない。 また兄夫婦役の小林薫と本上まなみもなかなかいい。 あの頃の日本人は、四の五の言わずにこうして黙々と結婚して家庭を作っていったんだよね・・・・。

124.「桜の森の満開の下」 10/20、シネ・ウインド。 評価★★★ 坂口安吾の小説を篠田正浩が映画化したもの。 1975年制作。 シネ・ウインドの坂口安吾特集で上映された。 遠い昔、山で山賊として暮らしている野性的な男 (若山富三郎) が、旅人を襲って美女 (岩下志麻) と出会い自分の妻にする。 みやこ暮らしを恋しがる彼女にせがまれた彼は、山を捨ててみやこに出ていくのだが・・・・。 両主演がなかなかよく、昔のみやこの様子だとか、桜の木の下の幻想的な雰囲気だとかもわりに良く出ているけれど、物語のまとまりという点ではイマイチの感もある。 原作がそうだからなのか、未読だから分からないが。

123.「ハード・キャンディ」 10/17、UCI新潟。 評価★★★ ディヴィッド・スレイド監督作品。 「赤ずきんのオオカミ狩り」 のお話。 出会い系サイトで知り合ったカメラマンの青年と14歳の少女。 青年は自宅に少女を連れ込むが、そこで少女は青年の処刑にとりかかる・・・・・。 途中隣家の女性が訪ねてくる以外はほぼ全編が青年と少女の対話でできており、非常にユニークで恐ろしい作品だ。 表情を変えることなく青年を追いつめるエレン・ペイジが少女の持つ中性的な残酷さをよく表現している。

122.「セレブの種」 10/15、WMC新潟。 評価★★ スパイク・リー監督作品。 黒人ながら名門大学を出ているエリート会社員ジャック (キウェテル・イジョフォー) は、会社の不正を知り内部告発をしたが、そのためにクビになってしまう。 その直後、婚約までしながらレズであることが判明して別れたガールフレンドから、子供を欲しがっているレズ女性を妊娠させる仕事をしないかと持ちかけられて、金に困っていた彼は引き受けるのだが・・・・・。 エッチなコメディという体裁をとっているが、不正に対する内部告発をした人間が社会的に守られるべきだとか、黒人差別はいけませんだとか、レズに対する偏見を捨てよとか、家族の形態は多様であるべきだとか、リベラル派の主張がごたまぜに並べられていて、ちょっとプロパガンダ映画の趣きもあり、また映画としてもまとまりがゆるくてだらだら続くようなところがあり、あまり評価できない作品でした。 

121.「旅の贈りもの」 10/14、シネ・ウインド。 評価★★★ 原田昌樹監督作品。 大阪駅を偶数月の第三金曜日午前零時に出発する行き先不明の列車。 その列車に乗ったのは、ワケアリの人たち。 恋人に裏切られたキャリアウーマン (櫻井淳子)、自殺願望の女子高校生 (多岐川華子)、華やいだ都会暮らしに憧れて田舎から出てきたものの挫折したキャバクラ嬢 (黒坂真美)、会社をリストラされた中年サラリーマン (大平シロー)などなど。 彼らが着いたのは、日本海沿岸の小さな町。 そこで彼らは・・・・・というようなお話。 まあ、最近流行の言葉を使えば 「癒しの映画」 といったところ。 かなり甘いところがあるし、電気機関車に引かれて着いた駅のはずなのに帰りは気動車で架線もないなど杜撰な箇所もあるが、たまにはこういう映画も悪くないでしょう、ということで。 

120.「男はつらいよ」 10/13、UCI新潟。 評価★★★ 有名なシリーズ映画の第一作で1969年製作。 ユナイテッドシネマ新潟7周年記念の 「昭和名作選」 の1本として上映された。 私は初見。 父と折り合いが悪く家を飛び出した主人公・フーテンの寅 (渥美清) が、久しぶりに妹とおじおばの住む葛飾柴又に戻ってきて起こす騒動を描いている。 まず妹さくら (倍賞千恵子) を会社幹部が見初めて 「うちの息子の嫁に」 ということで設けられた見合いの席を台無しにし、次に隣の工場で働く好青年 (前田吟) がさくらに寄せる思いを曲げて伝えたために二人の関係を壊しかけ――結局はめでたしになるのだが――、最後はマドンナ役の光本幸子 (御前様の令嬢、という設定) に振られて柴又を去る。 全体として見て、葛飾柴又が「庶民の世界」であるのに対して、対比的に「高級な世界」が呈示されているのが分かる。 さくらの見合い相手は大会社の幹部の子息で、会場は巨大なホテルであり、席には洋食が並べられナイフとフォークを使って食べるというなかで、主人公が下品な言動を繰り返してぶちこわしにするという設定。 また、好青年とさくらとの関係でも、主人公は青年に相談を受けて「妹の相手は大卒でないと」と知ったかぶりで返事をするのに対し、青年は大学を出ていない。 ところが結婚式で久しぶりに青年は実父と再会するのだが、その父は大学教授であり、かつて青年は父と喧嘩をして家を飛び出したのだ、という経歴が分かってくる仕組みになっている。 つまり小工場で働く学歴のない青年の父は実は大学教授であり、こりゃ一種の貴種流離譚かな、と。 おまけにマドンナの光本幸子の婚約者も大学教員という設定で、この時代、大学教師ってそんなに高級感があったんですかねえ、と首をひねりました。 なお、マドンナが寅さんを遊び相手にしながら実はしっかり別の婚約者をゲットしているという設定について、おばちゃんに 「お嬢さんも悪いと思う」 という批判の言葉を吐かせているところが、美女の無意識の偽善に対する見識を示していて、この時代、脚本家もバカじゃなかったんだな、と思いました。 光本幸子は着物姿が似合っていてとっても魅力的ですけど。

119.「夜のピクニック」 10/13、UCI新潟。 評価★★★ 恩田陸原作、長澤雅彦監督作品。 80キロを一昼夜かけて歩くという伝統行事のある高校。 その行事の時に、ヒロイン (多部未華子) と同級生の男の子 (石田卓也) がかねてから恋愛感情を持っているのに口がきけないでいる、と思っている同級生たちが、なんとか二人に話をさせようとする、というのがメインの筋書き。 ハードな学校行事の描写の合間に、高校生たちのさまざまな姿が浮かんでくる。 そこは悪くないが、実は二人の関係には・・・・という種明かしがあって、ここのところがやや物足りない。 きれいごとに終わっている、という印象が残る。 ヒロインの多部未華子は16歳の女高生の、開花するかしないかの魅力を存分に発揮している。 彼女の16歳のメモワールとして見るべき作品かも。

118.「隠された記憶」 10/6、シネ・ウインド。 評価★★ フランス・イタリア・ドイツ・オーストリア合作映画。 ミヒャエル・ハネケ監督作品。 テレビ局の人気キャスターである夫 (ダニエル・オートゥイユ) と書店編集者の妻 (ジュリエット・ビノシュ) という夫婦のところに、彼らの家を映したビデオが何者かによって送られてくる。 やがて奇妙な葉書や、他の場所を映したビデオも。 いったい誰が何をもくろんでそんなことをしているのか。 夫はビデオに映し出された場所を突き止めて、そこに行ってみるのだが・・・・・。 一種のミステリー映画であるが、最後まで謎には明快な答えが与えられない。 何だかよく分からない、といったところ。 また、ミステリーだけれども謎をめぐって作品が緊迫しているかというとそういうこともなく、展開がタルく、ちょっと眠くなる。 あんまりお薦めできない映画。

117.「涙そうそう」 10/5、UCI新潟。 評価★★★ 土井裕泰監督作品。 沖縄を舞台に、幼いとき父母の再婚によって血のつながりはないものの兄妹となった男女が、途中で父に失踪され母には死なれて苦労しながら、お互い強い愛情に結ばれて生きる様子を描いている。 兄 (妻夫木聡) は高校を中退して、飲み屋でアルバイトをしながら自分の店を出す夢を抱いており、医学生のガールフレンド (麻生久美子) もいる。 そこに高校に合格して小島から本島に渡ってきた妹 (長澤まさみ) が同居することに。 やがて兄は夢がかなって自分の店を出すのだが・・・・。 まあまあ面白いとは思うし、美男美女が血のつながらない兄妹を演じているので純粋に見て楽しめる作品にもなっているが、この映画ならでは、という独自性みたいなものはあまり感じられない。 兄妹の関係も、ちょっと健全過ぎはしませんかね。 もう少し危険なシーンを期待してしまうのは、私がオジサンだからでしょうか。

116.「フラガール」 10/3、Tジョイ新潟万代。 評価★★★☆  李相日監督作品。 昭和40年の福島県いわき市を舞台に、エネルギー革命で斜陽になっていた炭坑の人々が常磐ハワイアンセンターを立ち上げてゆく様を、東京から流れてきたダンサー (松雪泰子) が地元少女 (蒼井優、ほか) にフラダンスを教え込むところをメインとして描いている。 芸術や趣味としてのダンスではなく、生活のためにダンスをやるところが、現代とはひと味違った重みを作品に与えており、彼女たちと対立する旧世代の人々も、老いた炭坑婦を演じる冨司純子がすごい迫力を出しているなど、結構いい線を行っていると思う。 

115.「笑う大天使(ミカエル)」 10/1、UCI新潟。 評価★ 名門お嬢様学園にたまたま通うことになってしまった庶民派少女 (上野樹里) の奮闘を描く映画、だと思って見に行ったのだが、内容は予想を裏切っていて、そういうコミカルさがあまり前面に出ておらず、後半は何だか知らないけれどヒロインたちと少女誘拐犯との格闘技になってしまう。 羊頭を掲げて・・・・・というべきか、カネ返せ、というべきか。 とにかくまともな映画じゃありません。

114.「時をかける少女」 10/1、UCI新潟。 評価★★★ 細田守監督作品。 筒井康隆原作で、今までにもテレビドラマや実写映画になったことのある名作が、アニメで甦った。 といっても内容的には原作とはやや異なり、原作のヒロイン芳山和子の姪が 「時をかける少女」 として主演を張って (?) いる。 もっとも芳山和子もヒロインの叔母として登場する。 アニメならではの表現や面白さがあって退屈はしないが、ただ実写版の映画に見られたような、タイムトラベラーの少年に対するヒロインのひたむきな想念のようなものは希薄ですね。 良くも悪くも現代風、ということなんでしょうか。

113.「山椒太夫」 9/19、恵比寿ガーデンシネマ。 評価★★★ 溝口健二監督作品。 1954年制作。 言わずと知れた、森鴎外の小説で有名な作品の映画化。 ただしここでは安寿が妹、厨子王が兄に変更されている。 安寿を若かりし頃の香川京子が演じているのが、なかなかである。 中世日本の説話が、映像で見事に構築されている。 結末の、当時の法を無視して山椒太夫を厨子王が懲らしめるあたりに、爽快感というか、理詰めではない映画の面白さを感じました。 

112.「ミラクルバナナ」 9/19、シネアート六本木。 評価★★★ 錦織良成監督作品。 小山田サユリ主演。 タヒチと間違えてハイチに大使館派遣員として赴任したヒロインが、現地の子供たちが貧しくてノートも買えない実情に驚き、たまたま日本人学者がバナナの木から紙を作る研究をしていることを知って、日本から紙漉職人を呼んで現地で紙が生産できるようにする、というお話。 やや文科省推薦的なところもあるが、テロも横行する貧しいハイチの、しかし底抜けに明るい子供たちの笑顔や、紙作りの条件を整えるためにけなげにかけずり回るヒロインの姿が印象的な映画だ。 経済大国ニッポンとしては、こういう映画がもう少し作られてもいいと思いますがね。

111.「残菊物語」 9/18、恵比寿ガーデンシネマ。 評価★★★ 溝口健二監督作品。 1939年制作。 著名な歌舞伎役者のもとに養子として入った青年が、演技のまずさを周囲が直言してくれないことに悩み、率直な感想を言ってくれる若い女中との愛情に目覚めて劇団を飛び出し、下積みの生活を送りながら芸を磨いていく。 やがて磨いた芸を再認識された青年は再び脚光を浴びるが、彼を支え続けた女中は病にたおれる、というお話。 昔風のけなげな日本女性を演じるヒロイン森赫子が何とも言えずいい。 

110.「ゆれる」 9/18、シネ・アミューズ・イースト(渋谷)。 評価★☆  西川美和監督作品。 評判の映画で、新潟にも間もなく来るのだが、一足先に東京で見てみた。 が、失望、というか立腹。 なんでこの映画がそんなに評判なのか分からない。 筋書きは、関東のはずれの小さな田舎町に、都会でカメラマンとして活躍する次男 (オダギリ・ジョー) が母の葬式のために久しぶりに帰ってくるところから始まる。 実直な長男 (香川照之) は老父とガソリンスタンドを経営する毎日でまだ独身。 次男は葬儀で久しぶりに会った幼なじみの智恵子 (真木よう子) とその晩寝てしまう。 翌日、兄弟は智恵子と3人で河原にピクニックに出かけるが、そこで智恵子は吊り橋から転落する・・・・・。 兄弟の微妙な関係と智恵子の死との綾を描きたかったらしいが、私に言わせると描き方がまずく、また事件の捉え方がいかにも見え見えで、全然うまくいっていない。 それ以上に首をかしげるのは、この映画に次男への批判意識がまったく感じられないことだ。 常識的に見て、次男の行動には相当に問題アリなのだが、その問題性が作る側に見えていないらしい。 冗談じゃない、こんなふざけた映画をほめていられるか、と言いたいのである。 

109.「弓」 9/18、ル・シネマ(渋谷)。 評価★★★ 韓国の巨匠 (と言ってもいいだろう) キム・ギドク監督作品。 船の上で暮らす老人と少女。 少女が17歳になったら二人は結婚するという。 しかし釣り客として船を訪れた青年は彼女の目を外界に向けさせる・・・・・。 キム・ギドクらしくイメージと強い愛の想念とが先行している映画だ。 常識的に考えると犯罪すれすれの物語だが、最後は象徴的な表現によって愛の成就を暗示し、生々しさを微妙に回避しているところが面白い。 

108.「ルイーズに訪れた恋は・・・」 9/17、銀座テアトルシネマ。 評価★★ ローラ・リニー主演作。 ローラ・リニーは今まで何回か映画で見ているが、いずれも準主役といった役どころであった。 それなりの美人だと思うのだが、強烈な個性のようなものに欠けているために主演が張れなかったのかもしれない。 その彼女が主演をしているというので、見に行ってみた。 離婚歴のある39歳の女性が大学の入試業務課に勤務していて、たまたま入学を打診しに来た青年と会う。 彼は昔彼女と恋仲で今は故人となっている男性と同じ名前だった。 彼女は青年に惹かれていき、関係を持つが・・・・というようなお話。 うーん、なんか中途半端なのだ。 中年になりかかった女性が若い男性に恋することの喜びと悲惨さが前面に出るのかと思うとそうでもなく、過去の男性関係のしがらみが現在に及ぼす影響に力点があるのかと思うとそうでもない。 どっちかにしてくれ、と言いたくなる。 それからベッドシーンではもうちょっと頑張って脱いで下さいね (笑)。 

107.「マッチ・ポイント」 9/17、シネスイッチ銀座。 評価★★★☆ ウッディ・アレン監督作品。 しかしアレンにしては珍しく映画らしい映画になっている。 英国を舞台に、アイルランド出身ながら上流の英国人青年と友人になり、その妹から惚れられて、上流社会の中に入り込んでいく青年クリス (ジョナサン・リース・メイヤーズ) の犯罪を描いている。 というのは、上流の友人には米国出身で女優志願のセクシーなフィアンセのノラ (スカーレット・ヨハンソン) がいたが、親の反対もあって結局婚約解消となる。 しかしその魅力に惹かれていたクリスはひそかに彼女と関係を持つが、やがて妊娠したと告げられて・・・・。 古典的な名作映画 『陽の当たる場所』 を思わせる筋書きだが、最初に暗示されたモチーフが最後にオチとして見事に機能している。 私はアレンは好きではないが、この映画に関しては十分に楽しむことができた。 英国上流階級の暮らしぶりも興味深い。 

106.「プルートで朝食を」 9/12、シネ・ウインド。 評価★★★☆ 英国映画。 ニール・ジョーダン監督作品。 70年代の英国。 或る事情から私生児として生まれ、養母に育てられ、小さいときからゲイの兆候を示していた青年キトゥン (キリアン・マーフィー) が、IRAの過激な活動が横行していた時代と交錯しながら軽やかに生きていくさまを、独特のタッチで描いている。 実母と会いたいという主人公の探索行が縦糸になっているけれど、あくまで軽やかでしゃれていて、お涙頂戴物にならないところが、監督の才覚を示していると言えるであろう。 主演のキリアン・マーフィーもなかなかの快演 (怪演?)。

105.「ハイジ」 9/1、UCI新潟。 評価★★★ 有名なスピリの原作を実写映画にしたもの。 英国映画。 吹き替え版 (しかやっていない) で鑑賞。 だいたい原作通りになっているが、2時間で原作のエピソードを全部盛り込むのは結構たいへんで、そのため急ぎ足の展開になっている。 まあ、実写だからアルプスの山の雰囲気だとか、都会フランクフルトの様子だとか、ロッテンマイヤー女史 (ジェラルディン・チャップリンが演じている) のきついイメージだとかは、それなりに出ていると思う。 私としてはもう30分くらい長くすると展開にも余裕ができて充実した作品になったのでは、と思うが、子供が多く見ることを考えると、あまり長尺の映画にはできなかったのだろうか。

104.「愛より強く」 8/29、シネ・ウインド。評価★★ ドイツ映画。 ファティ・アキン監督作品。 トルコ系のドイツ人同士の物語。 妻を失い荒れた生活をしている中年男の前に、若い女性が現れ、家族の束縛から逃れたいので偽装結婚してほしいという。 成り行きで結婚した二人は、様々な事件に巻き込まれながらもお互い惹かれ合っていくのだが・・・・。 トルコ系ドイツ移民の話というので、社会派的な映画かと思っていたのだが、必ずしもそうではなく、ヒロインの生き方は家族の束縛を逃れるというよりかなり刹那的な印象がある。 もちろんトルコ人だって刹那的であって悪いわけはないのだが、映画の核心がどこにあるのかよくつかめない作品だった。 最後のあたりの筋書きもかなりご都合主義的なところがあり、これでベルリン映画祭金熊賞受賞とは、ヨーロッパの映画状況はそんなにひどいのか、或いは現代ドイツ人には映画鑑賞能力が欠けているのか、どちらかではないか、と言いたくなりました。

103.「ヨコハマメリー」 8/29、シネ・ウインド。 評価★★★ 中村高寛監督のドキュメンタリー映画。 むかし横浜に実在したメリーという街娼の記憶を、様々な横浜人にインタビューしながらたどっている。 横浜という街の記憶も重要な要素。 最終的には彼女は故郷に帰って老人ホームに暮らす身となるのだが、そこを訪れるシャンソン歌手・元次郎の姿がなかなか感動的。 人間と人間のつながりが意外なところでできていると分かるのが、この映画の見どころだろうか。 なお、テーマソングが 「伊勢佐木町ブルース」 なんだけれど、渚ようこ (渚ゆう子ではない) の歌はどうもパンチ不足。 やっぱり青江三奈じゃなくちゃあ。

102.「ラフ」 8/28、UCI新潟。 評価★★☆ あだち充のマンガ (私は未読) を映画化したもの。 大谷健太郎監督作品。 隣接して饅頭屋を営んでいた祖父同士の確執から、同じ高校の水泳部に所属しながら今も敵視しあう速水もこみちと長澤まさみ。 しかし実はお互いに惹かれあっていた。 けれども長澤には幼なじみで 「おにいちゃん」 と呼ぶ大学生 (阿部力) がおり、彼は速水と同じ競泳種目の日本記録保持者だった・・・・・。 というような筋書きなんだが、あまり楽しめなかった。 脚本がまずいのか、速水と長澤の演技が下手なのか――多分両方なんだろう。 阿部力はなかなか良かった。 まあ、長澤まさみのビキニ姿がおがめるので、あとはどうでもいいという人もいるかもしれないが・・・・。

101.「ブレイブ・ストーリー」 8/25、Tジョイ新潟万代。 評価★★★ 宮部みゆき原作(私は未読)の映画化。 千明孝一監督作品。 見ないでおくつもりだったが、『ゲド戦記』 がイマイチだったので、国産アニメは今どんな状態なのかと思って見てみた。 少年が失われた家族を回復する条件として異世界に飛び込んで冒険をくりひろげるお話だが、主筋はやや説明不足のところもあり、『ゲド戦記』 同様アニメ制作者の脚本製作能力が問われるところだろう。 ただし、このアニメにはもう一つポイントがあり、それは主役の少年が自分に先駆けて異世界に飛び込んでいった転校生の少年に恋愛めいた友情を感じているところなのである。 ここが、この映画ならではの魅力であり、作品の水準を保たせた最大の理由にもなっている。

100.「うつせみ」 8/22、シネ・ウインド。 評価★★★☆ 韓国映画。 キム・ギドク監督作品。 ヴァネツィア国際映画祭で最優秀監督賞ほかを受賞。 青年テソク (ジェヒ) は他人の留守宅に入り込んですごすという趣味の持ち主。 ある日、誰もいないと思って侵入した豪邸には、夫に暴力をふるわれてひっそり暮らす美しい人妻 (イ・スンヨン) がいた。 青年は彼女を連れだして・・・・・。 異様な筋書きの展開を、せりふの極度に少ない作りが支えている。 特に主役の青年は最初から最後まで一言もしゃべらない、という空前絶後 (?) ぶりである。 ヒロインもほとんどしゃべらず、それがかえって二人の 「愛」 の強さを印象づけている。 最後近くの筋書きも、ちょっと普通の映画監督には考えつかないようなとっぴさがある。 また、この映画のもう一つの魅力は 「のぞき」 にある。 観客は主役と一緒に他人の家をのぞいて回るのだが、主演二人の奇妙な精神性によって、のぞきにつきまとう味の悪さを忘れることができるのである。

99.「僕と未来とブエノスアイレス」 8/22、シネ・ウインド。 評価★★ ダニエル・ブルマン監督・脚本。 アルゼンチン・仏・伊・西の合作で2003年製作。 第54回ベルリン国際映画祭で銀熊賞をダブル受賞 (審査員特別大賞と最優秀男優賞) したそうな。 ブエノスアイレスの商店街を舞台に、ユダヤ出自の青年がヨーロッパに脱出しようとしているうちに、母と離婚してイスラエルに去った父が戻ってきたり、商店街の中の様々なルーツを持つ人々と関わりを持ったり、といった、ちょっとドキュメンタリー風の映画である。 商業映画的な作りではなく、またブエノスアイレスの社会やそこに集まった多様な国籍の主の裏事情を掘り下げているわけでもないので、やや表層的で退屈な感があるのは否定できない。 ハリウッド的な商業映画が嫌いな人にはいいかも。 いかにも映画祭で審査員賞だとか批評家賞を受けたりする作品らしい、と言っておこうかな。

98.「ゲド戦記」 8/20、UCI新潟。 評価★★☆ 大々的に宣伝しているジブリ・アニメ。 宮崎駿の息子の宮崎吾朗が監督をしているというのでも、良くも悪くも評判になっている。 封切り後だいぶだっているが、仕事も一段落したので小6の娘を連れて見に行ってみた。 いかにもジブリ・アニメ的な雰囲気は悪くない。 最近の宮崎 (父) アニメと違って 「ボーイ・ミーツ・ガール」 的な筋書きが素直に展開されているのもいい。 だけれど、原作が長大なためか、各人物の抱えている秘密や関係が十分に説明し切れていない部分が目立つ。 説明を適宜省略して観客の想像に委ねるというのも映画の一手法ではあろうけれど、これはちょっとひどいんではないかい、と言いたくなる。 特に主役の少年と少女についてはちゃんとしてほしいわけで、上映時間をそのままに、脚本内にその辺を巧みに織り込むことは可能だったと思うのだが。 

97.「東京フレンズ The Movie」 8/18、Tジョイ新潟万代。 評価★★ 大塚愛主演作。 地方から上京して歌手として認められかけている少女やその仲間たちの生き方を描いている。 うーん・・・・・筋書き的にどことなく 『NANA』 に似ているんだが、出来からいうと遠く及ばない。 なぜか。 大塚愛が思いを寄せる男の子 (瑛二) の設定がよろしくないからだ。 ヒロインに拮抗しておらず影が薄い。 ダメ男を追ってNYに飛んだって所詮はむなしいだけでしょ。 NY生活の締めくくり方もとってつけたようだし。 脚本が悪いとしか言いようがない。 大塚愛が好きで映画でも見たい、という人以外には薦められません。

96.「マイ・アーキテクト ルイス・カーンを探して」 8/9、シネ・ウインド。 評価★★★☆ 建築家ルイス・カーンの息子による父探しのドキュメンタリー映画。 2003年制作。 建築家カーンには正妻以外に二人の女性がいて、それぞれ子供を作っていた (う、羨ましい・・・)。 そうしたカーンの複雑な生き方や性格、そして建築家としての仕事ぶりが息子の視点から追われている。 最後のバングラディシュの国会議事堂の建築が圧倒的で、様々な条件や関係者の意見に制約される米国よりも、むしろここでカーンは本当に造りたいものを造れたのだなあ、という感慨に浸りました。 私は建築にうとい人間だが、そういう人間が見てもなかなか興味深い映画でした。

95.「好きだ、」 8/3、シネ・ウインド。 評価★★★☆ 石川寛監督作品。 17歳のヨースケ (瑛太) とユウ (宮崎あおい) はお互い好意を持ちながらもはっきりそうと言えず何となく毎日を過ごしている。 ユウの姉 (小山田サユリ) が事故で恋人を亡くし、それをヨースケが気遣ったところから二人の関係はさらにねじれてくる。 そして17年後、偶然再会した二人は・・・・・。 筋だけだと何てこともないような映画に思えるかも知れないが、前半はかなりいい線行っていて★★★★である。 はっきりした展開があるわけではなく、映像の積み重ねが漠とした雰囲気を作っていくのだが、そのあたりが絶妙で、監督の才能を感じさせる。 また、姉役の小山田サユリが実に魅力的で、ワタシ的には宮崎あおいよりこっちをモノにしたいな、なんて思いながら見てました (笑・汗)。 問題は17年後で、前半が良すぎたので、やはりシメとしては物足りない印象が残るのはやむを得ないのだろうか。 

94.「ククーシュカ ラップランドの妖精」 8/3、シネ・ウインド。 評価★★★ ロシア映画、2002年製作。 アレクサンドル・ロゴシュキン監督作品。 第二次大戦末期に、ソ連軍兵士と (ドイツ側に加勢していた) フィンランド軍兵士とが仲間からはぐれ、偶然ラップランドの現地人女性の家で同居することに。 しかし三人はお互いの言葉が全然分からなかった・・・・・というコメディタッチのお話。 設定としてはなかなか面白いし、フィンランド兵士がなかなかインテリであるのに対し、ソ連兵士はそうでないあたりにも工夫が見られる。 ラップランドの風景も魅力的。 ただし決定打に欠けているような印象もある。 

93.「パイレーツ・オブ・カリビアン デッドマンズ・チェスト」 8/1、UCI新潟。 評価★★☆ 第一作が当たったので、第二作が作られた海賊映画。 第一作と同じく、ジョニー・デップ、オーランド・ブルーム、キーラ・ナイトレイ主演。 うーん、色々出してきてはいますが、何だかごたごたとして、上映時間が長い割りには盛り上がりもイマイチで、あまり感心できませんでしたね。 それと一番肝心なところでの主役の行動だとか、謎の解決だとかがいい加減だったり不可解だったりするので、なおさらです。 筋書きはこれで終わらず、第三作に直結するらしいので、今度は私の言うことをよく聞いて (笑) ちゃんと作って欲しいな。 ・・・・それにしても、夏休みになると夏枯れというか、新潟ではロクな映画をやらないんだよなあ・・・・。

92.「ハチミツとクローバー」 7/24、UCI新潟。 評価★★★ マンガ原作 (私は未読) による高田雅博監督作品。 美大を舞台に繰り広げられる青春映画、かな。 もっとも青春映画としてはあまり面白くなく、美大らしい 「才能の卵」、具体的には長野からやってきた少女 (蒼井優) と、海外に出かけていてふらりと戻ってきた年長学生 (伊勢谷友介) が、存在感が出ていてよろしい。 このふたりのぶつかり合いがもっと描かれていればそれなりの作品になったと思うんだが、他の学生との恋愛感情のすれ違いみたいなところに重きが置かれていて、私に言わせればコンセプトを間違えてしまった映画、ということになった。 もっとも原作はこんな風なのかも知れないな。

91.「M:I:V」 7/18、UCI新潟。 評価★★★ トム・クルーズ主演による 「ミッション・インポッシブル」 の第3作。 今回は現役を退いて後輩の養成に従事していた彼が、弟子の危機に際して立ち上がるところから始まっている。 くわえて彼は作中結婚する運びに。 何となくトムの年齢と私生活を彷彿とさせる設定だが、まあこの種の映画としては標準的な出来で、途中の悪役の奪還シーンなどはかなり迫力もあり、映画館で金を払って見ても損はしないと思う。 ただ、決定的な新しさのようなものは感じない。 加えて、トムの結婚相手 (ミシェル・モナハン) より、教え子(女性: ケリー・ラッセル) のほうが美人だったりして、うーむ、と思ってしまう私なのでした。 なお、ドイツ、イタリア、中国が舞台として出てきて、忙しいなと思うが、中国・上海の先端的な高層ビルと昔ながらの庶民の家屋を両方とも映し出しているのが、ツーリズム的と言えるだろう。

90.「タイヨウのうた」 7/14、Tジョイ新潟万代。 評価★★★☆ 小泉徳宏監督作品。 XP (色素性乾皮症) という病気のために、太陽の光に当たると死んでしまう少女。 彼女は高校にも行けず、夜外出してギター片手に自作の歌を歌う毎日。 ある時、部屋の窓からいつもバス停にいるのを見ていた男子高校生と出会って友だちになるのだが・・・・・。 主演のYUIがたいへん素晴らしい。 自然にヒロインを演じており、魅力を遺憾なく発揮している。 彼女を囲む俳優たちもそれぞれ好演している。 難病物ではあるが、あまりしつこくない作りなのもいい。 『超少女Reiko』 が観月ありさの、『ロボコン』 が長澤まさみの、『非バランス』 が派谷恵美のミドルティーン時代を映像にとどめて記念碑的な映画になったように、この作品も同様にYUIのミドルティーン時代を後世に残す映画になるであろう。

89.「ヒストリー・オブ・バイオレンス」 7/11、シネ・ウインド。 評価★★★ クローネンバーグ監督最新作。 アメリカの田舎町でスナックを経営するトム・ストール (ヴィゴ・モーテンセン) は、妻 (マリア・ベロ) と二人の子供に囲まれて平凡ながら幸せな生活を送っている。 ある日、店にやってきた二人の無法者を彼は射殺する。 そのニュースがテレビで報じられると、やがて彼の前に彼の過去を知っていると称する男たちが現れる・・・・・。 昔の西部劇にあった、平凡なカウボーイが実は無敵のガンマンでした、というような筋書きの現代版という感じだが、西部劇と違うのは現代劇だと殺人がたとえ悪者相手でも無条件には容認されないところで、そういう意味である種問題性を孕んでいるようにも思えるが、ただ、それほど考えて見るべき映画なのかというと、そうではなく、西部劇みたいに見ておけばいい作品なんじゃないかという気がする。

88.「初恋」 7/4、WMC新潟。 評価★★★☆ 中原みすずの小説をもとに、塙幸成が脚本を作り監督した映画。 1968年の三億円強奪事件が、実は18歳の女子高校生 (宮崎あおい) によってなされた、という奇想天外な物語が、学生運動や反体制文化の色が濃厚だった時代背景を丹念に描きながら語られる。 鬱屈しながら、ジャズやフランス現代小説やデモにのめりこんでいく若者たち。 その中で、両親に捨てられて叔父夫婦に育てられたヒロインは、東大生と知り合って或る計画を打ち明けられる・・・・・。 宮崎あおいが三億円強奪犯という設定は、どう見ても無理筋だが――白バイに乗るには体が小さいしね――、先進国で一様に反体制運動が盛り上がった1968年という年にこの事件が起こっていることの意味を、改めて考えさせられた。 時代考証も、完璧とは言いかねるが、わりによくできているし、あの頃の若者たちが訳もなく抱いていた悲痛な情念のようなものが映像からよく伝わってくる。 佳作と言える。

87.「恋するトマト」 7/3、シネ・ウインド。 評価★★★☆ 大地康雄の企画と脚本および主演、南部英夫監督による映画。 農家の長男として生まれ育った正男 (大地康雄) は、45歳になっても嫁が来ない。 今度こそは、と思った女性にも土壇場で断られてしまう。 そこで日本のバーで働くフィリッピーナに結婚話を持ちかけて承諾してもらい、親に会うためにカネを持ってフィリピンに向かうのだが・・・・・。 日本の農業が抱える深刻な問題に、フィリピンと日本との関係をまじえることで重層性を付与された作品で、テーマ優先的な映画故の甘さもあるけれど、食料自己生産率が低い日本のこういう側面に敢えて目を向けて映画化した大地康雄の努力に敬意を表したい。 それにしても、日本の女性がさっぱり農家に嫁に行かないことを批判するフェミニストはいないのだろうか。 だからフェミニストってのは信用できないんだよ〜と言いたくなっちゃいますね。

86.「ブロークン・フラワーズ」 6/26、UCI新潟。 評価★★ ジム・ジャームッシュ監督作品。 首都圏に遅れること8週間で新潟でも公開。 かつてのプレイボーイ (ビル・マーレイ) は初老の年齢を迎えても家族がないまま。 そこにピンクの封筒で匿名の手紙が届く。 20年前、あなたの子供を身ごもったけれど自分一人で育てました、その息子が父親探しの旅に出たのでお知らせします、という内容。 隣家の友人にけしかけられた彼は、その手紙を書いた女を探す旅に出るのだが・・・・・。 期待して見たのだが、つまらなかった。 テンポが悪いというのか、最初からこういうテンポを考えていたのなら、設定が悪かったのだろう。 コミカルでもないし、倦怠感でもないし、単に間延びしているだけ、という印象。 だいたい、何で元プレイボーイがこんなに寡黙なのか。 プレイボーイは言葉巧みに女を陥落させるわけだから、そうした属性が残っているべきだと思うんだが。 設定のまずさというのは、そういう意味です。  

85.「バルトの楽園(がくえん)」 6/23、Tジョイ新潟万代。 評価★★★ 出目昌伸監督作品。 第一次大戦次に中国・青島 (チンタオ) でドイツ軍は日本軍に降伏した。 捕虜となったドイツ兵たちはいくつかのグループに分けられて日本の捕虜収容所に入れられる。 その一つ、徳島の板東収容所では、所長の松江中佐 (松平健) の温情主義でドイツ兵と日本人の交流が盛んになった。 やがて大戦は終わり、ドイツ兵たちは放免されるが、最後にベートーヴェンの第九交響曲を演奏しようと企てる。 それは日本における第九の初演だった・・・・・・。 ヒューマン・ドラマなので、美談的な甘さはやや鼻につくし、ドラマとして特に優れているというほどでもないが、まあまあ楽しめる映画だ。 所長の温情主義が、会津藩出身で苦労したという個人的な事情から来ている、という設定 (この映画は史実を元にしているが、松江中佐のモデルとなった軍人もそうだったようだ) がいいと思う。 抽象的なヒューマニズムではなく、個人的な体験が人間性を生む、という視点がこの映画のリアリティを地に足が着いたものにしている。 所長と逆に厳しい規律を求める少尉役の阿部寛も、雰囲気を出していてうまい。  

84.「Death Note 前編」 6/23、Tジョイ新潟万代。 評価★★★★ コミックの映画化。 金子修介監督作品。 偶然、死神の落としたノートを拾った法学部の秀才・夜神月(やがみ・らいと=藤原竜也)。 そのノートに名前を書かれた人間は死んでしまう。 これを利用して殺人犯を次々と死に追いやる夜神。 しかし天才的な名探偵Lを擁する捜査陣の手は迫っていた・・・・・・。 私は原作を読んでいないが、たいへん面白いエンターテインメントである。 設定の奇抜さと展開の精妙さがうまく融合している。 最後のどんでん返しもいい。 藤原竜也をはじめとする役者陣も役柄にぴったり。 後編は11月に上映だそうで、今から楽しみである。 

83.「花よりもなほ」 6/20、UCI新潟。 評価★★ 是枝裕和監督作品。 元禄時代、生類憐れみの令により 「お犬様」 がまかり通り、赤穂浪士の討ち入りが迫っていた頃、父の敵を討つべく江戸に三年住みながら、剣術に自信がなく、また敵討ちという制度そのものへの疑問も手伝って、わびしい長屋でぶらぶら過ごしている青年侍 (岡田准一) と、彼を囲む長屋の人々を描いた映画。 うーん、喜劇と言うにはもの足りず、群像劇と言うには多様な価値観がぶつかっておらず、時代劇ならではの様式感も希薄で、特に子持ちの後家を演じる宮沢りえのせりふなどあまりに現代的だし、かといって現代劇として評価できるほどに斬新なせりふや価値観があるわけでもなく、どうにも不出来な映画と言うしかありませんね。

82.「トリック劇場版2」 6/19、UCI新潟。 評価★★ 第一作では、しょぼいネタをそれと承知でやっている意識的なバカバカしさというか、よく言えばシュールさがわりに良かった印象があるが、さすがに同じ趣向で二回目をやられると、ちょっとどうかな、という気がしてくる。 小ネタで勝負するの、もうやめませんか? 最近、この手の日本映画が横行していて、お前ら、もう少しスケールの大きいことをやれよ、と叱咤したくなっちゃう。 

81.「ホテル・ルワンダ」 6/16、シネ・ウインド。 評価★★★★ 90年代にアフリカで実際に起こった大虐殺事件を映画化したものである。 テリー・ジョージ監督作品。 アフリカのルワンダで民族抗争が高じて虐殺事件が起こりつつある中、国連軍やヨーロッパ軍はそれを阻止するどころかかえって現場から撤退してしまう。 そうした中、ヨーロッパ資本の高級ホテルの支配人を務める主人公 (ドン・チードル) は虐殺の標的となった人々をホテル内にかくまって何とか窮地を逃れようと様々な手を打ってゆく・・・・・。 アフリカの悲惨な実態、ヨーロッパ側の不適切な対応、混乱の中で何とか生き延びようと必死になる現地人たちの様子、などなど、実にリアリスティックで、勉強にもなり、見てごらんと人に薦めたくなる力作である。 ホアキン・フェニックスやジャン・レノなどの有名スターも出演している。

80.「ギミー・ヘブン」 6/16、シネ・ウインド。 評価★★★ 松浦徹監督作品。 殺人事件と 「共感覚」 の持ち主の謎をめぐるストーリーで、暗さと緊張感がそれなりに魅力的だが、内容に比して時間が長すぎるせいか途中ちょっとだれるのが惜しい。 それと、刑事役の石田ゆり子はどう見てもミスキャスト。 全然作品の雰囲気に合っていない。 松田龍平もミスキャストに近いような気がする。 宮崎あおいは最近この種の映画に出ずっぱりの印象があるが、悪くない。 ただ、彼女は可愛く見えるときとブスに見えるときのギャップが大きい。

79.「ふたりのベロニカ」 6/12、吉祥寺バウスシアター。 評価★★★☆ 故クシシュトフ・キェシロフスキ監督の出世作。 1991年制作で、当時私は新潟で見てたいへん感動した。 ポーランドとフランスで同日同時刻に生まれた同名のベロニカという2人の女性の運命を描いている。 15年ぶりに上映されていたので見てみたが、最初に見たときよりはやや評価が下がった感じ (昔の印象では★4つくらいだった記憶が)。 内容はほとんど覚えておらず、かろうじて覚えていたのは二人のベロニカがポーランドの広場で偶然会う場面と、ポーランドのベロニカが音楽会の途中で倒れて死ぬシーンだけ。 あれ、ヒロインを演じるイレーヌ・ジャコブは作中でこんなに脱いでいたっけな、と驚いてしまった(笑)。 それと、ポーランドの労組 「連帯」 のデモが出てくるなど、時代が濃厚に刻み込まれた映画だった、というのも、今回あらたに分かったことの一つ。

78.「美しき運命の傷痕」 6/12、吉祥寺バウスシアター。 評価★★ フランス映画。 ダニス・タノヴィッチ監督作品。 三姉妹がそれぞれに愛の悩みを抱え、母親は施設で車椅子の生活を送る家族。 彼らの運命を決定した過去の事件とは・・・・というような作品だが、三姉妹の抱える愛のトラブルがありきたりだし、最後にあかされる真相もありきたりで底が浅い。 また、長女役のエマニュエル・ベアールは最近容姿の衰えが著しいし、他の2人の姉妹役も魅力がイマイチであり、脇役女優のほうが美しいというのでは、どうしようもない、と言うしかありません。

77.「ママが泣いた日」 6/12、アミューズCQN(渋谷)。 評価★★★☆ アメリカ映画。 マイク・バインダー監督作品。 ある日夫に秘書と駆け落ちされた中年女性 (ジョアン・アレン) が、4人の年頃の娘をかかえて苦悩したり喧嘩したり奮闘したりする、という筋書き。 かつて大リーガーのスター選手だった中年男 (ケヴィン・コスナー) とのからみもある。 滑稽さや苦々しさをまじえた様々な人間模様が結構面白い。 それぞれの道を模索する4人の娘たちの様子もそれなりに描かれているし、結末近くで意外なオチもあって、脚本の巧みさもうかがえる。 佳作と言えるであろう。 惜しむらくは、主演のジョアン・アレンに女性としての色気や魅力があまり感じられないこと。 もう少し美人の中年女優はいなかったのかなあ。 

76.「戦場のアリア」 6/11、シネスイッチ銀座。 評価★★★☆ 英仏独合作映画。 クリスチャン・カリオン監督作品。 第一次大戦のクリスマス休戦中、敵対するスコットランド・フランス軍とドイツ軍とが一緒に歌を歌ったりサッカーを楽しんだりした、という実話をもとにしている。 学校や様々な施設での戦意向上プロパガンダとは別に、実戦で対峙する兵士たちが、ふとしたきっかけから一緒にクリスマス休暇を祝うに至るところが実に感動的であり、フランスでこの映画が2005年の映画観客動員トップを記録したというのもうなずける。 3陣営の描き分けが巧みだし、歌姫役のダイアン・クルーガーがたいへん美しい (私の基準では、今現在、世界一の美女かも知れない)。 こういう映画がなぜか新潟に来ないので、東京で見ざるを得ないというのは、非常に残念なことである。 新潟市の映画人 (映画館人と言うべきか) の猛省を促したい。 

75.「親密すぎるうちあけ話」 6/11、シャンテ・シネ(日比谷) 評価★★★ フランス映画。 パトリス・ルコント監督作品。 ビルの一室で営業している税理士のところに、同じ階で開業する精神分析医と間違えて女患者 (サンドリーヌ・ボネール) が訪ねてくる。 なぜか間違いですよと言えずに彼女の相談に乗ってしまう彼。 そして彼女はそれから毎週訪ねてくるようになるのだが・・・・。 フランス映画らしく、洒脱な展開が楽しめる。 微妙なエロティシズムに何とも言えない味がある。 ただ、ヒロインのダンドリーヌ・ボネールが私の趣味に合わないのが残念。 ああいう顔の長い女性は、好きじゃないのです。 

74.「夜よ、こんにちは」 6/9、ユーロスペース(渋谷)。 評価★★★ イタリア映画。 マルコ・ベロッキオ監督作品。 1978年にイタリアで実際に起こった事件――テロリストによる首相誘拐・暗殺――を、主としてテロリスト側に視点をおいて描いている。 テロリストたちと誘拐・監禁された首相のやりとりや各人の表情、唯一の女性メンバーが勤務先の図書館で遭遇する事件や人間模様などがなかなか面白く、飽きずに見ることができる。 幻想的なシーンもあり、悲劇に終わったこの事件の別の可能性を示しているのも悪くない。  ヒロイン (女性テロリスト) を演じるマヤ・サンサが非常に魅力的。 他の映画でも見てみたいものだ。

73.「レント」 6/9、ル・シネマ(渋谷)。 評価★★★ プッチーニのオペラとして有名な 『ボエーム(ボヘミアン)』 を20世紀後半のニューヨークを舞台に移して映画化したミュージカル (正確には、ミュージカル化が先で、それを映画化したもの)。 カウンターカルチャー全盛時代のアメリカ・ボヘミアンたちの人間模様が歌と共に綴られている。 音楽は悪くない感じだが、話の流れや人物の関係などは特に目新しいところもなく、まあこんなものなのかな、というのが感想です。

72.「雪に願うこと」 6/8、テアトルタイムズスクエア(新宿)。 評価★★☆ 根岸吉太郎監督作品。 昨年の東京国際映画祭で作品賞 (グランプリ)・監督賞・主演男優賞・観客賞をとったという映画。 新潟にも来たのだが、見損ねて、東京で見るはめになった。 北海道帯広のばんえい競馬。 そこで馬の世話の仕事をしている兄 (佐藤浩市) のところに、東京に出て会社を経営しているはずの弟 (伊勢谷友介) が訪ねてくる・・・・。 ばんえい競馬の様子が珍しいが、ほかの設定や展開はきわめてありきたりだし、特にこれといった取り柄もなく、なんでこういう映画が賞をとったのか理解に苦しむ。 馬の世話をもう少し丁寧に描いていたらまだマシな作品になっていたと思うが。

71.「カミュなんて知らない」 6/6、シネ・ウインド。 評価★★☆ 柳町光男監督作品。 大学の映画部に所属する学生が、『退屈な殺人者』 という、理由なく人を殺した男子高校生を描いた映画を作ることになる。 その顛末を、学生同士の微妙な人間関係や指導教授の抱える悩みなどを交えて描いている。 映画内映画ということで面白くなりそうではあるのだが、個々のエピソードはあまりインパクトがないし、使い古された感じがして、全体として斬新だとか考えさせられるといったところがない。 設定が面白そうなだけに残念。 助監督役の前田愛が可愛い。

70.「トランスポーター2」 6/5、UCI新潟。 評価★★★ リュック・ベッソンの製作・脚本、ルイ・レテリエの監督による娯楽映画。 プロの運び屋 (ジェイソン・ステイサム) が例外的に小学生の学校への送迎を引き受けたことから始まる事件を描いている。 あまりものを考えずに見られるところは第一作と同じ。 時間も長すぎずちょうどいい。

69.「ダヴィンチ・コード」 6/4、UCI新潟。 評価★★★ 話題作である。 原作が込み入っているせいか映画も込み入っていてあまり分かりやすくはないし、最後の展開など明らかに端折っている部分が多そうだが、構想の雄大さ (?) は悪くなく、まあまあ楽しめる娯楽映画だと思う。 ただし単純明快で分かりやすい映画でないと受け付けない人には薦められない。 なお、これってローマ・カトリックに対して 「女系」 を対抗馬にしているあたり、フェミニズムの作品なのかなあ、なんて漠然と感じました。

68.「嫌われ松子の一生」 6/2、Tジョイ新潟万代。 評価★★★☆ 中島哲也監督作品。 昭和20年代前半に生まれたヒロイン (中谷美紀) が、最初は中学教員という安定的な職業に就きながら、或るきっかけて辞職して、以後波乱に満ちた人生を送り53歳で世を去るまでを、彼女の住まいの後かたづけを押しつけられた甥が徐々に伯母の生涯を知っていくという設定で描いている。 リアリズム基調ではなく、筋の運びには工夫があり、またその時代ごとの流行歌もたくみに織り込まれていて、悪くない作品に仕上がっている。

67.「デイジー」 6/2、Tジョイ新潟万代。 評価★★★☆ 香港のアンドリュー・ラウの監督、チョン・ウソン、チョン・ジヒョン、イ・ソンジェといった韓国俳優の主演による作品。 舞台はオランダ。 ヒロインは祖父とオランダに暮らし、絵を描いている。 ある日、広場で肖像画の客を求める彼女の前に同じ韓国出身の男が現れる。 実は彼女には過去の思い出から、誰とは知らぬままに思いを寄せる男がいた。 彼女は直感的に、彼がその男ではないかと考えるが・・・・・。 三角関係の話であるが、細かい筋書きの矛盾を気にしなければ (というか、気にするのは野暮、といった種類の映画だろうが) たいへんせつなく、それなりに感動もできる作品である。 ただ、男優二人はいいが、ヒロインのチョン・ジヒョンは顎の下がたるんでいて、早くも年齢が顔に表れてきたのかと気になった。

66.「風の前奏曲」 5/29、シネ・ウインド。 評価★★★☆ 2004年のタイ映画。 イッティスーントーン・ウィチャイラック監督作品。 19世紀後半から第二次大戦期にかけてのタイを舞台に、ラナートという伝統楽器 (木琴に似ている) の天才的な奏者である青年 (アヌチット・サパンポン) が頭角を現していき、やがて王族にとりたてられて、強豪と競演会で対決するまでと、老いて名匠とされた時代に、戦争になり近代化・欧化政策を掲げた軍事政権によって伝統楽器が抑圧されていく中での生き方を、交差するように描いている。 二つの時代の交錯がやや分かりにくいし、逆に言うとそれぞれの時代の筋立ては比較的単純だが、タイの風景や風俗、伝統楽器の演奏、日本にもあった近代化と伝統との対立や矛盾が見事に融合していて、悪くない出来の映画になっていると思う。

65.「風と共に去りぬ」 5/26、Tジョイ新潟万代。 評価★★★★ 言わずと知れた映画史上に残る名作 (1939年制作) であるが、私はニュープリントで上映された今回が初鑑賞。 4時間近くかかる大作だが、全然飽きずに見ることができた。 最初に映像が出ないまま音楽が流れるのは、オペラの序曲を意識したものだろう。 南北戦争時代の風俗や、戦争の経過も、それなりにリアル。 私はヴィヴィアン・リーという女優はあまり好きではないのだが、この作品に関しては適役だと思う。 つまり、あまり典型的な美人でない方がこの作品のヒロインには合っているのだ。 もう一人のヒロインであるオリヴィア・デ・ハヴィランドが良妻賢母的でおとなしめな美人であるから、それと対蹠的な女優が選ばれるのに納得がいった。 ヒーローであるレット・バトラー (クラーク・ゲーブル) との愛憎なども、典型的ではあるけれど、やっぱり説得的。

64.「ジャケット」 5/23、Tジョイ新潟万代。 評価★★☆ ジョン・メイブリー監督作品。 1992年、湾岸戦争での負傷が原因で記憶障害になった青年 (エイドリアン・ブロディ) は、殺人事件に巻き込まれ精神病院に送られてしまう。 拘束衣 (ジャケット) を着せられ、引き出しの中に閉じ込められるという実験的療法を受けた彼は、なぜか15年先の2007年にタイムスリップする。 そこで出会った女性 (キーラ・ナイトレイ) と彼は、偶然、殺人事件の直前に会ったことがあった・・・・。 タイムスリップものは最近では珍しくないし、全体の構成にどことなくせせこましい感じがあって、イマイチの感。 キーラ・ナイトレイはあいかわらず綺麗ですけれど。

63.「HAZE」 5/23、シネ・ウインド。 評価★★ 塚本晋也監督・主演作品。 50分ほどの中編映画。 わけも分からないうちに狭い場所に閉じこめられた男。 必死に脱出を試みるうちに、女 (藤井かほり) に出会う。 二人が共同で脱出をはかると・・・・。 うーん、イメージ重視の映画なのだろうが、率直に言ってあまり面白くなかった。 E・A・ポーの 『振子と陥穽』 を何となく想起させるところがあるけれど。 ヒロインの藤井かほりはチャーミング。 『六月の蛇』 の黒沢あすかといい、塚本監督と私は女優の趣味だけは合うみたい (笑)。

62.「グットナイト&グッドラック」 5/22、UCI新潟。 評価★★★ ジョージ・クルーニーが監督と出演を兼ねた映画。 いわゆるマッカーシズムの時代に、色々な圧力をはねのけてニュース番組でマッカーシー議員を批判したCBS勤務の男たちを描いている。 モノクロ映画であり、当時のジャズをバーで聴くシーンなどに時代がたくみに表現されている。 ニュースキャスターが喫煙をしながらニュースを読み上げるなんてシーンにも、50年代だなあ、という感慨が湧いてくる。 マッカーシー議員の出る場面には当時のフィルムがそもまま使われており、本人の出演 (?) となっているから、ドキュメンタリー的な要素もある。 ただ、報道界のお話であるから、一般人がある日突然共産主義者の嫌疑をかけられるという恐怖感みたいなものは余り出ていないのが、やや物足りない。

61.「ナイロビの蜂」 5/22、UCI新潟。 評価★★★☆ 英国映画。 フェルナンド・メイレレス監督作品。 温厚で庭いじりが好きな外交官の夫 (レイフ・ファインズ) に対して、社会派としての活動を好む若妻 (レイチェル・ワイズ)。 或るなれそめから愛し合うようになり結婚した二人だったが、妻は社会的な活動の過程で夫に対して隠し事ができていた。 やがて彼女はアフリカで殺され、夫が妻の活動を調べていくと・・・・・。 ラブロマンスとサスペンスと社会派的な側面と、3つの顔を持つ映画である。 主演の二人がたいへんすばらしく、舞台となるアフリカの実情もそれなりに描かれている。 平均を超える出来だと思うが、サスペンスの部分と社会派の部分が必ずしも融合していない感じがあって、そこが惜しい。

60.「ピンクパンサー」 5/19、Tジョイ新潟万代。 評価★★☆ アメリカの喜劇映画。 ドジな警察官が、難事件に際して彼に恥をかかせようとする意地の悪い上役から抜擢されるが、様々なドジを重ねながらも真犯人を捕えて事件を解決するお話。 昔作られた作品のリメイクらしい。 正統的なギャグ映画だとは思うのだが、私自身はあまり笑えなかったのでこの点数。 ただ、正統的な喜劇映画とはどういうものか知りたい人にはいいかも知れない。

59.「ロバと王女」 5/19、シネ・ウインド。 評価★★ 1970年制作のミュージカル。 ジャック・ドゥミ監督作品、カトリーヌ・ドヌーヴ主演。 童話を元にした映画だが、そのせいか、またミュージカルという枠もあってか、きわめて古典的でメルヒェンチックな作品にとどまっているようである。 正直言って、現代から見ると牧歌的すぎるような印象がある。

58.「寝ずの番」 5/15、UCI新潟。 評価★★☆ マキノ雅彦監督作品。 落語の老師匠が瀕死の床で弟子たちに依頼した秘事から始まって、お通夜の席で弟子や親戚縁者が思い出話を語りあかす。 そして通夜はそれでは終わらず・・・・・という、まあ一応喜劇映画なんでしょうね。 一応、というのは、私はほとんど笑えなかったので。 まあ、しかし、通夜の人間模様を描いた映画、として見れば、ひどく不出来というほどでもないでしょう。

57.「アンジェラ」 5/15、UCI新潟。 評価★★☆ リュック・ベッソン監督作品。 外見も頭脳もさえない男。 パリの街で複数のごろつきに借金をして返済を迫られた彼は、思いあまってセーヌ川に身を投げて死のうとする。 すると隣の橋桁にすらりとした金髪美人が。 彼女も投身自殺をしかけているよう。 あわてた男は彼女を救うが、彼女は不思議な力を持っていて、彼の窮地を救い、彼を更生させようとする・・・・・。 背の低い主人公と背の高い金髪のヒロインの取り合わせが視覚的にも面白く期待させる出だしなのだが、どうも脚本が弱く、展開がまずくて、思ったほど面白くならない。 残念賞、といったところである。 

56.「ニュー・ワールド」 5/12、UCI新潟。 評価★★★ テレンス・マリック監督作品。 ヨーロッパ人がアメリカ大陸を 「発見」 してあまりたっていない時代、入植者のスミス大尉と原住民の娘ポカホンタスは恋に陥るが・・・・。 ポカホンタスの話自体がしばしば白人側によって都合の良いように神話化され、近年ではポストコロニアリズムの観点から原住民側の都合も尊重した描き方がされるようになってきたようではあるが、いわば非常に微妙で難しい材料に正面から挑み、しかし映画的な見せ場も用意しながら作られている作品である。 ただし、そのために全体の印象は一元的な感動に帰着することなく、曖昧さを残しているように見える。 しかしその曖昧さに耐えることを、監督は求めているのであろう。 新大陸の整序されない自然と、最後に出てくる英国の、切り整えられた自然である庭園との対比が、作品の主題を暗に示しているようにも思われる。

55.「歓びを歌にのせて」 5/12、シネ・ウインド。 評価★★☆ スウェーデン映画。 世界的な指揮者である主人公が心臓病で仕事を辞め、かつて子供時代を過ごしたスウェーデンの寒村に引っ越してくる。 そこで地元のシロウト合唱団の指導を依頼されて引き受けるのだが、構成員にはそれぞれ悩みや家庭事情があった・・・・・。 予告編から音楽映画だと思って見に行ったのだけれど、違っていた。 これは合唱団員のそれぞれの事情を描いた群像ドラマである。 が、うまくできているかというと、さほどでもない。 意図的にだろうが描写を途中でうち切る手法がとられており、それでしかし深みが出ているかというと、むしろ逆で、きわめてありきたりな問題性しか持たないような印象が残る。 女優陣も、ヒロインを初め、美形とは言えない人たちばかりで、つまらないなあ、と思いました。

54.「名探偵コナン――探偵たちのレクイエム」 5/7、UCI新潟。 評価★★☆ おなじみのシリーズ。 連休最後の日に次男と娘を連れて見に行ってみた。 仲間を人質に取られ、12時間以内にコナンが謎を解かないと全員が爆弾で殺されるという過激な設定だが、肝心の謎自体は小振り。 何より、謎の本体に行き着くまでに時間がかかりすぎで、皮ばかり分厚くて果肉が少ない果実を食わされたような印象が残りました。

53.「二人日和」 5/3、シネ・ウインド。 評価★★★☆ 野村恵一監督作品。 京都を舞台に、老いた妻 (藤村志保) が筋肉の衰える病気にかかり、夫 (栗塚旭) が介護と仕事に悩む様を描いている。 美しい風景の中で、何十年と連れ添ってきた老夫婦のさりげないやりとりが淡々と描かれている。 妻を慰めるために雇われた手品趣味の学生 (賀集利樹) もさわやか。 ただ、時間的にはもう少し切りつめ、夫も寡黙さを押し通した方がよかったと思うが。

52.「デュエリスト」 5/1、UCI新潟。 評価★★★ 韓国映画。 イ・ミョンセ監督作品。 舞台は朝鮮王朝期の朝鮮。 ヒロインの女刑事 (ハ・ジウォン) はある時、貨幣偽造を行う一味の一人である青年 (カン・ドンウォン) と剣を交える。 女のような顔立ちの美青年である彼と、事件を追いながら何度か対決するうちに、次第に彼に惹かれていく彼女だったが・・・・。 筋書きは荒唐無稽というか、かなりいい加減である。 しかし、この映画の勘所は脚本にはない。 それなりに美形ながらがさつで男勝りの女刑事が、女と見まごう美青年と剣で戦うシーンや、それ以外の場面でも場面ごとのイメージの提示に力点がおかれているので、そこを味わうべき映画なのである。 二人の対決は、言うならば二人の舞踏なのであって、それは最後の幻想での殺陣シーンに象徴的に表現されている。 

51.「Black Kiss」 4/29,シネ・ウインド。 評価★★★ 手塚眞監督作品。 モデルやテレビ業界界隈に、謎の殺人鬼が暗躍する。 その殺人は、モデル業の或る混血女性をとりまく人物たちを対象にしているらしい。 はたして真犯人はだれか、また密室殺人などをやってのける手口の秘密は――というような筋書きなのだが、ミステリーかと思うとちょっと違う。 警察が犯罪を追うところが主筋の一つ (他にヒロインたちの心理的な恐怖感も) なのだが、推理ドラマのように犯罪の謎があばかれるのではなく、後半、幻想・SF的な方向に作品が行ってしまうところが、ちぐはぐ。 退屈はしない映画だが、出来がいいと言うには足りない印象である。

50.「エリ・エリ・レマ・サバクタニ」 4/28、シネ・ウインド。 評価★★☆ 青山真治監督作品。 近未来、人を自殺に追い込むウィルスが猛威を振るう世界。 孫娘 (宮崎あおい) がウィルスに感染した金満家 (筒井康隆) は、この病気を治す音楽を奏でるというミュージシャン (浅野忠信ら) を訪ねて何とか演奏をしてほしいと頼み込む・・・・。 黙示録的な風景と音を目指した映画、なのであろう。 北海道東部の風景もそれに寄与せんとしてはいる。 しかしその意図は半ばしか達成されていない。 青山真治はいつもそうだが、主観的な意図と、客観的な表現達成度が齟齬を来している。 今回も、意図自体は悪くないが、映像や音でそれが表現できているかというと、今一歩と言うしかない。

49.「リバティーン」 4/25、UCI新潟。 評価★☆  英国映画。 ローレンス・ダンモア監督作品。 17世紀に英国に生きた放蕩者ロチェスター伯爵を描いた映画であるが、失敗作と言うしかない。 放蕩を描くからにはそれらしく描かないといけないわけだが、冒頭で主人公の枠としての語りがあり、そこで自分を観客は嫌うであろうという予告がなされるのだけれど、その割りにはたいしたことがないのである。 きょうび、この程度のことをやっても 「放蕩」 のうちに入らないであろう、としか思われない。 筋書きもあまりうまくできておらず、退屈で、私は途中で眠ってしまった。 女優役で出てくる女優も全然魅力がない。 というわけで、主役のジョニー・デップの映画なら何でも、という人以外には薦められない。

48.「V・フォー・ヴェンデッタ」 4/24、UCI新潟。 評価★★★ 英国映画 (正確にはドイツとの合作)。 ジェイムズ・マクティーグ監督作品。 近未来の英国。 独裁者をいただいた管理社会ができている。 ところがそこに、体制に挑む仮面の男が出現。 ヒロイン (ナタリー・ポートマン) もふとしたきっかけから彼に協力することに。 はたして二人は全体主義社会をうち破ることができるのか、そして仮面の男の正体は・・・・・。 娯楽映画としては悪くない出来で、全然退屈しない。 ナタりーも相変わらず魅力的。 筋書きは、『モンテ・クリスト伯』 を下敷きにしたようなところがあり、実際、作中にその映画版が引用されていたりして、パロディ的な感じもある。 仮面の使い方も結構うまい。 ただ、描かれている独裁社会は、類似した設定が昨今の映画にはわりにありそうで、もう一工夫欲しいなと思った。 あと、タイトル、日本版用にもう少し何とかなりませんか。

47.「春が来れば」 4/21、Tジョイ新潟万代。 評価★★★☆ 韓国映画。 ソウルで音楽家として出世する夢を断たれかけた中年トランペッター (チェ・ミンシク) は、地方の炭坑町に移り、そこで中学の吹奏楽部を指導することに。 様々な家庭環境の生徒たち、薬局の若い女性、ソウルから電話をかけてくる母親、などなどの人々が、生きることのつらさをさりげなく見せている。 一応、挫折した中年音楽家が生徒たちの指導を通して更生し、生徒たちの方も演奏が上達するという筋書きではあるのだが、それがあからさまに表には出ず、むしろ筋書きの曖昧さを通して地方都市の営為を淡々と示しているところに、この映画の魅力がある。

46.「プロデューサーズ」 4/21、Tジョイ新潟万代。 評価★★★ アメリカ映画。 ブロードウェイ・ミュージカルの映画化だそうである。 大コケするミュージカルを作り、制作費を持ち逃げしようとするプロデューサーと、彼を囲む俳優や出資者などのドタバタ喜劇。 非常にかしましい作品で、まあそういうのが好きな人にはいいだろう。 私からするとあまり好みではないのだが、まあまあ楽しんで観ることはできました。 ただヒロインのユマ・サーマンは好みじゃないので――北欧系美人という設定だから――ニコール・キッドマンに変えて欲しい。

45.「連理の枝」 4/17、UCi新潟。 評価★★☆ チェ・ジウ主演の恋愛映画。 プレイボーイのヒーロー (チョ・ハンソン) は、ある時偶然で病院患者のヒロイン (チェ・ジウ) と知り合う。 難病でいつ死ぬとも知れない彼女は、しかし無断外泊などをして気ままに生きている。 やがて彼は本気で彼女を愛するようになるが・・・・・・。 前半はあまり難病ものらしくなく、普通にラブコメディー風。 後半ようやく(?)難病ものらしくなるが、イマイチの感。 チェ・ジウも、髪型のせいか写し方のせいか、顔に潤いがなくちょっと老けて見える。 役柄が合ってないのかなー。 「ピアノを弾く大統領」 の彼女はすごく魅力的だったんだけれども。 

44.「三年身籠る」 4/14、シネ・ウインド。 評価★★ 唯野未歩子監督作品。 表題通り、妊娠はしたがなかなか子供がお腹から出てこず、3年たってようやくでてくる――というお話。 一見シュールな設定だが、映画は妊婦とその夫、およびその周辺家族などを描くことに意を用いており、設定自体の面白さ、或いはグロテスクさをさほど活かしていないように思われる。 それでも前半はまあまあ工夫もあって悪くないが、後半に来ると明らかに息切れ。 またつまらない日本映画が1本増えてしまいましたね、と言いたくなっちゃう。

43.「ブロークバック・マウンテン」 4/10、UCI新潟。 評価★★★ アン・リー監督作品。 本年度のアカデミー賞監督賞やゴールデングローブ賞、05年ヴェネツィア映画祭金獅子賞など、数々の受賞に輝いている映画。 60年代の米国を舞台に、若い二人のカウボーイが一夏一緒に仕事をして愛し合うようになるが、社会の目もあり、お互い結婚したあと、人目を忍んで密会しつづける様を描いている。 羊を追うカウボーイの仕事や放牧場の風景、二人の愛情に細やかな視線が注がれており、丁寧に作られた映画だという気はするが、それ以上の迫真性やインパクトは、私には感じられなかった。

42.「エミリー・ローズ」 4/5、UCI新潟。 評価★★★ アメリカ映画。 スコット・デリクソン監督作品。 奇怪な病にとりつかれた少女がやがて神父の手に委ねられ、悪魔祓いを行うが、効果なく少女は死ぬ。 神父の行為は違法かどうか、裁判で争われることになり・・・・という、法廷映画である。 退屈はしないが、満足感はあまり高くない。 少女の病が医療で治せるものだったのか、本当に悪魔がとりついたのか――これは法廷で争って真実が分かるものだろうか。 実話に基づいているらしいけれど、現代医療の限界と神秘主義との相克みたいなものを浮かび上がらせるには、法廷劇にしないほうが良かったのではないだろうか。

41.「THE MYTH 神話」 4/3、みゆき座(日比谷)。 評価★★★ ジャッキー・チェン主演の香港映画。 考古学者の主人公(ジャッキー・チェン)はある時からなぜか始皇帝時代の夢を見るようになる。 そこでの彼は無敵の将軍であり、美しい姫(キム・ヒソン)を守りながらも彼女との道ならぬ恋に悩むようになる。 やがて現代の学者としての彼と、夢の中の将軍としての彼と双方に危機が迫ってくる・・・・・。 娯楽映画として標準的な出来。 ただ、ご都合主義的なところもあって、辻褄は余り合っていないみたい。 細かいことを気にしないで楽しむにはいいと思う。 ヒロインのキム・ヒソンはたいへん美しい。 次作が楽しみである。

40.「かもめ食堂」 4/3、シネスイッチ銀座。 評価★★★☆ 荻上直子監督作品。 なぜかフィンランドのヘルシンキで食堂を開いている日本人中年女性 (小林聡美)。 そこにワケアリの日本女性2人が加わっていき、最初は客もろくに来なかった店が繁盛していく、というお話。 と書くと、何だそれ、といわれそうだが、これが結構面白いのである。 自然な滑稽さとでもいうべき要素があって、全然退屈しないのである。 主演の小林聡美がいい。 もたいまさこの独特の感覚も買いである。 ただし、外国が舞台だけれど、異文化とのぶつかり合いみたいなものは期待しない方がいい。 実際の舞台は、どこにもない場所、なのだ。

39.「リトル・イタリーの恋」 4/3、シャンテシネ(日比谷)。 評価★★★ オーストラリア映画。 ジャン・サルディ監督作品。 舞台は1950年代のオーストラリアで、イタリア移民の暮らす小さな町。 両親を失って叔父夫妻に育てられた兄弟はそろって適齢期だが、すでにガールフレンドのいるハンサムな弟に比べ、風采の上がらない兄は何度写真見合いをしても断られてしまう。 ある日、イタリアから美しい少女の見合い写真が送られてくる。 兄はやけくそで弟の写真を手紙に同封して結婚を申し込んでしまう。 やがて相手からは承諾の返事が・・・・・。 というようなロマンティックコメディ風の作品。 作りも音楽も古典的で、まあ悪くない出来だ。 イタリア移民がアメリカで差別されマフィアで団結したり、といった話は知っていたが、オーストラリアにも移民してやはり差別されていたのだ、ということはこの映画で初めて知りました。 

38.「マダムと奇人と殺人と」 3/30、シネ・ウインド。 評価★ 2004年のベルギー映画 (正確にはフランス・ルクセンブルクとの合作)。 「突然死」 という名のビストロに集う変人奇人たち。 ある時、しかし殺人事件が起き、常連の一人である独身警視が捜査に乗り出すのだが・・・・。 うーん、面白くない。 変人 ・ 奇人 ・ 身障者 (メクラやコビトがでてきます) ・ ゲイなどなどで笑わそうとしたのか、「奇妙な味」 を出そうとしたのか知らないが、とにかく面白くないのである。 ヤマなし、オチなし、意味なし、っていうと日本のやおい小説みたいになっちゃうけれど、とにかくつまらないのである。 私は退屈さの余り途中で眠ってしまいました。 いや、予告編も面白くなさそうだったのだけれど、春休みは子供向け映画と一般大衆向け娯楽大作ばっかりで見たい映画が少なく、これはまあヨーロッパ映画だし、と思って見てしまったのだが、予告編での予感を信じるべきでした。 反省。

37.「イノセントボイス 12歳の戦場」 3/27、UCI新潟。 評価★★★☆ 2004年度のメキシコ映画。 80年代の中米はエルサルバドルを舞台に、政府軍と反政府ゲリラによる激しい内戦が繰り広げられる様を描いたセミドキュメンタリー映画。 男の子は12歳になると政府軍に兵士として引っ立てられ、女子供は夜になってもいつ戦闘が起こるか分からないという状況下で厳しい生活を強いられてる。 しかしそんな中にも小学生同士の幼い恋、子供たちの楽しい遊びなどがある。 そうした、悲惨な状況とその中の人間の暮らしを描いて、悪くない出来の作品だ。 主人公の少年の母親役のレオノア・ヴァレラが、過酷な状況下で夫に逃げられ3人の子供を必死に守りながら、その必死な表情に美しさがにじみでる、いわば逆境のヒロインを見事に演じている。 主人公の少年役のカルロス・パディジャも、将来は女泣かせになりそうな面構えだ。

36.「シリアナ」 3/17、Tジョイ新潟万代。 評価★★☆ 石油利権をめぐる米国の対中東政策と陰謀を描いた映画、らしい。 らしい、というのは、筋書きがきわめて分かりにくい作品だからだ。 米国石油会社と政府とのつながり、CIAの暗躍、中東の某王家の後継問題、などなどが描かれてはいるのだが、そのつながりと筋の進行が一見してもよく分からないのである。 もう一回見ると少しは分かってくるのかもしれないが・・・・。 ちなみにタイトルのシリアナSYRIANAとは、ワシントンのシンクタンクで実際に使われている用語で、イラン・イラク・シリアがひとつの民族国家になることを想定した言葉だそうである。

35.「冒険者たち」 3/17、シネ・ウインド。 評価★★★ 1967年のフランス映画。 一攫千金を夢見る曲芸飛行機乗り (アラン・ドロン) と、レーシングカーの発明を夢見るエンジニア (リノ・バンチュラ) と、美術で名を上げたいと望む若い女の子レテイシア (ジョアンナ・シムカス) 。 この3人の奇妙な友情と、宝探し、そしてレテイシアがひょんなことで死んでからは残された男2人の行動をたどっている。 美男のドロンと渋いバンチュラがそれぞれ個性を活かしているし、ジョアンナ・シムカスが魅力的な水着姿を披露しているのもいい。 フランス映画のいい面が出た作品だと思う。  

34.「欲望」 3/15、シネ・ウインド。 評価★★★ 小池真理子の小説 (私は未読) を映画化したものだそうである。 図書館司書の女性 (板谷由夏) と、かつての同級生で文学少年だった男性 (村上淳) との関係を描いている。 彼は交通事故に遭い、男性としての性機能を失っていた・・・・。 そこにもう一人の同級生 (高岡早紀) とその30歳も年上の上流階級の夫 (津川雅彦) がからんで、まあまあ面白い映画にはなっている。 原作がそうなのだろうが、三島由紀夫の影が濃厚に感じられる。 しかし三島のような、独特の観念性に基づいたハイブラウな感覚はなく、小池真理子らしい通俗性に染まったところがあって、そこが残念と言うしかない。 板谷由夏が大胆なベッドシーンを披露していて魅力的だが。 R18指定。 

33.「力道山」 3/10、Tジョイ新潟万代。 評価★★★ 日韓合作。 昭和30年代にプロレスの王者として圧倒的な人気を誇った力道山の半生をたどった作品。 主演は韓国俳優ソル・ギョング。 戦後日本の相撲界で出世しようとしながら在日であるが故に差別され、やがてプロレス界に転向して脚光を浴びるが、最後にやくざに刺されて死ぬまでを描いている。 事実とフィクションとが混在しているため、この映画をそのまま力道山の実像と思わない方がいいようだ。 あくまで一つの作品として見るなら、押さえがたい闘争本能のようなものを持つが故に、プロレス界でスターとなりながらも八百長で負けることができず、そのために自分を庇護してくれていた裏世界のボス (藤竜也) からも見放されてしまう悲劇のヒーロー像はそれなりに伝わってきて、悪くはない。 ただ、こういう世界の裏はもっと複雑なはずだし、力道山が勝ち続けていたこと自体にも八百長性はなかったのか、アメリカ滞在時に何を身につけたのかなどは、ほとんど描かれていないので、私のように力道山を生中継のテレビで見た世代からすると、ちょっと物足りない。 また、彼の日本語が少したどたどしいのも変である (力道山は普通の日本人と変わらない日本語能力があった)。

32.「県庁の星」 3/10、Tジョイ新潟万代。 評価★★★☆ 県庁の若きエリートを自認する主人公 (織田裕二) が、民間に学べという風潮を気にする女子アナ出身の県知事 (酒井和歌子!) に、スーパーでの半年間の研修を命じられ、パートで雇われている女子店員 (柴咲コウ) がそのおもり役に当てられて・・・・・というようなお話。 何となく内容が読めそうだと思いながら見に行ったのだが、案に相違して結構面白かった。 織田と柴咲がそれぞれ持ち味をうまく出している。 副次的な登場人物もよく考えられており、話の展開もそれなりに工夫がこらされていて、最近の日本映画としては上出来の部類に入るのではないかと思いました。

31.「誰がために」 3/7、シネ・ウインド。 評価★★★☆ 日向寺太郎監督作品。 新婚間もなくお腹には子供が宿っていた妻 (エリカ) を殺された写真館の三代目店主 (浅野忠信)。 しかし殺人者が少年だったために、公判にも出られず、しかも犯人は1年あまりで少年院を出てしまう。 どうするべきか・・・・・。 重いテーマの映画だが、テーマ中心になりすぎず、写真館のあるさびれかけた街の風情や、町の人々の様子、写真館での仕事ぶりなどを淡々と映し出していく映像が非常に印象的だ。 知り合った若い二人が一緒に自転車に (クルマではなく) 乗るシーンも胸に残る。 新妻を失った主人公をなぐさめる周囲の人々の善意、しかし癒されない彼の気持ち、彼に思いを寄せている幼なじみ (池脇千鶴)・・・・・。  丁寧な作りと、最後の、観客に解釈を委ねるような結末が、何とも言えない余韻を残す。

30.「シムソンズ」 3/1、WMC新潟。 評価★★ 北海道の常呂町に住む女子高校生たちがカーリングというウィンタースポーツを通じて友情をはぐくんでいくお話。 うーん、日本的なお手軽映画の域を出ていませんね。 4人中3人はドシロウトだったのに、あっという間に大会で準優勝できてしまい、数年後には冬季オリンピック出場すらほのめかされている。 深読みすれば、努力はしたくないけれど世の中には認められたいという、最近の日本人ティーンエイジャーに媚びた作品とも言えそう。 ・・・・なんてことを書くと中年男の硬直した見方と言われそうだが、「これだけやったのだから、上位進出して当然だな」 と観客に納得させるような作りになっていないところが致命的なんですよ。 学芸会じゃないんだから、ちゃんと作ってくれ。 それと、私の好みで言うと、派谷恵美をあんな役に使わないで欲しい。 私だったら、主役4人のうち誰かを落として (加藤ローサか星井七瀬)、派谷を入れますけれどね。

29.「亀も空を飛ぶ」 2/26、新潟市民プラザ (新潟国際映画祭)。 評価★★★ イラク・イラン映画。 イラク北部の村を舞台に、アメリカ軍によるイラク攻撃が始まる時期の難民や村人の様子を、サテライトという名の少年の目を通して描いている。 村人たちの右往左往ぶりや、難民の子供たちの悲惨な様子が、ユーモアを交えながら展開される。 日常性と悲惨さと戦争の同時的な描写がいい。 「リトル・バード」 などと違って告発調でないところが、かえって人間のおかれた状況の複雑さを浮かび上がらせていて、悪くない出来になっている。

28.「忘れえぬ想い」 2/25、新潟市民プラザ (新潟国際映画祭)。 評価★★★ 2003年制作の香港映画。 結婚直前に交通事故で婚約者を失ったヒロイン (セシリア・チャン) は、婚約者の連れ子を自力で育てようとするが、思うように仕事ができず追いつめられる。 しかし夫の同僚だった男がさりげなく彼女をサポートし・・・・。 まあ、悪くない映画だと思う。 ヒロインのセシリア・チャンは、一昨年のこの映画祭で上映された 「パイラン」(2001年制作) にも出ていて、その時は 「すごい美人」 と思ったのだが、今回は 「すごい」 のつかない 「美人」 でした。 うーん、2年たってちょっと頬がこけてきたのが原因でしょうか・・・・。

27.「風の痛み」 2/24、新潟市民プラザ (新潟国際映画祭)。 評価★★★ 2001年制作、イタリア・スイス合作。 娼婦の子として育ち、名もない東欧の町からスイスに逃亡して今は時計工場に勤めながら作家になる夢を持ち続けている男。 ある日、かつて故郷の町の小学校で隣席だった女が、夫と赤ん坊を伴ってやってくる。 そしてその女は実は・・・・。 筋書き的には私好みの映画で、全体として悪くないと思うけれど、ヒロインがあまり美人でないのがひっかかる。 それと、最後がよく分からない。 男の幻想でないとすると筋が通らないように思うのだが・・・・・或いはすべてが幻想なのかもしれないけれど。

26.「魂のそよかぜ」 2/24、シネ・ウインド (新潟国際映画祭)。 評価★★☆ シリア映画、97年制作。 同じ職場の男女が互いに惹かれ合うが、女の方には夫がいた。 そうした状況下で起こる悲喜劇を描いた映画。 幻想的なところもあり、現実と空想の境目がちょっと曖昧になる。 そこが面白いのかもしれないが、私はあまり買う気にはなれなかった。

25.「ダンシング・ハバナ」 2/23、シネ・ウインド (新潟国際映画祭)。 評価★★★☆ 2004年制作のアメリカ映画だが、新潟の商業館に来なかったためか、映画祭で上映された。 キューバ革命前夜にこの地を訪れたアメリカ人一家。 高校生の長女はふとしたことから土地の人々のダンスに魅せられる。 そしてホテルのボーイをしていた地元の男の子と一緒にダンス・コンテストに出場することになり・・・・。 ヒロインのロモーラ・ガライがすごく可愛い。 筋書きも、いわば身分違いの恋という古典的なもので、それが革命前夜のキューバの熱気とからんで悪くない出来に仕上がっている。 上映時間が86分と、最近の映画としては短めなのも、かえって全体を引き締めていていい。 これで男の子役にもう少し下層階級的なエグさ、もしくは鬱屈したエネルギーがあると文句なしだと思う。 なおこの作品は87年に公開された映画 「ダーティ・ダンシング」 のリメイクだそうだが、そちらのほうは私は未見。

24.「3人兄弟」 2/23、シネ・ウインド (にいがた国際映画祭)。 評価★★☆ 19日から第16回にいがた国際映画祭が開催されている。 私は昨日まで東京に行っていたので、本日から鑑賞。 これは旧ソ連のカザフスタンの映画で2000年制作。 かつて核実験が秘密裡に行われた村。 それとは知らずに、男の子たちが蒸気機関車を勝手に運転して・・・・という筋書きのようだが、予備知識がないとよく分からないところがある映画だ。 広大な大地を男の子たちを乗せた機関車が走るところはそれなりに詩的ではあるが。 

23.「ある子供」 2/22、アミューズCQN (渋谷)。 評価★★☆ フランス映画。 ヤンママとヤンパパのお話、といったらいいのかな。 産院から彼女と子供が戻ってきたものの、パパの方は定職もなく、またまともに働く気もなく、挙げ句の果てに作った子供が邪魔で売り飛ばしてしまう、という身も蓋もない筋書き。 一種の不良少年物、と思えばいいのかもしれませんが・・・・・。 

22.「クラッシュ」 2/22、シャンテ・シネ(日比谷)。 評価★★★★ ポール・ハギス監督作品。 黒人に差別的な感情を持つ白人女性 (サンドラ・ブロック) が、クルマを黒人に強奪される事件を発端として、さまざまな人種や職業人が差別や偏見のなかで互いに関係を持ちながら生きていく様子を描いた群像ドラマ。 相互のつながりが面白く、また差別問題にしても、「差別する人とされる人」 という固定的な描き方ではなく、流動的でありまた容易に逆転しうるものでもあることを、軽妙かつ淡々と描いていて、深さを感じさせる映画となっている。 お薦めである。

21.「白バラの祈り」 2/21、シャンテ・シネ(日比谷)。 評価★★★ ナチ時代のドイツで戦争批判・反政府的思想のビラをまいた白バラ・グループの、当時21歳だったゾフィー・ショルに焦点をあてた映画。 ビラまきで逮捕され、取り調べと裁判の後、死刑になるまでを描いている。 彼女と取調官との丁々発止のやりとりや、厳しいながらも自分の娘くらいのゾフィーに温情を示す取調官の微妙な表情が面白い。 この取調官と、かつて共産党員だったためにナチへの忠誠をことさらに示そうとする裁判官との差異が、なかなか示唆的である。 ただし、映画そのものはゾフィーに焦点を当てているので、事件全体のあらましは別に調べておいた方がいいと思う。 白バラを題材とした映画は以前にも作られているので、それを見るのも一法かも。

20.「スティーヴィー」 2/21、ポレポレ東中野。 評価★★★☆ ドキュメンタリー映画。 2003年の山形国際ドキュメンタリー映画祭で最優秀賞をとっている。 母親から虐待された育ったプア・ホワイトの少年スティーヴィーが、長じて女児に性的虐待を行ったかどで裁判にかけられ、途中色々な経緯があるが、結局有罪になるまでを描いている。 彼の 「兄貴」 分であった年長の白人男性の視点で映画が作られており、有罪になったスティーヴィーが刑務所に入れられても会いに行く、彼のそばにいてやることしかできないから、というところで終わっている。 罪は罪としてしっかり見据え、しかし問題を抱える弟分の更正にも最後まで立ち会おうとする制作者の姿勢は、市井の人間がこの種の事柄に関わっていけるぎりぎりの線なのかな、と思える。 また、貧しい人たちには宗教が必要だということが何となく納得される映画でもある。

19.「ルー・サロメ 善悪の彼岸 (ノーカット版)」 2/20、K’s cinema (新宿)。 評価★★★ 1977年制作で日本では85年に公開された映画のノーカット版。 リリアーナ・カバーニ監督作品、イタリア語版。 19世紀末のローマで、ロシア人女性ルー・サロメが、哲学者ニーチェおよびパウル・レーと一緒に3人で同棲した、スキャンダラスな実話を映画化したもの。 古代遺跡の残るローマの風景が面白い。 事件そのものは当時としてはショッキングではあったが、現代から見るとどうだろうか。 もっともかなり芸術的な要素を考慮して作ってあるので、それなりに楽しめることは事実。 

18.「探偵事務所5」 2/17、シネ・ウインド。 評価★★☆ 林海象監督作品。 「5」 という名前の探偵事務所に勤務する私立探偵たちの物語。 話は2部構成になっていて、第1部は新米探偵・成宮寛貴、第二部は宮迫博之が主役。 双方に共通するのは、美容整形病院の怪しげな実態である・・・・・。 とういうような話なんだが、推理物としてはあまり意外性がないし、最後に黒幕が人質の女の子を殺さずに姿を消すのがなぜなのか分からないなど、イマイチの感がある。

17.「オリバー・ツイスト」 2/16、UCI新潟。 評価★★☆ ディケンズの有名な小説の映画化。 孤児オリバーが、施設から出て店に雇われるが、トラブルを起こして逃げ出し、大都会ロンドンに移って窃盗団の一員となるが、善意の中産階級の紳士に救われるさまを描いている。 当時の風俗などは面白いが、原作の筋書きの複雑さをかなりはしょったらしい展開は、必ずしも説得的にはなっていない。 主演の男の子は可愛いので、そういう見方をする人にはいいかも。

16.「ピーナッツ」 2/13、UCI新潟。 評価★★★ 内村光良監督作品。 地方都市のさびれた商店街。 かつては草野球チームを作っていたが、今では人数が揃わない。 そんななか、昔大会で優勝したときの 「伝説のサード」 が東京から帰ってきた。 それを機に、チームが復活しかかるが、折しも商店街には再開発の話が持ち上がっていた・・・・。 どうってことない筋書きであるが、結構面白く見ることができる。 奥貫薫や桜井幸子といった女優も、地味ながら魅力的である。

15.「空中庭園」 2/11、シネ・ウインド。 評価★★☆ 角田光代原作、豊田利晃監督作品。 監督が麻薬をやって逮捕され、一時期公開が危ぶまれたといういわく付き。 高校時代にイジメにあってトラウマをかかえるヒロイン (小泉今日子) が、「隠し事をしない」 理想的な家庭を作ろうとするが、夫には愛人が、長女と長男にもそれぞれ問題が・・・・・というようなお話。 私は長女役の鈴木杏が見たくて行ったのだが、どことなく 『家族ゲーム』 を思わせるところがあり、かといってあれほどスタイリッシュにさりげなく現代家族を表現しえているというほどでもなく、ラブホテルのモチーフが巧みに使われているけれども、表面的な面白さにとどまったかなという気がする。 ヒロインの母親役の大楠道代がいい。 大楠は 『春の雪』 といい、このところ好調なようだ。

14.「ミュンヘン」 2/6、UCI新潟。 評価★★★ スピルバーグ監督作品。 1972年のミュンヘン・オリンピックで起こったパレスチナ・ゲリラのイスラエル選手団襲撃事件。 それを機に、イスラエルはゲリラ暗殺計画に乗り出し、選ばれた者たちは謎の人物から情報提供を受けながらターゲットを一人ひとり殺していくが・・・・・。 2時間40分ほどもかかる長尺の映画。 退屈はしないが、すごく面白いと言うほどでもない。 題材の割には淡々と物語が進み、テーマが前面に出過ぎることを警戒しているようだ。 その意味では大人向けの映画かも知れない。

13.「B型の彼氏」 2/1、UCI新潟。 評価★★★ 韓国映画。 血液型A型の女子学生 (ハン・ジヘ) が、たまたま知り合ったB型の男 (イ・ドンゴン) と恋仲になるが、B型特有の (?) 気まぐれや奔放さに振り回される、というお話。 日本流の血液型人間学が韓国にも流れ込んでいるという話は聞いたことがあるが、こういう映画までできてしまうとは、重症ですね。 まあ、冗談半分に見るデート・ムービーということで、真面目に論じるのはやめましょう。 ヒーローはイケメン、ヒロインは笑顔が可愛い。

12.「ガラスの使徒 (つかい)」 1/31、シネ・ウインド。 評価★★★ 原作・脚本・主演が唐十郎、監督が金守珍という映画。 天文台の望遠鏡に使う巨大なレンズを磨く仕事場を舞台に、そこに出入りする男女のさまざまなしがらみを描いている。 といっても、唐十郎作品だけあって、糞リアリズムの映画ではない。 ファンタジー的であり、アングラ的でもあり、なんだかよく分からないようでもあり・・・・・ともかくそういう映画なのである。 考えないで見た方がいいかも。 ヒロインの佐藤めぐみが魅力的。 ちょい役で出てくる中島みゆきがラストで歌うテーマソング 「孤独の肖像」 も印象的。

11.「単騎、千里を走る」 1/30、UCI新潟。 評価★★☆ チャン・イーモウ監督と高倉健の主演という、かなり期待を抱かせる映画であるが、やや残念な出来であった。 息子と不和になっている初老の男 (高倉健) が、息子が肝臓ガンのためかつて中国で仮面劇の撮影をしていた仕事を続けることができないという状況におかれていることを知り、息子に代わって中国に飛んで仮面劇を撮影しようとする話である。 息子との不和の部分がごく簡単に片づけられ、中国に飛んだ健さんが色々苦労するというところがメインになっているのだが、前提が簡単すぎるので、中盤と結末も説得力がない、といったところ。 中国奥地の村の様子は、ちょっと面白いが。 

10.「アメノナカノ青空」 1/30、UCI新潟。 評価★★★ 韓国映画。 母 (イ・ミスク) と二人きりで暮らすヒロイン (イム・スジョン)。 彼女は片手が不自由なのに加えて病弱で、本人は気づいていないが余命幾ばくもない。 そこへアパートの下の階に若いカメラマンの男が引っ越してくる。 色々な出来事があって彼はヒロインと仲良くなるが・・・・・。 女性監督 (イ・オニ) のせいもあってか母と娘の親密な関係がなかなかよく描かれているが、逆に言うと男の存在がご都合主義的に見えるという欠点がある。 どこかで見たようなストーリーで、なんとなく希薄感がつきまとう。 映像は美しいし、ヒロインの水着シーンもあるので、まあまあではあるけれど。

9.「THE有頂天ホテル」 1/27、Tジョイ新潟万代。 評価★★★ 三谷幸喜監督作品。 大晦日のホテルを舞台に、さまざまな従業員やお客が出入りし、それぞれに問題や悩みを抱え、また意外な出会いがあるなど、悲喜こもごも、てんやわんやの騒動が起こるさまを描いている。 喜劇として、つまり大いに笑える作品だと思って見に行くと失望しそう。 喜劇にしようとしている箇所もあるのだが、あまり成功していない。 むしろ複雑にからみあった人間模様を描いた作品として見るなら、悪くない映画だと思う。 たくさんの俳優が出てくるが、私としては、アシスタントマネージャーとして副支配人 (役所広司) を補佐する戸田恵子がよかった。 紺のブレザーの制服姿、とても似合っている。 これも一種の制服フェチ (笑)?

8.「そして、ひと粒の光」 1/27、シネ・ウインド。 評価★★★ 南米はコロンビアで希望のない暮らしを強いられる若い女が、望まぬ妊娠をしてしまい、おまけに職場が嫌になってやめたこともあり、ふとしたことから麻薬を米国へ密輸出する運び屋の仕事をする様子を描いている。 結局は米国で暮らし続けようとヒロインが決意するところで幕となる。 ヒロインのカタリーナ・サンディノ・モレノが魅力的。 麻薬を運んで (胃の中に小さな容器をいくつも詰め込んで運ぶのだ) 途中気分が悪くなったり、危うく空港で見破られそうになるシーンが迫力。 ただ、コロンビアの状況は日本人にはよく分からないので、前半でそういう描写がもう少しあるとなお説得的だったと思う。

7.「スタンド・アップ」 1/20、Tジョイ新潟万代。 評価★☆ シャーリーズ・セロン主演のアメリカ映画。 いわゆるセクハラ裁判を扱っており、夫と別れて2人の子供を育てるために鉱山に勤務した女性が男性社員たちから嫌がらせを受けて裁判に訴える様を描いている。 こういうテーマ自体が好きな人にはいいかもしれないが、映画としては非常に薄手で、お薦めしかねる。 要するに 「セクハラはいけません」 というプロパガンダ映画に過ぎないのだ。 作品内のすべての要素がヒロインの正当化に寄与するようになっているなど、世界の複雑さはいささかも描かれることがない。 ある種の傾向文学だと思えばよかろう。

6.「プライドと偏見」 1/20、UCI新潟。 評価★★★☆ ジェイン・オースティンの小説を映画化したもの。 私は原作は高校時代に一応読んだけれど、それ以来ご無沙汰なので内容はほとんど忘れてしまっていた。 約200年前の英国を舞台に、中産階級の家に育った5人姉妹がいかに夫をゲットしていくかを描いている。 当時の舞踏会 (ダンスパーティ) の様子や、財産家とそうでない (ヒロインたちの家庭はこちら) 家との格差、牧師の社会的地位など、色々面白いところがある。 ヒロインを演じるキーラ・ナイトレイもいい。

5.「エイリアン VS バネッサ・パラディ」 1/19、シネ・ウインド。 評価★☆ 2004年フランス映画 (正確には独英との合作)。 ええっと・・・・内容的にはタイトル通りなんですけれど、まともな映画じゃありません。 とほほな映画です。 バネッサ・パラディも、「白い婚礼」 に出てた頃ならともかく、あれから16年ですから、トウが立つところまではいかないものの、新鮮味はありませんわな。 要するに、B級にもならないC級映画です。 ゲージツのつもり、というわけでもなさそうです。 おちゃらけですかね。 それをよりによってシネマスコープ・サイズで作ったりしているところが笑えるのですが、よほどお金と時間に余裕のある方以外にはお薦めしません。 ワタシが見に行ったときも、観客はワタシ一人でした。 まあ、この出来じゃあ、当然ですわな。

4.「レジェンド・オブ・ゾロ」 1/17、WMC新潟。 評価★★★☆ 試写会に当たったので一般公開前に無料で見ることができました。 NSTに感謝します。 スピルバーグ制作、マーティン・キャンベル監督作品。 数年前に、同じアントニオ・バンデラスとキャサリン・ゼタ=ジョーンズ主演で作られた 「マスク・オブ・ゾロ」 の続編的な映画。 娯楽作品としてはまあ悪くない出来。 細かく見ればイチャモンをつけたい箇所もあるし、少しキャサリンに重きを置きすぎている印象があるし、二人の息子も登場しているので 「スパイ・キッズ」 になりかかっているような感じもするけれど、まあ2時間十分に楽しめる映画なので、何も考えずに2時間を過ごしたい人にはお薦めである。

3.「乱歩地獄」 1/16、UCI新潟。 評価★★☆ 江戸川乱歩の作品を原作とした短篇をいくつか集めたオムニバス映画。 浅野忠信が全部に出演していていわば全体をたばねる役割を果たしているのだが、うち2編では明智探偵役で出ているのだけれど、彼はどう見ても明智という顔ではない。 また、江戸川乱歩の持つモダニズムとグロテスクの融合感ももう一つうまく出ていない。 ただ、最後の 蟲」 で出てくる緒川たまきが唯一魅力的。 彼女をヒロインにした2時間映画、だれか作りませんかあ?

2.「疾走」 1/16、UCI新潟。 評価★★★ 重松清原作 (私は未読)、SABU監督作品。 「浜」 と呼ばれる地域に育った少年シュウジ (手越祐也) が、やがて家族離散の憂き目にあい、最後に死ぬまでを描いている。 途中、両親を失った少女 (韓英恵) や、むかし弟の恋人を奪ったために殺人事件を誘発してしまった神父 (豊川悦司) などとの出会いがあって、それなりに面白く、全体の雰囲気も悪くはないが、作品としてのまとまりはイマイチの感がある。

1.「ロード・オブ・ウォー」 1/1、WMC新潟。 評価★★★ 元日の映画サービスデーに観に行ってみた。 ニコラス・ケイジ主演。 死の商人、つまり武器を売りさばくことで儲けている商人の物語である。 旧ソ連のウクライナで軍の武器がこっそり売りさばかれたり、内戦の多いアフリカで商売がうまくいったりするあたりの、いわば世の中の仕組みが巧みに描かれている。 最後に、武器の輸出は死の商人個人よりも国家によって多くなされており、それも米英仏中露、つまり国連常任理事国がその最たる物、という指摘があるのもいい。 ただし人間ドラマとしての側面は弱いので、そのつもりで。

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