【捕鯨問題関連文献(2) − 付随する問題を考えるために】

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2009年4月13日、『イワシはどこへ消えたのか』 と 『「自然との共生」というウソ』 と 『環境政治学入門』 を追加

2009年5月21日 『エコテロリズム』、『人はなぜペットを食べないか』、『イヌイット』の3冊を追加

2010年7月4日 『シー・シェパードの正体』を追加

 

NEW! 佐々木正明 『シー・シェパードの正体』 (扶桑社新書、2010年) 760円+税 

 著者は1971年生まれで産経新聞記者である。 日本の捕鯨船を攻撃するエコ・テロリストであるシーシェパードは悪名高い存在だが、その実態と、統率者のポール・ワトソンの経歴や育ちを明らかにした本。 ワトソンがいかに平気で嘘をつく人間で、しかしエコ・テロリストとして資金集めをしたり、嘘で人を惹きつけたりするのに天才的な才能を持ち合わせているか、そのワトソンの作った嘘八百の番組を流しているアメリカ・有料チャンネル「アニマル・プラネット」 の現状、平和主義を標榜しているグリーン・ピースが実はシー・シェパードと裏でつながっていること、シーシェパードを支援しているハリウッドなどの映画関係者たち――例えば日本でも知られているブリジット・バルドー、ピアース・ブロスナン(おいおい、実生活でも007気取りなのかと言いたくなる)、ショーン・ペンらがいる――の実情、そして外国でのそうしたデタラメな報道に対して日本が従来きわめて消極的で受動的な姿勢に徹してきたという困った事実など、色々と教えられるところが多い本である。 本を読んでつくずく思うのは、日本人って大人しすぎてさっぱり意見発信能力がないということ。 政府などもそうだが、マスコミや、ふだん輸入業者としては偉そうな態度をとっている知識人も外国に対して何事かを言うという場合になるとまるっきり内弁慶であることだ。 そういう意味では、日本では政府や大手マスコミや知識人より2ちゃんねるユーザーのほうがまだしも正常な感覚を有しているということになるのかも知れないね。

岸上伸啓 『イヌイット 「極北の狩猟民」のいま』(中公新書、2009年) 

 かつてはエスキモーと呼ばれ、現在はイヌイットと言われる極北の民族。 その現在の暮らしぶりや抱えている問題点を分かりやすく書いた本である。 まず、近年はエスキモーではなくイヌイットと呼ぶのが政治的に正しいとされているが、それは必ずしも当を得ておらず、エスキモーと呼ぶべきだという考え方もあることが紹介されている。 それから現在の彼らの生活が描写される。 狩猟を中心とした暮らしであるが、昔と違って必ずしもそれだけで生活できているわけではなく、絶対に狩猟をしないと暮らせないわけでもないが、狩猟を自己のアイデンティティとして継承しようとする彼らの姿が興味深い。 その一方で、近代化とアイデンティティの狭間でうまく生きていけない者、アル中になってしまう者、都市に出て貧民として、或いはしっかり学歴を得て普通のカナダ中流市民として暮らす者などなど、実に多様なのだ。 また、北極は工場などがないから汚染されていないと思われがちだが、実は彼らの狩猟対象となっているアザラシやシロイルカやカリブーはPCBなどにかなり汚染されており、どうやら海流や大気の流れで北極海にその手の有害物質が来て、しかも北極海は海流の関係でそうした物質がたまりやすいので、イヌイットまで汚染されてしまうというわけなのだ。 もっとも、そうした有害物質を。一般に言われている健康を害する濃度でイヌイットは摂取しているが、実際には健康には影響はあまりなく、むしろ現代的なコーラとかジャンクフードが入り込んできていることのほうが健康上の悪影響につながっているのだそうだ。 世の中、なかなか複雑である。 あ、それからイヌイットは上述のようにシロイルカを好んで食べる捕鯨民族であることを、あらためて強調しておこう。

山内昶 『ヒトはなぜペットを食べないか』(文春新書、2005年) 

 食とタブーについての本である。 冒頭は犬肉を食う話から始まる。 今現在だと、犬肉は韓国や中国 (周恩来は大好物だったとか)以外では食べないが、昔は日本でも食べていたし、西洋でも古代ギリシア・ローマでは食べていたし、その後もあまり例は多くないものの20世紀に至るまで犬食いの例は見られるという。 犬を食うのは野蛮、なんて西洋人の言い分がデタラメだと分かる。 そのほか、猫食い(!)の話だとか、獣姦の話だとか、食のタブーはなぜあるかとか、それなりに面白い話が入っている。

浜野喬士 『エコ・テロリズム 過激化する環境運動とアメリカの内なるテロ』(洋泉社新書y、2009年)

 捕鯨船に体当たりするシーシェパードは日本でもすっかり有名になっているが、実はこうしたエコ・テロリズムは捕鯨だけでなく、動物実験などに対してもアメリカ国内で行われている。 本書はそのようなエコテロリズムを行う団体が生まれてきた経緯や、その思想的背景――いわゆる 「動物の権利」 やディープ・エコロジー――をたどったものである。 アメリカの伝統的な 「市民的不服従」 という思想は、そもそもは非暴力主義なのだが、しかし現実の市民革命は暴力を伴っていたという歴史的な事実を盾にとって、いずれは合法化される権利を主張するには暴力を伴う行為も正当化されるはずとしてしまう考え方を分かりやすく説明している。 グリーンピースから派生していかに暴力団体が現在に至るまで持続してきたか、そして合法的で穏健な環境団体が実はエコ・テロリストに資金を流しているという実態にも触れている。 私は今まで、ユニセフや国境なき医師団には寄付をしても、環境保護団体に寄付をしたことは一度もないが、本書を読んでますます寄付をする気がなくなりました。

松下和夫 『環境政治学入門』(平凡社新書、2000年)

 2000年に出た本なのでデータ的にはやや古くなっているが、アメリカと日本の環境問題をめぐる政治の歴史をたどり、日米の比較もしているところが大変に面白いし、ためになる本である。 アメリカの環境保護が、西部開拓が太平洋にまで達してフロンティアがなくなった19世紀末に始まっていること、野生動物や自然の保護という点では熱心なアメリカだが、温暖化ガス排出で京都議定書から離脱するなど自国の産業に影響が及びそうな問題では消極的なことなど、日米の環境政治の違いが明快に語られている。 ただし、NGOについては、その活動は必ずしもプラス面だけではないわけだが、そうした側面には触れられておらず、書き方が甘くなっているところが残念ではある。 ただ、NGOは基本的に民主党とのつながりが強いため、クリントン政権時代にはかえって活動が下火になった――政権批判がしづらいから――という指摘は貴重。

高橋敬一   『「自然との共生」 というウソ』(祥伝社新書、20009年) 

 著者は東京農工大農学部卒業後、一時期農水省に勤務、その後退職してヴォランティアとして海外に滞在したりしている人。 本書はタイトルが示しているように、環境保護でよく叫ばれる 「自然との共生」という言い方がいかに欺瞞的であるかを種々の観点から明らかにしたもの。 人が 「環境を守れ」と主張するとき、地球が大昔から気候や自然環境や生息生物において大きな変遷をたどってきたことを無視して今現在生きている自分が知っている範囲内での環境だけを考えがちであること、「自然」の植物は自己防御のために或る程度の毒性を備えているが、人間が食物にするためにそれを品種改良した穀物や果物や野菜は毒性がないから、それは必然的に「害虫」(これも人間中心的な考え方だが)にとってもおいしいものであり、害虫にやられないようにするために或る程度の農薬を使うのはやむを得ないこと、野生動物保護運動においては目立つ・人間から見て可愛いorきれいだと思われるような生物だけが取り上げられがちであり、目立たない昆虫類などが次々と姿を消していっている事実はさっぱり騒がれないこと、また例えばマンモスなどは全滅したわけだが、それで地球環境が壊滅的に悪くなったとか人間が困り果てたということはない、などなど、きわめてまっとうで、しかし市民的な環境保護団体が一向に目を向けないような側面への指摘が多くなされている。

本田良一 『イワシはどこへ消えたのか 魚の危機とレジーム・シフト』(中公新書、2009年)

 著者は北海道新聞記者。 本書は水産資源の危機的状況を分かりやすく説明し、それに対する対策を提言したものである。 日本の近海ではここ数年イワシが極端にとれなくなり、逆にサンマは豊漁になっている。 こういう現象は以前、魚種交代という用語で説明されていたが、現在は 「レジーム・シフト」と英語で言われるそうで、この現象がなぜ起こるのか、ではイワシはまた何年かたてば豊漁になるのか、といったことが専門家の知見をていねいに紹介しながら説明されている。 レジーム・シフトは海水温度の変化や乱獲など色々な要素が微妙に作用しあって起こっており、イワシについてはこのまま放置しておくと日本の近海では豊漁は期待できないという。 その上で、かつての日本の乱獲、現在の中国や韓国の乱獲を視野に収めて、水産資源を国際的に管理する時代になっているし、また実際そういう動きがかなり出てきていることを紹介している。 最後には消費者としてこの問題にどう対応すべきかも書かれていて、説得力に富んだ本になっている。

川端裕人 『緑のマンハッタン 「環境」をめぐるニューヨーク生活』(文芸春秋、2000年)

 下の本(↓)の続編的な性格を持っており、ニューヨークにおいて環境保護を訴える団体にどのようなものがあり、どのような人がその構成員であり、そこでどんな主張がなされているのかをルポしたもの。 ただしWWFのような大規模な団体は除外し、比較的小さな団体に焦点を絞っているが、実に色々な団体があって、その主張も多様であり、場合によっては――環境保護という点では一致していても――お互いに対立する場面も出てくる。 また、こうした団体の構成員は白人中流階層が圧倒的に多いし、また都会育ちが多いという、或る意味ではうなずける指摘もある。 「環境保護」をめぐってどんな主張があり得るのかを知るために、そしてアメリカの大都会でどのような 「運動」がなされているかを知るためにも、非常に貴重な本である。

川端裕人 『動物園にできること 「種の方舟」のゆくえ』(文芸春秋、1999年)

 アメリカの動物園の現状を報告したもの。 アメリカの動物園では単に珍しい動物を見せるだけではなく、野生で稀になった動物種を繁殖させたり、なるべく野生種と類似した環境で育てたり、といった傾向が強まっている。 それは一方ではエコロジーの流行により野生動物を保護せよ、或いは野生動物に限らず 「動物の権利」を訴える声が強くなってきていることへの対応なのである。 また、動物園を介して観客に野生動物について勉強してもらう、という方向性もあるという。 もっとも、動物園にやってくる人たちの大多数はそういったマジメな問題には無頓着で、ただ単に珍しい動物を見物して楽しみたいと思っているのだ、という事情も書かれていて、バランスのとれた記述になっている。 なお、日本の動物園が、飼育環境だけでなく、繁殖技術だとか飼育動物を長生きさせる技術において、アメリカと比べてきわめてお寒い状況にあるということも最後に指摘されている。 良書である。

リッカルド・カショーリ/アントニオ・ガスパリ 『環境活動家のウソ八百』(洋泉社新書y)798円

 第4章の「地球紳士録」が必読である。 グリーンピースやWWF(世界自然保護基金)といった環境保護団体の内幕をあばき、痛烈な批判を浴びせている。 例えば、グリーンピースは内部のカネの流れがきわめて不透明で、この団体の上部にいる人間が楽な暮らしをするために活動しているとしか思われないとか、一般には穏健な団体と見られがちなWWFの内部にはエコテロリズムを容認する意見があるなど、一般には善玉的なイメージで捉えられがちな環境保護団体のダークな部分が見えてくる。 ただし、これはまだほんの端緒で、環境保護団体の内幕については、さらに詳細な調査が必要と思われる。

田中淳夫 『森林からのニッポン再生』 (平凡社新書、2007年) 780円+税

日本の森林や林業について分かりやすく書かれた本である。 一般人の思いこみを次々と是正してくれる。 例えば自然林よりも人工林のほうが多様な生物が住んでいるとか、人の手を適切に加えることによって森の樹木は健全に育つとか、日本の国土の森林率は江戸時代より現在の方がはるかに高いとか、外材は日本の木材より必ずしも安価ではないとか、色々と教えられるところがある。

 さらに著者は山の中の野生動物のあり方、特にその数の数え方に誤りがあったことが明らかになってきたことを指摘し、人間と自然と敵対物と考える思考法にまったをかけ、自然とは変わるものであり、人間が存在することによって自然が変わることは決して悪いことではなくむしろ自然で健全なことなのだと説いている。 たいへん面白い。

田中淳夫 『割り箸はもったいない?――食卓からみた森林問題』 (ちくま新書、2007年) 680円+税

 10年以上前、割り箸は森林資源を減らすから使うのはやめましょう、という運動があった。 新潟大学生協なんかもその一翼を担っていて、当時私は生協理事になったばかりであったが、会議なんかに出ると、「割り箸を使うのをやめなくては」 と力説する理事がいたりした。 私はへそまがりだからそういう運動には懐疑的であったけれど、結局生協はそのせいで食堂の箸を合成樹脂製に変更した。 その後、割り箸は別段森林資源を減らさないということがはっきりしてきたのに、生協はあいかわらず合成樹脂の箸を使っている――ただし麺類は合成樹脂の箸では食べにくいので、使いたい人は割り箸が使えるように置いてはある。

 そして最近になってまた日本は割り箸のせいで途上国の熱帯雨林を減らしているから自分で塗り箸を持ち歩くべきだと主張する人が出てきているらしい。 本書は、割り箸の製造元などを調べて、割り箸が日本や外国の森林資源を減らすという説に根拠がないことを明らかにするとともに、割り箸というものの奥深さにも蘊蓄を傾けている。 根拠のない環境保護運動に左右されやすい人には一読をお薦めする。 麺類にはやっぱり割り箸が一番だよ!

平田剛士 『なぜイノシシは増え、コウノトリは減ったのか』(平凡社新書、2007年) 740円+税 

 著者は環境問題を中心に活動を続けるジャーナリスト。 この本は日本の野生動物にさまざまな角度から光を当てている。 ある章ではコウノトリ増殖のように一度失われた生存環境を復活させようとする試みを紹介し、別の章ではアライグマのように外国から侵入してきた野生動物を駆逐する努力を紹介するなど、日本の野生動物が決して一様ではなく、その数やさまざまな状況のもとで増やそうとされたり減らそうとされたりしていることが分かる本である。

 風力発電が渡り鳥の移動を妨げている可能性があるという指摘など、「地球に優しい」 のもなかなか利害調整が内変なのだということも分かるし、増えすぎたシカを有効利用するには単に肉を食べるだけではなく皮の使い方も考えていく必要があると指摘するなど、なかなか有益な本である。

福田直子 『ドイツの犬はなぜ吠えない?』(平凡社新書、2007年) 740円+税 

  タイトルがあんまり良くない。 せめて内容がよく分かるような副題をそえておくべきだった。 しかし内容は非常によい本だ。

 タイトル通り、ドイツの犬が余り吠えないのはなぜかという話から始まるのだが、犬のしつけ方に関する話題では終わらず、ドイツ、ひいてはヨーロッパ全体の動物との付き合い方やその問題点などにも広く言及しており、色々と教えられることが多い本。

 特に動物保護団体の活動と、それが一般市民からどう受け取られているかというあたりの記述は、自然保護運動と市民との関係について考えようとする人にとっては必読部分と言えるだろう。

ボリア・ザックス 『ナチスと動物』(青土社、2002年) 2600円+税

ナチスと言えば、ユダヤ人やロマ民族(ジプシー)を虐殺したことで知られている。 そうであるからには動物に対しても残虐非道で手当たり次第に殺しまくったのではないか、と思う人もいるだろう。

 しかし、実際は逆であった。 ナチスの動物政策は 「先進的」 で 「配慮が行き届いて」 おり、戦後の西ドイツにもそのまま受け継がれ、のちに改訂がなされたがそれはナチスの動物法があまりに 「動物寄り」 だったからである。

 動物を大切にすることとユダヤ人を虐殺することはナチスにとってはいささかも矛盾しておらず、それどころか彼らの世界観の中では首尾一貫した行為だったのである。

 それは、エコロジーという言葉が、そもそもは 「環境保護」 ではなく 「生態系」 の意味であり、そうしたエコロジーこそがナチスの世界観としっかり結びついていて、エコロジー的な世界観に従うなら動物は人間の手で保護されなければならず、ユダヤ人は人間のできそこないだから殺さなければならなかったからなのである。

 そしてそれはナチスだけの問題ではない。 今日の 「市民社会」 のエコロジーも、決してナチズムと無縁ではないことを予感させてくれる書物なのだ。

 

ハリエット・リトヴォ 『階級としての動物』(国文社、2001年) 4000円+税

 今日、英国は一般には動物保護に熱心な国というイメージがある。 しかし昔からそうだったのではない。 昔の英国は、逆に、動物を乱暴に扱う国というイメージがあった。

 やがて動物保護を立法化して今日の英国の礎が築かれるのであるが、そこに入り込んでくるのが、階級差別である。 家畜を大切にしなくては、という場合、その負担は家畜を扱う階級、つまり下層階級にかかってくる。 上流階級は自分では家畜の世話はしないから、直接利害関係は生じない。

 こうして、一方では家畜を大切にと唱えつつ下層階級の人間には厳しい制約を課す一方で、上流階級のたのしみである狩りの対象となる動物(キツネやライチョウ)は全然保護しない、という奇妙きてれつな法律ができていった。

 また、19世紀は帝国主義時代で、英国はインドなどを植民地化していたが、そこでも、野獣を狩るのは英国人だけの権利で、それは野獣狩りはスポーツだから崇高であり、一方で現地人の野獣狩りは食物にするためだからイケマセンという、今から考えるとわけの分からない価値観がまかりとおっていたのである。

 というわけで、動物保護法やそれに伴うイデオロギーには色々な側面があるのだということが分かる書物である。

 

林良博/近藤誠司/高槻成紀 『ヒトと動物 野生動物・家畜・ペットを考える』 (朔北社) 2400円+税

 人間と動物の関係を考えていこうとの目的で作られた 「ヒトと動物の関係学会」 という学会がある。 そこの主要メンバー3人が執筆した本。

 捕鯨についても多少触れられてはいるが、むしろこの本の眼目は、動物と言っても家畜とペットと野生動物では異なるし、また昔に比べてペット以外の動物と人間が身近に触れあう(これには殺すという場合もあり)機会が減っているので、ヒトと動物の関係を色々な方面から探り、その正しいあり方を模索していこう、というもの。

 例えば、野生サルによる農地への被害は近年増加している。 なぜか。 それは農業地に若い人がいなくなって、サルにとって農地が怖いものではなくなったからだという解釈が述べられていて(123ページ)、シロウトは 「あっ」 と思うだろう。 つまり、野生動物とヒトとの関係はけっして固定的なものではなく、ヒト側の変化によって変わってくるのだ。 カラスが近年異常に増加していることも、同様に人間側の問題が大きい。

 また、欧米では野生動物と家畜との差が大きいのに対し、日本やアジアでは差が小さいことが、動物へのヒトの態度の差に関わってくるという指摘もあって、これまた「なるほど」と唸らされる。 つまり、動物とヒトとの関係は決して一律に決められるものではなく、文化的な差異が関係してくるのだ。

 このように、農学者の指摘は、ふだんペット以外の動物と関わりがあまりない一般人にとって、たいへん示唆に富んでいるから、是非一読してほしい。

(以上、2005年9月5日)


 

伊勢崎賢治 『NGOとは何か――現場からの声』(藤原書店、1997年) 2800円 

 開発や環境問題でNGO(Non-Governmental Organization:非政府組織)という言葉がマスコミを賑わすようになって久しい。新聞などの論調は、政府の硬直化した政策を批判しNGOの役割を評価する場合がほとんどである。

 しかし、私はかねてからNGOに対するマスコミのこうした一方的な評価に疑問を感じてきた。

 捕鯨問題に見られるように、特定の動物を可愛いとしてその捕獲を批判する一部のNGOは、白人の権利のみを主張し有色人種を攻撃したKKK団と同じではないだろうか。

 KKK団もいうならば非政府組織である。KKK団はNGOだから素晴らしい、と言う人は、KKK団員以外にはいないだろう。

 非政府組織であるからこそ偏見に染まったり非常識な行為に走ったりすることもある。NGOだから素晴らしい、のではなく、どういうNGOなのかを個々の組織について吟味すること、これが肝腎なのだ。   

 前置きが長くなったが、これはNGOの実態について書かれたショッキングな本である。どうショッキングなのかって? 読んでもらえば分かるが、ごく一部内容を紹介すると――

 

 ・民間団体による「人道的」な低開発国援助は、ファシズムに近い。

 ・献身的な修道女が世界中から募金し低開発国で経営する病院は、現地にとってありがた迷惑である。

 ・アフリカに派遣されたNGOのアメリカ人の中には、腰の立たない年寄り、現地でボーイフレンドを探す娘や若い伴侶を見つけようとする老人、バイク旅行に出かけてしまう青年などが含まれている。

 ・日本からボランティアで出かける技術者や専門家程度の人間は、ほとんどの場合、現地人の中にも存在する。

 ・NGOの活動は内政干渉になりやすい。

 ・野生動物保護を訴えるNGOは、干ばつでアフリカ人がばたばた死んでも知らん顔だが、象のヘリコプター輸送には湯水のごとく金を注ぎこむ。

 

 ――どうです、衝撃を受けましたか?

 それでも「善意」に満ち満ちた君は、「こんな本を書く奴はひねくれ者で、自分は安楽椅子に寝ころんで他人の揚げ足とりばかりやっている人間だろう」と言うかも知れない。そうではない。著者の伊勢崎氏は、某NGOに長らく勤務し、NGOの実態を自分の体で知り尽くした人なのである。だから君が見習うべきは、NGOの活動に従事しつつ同時にNGOへの厳しい批判を忘れない氏の姿勢なのだ。

 多分、NGOを無条件に賛美したりするのは、安楽椅子に寝ころんでいる人の方かも知れないね。

                                              (新潟大学生協発行・書評誌『ほんのこべや』第14号〔98年春〕掲載)
                            


 

鎌田慧 『ドキュメント 屠場』 (岩波新書、1998年) 640円

 私たちはふだん野菜・魚・肉などを食べて生きている。その肉はどうやって「生産」されるのか。

 「生産」なんて、クルマや電気製品じゃあるまいし、変な文句だと思う人は、鋭い。言うまでもなく、牛や豚や鶏は食料にするために育てられ、殺され、スーパーや食肉店で売られるような形に「加工」されるのだ。

 その牛や豚を専門的に屠殺し加工する人たちを取材したルポルタージュがこの本である。彼らのプロフェッショナルとしての技能とプライド、食肉「生産」に関する様々な問題点、そして市井の人間が屠殺のプロに対して抱く差別意識などが、平明な文章で興味深く綴られている。

 先日新聞に面白い記事が載っていた。ミッション系の学校で鶏を殺して肉に加工させる授業をやったところ、生き物を殺すことを生徒に教えるとはケシカランという抗議が親から舞い込んだ。応対した教諭は、自分で殺すのと、他人が殺したものを食べるのとで違いがありますかと答えたという。

 これに限らず、世の中には様々な職業があり、その中には表面上殺戮や汚れにつきまとわれるものもある。しかし私たちがその産物を利用する限りは、殺戮や汚れは私たちの生活の一部分なのだ。生きるということはそうした残酷さを引き受けることである。自分の手を汚さずきれいごとを並べるような人間にならないためにも、一読をお勧めする。 

                                              (新潟大学生協発行・書評誌『ほんのこべや』第16号〔99年春〕掲載)          


ジャニス・ヘンケ(三崎滋子訳) 『あざらし戦争 環境保護団体の内幕』(時事通信社、1987年)1300円

 今マスコミを最も賑わしているのは環境問題でしょう。しかし、何が真に環境のためになるのか、君は考えて行動しているでしょうか。

 例えばワリバシは木材乱伐につながると言われた時期がありましたが、これはかなり怪しかったようです。キャンペーンに踊らされてワリバシをやめた君は、単に環境保護に貢献しなかっただけではなく、零細なワリバシ業者に収入減や失業をもたらしたかも知れないのです。

 環境問題の一つに野生動物の保護がありますが、これも冷静さを欠いた感情論が横行しがちな分野でしょう。捕鯨問題もその一つですが、これは日本が当事者であるだけに逆に論じにくいところがないでもありません。

 そこで鯨をあざらしに置き換えて問題を考えてみましょう。北米のあざらし猟が動物保護団体の攻撃にさらされ、狩猟業者が多数失業するにいたった事件を、この書物は生々しくとらえています。

 無知な子供に「かわいそうなあざらしを助けて」という手紙を書かせたりする手口は、捕鯨問題と全く同じと言えます。

 環境保護団体の内実を知り、大衆化時代のマスコミの世論操作のあり方を考える上でも興味深い本と言えましょう。

                                                (新潟大学生協発行・書評誌『ほんのこべや』第3号〔92年秋〕掲載)

 

 

田中淳夫『「森を守れ」が森を殺す』(新潮OH!文庫)562円

 このたび創刊された「新潮OH!文庫」の第一陣として出た一冊である。 森林についての一般人の誤解を正し、ほんとうに森林を守り自然環境を維持するにはどうすればよいのかを説いた、たいへん啓発的な書物と言える。

 最初にクイズを出そう。江戸時代と現代の日本を比較して、どちらの森林率が高いか。 大部分の人は「そりゃ、江戸時代に決まっている」と答えるだろう。 しかし正解は、現代なのである。 そればかりか、現代の森林率は有史以来最高、とこの本は教えてくれる。 なぜかといえば、明治以降、植林がきちんと行われるようになったからだ。

 このことからも分かるように、森林は放っておけば自然にできるとか保たれるというものではなく、人が丹念に手をかけることにより生長が早くなり健全な形で維持されるのである。 原始林の木を一本たりとも切らなければ自然保護になるといった、都会人にありがちな考え方がいかに誤っているか、身勝手な自然のイメージを林業に携わる人々に押しつけるものでしかないかが、非常に分かりやすい筆で説明されている。

 かつて、森林資源の無駄使いだとして、割り箸が槍玉に挙げられたことがあった。 これが誤りであることはその後比較的知られるようになったが、本書は改めて割り箸の使用が森林保護を妨げないことを明快に論じつつ、この誤った運動が自然保護団体WWFにより提唱されたという事実を指摘している。 自然保護団体が非科学的なイデオロギーに左右されてはいないか、我々も注意する必要がありそうだ。

 このほか、森林は酸素の補給源だとか、森林は水分を保持するから自然のダムだというような、一般に行き渡っている多数の「常識」がこの本では否定されている。 自然保護はシロウトの思いつき的な運動によるのではなく、専門家の指導下、正しい科学的知識をもとに行われなければならないのだと痛感させられる一冊である。

                                                                     (2000年10月31日掲載)

 

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