映画評2010年

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 2010年に見た映画をすべて紹介。 5段階評価と短評付き。

  評価は、★★★★★=今すぐ映画館に駆けつけるべし (大傑作につき見ないと一生の損)。 ★★★★=十分な満足感が得られる (いい作品だから見てごらんよ)。    ★★★=平均的 (見て損はない)。 ★★=劣る (カネと時間が余ってたらどうぞ)。 ★=駄作 (カネをドブに捨てるようなもの)。 ☆は★の2分の1。

 

160.「バーレスク」 12/30、WMC新潟。 評価★★★★☆ アメリカ映画、スティーヴ・アンティン監督作品。 田舎からロサンゼルスに出てきた女の子が、バーレスクというクラブで最初はウェイトレスとして働きながらも、やがてチャンスをつかみ歌手として認められていく過程を描いている。 主演クルスティーナ・アギレラが存分に歌い踊っているのに圧倒される。 シェールもクラブの所有者として登場して歌を披露している。 物語の筋書きは単純ではあるが、ヒロインが田舎出で素朴な性格という設定がかえって歌や踊りのシーンとマッチして、映画としての満足度を高めているようだ。 この映画は映画館で、大きな画面と大音響で見ないとその魅力は分からないだろう。 アギレラ・ファンはもとより、私のようにこの映画を見るまではアギレラの名前すら知らなかった人にもお薦めである。 2010年の映画鑑賞の締めくくりとして、文句のない秀作と言える。

159.「瞳の奥の秘密」 12/29、シネ・ウインド。 評価★★★★ アルゼンチン・スペイン合作、ファン・ホセ・カンパネラ監督作品。 今年のアカデミー賞外国語映画部門賞受賞作。 アルゼンチンの司法捜査局に勤務していた男が、定年になってから70年代の事件を振り返り、未完にとどまっていた事件の真相を突きとめようとするという筋書きである。 そこに、男と、上司である女性の恋愛感情がからまっている。 男が定年に達した現在と、事件が起こった70年代とが交錯しながら映画は進行するが、作りそのものはかなり古いというか、事件が起こった70年代の映画かなと思えるようなシーンや設定が目立つ。 或る意味、安心して見ていられる映画だが、事件の真相はともかくとして、男女関係だとか、人物の動きだとかいった部分についてはきわめて保守的な作りがなされており、それで満足できる人とそうでない人とに分かれそうだ。

158.「裁判長! ここは懲役4年でどうすか」 12/27、シネ・ウインド。 評価★★★☆ 豊島圭介監督作品。 映画の脚本を書くために裁判所の傍聴をすることになった男が、そこで傍聴マニアと知り合いになって、裁判の面白さを教えられ、また美人検事を見初めてその裁判を頻繁に傍聴するようになっていく様子を描いている。 最後には傍聴だけでは満足できず、冤罪と思われる事件に積極的に関与していくのだが・・・・。 裁判の映画だけど、かなり娯楽を意識して作られているので、構えず気軽に見ることができる作品である。 美人検事にサディスティックな取り調べを受けることを主人公が妄想するシーンは笑えるし、その他、裁判官や弁護士の人ごとの個性が描き分けられているのが楽しい。 裁判も人間的なのだ。

157.「バグダッド・カフェ (ニュー・ディレクターズ・カット版)」 12/27、シネ・ウインド。 評価★★★☆ ドイツ映画、パーシー・アドロン監督作品、1987年製作。 日本では1989年に公開された映画で、今回はニュー・ディレクターズ・カット版として改めて上映されているのだが、私は初めて見た。 アメリカの砂漠地帯を舞台に、そこでモーテル兼カフェ兼ガソリンスタンドを営業する女主人と、ドイツからやってきて夫と喧嘩別れした中年女性との奇妙な友情を描いている。 筋書きらしい筋書きはあまりなく、タイトルになっているカフェに出入りする人々の様子だとか、交流だとか、いざこざだとかが、何となく続いていく内容である。 正直言って途中でちょっと眠くなったが、しかし同時に変な魅力もあって、映画の作り方としてこういうのもアリだな、と痛感させられた。

156.「武士の家計簿」 12/23、UCI新潟。 評価★★★ 森田芳光監督作品。 加賀藩で代々そろばんをもって会計の仕事をする家系に生まれついた武士 (堺雅人) の生涯を描く映画。 刀でなく、そろばんで勝負するというところがミソなのだが、最初は会計簿を精査することで米の横流しを見破って上司に訴えたりして、そろばんで勝負してるなと納得できるのだけれど、そのうちに話は家庭内のことだとか、ホームドラマ風になっていき、まあそれでも面白くないとは言えないけれど、そろばんを武器にしているからにはもう少しそういう話があってもいいんじゃないかなあ、とやや不満を覚えました。 それにしても堺雅人の母役の松坂慶子、太りましたね。 私と同じ年齢なんですが――別にだからどうってこともないんだけど(笑)。

155.「最後の忠臣蔵」 12/20、WMC新潟。 評価★★★★ 杉田成道監督作品。 忠臣蔵の話は誰でも知っているが (最近はそうでもないかな?)、その後に話の続きがあったという映画。 討ち入りに参加したのは47士だったが、実はそのうち1人 (佐藤浩市) は生き延びて遺族のケア (という言い方は現代的すぎか?) にあたっており、しかもそれとは別に、討ち入り直前になって大石蔵之助の命令で別の使命を果たすために戦線を離脱した武士 (役所広司) がいた。 その理由は大石蔵之助に隠し子が生まれたことであった・・・・・てな筋書き。 なかなか奇抜な設定だけど、映画の運びは淡々としていてケレン味がなく、隠し子が成長した役を演じる桜庭ななみも可愛いし、後半はやや展開が予定調和的すぎ、またもう少し簡潔に終わらせられなかったのかという気もするけれど、日本の時代劇映画に新しい一作が加わったと言っていい佳品ではないだろうか。

154.「ロビン・フッド」 12/14、UCI新潟。 評価★★★☆ リドリー・スコット監督作品。 ロビン・フッドの伝説は日本でも知る人ぞ知るところだが、この映画はロビン・フッドがイングランドの森に仲間たちと隠れ住むようになるまでの経緯を扱っている。 といっても、話はチャールズ獅子心王に率いられての十字軍遠征から戻ってきたあたりから始まり、訳あって死んだ騎士の代役としてその騎士の故郷に向かったロビンが、故人の老父と妻に出会い、彼らの苦境を救うというふうに物語は運ぶ。 この妻がマリアンだという設定なのである。 ・・・・・・まあ、元の素材自体が架空の話だから、どう料理しようと勝手とも言えるけれど、主役ロビンがラッセル・クロウというのはやや年が行きすぎている気がするし、まして恋人マリアンが寡婦であり演じるのがケイト・ブランシェットというのは、私の好み及びマリアン・イメージから離れすぎている。 そのほか、リトル・ジョンを初めとするロビンの仲間たちも、単なるロビンの子分扱いで、個性が出ていない。 ――と、かなり批判的なことを書いたが、ロビン・フッドの話ではなく十字軍から帰還したイングランドの一騎士の物語だと思えば、映画としては結構面白いし、娯楽作品としてはそれなりの水準に達した作品だと思う。

153.「ノルウェイの森」 12/13、UCI新潟。 評価★★☆ トラン・アン・ユン監督作品。 言わずと知れた村上春樹の原作を映画化したもの。 私は村上春樹があまり好きではなく、その理由は読んでも歯ごたえが感じられないからであるが、この映画も歯ごたえがないという点では同じで、しかし村上ファンからすると歯ごたえの無さが魅力につながるのかな、なんて思いながら見ていました。 映像は、特に風景描写が素晴らしく、私は主としてその面で評価できるかなと感じた。 登場人物の関係とか性格には、どうにもリアリティを感じ取れないので。

152.「七瀬ふたたび」 12/10、Tジョイ新潟万代。 評価★★★ 筒井康隆原作、小中和哉監督作品。 人の心を読む能力を持つ美少女・七瀬 (芦名星) が、他の超能力者たちと一緒に暮らしているが、何者かが超能力者狩りを開始し、しだいに追いつめられていく、という筋書き。 原作は昔読んだけど、超能力者がその能力を活かして悪をやっつけるというような通俗的なストーリーではなく、逆に能力故に追いつめられていくという暗い筋書きなのに強い印象を受けた。 そういう暗さはこの映画にも或る程度出ているが、映画なので多少救いが出るように変更が加えられている。 タイムトラヴェラーである藤子役のサトエリ (佐藤江梨子) が、なかなかいい雰囲気を出していて魅力的。 芦名星はキレイだけど、なんかもう一つ色気がないというか、男を惹きつけるところに欠けている気がするけど、それはまあ私の好みということで。

151.「名前のない女たち」 12/6、シネ・ウインド。 評価★★★☆ 中村淳彦原作、佐藤寿保監督作品。 人付き合いが下手で母からも虐待されている若いOLが、街角で勧誘されてAV業界に入り、そこで仮構の人物像を演じるが、やがてその人物像に成りきってしまい・・・・・。 131の 「nude」 と同じようなテーマを扱っている作品だけど、私にはこちらのほうが面白かった。 単なる業界のお話ではなく、そういう業界に入ってしまう女の子の生きづらさみたいなものが捉えられているだけでなく、そこから弾けた感じがあって、それが作品としての質感を高めている。 ヒロインの安井紀絵がかわいい。 また、彼女と一緒に仕事をする元スケバン (佐久間麻由) もいい味を出している。 一見するとコワそうだけど、実はヒロインを陰でサポートしつつ、自分なりの悩みをかかえている。 そして二人とも全部脱いだ姿をさらしているのもいい。 やっぱり女優は脱がなくちゃ(笑)。

150.「日本のいちばん長い夏」 12/3、Tジョイ新潟万代。 評価★★☆   倉内均監督作品。  昭和38年に 『文芸春秋』 誌上に掲載された座談会を再現した映画。 出席者は、敗戦時に政府の中枢にいた官僚や軍人、外交官、のちに作家や学者となる大岡昇平や会田雄次、NHKアナウンサー、沖縄でアメリカ軍上陸を目の当たりにした女性、などなどである。 話し合われる内容は、敗戦色濃厚となった段階でソ連の仲介に望みをかけたがそれが空しい希望で、ポツダム宣言が出たときにすぐ受諾できず、その後も色々もめていた様子などである。 ただ、こういうテーマを当時の政治家や軍人の争いを映像化して描くならともかく、座談会そのものを後世に、各人物に役者を決めて映像化するということの意味が、もう一つ伝わってこない。 また、役者には現役のジャーナリストやアナウンサー、作家、マンガ家、アニメーター、などなどが登場しており、まあそういうところが面白いという見方もできそうだけど、少なくとも私には、どこかで余興としてやるならともかく、カネをとって上映する映画にするほどのものなのか、疑問が残った。

149.「行きずりの街」 12/1、Tジョイ新潟万代。 評価★★☆ 志水辰夫原作、阪本順治監督作品。 主人公はかつて高校教師をしていた中年男(仲村トオル)。 彼はわけあって高校を辞め、また教え子だった妻 (小西真奈美) とも別れ、故郷で塾教師をしていた。 ところが塾の教え子だった女の子が上京して失踪してしまい、彼女を捜すために上京し、やがてかつての妻とも再会、教え子の行方も突きとめかけるのだが・・・・。 教え子の失踪とかつて高校を辞めた事情とがリンクしていくという設定だけど、率直に言ってさほど面白いとは思えない。 小西真奈美がベッドシーンを披露しているが、なんかそのラブシーン自体が盛り上がりに欠けている感じ。 監督の腕に疑問を感じる。 

148.「レオニー」 11/29、UCI新潟。 評価★★★ 松井久子監督作品。 アメリカに渡って名をなした詩人野口米次郎と結ばれ、のちに彫刻家として有名になるイサム・ノグチを生んだアメリカ女性レオニーの半生を描いた映画。 ヒロインを演じるエミリー・モーティマーがなかなかいい演技を見せている。 第一次大戦から第二次大戦にかけての頃の日米の風俗や時代相も興味深い。 女の一生 (半生) ものとしては悪くない出来であろう。 ただし視点はあくまで女性なので、男の描き方はあんまり中身がつまっていないという感じがした。 女性映画の限界と言ったら失礼かな。

147.「ちょんまげプリン」 11/24、UCI浦和。 評価★★★☆ 中村義洋監督作品。 新潟にも来たのだけれど短期間の上映で見損ねており、やっと首都圏で見ることができた。 江戸時代からタイムスリップして現代に来てしまった若侍 (錦戸亮)。 彼と出会ったのは離婚して幼稚園児の息子を育てているシングルマザー (ともさかりえ) だった。 やむを得ず彼女のマンションに居候することになった侍は、やがてお菓子を作る才能を開花させ、母子とも愛情で結ばれてゆくのだが・・・・・。 現代的な問題を織り込みながら、深刻になりすぎず、起承転結をきっちりつけて、後味も悪くなく、結構よくできている映画なのではないかと思う。

146.「わたしの可愛い人 シェリ」 11/23、ル・シネマ(渋谷)。 評価★★★ 仏英独合作、スティーヴン・フリアーズ監督作品。 フランスの作家コレットの原作による。 20世紀初頭 (第一次大戦以前)、中年高級娼婦 (ミシェル・ファイファー) が仲間の娼婦に頼まれてその息子である若者 (ルパート・フレンド) と長期的な関係を持つが、やがて彼は若い妻を迎えるために別れとなる。 しかし双方とも相手が忘れられずに・・・・・というようなお話。 19世紀フランスの花柳界が興味深く、母と息子のような年齢差がありながらしかし愛人同士となる男女の愛憎が面白い。 庭などの景観の美しさも悪くない。 ドラマティックな展開はないものの、淡々とした進行にはかえって一種の真実味がこめられているようだ。

145.「乱暴と待機」 11/22、テアトル新宿。 評価★★   本谷有希子原作、冨永昌敬監督作品。 出演は浅野忠信、美波、小池栄子、山田孝之。 覗きをテーマにした作品らしいのだけれど、うーん・・・・・、率直に言って全然面白くなかった。 覗きという行為につきまとうスリルもないし、かといって覗かれることから来るエロスも不十分。 山田と小池の演じる夫婦もありきたり。 小池の過激さだけがかろうじて見るに足る。 なんでこんな駄作を作ってしまうんだろうかなあ。 駄作を喜ぶ観客もいるからかなあ・・・・なんて思いました。 

144.「マリア様がみてる」 11/21、池袋テアトル・ダイヤ。 評価★★★ ライトノベルが原作だそうで、寺内康太郎監督作品。 ミッション系の女子高=お嬢様学校を舞台に、上級生と下級生のスール (シスター) 関係だとか、学園祭で演じる 『シンデレラ』 をめぐるごたごたなどを描いた、乙女チックな映画。 ヒロインを波瑠が演じており、そのほか色々なタイプの女の子が登場するので、女の園のお話が好きな人――実は私もそうだが――には十分楽しめる映画だと思う。 校舎もアンティークで、ちょっと現代ばなれした雰囲気があるけど、他方で登場人物の行動様式には今風のところもある。 しかし男の要素を排除しているのは、こういう映画の常道で、その辺はきちんと守られており、唯一登場する男子高校生 (『シンデレラ』 で王子様役を演じる) もこのルールを破らないようにできているのである。 

143.「ノーウェアボーイ ひとりぼっちのあいつ」 11/20、みゆき座(日比谷)。 評価★★★★ 英国映画、サム・テイラー=ウッド監督作品。 ビートルズのジョン・レノンの青春時代を描いた映画。 彼は訳あって実の母ではなく伯母に育てられたのだが、あるとき実の母に会いに行き、彼女からロックンロールを教えられる。 とだけ書くと実の母がミュージシャンとしての彼を生んだという単純なお話になりそうだが、この実の母が娼婦的な女性で、なぜジョンが伯母に育てられるようになったのかについても、またその後の実母の人生行路についても、色々問題があるのである。 そうした二人の母を持つ中でジョンは育っていったわけだけど、考えようによっては異なるタイプの母二人を持つという幸運に恵まれたとも言えるし、女性に甘える癖はそうした中で培われたとも言えるのではないだろうか。 ジョンの不良性や、ポールやジョージと知り合う過程も描かれていて、全体として悪くない出来の映画になっていると思う。

142.「ゴースト もう一度抱きしめたい」 11/19、WMC新潟。 評価★★☆ 大谷太郎監督作品。 ハリウッド映画「ゴースト」のリメイク。 ただしあちらとは逆に女の方がゴーストになって恋人を守るというお話。 ヒロインは松嶋菜々子、その恋人役は韓国から日本に陶器作りを学びに来ているという設定のソン・スンホン。 主役二人は美人と美男で視覚的には申し分ないけど、脚本がやや薄手で展開が読めるし、二人が仲良くなったり、一方の死後に相手を救うための工夫などにどうも説得性がイマイチ乏しいのである。 せっかくリメイクをするなら本家を凌ぐものを作って欲しかったけど、返り討ち(?)にあったみたい。

141.「あの夏の子供たち」 11/12、シネ・ウインド。 評価★★★☆ フランス映画、ミア・ハンセン=ラブ監督作品。 映画のプロデューサーが、綱渡り的な資金繰りの中で仕事をしてきたが、ついに万策尽きて膨大な借金が払えなくなり、自殺するまでが前半の筋書き。 途中で彼が家族サービスで旅行に行くシーンもあるが、前半は散文的な展開で、映画プロデューサーの雑然とした日常を雑然と追っている。 注意してみていないと何が描かれているのかも分からないくらい雑然としているのだが、そこが独特の味になっている。 後半は自殺した夫=父を家族が追憶したり、かつて別の女性との間に子供を設けていた過去が分かったりするなど、物語的な展開ははっきりしてくるが、その分普通の作品になっているような印象がある。 ただし後半、長女役のアリス・ド・ランクザンが表に出てくるのだが、なかなかチャーミングな美少女で、今後が楽しみである。

140.「BOX 袴田事件 命とは」 11/12、シネ・ウインド。 評価★★★★ 高橋伴明監督作品。 1966年、静岡県清水市で起こった放火殺人事件の犯人として逮捕され裁判で死刑が確定した袴田被告が冤罪であると主張した映画である。 この事件については冤罪だという声が以前から強く、本も出ているようだが、私はほとんど知らず、この映画であらましを知った。 自白を強要する常識はずれの長時間の取り調べや、裁判が始まってから発見された証拠衣類など、不審な点が多すぎる事件であることがよく分かる。 また、一審で裁判にあたった裁判官3人のうちの1人はのちに裁判の内情を暴露し、自分は無罪を主張したということを明らかにしている (合議制では全員一致が原則なので、表向きは3人一致で有罪)。 この映画でもその裁判官が一方の主人公である。 冤罪について、また日本の裁判についても考えさせられる点で、非常に有用な映画だと思う。

139.「さらば愛しの大統領」 11/10、Tジョイ新潟万代。 評価★★ 世界のナベアツ+柴田大輔監督作品。 世界のナベアツなるお笑い芸人――テレビを見ない私は名前も知りませんでした――が主演で作られた喜劇。 大阪が独立国になり、その初代大統領に世界のナベアツがなる、というような筋書き。 もともと筋書きよりはギャグで見せる映画、というかそのはずの映画なんだけど、前半はほとんど笑えなかった。 もっと破壊的に笑いに引きずり込むような迫力のある作品かと思っていたので、いささか幻滅。

138.「マチェーテ」 11/10、Tジョイ新潟万代。 評価★★★ アメリカ映画、ロバート・ロドリゲス+イーサン・マニキス監督作品。 いわゆるB級映画で、刺激的なシーンが次から次へと出てくるし、展開はかなり恣意的ではちゃめちゃだが、見ていて楽しめることはたしか。 もっとも、アメリカのヒスパニック系移民増加を批判する保守派への反撃といったテーマがひそんだ作品でもあるのだが、そのせいで辛気くさくなってはいないので、気にせずに映画館に行きましょう。 個人的には、ジェシカ・アルバがせっかく出ていながら露出度が少ない、というかゼロなのが、ちょっと残念なんだけどねえ(笑)。

137.「恋するナポリタン」 11/1、WMC新潟南。 評価★★★ 村谷嘉則監督作品。 幼なじみで、イタリア料理の達人である男 (塚本高史) と、全然料理ができずただ食べるだけのヒロイン (相武紗季)。 ヒロインは別のシェフと結婚することになるのだが、その直前、幼なじみに会おうとしたとき、真上から落下してきたピアニスト男性 (眞木大輔) がいて幼なじみに衝突、幼なじみは死んでしまう。 ところが、かろうじて生き残ったピアニストが意識をとりもどすと、意識だけが幼なじみのほうに変わってしまっていた。 そこで・・・・・。 というようなお話で、料理のシーンがやたら多く、見ているとどうしようもなくお腹が空いてきてイタリア料理が食べたくなってしまう映画である。 筋書きはありがちではあるけど、まとまりはいいし、後味もまあ悪くない。 相武紗季が花嫁衣装を着てチャーミングな姿を披露しているのもいい。

136.「遠くの空」 10/30、シネ・ウインド。 評価★★ 井上春生監督作品。 在日韓国人の祖母と母を持つヒロイン (内山理名) が、会社に移籍してきた中年韓国人男性 (キム・ウンス) に興味を持ち、一緒に散歩したりするうちに、意外な方向に・・・・・・というようなお話。 中年韓国人は1980年の光州事件での心理的傷を背負っているという設定でもある。 ただ、そういう設定があまり生々しくなくて、何かアクセサリーのように感じられるのは、画像がキレイすぎるからだろう。 物語に脚本家が担わせたかった重みを、映像が裏切っているのだ。 また、脚本にもどこか辻褄合わせの綺麗事の趣きがあって、決して上出来とは言えない。 失礼ながら、監督も脚本家ももっと修行を積んで欲しい。

135.「SP 野望編」 10/30、WMC新潟。 評価★★☆ 波多野貴文監督作品。 テレビ番組の延長線上で作られたらしく、テレビの方を見ていない私には 「?」 の部分が多かった。 それだけならまだしもだが、どうもアクション過多で、頭脳が過小なのである。 つまり観客の知的な興味を満足させる部分が少なすぎて、見ている間はまあまあワクワクするのだが、見終えた後、なんかスカスカの印象しか残らないのである。 うーん。

134.「ビルマVJ 消された革命」 10/27、シネ・ウインド。 評価★★★★ デンマーク映画、アンダース・オステルガルト監督作品。 軍政が続くビルマ (ミャンマー) の現状を、隠し撮りにより撮影し、映画化したドキュメンタリー。 当然ながら撮影者側には危険がつきまとい、バレれば逮捕で、悪くすると永遠に刑務所暮らし、また銃撃戦の場面もあるので、下手をすると銃弾に当たってあの世行きという可能性もある。 事実、撮影者が行方不明になっているらしいし、また作中には日本人ジャーナリストが銃殺されるという衝撃的なシーンもある。 とにかく生命をかけた映画作品であり、映画に興味のある方は必見だと思う。

133.「ヤギと男と男と壁と」 10/22、UCI新潟。 評価★ 米英合作、グラント・ヘスロヴ監督作品。 実際にあったアメリカ軍の超能力研究班を素材にした映画だそうだけど、全然面白くなかった。 画面には何一つ伝わってくるもの、惹きつけるものがない。 悪ふざけという域にも達しておらず、作る側がなんかの勘違いをしているとしか思えない。 下手くそな学芸会劇を見ているみたいで、とてもじゃないけど千円――で私は見たのだが――を投じるような作品ではない。 カネ返せ!!

132.「インシテミル 〜7日間のデスゲーム〜」 10/20、WMC新潟。 評価★★ 中田秀夫監督作品。 時給11万円という広告に釣られて集まった10人の人間が、ある建物に閉じ込められて7日間を過ごす。 やがて内部で殺人事件が起こるが、犯人は内部の人間の多数決で決める・・・・・。 非常識な設定が面白いかなと思える映画だけど、残念ながら途中の筋書き展開がかなり大ざっぱで、極端な設定を活かすことができていない。 豪華俳優を集めながら、彼らを十分に活かせてもいない。 似たような映画なら、『ライアーゲーム』 のほうがはるかに良くできているんじゃないかな。

131.「桜田門外ノ変」 10/18、UCi新潟。 評価★★★ 佐藤純弥監督作品。 江戸末期、井伊直弼が殺害された桜田門外の変を、まず殺害事件を最初に出して、次にそこに至るまでの過程とその後の経過とを交互に描いている。 問題はこの構成で、事件の先と後とを交互にというやり方がうまくいっているとは思えない。 登場人物も少なくないし、各藩との関わりだとか刻一刻と動く時代情勢だとかをはっきりさせるためには、普通に時間軸に沿ってドラマ化した方が良かっただろう。 とはいえ、歴史の皮肉と真っ向から向かい合った真摯な作品であることは間違いなく、スーパーヒーローが活躍する娯楽としての時代劇ではなく、まっとうな歴史劇を見たい人には十分満足できる映画だろう。

130.「nude」 10/16、シネ・ウインド。 評価★★★ 新潟出身の女優・みひろの自伝 (私は未読、というか、みひろという名も知らなかった) を映画化したものだそうである。 小沼雄一監督作品。 新潟県の高校を卒業した少女 (渡辺奈緒子) が上京し、渋谷でスカウトされてヌードモデルになり、やがてAV女優になるまでの過程を描いている。 業界内部の様子などはそれなりに面白いけど、新潟県に残ったヒロインの親友などがいかにも田舎田舎して描かれているのは、新潟県に30年間住んでいるワタシとしては 「やや型にはまってるんじゃないですか」 と言いたくなりますね。 そのあたりの作りがもう少ししっかりしていれば、東京で田舎出の少女がこういう道に入っていく過程もいっそうリアルさを増したのではないかなあ。 なお、マネージャー役の光石研も悪くない。 彼だって苦労してるんだろうな、と思わせるところがいい。

129.「ナイト&ディ」 10/15、WMC新潟。 評価★★★☆ アメリカ映画、ジェームズ・マンゴールド監督作品。 妹の結婚式に出席するために飛行機に乗ろうとしたヒロイン (キャメロン・ディアス) は、同じ飛行機に乗る青年客 (トム・クルーズ) と搭乗前に偶然2度もぶつかってしまう。 乗ってみると、満席と聞いていたのに空席が目立つ。 やがて飛行機の中では思いも寄らぬ出来事が・・・・・。 というところから始まって、普通の女性であるヒロインが超人的な活動を見せる青年とその敵との闘いに巻き込まれてしまう様子が描かれる。 次々と彼女の身に起こる出来事は観客を惹きつけて離さず、またアメリカから始まってオーストリーなどのヨーロッパの景観も出てきて、そういう面からも楽しめるように作られているエンタメである。 深く考えずにただ娯楽として映画を見たい人には大いにお薦めである。

128.「大奥」 10/11、UCI新潟。 評価★★★ コミック原作による金子文紀監督作品。 徳川吉宗将軍の頃の江戸。 その江戸に男だけがかかる伝染病が流行して男が激減、そのために将軍を始めとして世を動かす役は女という世界が到来したという仮構のもとに展開する時代劇。 女将軍の下には美男が多数仕える大奥があるという設定になっている。 つまり夜伽は美男の役目なのだ。 女将軍吉宗を柴咲コウが、貧乏サムライの家に生まれ大奥に仕えることになる青年武士を二宮和也が演じている。 そういう設定だけではなく、筋書きには一定のカラクリがあってそれなりに楽しめるけど、根本的なところで男女逆転の世界を活かすような映画になり得ているかというと、どうも少し足りなかったのではないか、という気もする。

127.「13人の刺客」 10/2、UCI新潟。 評価★★★   三池崇史監督作品。 昭和38年に作られた映画のリメイクだそうだが、私はそちらは見ていない。 周囲に害を及ぼす迷惑な若殿が、しかし将軍家の血筋であるという理由で重職に就こうとしている。 それを食い止めるには若殿を暗殺するしかない。 上役から依頼されてひそかに計画を練った武士 (役所広司) が、参勤交代で若殿が江戸から領地に帰る途中を狙って若殿殺害を結構する。 果たして参勤交代の200名の武士たちに、わずか13名の武士で挑んで意図を完遂できるのか・・・・・。 それなりに面白くできているけど、何て言うのかなあ、なぜ昭和38年のチャンバラを今どきリメイクしなければならないのか、その辺が映画を見ていてよく分からなかった。 時代劇といえども一種の現代劇、そこには作られた時代の刻印が何らかの形で押されていて、それが観客の共感を呼ぶのだと思うが、そういうものが見えてこないように思う。

126.「君に届け」 10/1、WMC新潟。 評価★★★☆ 熊澤尚人監督作品。 高校に進学したばかりの爽子 (多部未華子) は善意の主で一日一善を心がけているが、内気な性格と顔を隠しがちな長い髪と、「さわこ」 という名がホラー映画 『リング』 の貞子に似ていることから、付き合うと祟られるという変な噂ができてしまい、友達ができないできた。 しかし高校に入るとその壁を破って同性の友人ができ、また好きな異性 (三浦春馬) もできて・・・・・。 高校生の青春映画だけど、内気な少女――やや極端な設定だが――が友達や異性の恋人を少しずつ作っていく過程がそれなりによく描かれており、脇役も、単なる脇役ではなくそれなりの重みをそれぞれに背負っていて、全体として悪くない出来になっていると思う。

125.「メッセージ そして、愛が残る」 9/30、TOHOシネマズ・シャンテ(日比谷)。 評価★★ ドイツ・フランス・カナダ合作。 ジル・ブルドス監督作品。 若い弁護士夫妻の幼い長男が交通事故で死ぬシーンから始まる映画。 この事故がもとで弁護士夫妻は夫婦仲に亀裂が生じ別居するのだが、弁護士の周囲ではその後も身近な人物が死ぬ事態が続出する。 他方、彼に謎の医師が接近してくる。 弁護士の置かれた状況と医師には何か関係があるのか・・・・。 ちょっとミステリアスなお話で、映像もそれなりだけど、最後が・・・・・・・なのである。 何だ、そんなことなの、と言いたくなってしまう。 医師役のジョン・マルコヴィッチも、人相が悪くて、こういう役には向いてないんじゃないかなあ。

124.「終着駅 トルストイ最後の旅」 9/21、ル・シネマ(渋谷)。 評価★★★☆ ドイツ・ロシア合作。 マイケル・ホフマン監督作品。 文豪トルストイの晩年。 彼の人道主義を慕って多くの信奉者が集まり、私有財産を否定する彼の思想をそのまま実行に移すべく、文豪の遺産を公共のために使うようにし向けようとしていた。 しかし文豪の夫人は、自分や子供たちの財産が奪われる可能性に神経質になり、夫の周囲の人物に不信感を抱く。 両者の板挟みになったトルストイは、やがて家出をして病を得、小さな駅で死の床につく。 私有財産否定の信奉者たち、文豪、夫人の三つ巴の混乱ははたしていかに・・・・・。 文豪の有名な晩年を映画化したもので、三者それぞれの言い分を描き出している。 それなりに見応えのある映画で、史実と映画がどの程度一致しているのか、ちょっと調べてみようかという気にさせられた。 というか、パンフがもう少ししっかりしていれば私が自分で調べなくてもいいんだけどねえ。 

123.「ようこそ、アムステルダム美術館へ」 9/21、ユーロスペース(渋谷)。 評価★☆ オランダ映画。 ウケ・ホーヘンダイク監督作品。 アムステルダムにある美術館は世界的にも重要な絵画コレクションで知られており、オランダの代表的な文化施設でもあるが、その美術館に改築の話が持ち上がる。 その計画に市民団体などから異議が申し立てられたり、色々な思惑や要素が飛び交ってさっぱりまとまらず、ついには館長が辞職するに至る過程を、ドキュメンタリーとして映画化したもの。 うーん、率直に言って面白くない。 ドキュメンタリー映画は当事者の発言をそのまま流すだけでは不十分であり、第三者の目から色々と検証してこそ、カネを払って見る価値のある映画になるんだと思うけど、そういうこと、あんまり考えてないんじゃないの。

122.「セラフィーヌの庭」 9/21、岩波ホール(神保町)。 評価★★★★ フランス・ベルギー・ドイツ合作。 マルタン・プロヴォスト監督作品。 実際にあった話をもとにしている。 フランスで貧しい家に生まれ、女中などをして暮らしている中年女。 こっそり自分だけの流儀で絵を描いている。 ある日、フランス滞在中のドイツ人画商にその絵を認められるが、ちょうど第一次大戦の直前であり、大戦勃発と同時に画商は帰国してしまい、彼女の才能は埋もれたかに見えた。 しかし大戦終了後しばらくしてフランスに戻ってきた画商は彼女の絵と再会し、本格的に彼女を売り出そうとするが、おりしも大恐慌で美術市場は下降線をたどり・・・・・。 芸術的な才能というのは時として奇妙な現れ方をするもので、特に美術に関してはその傾向が強いようだが、この映画もそうした不思議な現象をうまくすくいとっていて、見る者に少なからぬ感銘を与えてくれる。 パンフも充実。

121.「夜霧のブルース」 9/20、浅草新劇場。 評価★★☆ 野村孝監督作品、1963年。 戦災孤児で関西のヤクザに拾われて育ててもらった青年 (石原裕次郎) は、たまたま女子学生 (浅丘ルリ子) が喫茶店でのアルバイトでオルガンを弾いているのを聴いて、音楽の魅力と彼女の美しさに打たれ、喫茶店に毎日通うようになる。 やがて二人は恋愛関係になるが、ヤクザから足抜けすることが認められず、リンチを受けたりする。 それでも何とか脱出して横浜に移り、地味ながら所帯を持つ。 やがて妻は妊娠し、貧しくとも幸せな暮らしが待っているかに見えた矢先・・・・。 物語は、石原裕次郎が横浜の港湾労働界を牛耳るボスを拳銃で脅すシーンから始まり、そこから倒叙的に彼の過去が明らかになっていくという手法が取られている。 しかし、幸せな若い二人が不幸に陥るきっかけと、そのボスとの関係とは、いささかこじつけめいて見える。 つまり、筋書きとして不自然なところがあるということ。 女子学生の浅丘ルリ子が美しい。

120.「夜叉」 9/20、浅草新劇場。 評価★★☆   1985年、降旗康男監督作品。 愛する女 (石田あゆみ) と結婚するために大阪のヤクザだった過去を捨て、若狭湾の漁村で漁師として暮らす男 (高倉健)。  平穏な村に、ある日子連れの若い女 (田中裕子) がふらりとやってきて飲み屋を開く。 女の魅力もあって店は繁盛するが、女にはヒモ (ビートたけし) がいて、彼が村にやってきたことから波風が立ち始める・・・・。 健さんと石田あゆみの設定なんかいかにもという感じだけど、ビートたけしのチンピラがちょっと面白い味を出していて、今から振り返ってみると、健さんのイメージに添うような映画の作り方に、ビートたけしという新しい風が吹き込んできている、という印象を受ける。 ただし映画としてはちょっとぬるい終わり方で、健さんファンにはこれでいいのだろうけど、当時としてもややマンネリになりかかっていたのではないか。

119.「喜劇 駅前番頭」 9/20、浅草新劇場。 評価★★ 1966年の邦画、佐伯幸三監督作品。 駅前シリーズの一作。 アメリカの大学を出た (つまりエリートの) フランキー堺が、しかし大企業ではなく箱根の旅館に就職して、やり手の支配人 (伴淳三郎) とのんびり屋の主人 (森繁久弥) の間で色々と苦労をするというお話。 喜劇と銘打っているけど、ほとんど笑えない。 あの頃はこの程度でも喜劇で通用していたのかな、時代がまだまだのんびりしていたんだな、と思いました。

118.「アイガー北壁」 9/18、Tジョイ新潟万代。 評価★★★ フィリップ・シュテルツル監督作品。 ドイツ・オーストリア・スイス合作。 1936年、ナチ支配下でベルリン・オリンピックが開催される直前、スイスの高峰アイガーに、未踏のルート北壁から登頂を試みたドイツ人の、実話に基づく物語。 登山のシーンはなかなか迫力があるが、報道の問題だとか、登山家と恋人の関係だとかがやや余計な気がする。 特に最後が 「愛」 で締めくくられるあたりは、いささか凡庸ではなかろうか。 数年前に上映された (残念ながら新潟には来なかったが) 『運命を分けたザイル』 という登山映画があったが、あれは余計な夾雑物を排して登山そのもののシーンに集中することで成功していたと思う。 その辺がちょっと惜しい。 

117.「ドン・ジョヴァンニ 天才劇作家とモーツァルトの出会い」 9/18、シネ・ウインド。 評価★★★★ イタリア・スペイン合作。 カルロス・サウラ監督作品。 モーツァルトの有名なオペラ 『ドン・ジョヴァンニ』 の台本を書いたダ・ポンテを中心にして、モーツァルトやサリエリ、またカザノヴァなど、実在人物が絡む筋書き。 もともとユダヤ人だったが、ヴェネツィアでキリスト教に改宗して神父になったダ・ポンテは、しかし放蕩などがたたって追放の憂き目にあう。 ウィーンに移住した彼はサリエリのはからいなどでオペラの台本を書くようになり、モーツァルトとの共同作業に従事する。 しかし、かつてヴェネツィアで見初めた美女とウィーンで再会してしまい・・・・。 この映画はクラシック音楽が好きな人にお薦めできる。 逆に、クラシック音楽に全然興味のない人には向かないだろう。 映画の中で、モーツァルトを始め、ヴィヴァルディやバッハやサリエリの音楽が用いられている。 無論、中心になるのはモーツァルトの音楽で、オペラでは本物のオペラ歌手が歌っている。 また 『ドン・ジョヴァンニ』 が作られていく過程が描かれているのも面白いし、何よりドン・ジョヴァンニという伝説上の人物の生き方が、実在のカザノヴァ、そしてこの作品の主人公であるダ・ポンテによって再現されているところが優れていると言える。

116.「悪人」 9/17、UCI新潟。 評価★★★ 李相日監督作品。 モントリオール国際映画祭でヒロインの深津絵里が主演女優賞をとったというので話題。 出会い系サイトで出会った九州に住む若い男女 (妻夫木聡、深津絵里) は、人間関係に不器用だったが、本気で愛し合うようになる。 しかし、実は二人が出会う直前、男はやはり出会い系サイトで出会った別の女 (満島ひかり) と事件を起こしていた・・・・・。 ネットが発達している昨今、人と人との出会いだとか関係だとかがどうなっているのかという現代的な問題意識に満ちた作品である。 全体にやや重い感じで、そういう映画が好きな人にはいいと思う。 ただし私は作品全体のまとまりがもう一つよくないという印象を受けた。 まあ、それが監督の狙いなのかもしれず、各自ばらばらに人生哲学をかかえながら生きていく人間ばっかりなのが現代だ、と言いたいのかもしれないのだが。

115.「半分の月がのぼる空」 9/11、シネ・ウインド。 評価★★★ 深川栄洋作品。 一言で言うとアイドルの難病もの映画です。 さほど重くない病気で入院した男子高校生 (池松壮亮) は、ふとしたことでやはり入院患者である同年の女の子 (忽那汐里) と友達になる。 重い心臓病をわずらっている彼女のために色々と世話を焼くうちにいつしか二人は恋仲に・・・・。 というような映画なんだけど、ヒロインが可愛いこともあるし、飛び抜けて素晴らしいと言う程じゃないが、まあまあ悪くないんじゃないかな。   ただ、単純な難病ものではなく、ちょっとした仕掛けがあるんだけど、そこをどう受け取るかが問題かも知れない。 人によってはひっかかるかも。  

114.「川の底からこんにちは」 9/9、シネ・ウインド。 評価★★ 石井裕也監督作品。 高校の先輩と駆け落ちして東京に出てきたヒロイン(満島ひかり)だが、5人の男に振られ、5つの会社を次々とたらいまわしにされる。 今の会社でもバツイチ子連れのダメ課長と関係してしまうが、故郷でしじみ工場をやっている父が倒れたのを機に、田舎に帰って実家の仕事をすることに。 なぜか課長と子供まで付いてきてしまうのだが、果たしてヒロインの生き方は劇的に変わるのか・・・・・・。 というような筋書きなんだけど、はっきり言って面白くないねえ。 この監督ならではというものが見あたらない。 貧弱な笑い、貧弱な脚本。 いったい何が言いたくてこんな駄作を作ったのだっ、と叫びたくなってしまう。 ぴあフィルムフェスティバルでグランプリを取った監督だっていうけど――それでこの作品を作れることになったらしい――、そちらの作品は見てないんだけどこれを見るとたいしたことなさそう、と思ってしまいます。 

113.「花と蛇 3」 9/5、銀座シネパトス。 評価★★ 成田裕介監督作品、R−18。 高貴な夫人が籠絡され、性的に調教を受けるという筋書きのポルノグラフィー・シリーズ第3弾。 私は杉本彩主演の第1作は見たけど、第2作は見ていない。 どうなのかなあ、今回の主演の小向美奈子、人により好みはあるだろうとは思うけど、いくらチェロを弾くシーンをたくさん入れてもどうも育ちのいい令嬢→令夫人のコースをたどった人にはイマイチ見えないのである。 こういったところが大事なんで、いくら巨乳だとか何とか言ったって、被写体自体の魅力がないとポルノはうまく行かないんですよねえ。 ま、小向さんファンにはいいだろうということで。

112.「女は夜化粧する」 9/4、神保町シアター。 評価★★★★  井上梅次監督作品、1961年。 親を亡くして自力で弟を大学に通わせているヒロイン (山本富士子) は、赤坂でギター芸者をしてそれなりに売れていたが、建築会社の社長 (森雅之) に認められて新築ビル内にナイトクラブを作りその経営者=マダムとして働くことになる。 彼女の美貌と毎晩異なる和服を着るなどの努力とから店は大繁盛。 しかし彼女にはかつてひょんなことから一晩だけ一緒に酒を飲んだ新進作曲家 (川口浩) がいたが、その彼がパリ留学から帰国して演奏会を開いたあと、再会すると、彼と同棲関係になってしまう。 彼は彼女との愛情のために新進作曲家としての仕事を辞めてしまい、ナイトクラブでピアノを弾くことになる。 また、ヒロインが彼に付きっきりのため店の経営も下り坂に向かう。 そこで彼女は泣く泣く彼と別れようと決心し・・・・。 山本富士子がナイトクラブのマダム役を見事に演じており、毎晩異なる和服で登場するところも見ものだし、他の登場人物も適役で、筋の運びも最近の邦画と異なりきびきびとしていて無駄がなく、よく出来た作品だと思う。 こういう過去の秀作を上映してくれた神保町シアターに感謝するとともに、過去の映画遺産はどんどんDVD化することを望む。

111.「フェアウェル さらば、哀しみのスパイ」 9/3、シネマライズ(渋谷)。 評価★★★ フランス映画、クリスチャン・カリオン監督作品。 東西冷戦時代の末期、ソ連のKGB大佐が秘密情報をソ連に滞在していたフランス人技師を通じて西側に流したという実在の事件を映画化した作品。 単にスパイの活動を描くだけでなく、KGB大佐とフランス人技師の友情めいた関係、二人のそれぞれの家庭事情、ソ連の人間の西側文化への憧れなど、さまざまな側面を描いて、あの時代のソ連という国家の人間模様を描く作品となっているところがミソかな。

110.「ハングオーバー! 消えた花ムコと史上最悪の二日酔い」 9/3、渋谷東急。 評価★★★ アメリカ映画、トッド・フィリップス監督作品。 結婚式の直前、ラスベガスに友人たちと独身最後のバカ騒ぎに出かけた青年が、一夜明けると姿を消してしまった。 友人たちは、なぜか前の晩の記憶を失っていて、おまけに宿泊しているホテルの部屋には見知らぬ赤ん坊が泣いているばかりか、バスルームには虎 (!) までいる。 いったい前の晩に何があったのか、そして結婚式を控えた青年はどこに消えたのか? 友人たちは必死で謎を解き明かそうとする・・・・・。 一種のオバカ・コメディであるが、設定が破天荒で、展開もそれなりに面白く、謎の解明もまあ悪くない。 エンタメとしてまあまあよく出来ているとは思う。 だけど、見終えて何日かするときれいさっぱり忘れてしまいそうな映画でもある。 2時間楽しんで、その後は後腐れなく別の仕事をしたい人にはお薦め。

109.「ぼくのエリ 200歳の少女」 9/3、ヒューマントラストシネマ渋谷。 評価★★☆ スウェーデン映画、トーマス・アルフレッドソン監督作品。 学校でイジメにあっている少年が、吸血鬼の少女と知り合って、自分を鍛えてイジメを撃退するとともに、少女と一種恋愛関係に陥っていく、という筋書きの映画。 ただ、私の見るところ、そうした筋書きよりもどうも主人公の金髪少年を映像として捉えるところに、もっとはっきり言うならば少年の魅力をセクシャルに捉えようとするところにこの映画のポイントがあるように感じられる。 そのため、ヴァンパイア映画としてはさほど面白くない。 これは作品の進行がどうもトロいというか、どこかハリウッドだとか現代の邦画だとかフランス映画だとかとは異なっているせいもあるかも知れない。 異なっていて独自の面白さが出ていればいいのだが、出ていないとしか思われないのである。

108.「トイレット」 9/1、UCI新潟。 評価★★★ 荻上直子監督作品。 舞台はカナダ。 若い兄妹三人は、母を亡くし、母が日本から引き取ってきていた日本人祖母と一軒家で暮らすことになる。 英語を話さない祖母と孫三人は最初は意思の疎通がまったくなかったが、徐々に、料理だとか、古いミシンの使い方だとかで意思が通じ合うようになり、それによってそれぞれに悩みを抱えていた孫たちも 「生きる力」 を取り戻していく、というようなお話。 荻上監督独特の展開は悪くないが、話としてはややうまくできすぎているような気がしないでもない。 もっともこれは荻上監督のこれまでの映画についても言えることだが。

107.「ハナミズキ」 8/30、WMC新潟南。 評価★★☆ 土井裕泰監督作品。 釧路近辺で育った男女の高校生 (生田斗真、新垣結衣) が偶然知り合い、恋に陥るが、男は水産高校生で卒業後は地元で漁師をし、女は進学校の生徒で卒業後は早大に進学する。 そこから遠距離恋愛の話になるわけだけど、「二人は絶対結ばれる」 というテーマだけを信じて見られる人にはまあいい映画なんだろうけど、二人の距離が物理的な距離であるだけではなく社会的な距離でもあると考える私としては、そういう違いを乗り越えて二人が愛し合い続ける必然性があんまり感じられませんでした。 特に後半は、ちょっとだらけた展開になっているみたい。

106.「カラフル」 8/30、WMC新潟南。 評価★★★☆ 森絵都原作、原恵一監督のアニメ。 中3の少年が自殺をはかり、本来は死ぬところ、神様のはからいで生き返り、いかに生き直すかという物語。 そこには家族の不和や、学校でのイジメ、コミュニケーションの不全、美少女のエンコー、孤独な少年少女の居場所といったさまざまな問題が盛り込まれている。 作品のクライマックスは少年が進学する高校を決めるシーンだろう。 少年の自殺によって、彼だけではなく、周囲にいる家族や生徒たちも、それぞれに自分の生き方を見直していくという筋書きがなかなかいい。

105.「鉄男」 8/28、シネ・ウインド。 評価★★☆ 塚本晋也監督作品、1989年、モノクロ。 体が鉄に、というよりくず鉄にに変わっていく男のお話。 私はUのほうを先に見たわけだが、話の筋書きがUと比べて分かりにくく、作品としてのまとまりに欠けているような印象を受けた。 体がくず鉄に変わって、ペニス部分がドリルになってしまい、恋人との性交で相手を殺しちゃうなんてのは分かりやすいところだけど、体の成分が変わることにマゾヒティックな苦しみ――変な表現であることは自覚しており、普通ならマゾヒスティックな快感、とでもなるべきところだが――を味わう部分と、それをグロテスクに表現しているところを、買うかどうかが、この作品を評価できるかどうかの分岐点になりそう。 私はあんまり買わないんだけど。

104.「鉄男U」 8/21、シネ・ウインド。 評価★★★ 塚本晋也監督作品、1993年、モノクロ。 本来は 「T」 を先に見るべきなんだろうけど、都合でこちらを先に見ました。 体が鉄に、というよりくず鉄に変わっていく男のお話だけど、主人公は奥さんに小さな子供一人という平凡な家庭を営んでいた中年男で、しかしなぜか黒人のグループに子供をさらわれて・・・・という一応の筋書きがある。 ここには、日本人の肉体コンプレックス――黒人や白人男と比べると日本人男性は平均的に身体で見劣りする――が現れているみたいだし、それと身体のくず鉄化がセックスとも絡んでいる。 奥さん役の女優・叶岡伸が、そぞろ魅力的。

103.「借りぐらしのアリエッティ」 8/20、WMC新潟。 評価★★★☆ ジブリアニメの最新作。 主人公の少年は、生まれついて心臓に病を抱えており、ある夏、手術を受ける前の一週間だけを、むかし母が暮らしていた田舎屋敷で過ごす。 屋敷についた少年は、小人のアリエッティの姿に気づく。 小人たちは人間に気づかれないように屋敷の一部に借り暮らしをしていた。 しかし人間に発見されてしまった小人の家族は引っ越しを決意する・・・・・。 ジブリアニメの特徴である細かな背景描写の楽しさがまず目を惹く。 筋書きは坦々としていて、ハラハラドキドキの活劇を期待する向きにはやや物足りないかも知れないが、少年と小人の少女の交流だとか、少年の曾祖父が英国から取り寄せたという小人のためのセットなど、じっくりと作品を楽しめる人たちには一定の感銘を与えてくれると思う。 子供よりは大人向けのアニメではないか。

102.「キャタピラー」 8/16、シネ・ウインド。 評価★★☆ 若松孝二監督作品。 どうも夏休みになると映画館はお子様向けの映画ばっかりで、私みたいな50代後半の人間が見たいと思うような作品がかからない。 そのせいでここのところ映画館にもあまり行っていなかったのだけれど、ようやくまともな映画が来たかな、と期待しつつ見に行ったのだが、うーん・・・・。 原作は江戸川乱歩の 『芋虫』 という短編のはずだが、それがどこにも (チラシにも、作品サイトにも) 書かれていない。 ネット情報によると乱歩の版権所有者との金銭的な問題かららしいが、乱歩のアイデアを使わせてもらう以上、それなりの配慮をすべきではないか。 この点で監督側はモラルに欠けていると批判されても仕方がないのではないか。 それはさておくとしても、反戦という、わりに俗受けしやすいテーマを、こういう、人間の極限状態から来るエロスの問題と絡めて展開するのはどうなのかなあ。 やるなら、それなりの覚悟が必要だろうが、監督側にそういう覚悟があったのかどうか。 また、最後に広島長崎の犠牲者数だとか、第二次大戦での犠牲者数だとかの、一般的な数字を出すのは、作品の印象を拡散させるだけだということに気づかないのは、どう見ても計算違いをしているからとしか思えない。 原作が良かったから見られる映画にはなっているけど、映画を作る側にはどこか抜けているものがあると感じられた。

101.「踊る大走査線 ザ・ムービー3 奴らを解放せよ!」 8/7、UCI新潟。 評価★★☆ 本広克行監督作品。 湾岸署が引っ越すことになり、係長に昇進した青島刑事 (織田裕二) が作業の陣頭指揮をすることになったが、引っ越しのどさくさにまぎれて拳銃が盗まれてしまい、その拳銃で殺人事件が・・・・・。 うーん・・・・・いくら引っ越しだって、武器の管理という、きわめて大切な部分がこんなにおろそかになるのでは、湾岸署の刑事には事件を追ってもらいたくないという気分になってしまいますね (笑)。 あと、この映画、テレビドラマから派生して作られているわけだが、そのせいかテレビでのネタでのくすぐりが多いみたいで、テレビ・シリーズのほうをふだんから見ている人には楽しめるのかもしれないが、私のように映画版は1から見ているけどテレビ版のほうは見てない人間には、どうも散漫で、肝心の警察ドラマ・犯罪ドラマとしての出来はイマイチとしか思えませんでした。

100.「ソルト」 8/2、UCI新潟。 評価★★★★ アメリカ映画、フィリップ・ノイス監督作品。 CIA勤務の女性スパイ (アンジェリーナ・ジョリー) が、CIAに捕まったロシアのスパイから仲間だと言われてしまい、逃亡を開始する。 果たして彼女はロシアのスパイなのか、或いは・・・・。 一言で言ってエンタメとしてよくできている。 アクション・シーンだとか、意外な人物の意外な正体だとか、エンタメとして楽しめる要素がふんだんに盛り込まれており、アメリカ・ロシア両国の大統領も登場して、話がそれなりに大きくできているし、逆にヒロインと夫の愛情関係にも目配りがなされていて、ヒロインの女としての魅力もそれなりに出ている。 息もつがせぬ筋書きの緊迫感もあるから、夏の暑さを忘れるには格好の映画だと思う。

99.「私の優しくない先輩」 8/1、Tジョイ新潟万代。 評価★★☆ 山本寛監督作品。 心臓の病気で都会から九州の小島に転校してきた女子高校生 (川島海荷・・・これで 「かわしま・うみか」 と読むそうです。 最近のアイドルの名前、読めません 〔泣〕) が、クラブの暑苦しい先輩 (金田哲) に悩まされながらも、思いを寄せるさわやかな先輩 (入江甚儀) に告白しようとするが、途中で色々あって・・・・・・というような学園コメディ、なのかな。 ヒロインの語りで物語は進む。 ちょっと変わった作りだけどまあまあかなと思いながら見ていたんだけど、最後のあたりの収斂のさせ方がちょっと。 あと、さわやかな先輩の人物設定が安易。 もう少し脚本を練ってほしかった。

98.「インセプション」 7/30、WMC新潟。 評価★★ 米英合作映画、クリストファー・ノーラン監督作品。 人の記憶を盗み出す・人の記憶を外部から操作するというアイデアをもとに、妻子と別れて暮らす男 (レオナルド・ディカプリオ) にたいして謎の日本人 (渡辺謙) が犯罪を持ちかけるというお話。 うーん・・・・・CGを多用した映画にありがちな凡作ではないかと思う。 アイデアの先にあるべき映画としての緊密で飽きさせない展開が不足しており、繰り返しが多く、後半はややだれていて、私としては評価できませんでした。

97.「獄に咲く花」 7/28、シネ・ウインド。 評価★★★ 石原興監督作品。 幕末に知識人として知られた吉田松陰 (前田倫良) と、獄中で彼に出会い恋した女性 (近衛はな) とのお話。 新時代への対応を叫んだ故に危険人物と見なされた吉田が、獄中で囚人たちの啓蒙にうちこみ、なおかつ獄中唯一の女性と心を通わせていく過程が描かれている。 前田の演技はやや現代人ふうすぎて浮いた感じがするが、近衛のしっとりした女性らしさがそれをうまく補っているように思われる。 近衛はなは、映画登場は 『明日への遺言』 について二度目、主演は初めてだが、目黒祐樹の娘で松方弘樹の姪。 時代劇に合った女優ではないか。 今後の活躍が期待される。 

96.「武士道シックスティーン」 7/23、シネ・ウインド。 評価★★☆ 古厩智之監督作品。 剣道部で活動している二人の女高生(成海璃子、北乃きい)を中心に描いた青春映画。 小さいときから父に剣道を仕込まれ、とにかく勝たねばならないと思い込んでいるハードな性格の成海と、楽しく高校生活を送りたいと考えている北乃の対比が面白い・・・・・はずなのだが、成海はともかくとして、北乃の軟弱で今風のところはもう少し強調しておいたほうが対称性がはっきりして良かったのではないか。 二人を囲む人々の描写も不足しているし、筋書きも二人以外はあまりにご都合主義的で、どうかと思う。 例えば成海は高校剣道部に入るなり主将と対戦して事実上勝利するのだが、ここから部内の人間関係に何かが起こらない、というのは説得的ではないだろう。 そうでなくとも成海は態度がでかい女の子という設定なのだから、人間共同体である剣道部の中で浮くとか、そういう部分がないと不自然なのである。 つまり、物語の奥行きが浅いということだ。 あと私の個人的な好みで申し訳ありませんが、北乃は私の目には平凡な容姿にしか見えないし、成海も――彼女はいつもそうだが――堅いこわばった表情の女の子に設定されていて、やはり魅力的ではない。 北乃のとりまきの山下リオをもっと活躍させて欲しかったところ。

95.「マイ・ブラザー」 7/21、WMC新潟南。 評価★★★☆ もともとは北欧映画だったものを、ハリウッドでリメイクしたものだそうである。 ジム・シェリダン監督作品。 長男と次男。 長男 (トビー・マグワイア) は小さいときから親に可愛がられ、今は軍人として美人妻 (ナタリー・ポートマン) と二人の娘を養っている。 一方弟 (ジェイク・ギレンホール) は父と折り合いが悪く、なおかつ犯罪に手を染めてしまい刑務所から出てきたところ。 しかし長男はアフガンでの戦いに赴任し、乗っていたヘリが撃墜されてしまう。 訃報に悲しむ兄嫁や娘たちを次男が励ましているうちに、次男と兄嫁の間に愛情めいた感情が芽生えかけるが、その時、長男が生存していたとの知らせが。 やがて長男は帰国してくるが、アフガンでの苛酷な体験ゆえに性格が一変していた・・・・・・。 対照的な長男と次男の葛藤や融和、アメリカのアフガン戦争体験、父と息子、など色々なテーマが盛り込まれていて、それなりに面白い。 ただし、そういう作りであるために逆に一つのテーマの掘り下げはやや不足気味の印象もある。 ただ、様々なアメリカ人のそれぞれの人生を語った群像劇という見方もできるだろう作品だ。

94.「ロストクライム ―閃光―」 7/17、UCI新潟。 評価★★★ かつて日本を震撼させた三億円強奪事件。 若い頃にこの事件の捜査に加わり、今は定年退職寸前の老刑事 (奥田瑛二) が、平成の現代に起こったラーメン店主殺害事件と昭和の三億円事件とが意外なところで関係を持つことに気づいて、若手刑事を従えて真相を解明しようとするのだが・・・・・。 面白そうな筋書きなんだけど、謎自体はさほど大したことはなく、むしろそこに関わった人間の生き様みたいなものが前面に出ている。 それはそれでいいのだが、何かもう一つ強い時代性というか、今三億円事件を材料にする必然性みたいなものが感じられない。 

93.「必死剣鳥刺し」 7/14、UCI新潟。 評価★★★★ 藤沢周平原作小説の映画化。 平山秀幸監督作品。 藩の政治が殿様の愛妾の差し出口で乱れているのを憂慮した主人公 (豊川悦司) は、ひそかに決意して能鑑賞のあとに妾を斬り殺す。 死罪を覚悟しての行動だったが、なぜか閉門1年というゆるやかな処罰にとどまる。 実はそこには藩内部の抗争がからんでいた・・・・・。 ストイックな主人公や、亡き妻 (戸田菜穂) との思い出、主人公に思いを寄せる妻の姪 (池脇千鶴) などの姿が淡々と描き出され、クライマックスに進んでいくところは非常によくできている。 ただ、最後の殺陣や、 「必死剣」 を見せるところは、やや物足りない。 クライマックスがもう少し良くできていれば相当な傑作になっていただろうと惜しまれる。 

92.「抵抗 死刑囚の手記より」 7/9、シネ・ウインド。 評価★★★ フランス映画、ロベール・ブレッソン監督作品。 1956年、モノクロ。 第二次世界大戦中、ドイツ占領下のフランス・リヨンを舞台に、レジスタンス運動ゆえに囚人となった青年が死刑を宣告され、刑務所から脱出するお話。 彼がいかにして部屋から抜け出し、外部にたどりついたかが、囚人の日々の暮らしや、刑務所内での囚人同士の助け合い、場合によっては対立などとともに丹念に描かれている。 一見に値する映画だと思う。 

91.「レインマン」 7/9、Tジョイ新潟万代。 評価★★★ アメリカ映画、バリー・レヴィンソン監督作品、1988年。 各種の映画賞を受賞していてわりに有名な映画だが、今まで見る機会がなかった。 Tジョイのお陰でスクリーンで見る機会があったのはうれしい。 父と仲が悪く気ままに暮らしていた青年 (トム・クルーズ) が、父が死んで遺産がもらえるかと思いきや、自分に遺贈されるのは自動車と薔薇の花だけで、300万ドルに及ぶ財産は誰か他人に与えられると知ってショックを受ける。 調べてみると、一人っ子だと思っていた青年には実は兄 (ダスティン・ホフマン) がいて、しかも兄は自閉症であった。 青年は何とか財産の半分を手に入れようと、強引に施設から兄を連れだして・・・・・。 ダスティン・ホフマンの自閉症の演技が迫真的で、最大のみどころ。 筋書きとしては、ロードムービー的ではあるが、率直に言ってあまり面白いとは思わなかった。 でもこういう映画ってのは批評家には受けたりするから、まあ、各種の賞を受けているのはさもありなんという感じではある。 

90.「アデル ファラオと復活の秘薬」 7/5、UCI新潟。 評価★★☆ フランス映画。 リュック・ベッソン監督作品。 アデルという名のヒロインの冒険談だが、エジプトに出かけてファラオの墓をあばいて秘宝探しをするところがクライマックスなのかと思って見に行ったのに、肝心のところは最初に出てくるだけで、あとはパリが舞台なのだ。 パリでも中世紀の翼竜が復活したりして色々あるのだけれど、ヒロインのルイーズ・ブルゴワンが主演としてはもう一つ美しさに足りないのも含め、ちょっと肩すかし的な出来ではある。 フランス的なシニカルな運びが、唯一の長所かも。

89.「フローズン・リバー」 7/2、シネ・ウインド。 評価★★☆ アメリカ映画。 コートニー・ハント監督作品。 カナダとの国境近くに住む中年女性がヒロイン。 夫が出ていってしまって、1ドル・ショップに勤めながら2人の息子を育てている彼女は、新しい住宅の支払いに行きづまって、カナダへ不法移民をこっそり運ぶ仕事に手を染める。 そこにインディアンの少女がからむ。 彼女は幼い赤ん坊を母に奪われていた。 真冬の時期、二人が凍った川を車で渡り不法移民を運ぶシーンが、なかなか印象的。 しかし全体的な充実感となるとイマイチ。 特に、監督が女のためか、男が描けていないのが致命的、というと言い過ぎだが、かなり物足りない印象を残す。 途中で移民の赤ん坊の入ったカバンを捨てるところも、作為的な感じがした。 サンダンス映画祭でグランプリだそうだけど、それほどの作品でしょうかね。

88.「渇き」 7/1、Tジョイ新潟万代。 評価★★☆ 韓国映画、パク・チャヌク監督作品。 吸血鬼のお話なんだけど、何というのかな、吸血鬼映画だからやたら流血シーンがあったり、血をすするシーンが延々と続いたり、といった作り方にセンスが感じられない。 吸血鬼には怖さと並んで魅力もあるわけで、そこらへんが出ていないと、単に趣味の悪い映画でしかないと思うんだが、監督にはその辺が分かってないみたい。 ただし、ヒロインのキム・オクビンがすごくいい。 時として可愛く、時として美しく、時として残酷で、またヌードでのセックスシーンもちゃんとこなしていて、非常に魅力的。 彼女を見るためだけにある映画と言ってしまおう。 彼女に免じてこの点数。 彼女が出ていなかったら★☆。

87.「座頭市 THE LAST」 6/30、WMC新潟。 評価★★   阪本順治監督作品。 香取慎吾が座頭市をやっているのだがあんまり迫力がないし、脚本がきわめて不出来で、筋書きや人物の配置が分かりずらいし、見ていてカタルシスがなく、2時間を越える長さだけど、もっと短くしたほうがまとまりもできていいんじゃないかと思う。 石原さとみや工藤夕貴といった女優陣もうまく活かされていない。 ま、駄作でしょう。

86.「オーケストラ!」 6/30、WMC新潟。 評価★★★ フランス映画、ラデュ・ミヘイレアニュ監督作品。 今から30年前のソ連・ブレジネフ政権時代に、政権の反ユダヤ主義に逆らったばかりにホされている元指揮者。 その彼が偶然、フランスはパリから送られてきたロシアのオーケストラへの演奏依頼のファックスを入手する。 彼はそこで、同様にホされている音楽仲間を集め、ニセのオーケストラを組織してパリで演奏を行おうと計画する。 それは単にホされている自分や仲間が再結集して音楽活動を再開するためだけではなく、以前から心に掛かっていた或るヴァイオリニストとの共演を果たすためでもあった・・・・。 と書くとロマンティックな筋書きだと思えるけど、実際に見てみると、旧ソ連ネタや共産党ネタのドタバタ喜劇の色合いが濃い作品で、最後でチャイコフスキーの協奏曲を弾くシーンが続くので音楽映画らしいシメになってはいるけど、そこへの持って行き方も強引で、面白いとは思うけど秀作とは言いかねるんじゃないかな。

85.「パリ20区、僕たちのクラス」 6/27、岩波ホール(神保町)。 評価★★★★ フランス映画、ローラン・カンテ監督作品。 カンヌ映画祭でパルムドールをとっている。 移民が増加して様々な人種同士の軋轢も多いフランスの首都パリ。 その中でも移民が多い20区の公立学校で、国語の授業をする教師と24人の生徒たちを描いたのが本作品。 ちょっと見にはドキュメンタリーっぽいが、実はフィクションである。 日本の学年で言うと中学2年に相当するクラスだが、生徒たちは肌の色も、育った環境や親の考え方もばらばらで、こういうクラスで授業をやる教師は実に大変なのである。 おまけにこの年齢だから生徒たちも自意識だけは一人前に強く、勉強しないくせに教師に対しては色々難癖をつけてくる。 多文化社会は言うはやすく行うは難いということが、身に沁みて分かる映画だ。 新潟でも上映してほしい。

84.「赫い髪の女」 6/27、文芸坐(池袋)。 評価★★☆  これも神代辰巳監督特集の一本。 1979年作のロマンポルノ。 有名な宮下順子がヒロインを演じている。 相手役が石橋蓮司で、今から振り返ってみるとずいぶん若かったなと思う。 映像には水のイメージが多用されていて、宮下順子もそれなりに好演してはいるけれど、映画作品としての面白みという点でいうと83に劣るように思われた。

83.「嗚呼! おんなたち 猥歌」 6/27、文芸坐(池袋)。 評価★★★☆ 文芸坐で神代辰巳 (くましろ・たつみ) 監督特集をやっていた。 これはその1本。 1981年製作で、日活ロマンポルノ10周年作品。 何人かの女優たち (角ゆり子、中村れい子、など) の裸体もさることながら、売れないロックシンガー役で出てくる内田裕也がいい。 レコード店の店頭で誰も聞いていないのに歌ったり、舞台で歌いながら下半身を露出してしまったりと、過激でありながらどこかうらさびしい男を好演している――或いは地でやっている? また、彼のマネージャー役の安岡力也がまたいい。 わがままな内田をなぜか献身的に世話する――最後にはガールフレンドを寝取られてしまうのに、内田から離れない。 そして内田は最後には男娼になってしまう。 単にポルノとしてだけでなく、映画作品として見て面白い1本だ。

82.「略称・連続射殺魔」 6/26、シネマヴェーラ渋谷。 評価★★☆ 足立正生特集の1本、1969年作、ナレーションを足立自身がやっている。 タイトルから分かるように永山則夫を描いた映画なのだが、彼の名は出さずに、彼の育った・暮らした町・街を映像で丹念に追っている。 時折ナレーションが入って彼の足跡が明らかにされるが、映像は必ずしも彼が起こした連続殺人事件に直接関係するところに限定されず、むしろ彼の育った雰囲気を再現しようとして、様々なオブジェ――と言いたくなるのだが――を映し出し、それによって間接的に彼の感情や情念を明らかにしようとしているようである。 要するにドキュメンタリーではなく、芸術を目指した作品だろう。 映像にはセンスが感じられて退屈はしないし、69年という時代を映し出す映画としてはそれなりだが、果たして永山のような実在の連続射殺魔を念頭においた映画として成功しているかどうかは微妙。

81.「高校生無頼控」 6/26、シネマヴェーラ渋谷。 評価★★☆ 足立正生特集の1本。 ただし監督は江崎実生で、足立は脚本を共同で担当している。 マンガ原作の映画化。 下(↓)で取り上げた77がシリーズ第2作だったのに対して、これは第1作。 しかし主演が違っていて、第2作は大門正明が主役のムラマサを演じていたのに対し、こちらは沖雅也がやっている。 この二人は雰囲気が全然違う。 こちらの第一作は、一言で言って沖雅也を見るための映画である。 彼の相手役の女性は何人も登場して、中には金髪まで含まれているけど、逆に言うと一人一人の重みがなく、実際、第2作のひし美ゆり子ほどのインパクトがある女優は出てこないのである。 沖雅也の気品に満ちた、それでいて茶目っ気のある容姿と雰囲気が貴重な一本。

80.「ボローニャの夕暮れ」 6/26、銀座シネパトス。 評価★★★ イタリア映画、プーピ・アヴァーティ監督作品。 第二次世界大戦前から、戦争を経てその直後にいたるまでの或る家族の物語。 中心となるのは高校教師の父と、その高校に通う娘である。 内気で容姿にも恵まれない娘を気づかう父は、ハンサムながら成績の悪い男子生徒が娘と仲がよいのに気づき、落第から救う代わりに娘に優しくしてやってくれと頼むが、それが仇となって殺人事件が起こってしまう・・・・。 映画はこの事件を中心に、家族と同じアパートの向かい側に住む刑事夫妻をも含めて時代の波に翻弄される人々や彼らの親交を追ってゆく。 映像はセピア色のカラーで雰囲気がある。 悪くはない作品だが、家族の母――父にとっては妻――にちょっと謎めいたところがあり、その謎が十分に明かされないままに終わるところが、やや物足りない。

79.「マイレージ、マイライフ」 6/25、Tジョイ新潟万代。 評価★★ アメリカ映画、ジェイソン・ライトマン監督作品。 社内の担当者に代わって社員にクビを言い渡す職業の男 (ジョージ・クルーニー) が主役の映画。 いかに相手にダメージを与えずにクビを通告するかというところが面白いのかと思っていたが、どうもそうではなく、また主役は遊びでキャリアウーマンと仲良くなるのだが、意外にも彼女に本気になってしまうし、また妹の結婚式がダメになりかけるのを救うのだが、そこの脚本もちゃちで、何て言うのかなあ、ハリウッドの映画製作能力が落ちてきているんじゃないかと言いたくなる退屈な代物。 この映画、新潟ではTジョイでしかやらず、しかもTジョイがケチで割引制度が適用される時間帯や日には上映しない。 それで途中で上京したときに金券屋で1490円にて全国共通の前売り券を買って、新潟で見たのである――我ながら根性があるなあ(笑)――が、それだけの甲斐がない映画でした。 くそったれ!

78.「アデュー、フィリピーヌ」 6/24、シネ・ウインド。 評価★★ 1960年制作、フランス・イタリア合作映画、ジャック・ロジエ監督作品。 ジャック・ロジエは1926年パリ生まれ、ヌーヴェル・ヴァーグの映画監督だが作品数が少なく、日本ではあまり知られていなかったという。 今回日本で何作かがまとめて上映され、新潟ではシネ・ウインドが上映館になったので、時間があまりなかったのだが、この1作だけ見てみた。 モノクロ映画で、兵役を控えたミシェルという青年が、リリアーヌとジュリエットという二人の女の子と知り合い、一緒に旅をするお話。 率直に言って、面白くなかった。 男1人と女の子2人の関係の物語で、もっと色々あるかと思いきや、だらだらと仲良くなったりケンカしたりを繰り返すだけで、もう少し短く撮れないのかなと思わせられた。 他にばかばかしいCMフィルムを作る中年男がからむが、こちらもあまり効いていない。 救いは女の子2人がいずれも美しいことか。 特にリリアーヌ役は私の好みにぴったりで、退屈な映画も彼女のお陰で何とか見ていられました。 

77.「高校生無頼控 突きのムラマサ」 6/19、銀座シネパトス。 評価★★★ 1973年製作。 江崎実生監督作品。 マンガ原作の娯楽映画シリーズ全3作中の第2作。 過激派で警察に追われて姿をくらましている兄を捜して全国を旅して回る高校生ムラマサこと村木正人 (大門正明) が、途中で様々な事件に出くわし、また女たちと関係を結ぶというお話。 ここでは福島市を舞台に、美人教師 (ひし美ゆり子) や成績優秀なマドンナ (加藤小夜子) がお相手役として登場する。 特にテレビドラマ 『ウルトラセブン』 のアンヌ隊員役で人気のあったひし美ゆり子が、きちんと脱いでいるのがいい。 美女がちゃんと脱ぐ娯楽映画、最近の日本で作れなくなっているのは、はなはだ残念である。

76.「闇の列車、光の旅」 6/19、TOHOシネマズ・シャンテ(日比谷)。 評価★★★ アメリカ・メキシコ合作、キャリー・ジョージ・フクナガ監督作品。 荒れて将来に希望が持てない中米の国ホンジュラス。 そこでは、若者がギャング団を結成して抗争を繰り返す一方で、故国を見捨てて米国に移住しようとする人々も多い。 移住を試みる人々は列車の屋根に乗り、メキシコ経由で目的地を目指す。 しかし途中には検問をはじめとして様々な障碍が立ちはだかり、無事に米国にたどり着ける者は多くない。 この映画はそうした希望と絶望の狭間で生きる人々の姿を映しだして興味深いが、作中の男女関係はいくぶんありきたりで、全体の深刻な社会性をやや損なっている印象がある。 しかし一見に値する映画ではあろう。

75.「ブライト・スター いちばん美しい恋の詩」 6/18、銀座テアトルシネマ。 評価★★★ 英国・オーストラリア合作。 ジェーン・カンピオン監督作品。 19世紀の英国詩人キーツ (ベン・ウィショー) と出会い、彼に惹かれた女性 (アビー・コーニッシュ) を主人公にした物語。 中産階級の彼女は、キーツが貧乏であるにもかかわらず婚約するが、病を得たキーツは温暖な地イタリアに一人療養のために移住し、そこで死んでしまう。 この映画の最大の見どころは映像の美しさだろう。 何気ないショットが絵画のように見事で、まさに筆舌に尽くしがたい。 当時のロンドン郊外の風景もいい。 しかし筋書き的にはやや単調だし、脇役の人物ももう一つ面白みに欠けている。 あくまで映像を楽しむ作品だ。

74.「ラスト・ソング」 6/16、Tジョイ新潟万代。 評価★★★   アメリカの出来たて青春映画。 ジュリー・アン・ロビンソン監督作品。 大学進学を控えたヒロインは、父母の離婚などからやる気を失っている。 海辺の町に一人暮らしている父と夏の間だけ同居することになるが、父を避けている。 しかしやがて彼女にはボーイフレンドができ、閉ざされた心を開いていく・・・・・というようなお話。 ヒロインを演じるマイリー・サイラスは18歳、アメリカで大人気のアイドルだそうである。 日本でもそうだが、最近のアイドルは、ものすごい美形というより、まあ可愛いかなと思える程度の女の子が多いのだが、彼女もそんなところ。 作中では結構ワガママを通す役柄なので、あんまりお付き合いしたくないタイプに見えるが、女の子向けの映画と考えればこれでもいいんだろうな。 父も母もボーイフレンドも、そして彼女の弟ですらも、ひたすら彼女を受容してくれるのだから、女の子に都合のいいお話だと言うしかないのである。

73.「アウトレイジ」 6/14、UCI新潟。 評価★★☆ 北野武の最新作。 ヤクザがシマの奪い合いだとか騙し合いとかを重ねながら、抗争を続けて殺し合いをするお話。 殺伐たる内容だけど、見ていてどことなく滑稽に思えるのは私だけだろうか。 私は 『仁義なき戦い』 なんかは嫌いな人間だけど(『網走番外地』は嫌いではない)、この『アウトレイジ』 には一定のストーリーがあって、それなりに見ていられる。 だけどまあ、傑作かというと、全然違いますと答えるしかないだろうなあ。

72.「プレシャス」 6/12、UCI新潟。 評価★★★ アメリカ映画、リー・ダニエルズ監督作品。 今から20年ほど前のニューヨークを舞台に、16歳になるのに中学も卒業できていない黒人少女がいかに自分を再生させていくかを描いている。 ヒロインは、教育に理解がなく生活保護金をもらうことしか考えない母親、娘をレイプして妊娠させるような父親を持ち、社会の最下層に属している。 しかしそうした環境に育った子供のための学校に通い、熱心な先生に教えられるうちに、何とか現況を脱出しようという意欲を抱くようになる。 実際にありそうな物語だし、見方を変えれば貧困や高校中退者の増加が問題になっている現代の日本にとっても他人事ではない映画なのだ。 ただし、そういう社会派ドラマなので、色々 「なるほど」 と思えるところはあるが、ものすごく面白いというほどでもない。

71.「アラビアのロレンス」 6/11、Tジョイ新潟万代。 評価★★★★ 有名な映画だが、今まで見たことがなかった。 Tジョイで上映されるというので、こういう映画は映画館でないと、と思い見に行ってみた。 1962年制作の英国映画、デビッド・リーン監督作品。 英国軍の将校であるロレンスが、アラビアに生息する部族と交渉を持ちながら、近代的なネーションを形成するように呼びかけ、協力もするという物語。 最初は画像が出ず音楽だけで、つまりオペラの前奏曲に相当するものから始まり、途中で休憩が入り、映画が終わってもなお音楽が続く――後奏曲だ――という本格仕立てで、たしか 『ベン・ハー』 もこういう作りだったと思うが、全部で4時間近くもかかる、まさにオペラチックな映画である。 主役のロレンスの行動もさることながら、この映画で一番印象に残るのはアラビア半島の広大な砂漠であり、またそこを行き交うラクダの表情である。 そこをじっくり味わうのが、この映画の正しい鑑賞法じゃないかな。

70.「孤高のメス」 6/7、UCI新潟。 評価★★★ 成島出監督作品。 昭和が平成に変わった頃の地方都市を舞台に、技倆のおぼつかない外科医しかいない総合病院に、ある日アメリカ留学帰りの外科医 (堤真一) が赴任し、難病の患者を手術によって次々と救っていく様子を、看護婦 (夏川結衣) の視点から描いている。 筋書きは分かりやすく、主人公を妬んで引きずり下ろそうとする悪役の存在も分かりやすく、いささか定型的な物語ではあるが、こういうすっきりしたお話の映画を好む人も多いと思う。 私も、変にこねくり回した映画よりいいんじゃないかと感じました。

69.「告白」 6/6、WMC新潟。 評価★★★ 中島哲也監督作品。 中学の女教師が、自分の幼い女の子はこの教室の生徒に殺されたのだという衝撃の告白をして辞職するところから始まる映画。 その後も、殺した生徒や、その親、同級の生徒などによる 「告白」 が続いていく。 設定はかなり大胆なようだが、展開は最初の女教師の告白によってレールが敷かれており、その経路を逸脱することがない。 結末もかなりショッキングなように見えるけれど、犯罪映画として見れば平均的なところだろうと思う。 岡田将生くんが、単細胞的な熱血教師役をやっているところが、ちょっと面白いかな。

68.「いつもあなたを愛してる」 6/5、シネ・ウインド。 評価★★★★ フランス映画 (正確にはドイツとの合作)。 フィリップ・クローデル監督作品。 息子を訳あって殺してしまったために刑務所で15年服役した女性 (クリスティン・スコット・トーマス) が、刑期を終えてとりあえず妹夫婦の家に受け入れられる。 そこには口の利けないおじいさんと、アジア系の養子二人が同居していた。 この映画は、刑務所帰りというハンディキャップを乗り越えてヒロインが社会復帰を果たしていく様を丹念に描いており、また現在のフランスのインテリが置かれている状況のようなものもほの見える。 色々な人物が出てくるが、空気を読めなかったり偏見に満ちた人間もいるとはいえ、総体的には善意の人物が多く、描写も丹念かつ丁寧で、見終えた後の味もいい。 クリスティン・スコット・トーマスの代表作になるのではないかと思われる秀作だ。  

67.「海角七号 君想う 国境の南」 6/5、シネ・ウインド。 評価★★★ 台湾映画。 ウェイ・ダーション監督作品。 台湾で郵便配達夫をしながらバンド活動をしている若者と、女優志望ながら台湾で仕事をしている日本人の女の子との関係を綴りながら、それと並行して、今は使われなくなった住所に宛てて日本から送られてきた手紙を若者が何とか届けようと苦心する様を描いている。 それは、むかし台湾が日本領だった時代に台湾の娘と恋愛をしながら、日本の敗戦によって別れなければならなかった日本人青年が老年になってからかつての恋人に宛てて書いたものの出されなかった手紙で、彼の死後に遺族が改めて台湾に宛てて送ったものであった・・・・。 台湾が日本領だった時代を知っている老人も登場し、往年の台湾と日本との関係、そして現在の台湾と日本との関係が二重写しになる映画。 そこそこ面白いが、二重写しの構図はもう少し具体的なつながりを設けるなど、一工夫欲しかった。 

66.「パーマネント野ばら」 6/1、WMC新潟。 評価★★★ 吉田大八監督作品。 離婚し、幼い娘を連れて故郷の小さな田舎町に戻った若い女性 (菅野美穂)。 そこには町で唯一のパーマ屋を営む母 (夏木マリ) が住み、また近所には幼なじみの女性二人 (小池栄子、池脇千鶴) が、やはり夫と別れたりしながら暮らしていた。 ヒロインは母の仕事を手伝ったり、母と別れた義父を訪ねたりして日々の暮らしに追われながらも、時々高校時代に教わった教師 (江口洋介) と密会を重ねている。 しかし・・・・・。 菅野、小池、池脇、と三人の若い女優が、三者三様の、しかしいずれも男運の悪い女性を演じているところがミソだけれど、やはり中心になるのは菅野美穂だろう。 一見すると静かで目立たない彼女の、しかしある一点でトラウマに憑かれた生き方が、美しいけれど淋しげな彼女の表情やたたずまいによって見事に表現されている。 菅野美穂の代表作になりそうな映画だ。

65.「クロッシング」 5/30、銀座シネパトス。 評価★★★ 韓国映画、キム・テギュン監督作品。 いわゆる脱北を描いた映画である。 北朝鮮に暮らしていた夫と妻と息子の三人家族。 夫は元は有名なサッカー選手だった。 しかし妻が妊娠した上に病気になり、国内では薬が入手できず、中国でなら手に入ると言われて国境を越えるが、予想外の事態が続き、中国のドイツ大使館に駆け込んでそこから韓国に移ることになる。 しかし残された妻と息子は・・・・・・。 現実の脱北者に取材して、努めて北朝鮮の実情に忠実に描いたとされる労働現場や粗末な住居が、北朝鮮の今を語っている。 筋書きとしては比較的単純だけれど、テーマが第一の映画だからやむを得ないであろう。 一見の価値のある作品だと思う。

64.「息もできない」 5/29、ライズX (渋谷)。 評価★★★☆ 韓国映画、ヤン・イクチュン監督作品。 監督自身が脚本と主演を担当。 恵まれない家庭に育った青年の暴力的な暮らしと、同じく恵まれない家庭に育った女子高校生のすさんだ暮らし、そして両者が出会って不思議に惹きつけられていく過程を描いている。 恵まれない暮らしから暴力に走るということ自体はありがちだけど、この映画ではその暴力が半端ではなく、それだけで一種の主題というか、作品の中心的なsomethingとなっている。 たしかに主人公たちが暴力をふるいつつも愛情に飢えている様も描かれているが、ありがちな家族物語ではなく、暴力が人間にとってもしかしたら欠かせない何かなのかも知れないと思わせるところが、この作品の優れている所以なのではないか。

63.「トロッコ」 5/28、シネスイッチ銀座。 評価★★★ 川口浩史監督作品。 芥川龍之介の有名な短編 『トロッコ』 をもとにした映画だが、舞台は現代台湾である。 台湾から日本に留学した男性と結婚したヒロイン (尾野真千子) は、男の子二人をもうけたが、夫は早世する。 彼女は夫の遺骨を持ち子供二人を連れて、夫の両親の住む台湾の田舎を訪れる。 夫の弟夫妻も来ていて、一種の家族物語が展開される。 亡き夫の父は戦前の日本領だった頃の台湾を経験しており、日本人だった過去を持つ。 家族物語に台湾と日本との微妙な関係が織り込まれる。 そうした中、男の子二人は森の中に敷かれているレール、そしてそこを走るトロッコに興味を持ち・・・・・・。 この映画の見どころは、台湾の田舎の風景だろう。 森の奥深さや、その中をどこまでも延びているレールが印象的。 しかし家族物語のほうはややありきたりで味が薄い。 そこがもっと練られていれば傑作になっただろうと惜しまれる。 

62.「月に囚われた男」 5/28、恵比須ガーデンシネマ。 評価★★ 英国映画、ダンカン・ジョーンズ監督作品。 近未来、人類は月から産出される物質をエネルギー源にして暮らし、月にはその物質を発掘するための工場が設けられていた。 しかし民間企業なので、経費は極端に切りつめられており、生身の人間は一人しか勤務しておらず、他はオートメーション化されている。 3年間という条件で一人で月に暮らす主人公は、高性能ロボットと会話をして何とか仕事をこなしている。 しかしある日、彼は発掘作業場で事故に会ってしまう。 目覚めると救出されてベッドの上にいたが、果たしてロボットに彼を救出する能力があるのか・・・・・? SF映画であるが、あまり現代風ではなく、映像的には半世紀くらい前の古典的SFのような感じである。 筋書き的にもあまり斬新とは言えないし、テーマが突き詰められているようでもない。 色々な意味で中途半端な映画だと思う。 

61.「17歳の肖像」 5/28、TOHOシネマズ・シャンテ(日比谷)。 評価★★★★☆ 英国映画、ロネ・シェルフィグ監督作品。 主人公は名門オックスフォード大学を目指して頑張っている女子高校生 (キャリー・マリガン)。 時代は1961年で、ジュリエット・グレコのシャンソンやカミュの 『異邦人』 など、フランス文化に入れあげる16歳である。 そんな彼女の前に、10歳以上年長の、裕福で教養ある男 (ピーター・サースガード) が現れ、これまで知らなかった世界を教えてくれる。 必ずしも豊かではない家庭 (中流下層) で育った彼女にとって、それは夢のような世界であった。 彼に求婚された彼女は、高校を中退するが・・・・・。 原題は"An Education"で、新聞の映画欄の紹介などではハイティーンの女の子がはるかに年上の男性と恋愛する話だと書かれているけれど、むしろこれは 「階級と教育」 を描いた映画なのである。 そのように見てこそたいへんに興味深い作品だし、原題の意味するところも筋書きが進行するに連れてじわじわ身に沁みるように痛感されてくる。 配役もいいし、脚本も入念に作られており、傑作と言えるだろう。 新潟でも上映して欲しい。

60.「ユリ子のアロマ」 5/27、ユーロ・スペース(渋谷)。 評価★☆ 吉田浩太監督作品。 アロマ・サロンに勤める若い女性であるヒロイン (江口のりこ) が、サロンの経営者の甥である高校生 (染谷将太) の体臭に惹きつけられ、彼と関係(?)を結ぶというお話。 その高校生とガールフレンド (木嶋のりこ) との関係も副筋として入っている。 うーん、一種のエロ映画なんだろうけれど、ヒロインの江口のりこは顔も体も貧弱で、見ていて気持ちが良くない。 ガールフレンド役の木嶋のりこが可愛いので、なおさら江口の貧弱さが目立つ。 私が染谷の役だったら、年上のお姉さんより可愛い木嶋のほうを選ぶけどなあ(笑)。

59.「春との旅」 5/26、Tジョイ新潟万代。 評価★★★ 小林政広監督作品。 北海道に住む体が不自由な老人(仲代達矢)が孫(徳永えり)を連れて老いた兄弟を次々と訪ね、一緒に住まわせてもらえないかと頼み込むがみな断られるというお話。 言うならば不人情物語であるが、老人問題だとか、兄弟間の確執だとか、そういうテーマが込められているようだ。 話としてはそんなに面白いというわけでもなく、映像的な特質もとりたててない。 強いて言えば老人たちのたどった人生がそれぞれの表情を持っているところが、まあまあ味わい深いかな。

58.「誰がため」 5/22、シネ・ウインド。 評価★★☆ デンマーク映画 (厳密にはチェコ・ドイツとの合作)、オーレ・クリスチャン・マセン監督作品。 第二次大戦中、ドイツ軍に占領されたデンマークでレジスタンス運動に従事し、ナチスやナチス協力者を次々と暗殺していく実在した二人組の活動を追っている。 暗殺場面が続く殺伐たる作品であることはまあいいとして、今の日本人から見ると非常に分かりにくい作りであるところが難点。 彼らは自分が殺した相手が本当に殺されるに値する人物だったのか疑問を抱くのだが、真相はよく分からないままだし、彼らに指令を出す人間と英国との関係だとか、スウェーデンとの関係だとかも見ていて不可解である。 このあたりはもう少し親切に作ってくれと言いたい。 登場人物の善悪に白黒がつけがたいとしても、その白黒つけがたさ自体ははっきり分かるように描くべきだと思うのだが、錯綜した分かりにくさがそのまままかり通っているのは感心しない。 もしドキュメンタリー性を追求するなら複雑な要素をもみほぐす工夫をすべきだし、逆にドキュメンタリー性ではなく娯楽性を重視するならまた違った作り方があったはずだ。 例えば女性の登場人物にはもう少し美人を使うとか。 実際、二人のヒロインには魅力がなさすぎるのである。 デンマークには美人女優がいないのだろうか。 

57.「マイマイ新子と千年の魔法」 5/21、シネ・ウインド。 評価★★★★ 高樹のぶ子原作、片渕須直監督作品。 昭和三十年頃の山口県の地方都市を舞台にして、東京から転向してきた小学生と、地元の子供たちの交流を描いているアニメ。 当時の細かい時代性――ラジオドラマだとかグリコのオマケだとか――が入念に描き込まれており、当時を知る人間には懐かしい。 子供たちの交流や遊びも、当時の子供たちの素朴さを含めて丁寧に再現されている。 また、一千年前に同地に住んでいた人たちを想像するシーンもあるし、他方で子供の世界とは異なる大人たちの事情に子供が目を開かれるシーンもあって、物語に重層性・多層性が加わっている。 全体として、なかなかよくできたアニメだと思うが、子供向けというよりは大人向けかも知れない。 いずれにせよ、先日見た 『涼宮ハルヒの消失』 と合わせて、日本のアニメは質が高いと納得すること請け合いの作品である。 

56.「書道ガールズ!! わたしたちの甲子園」 5/20、WMC新潟。 評価★★★ 猪股隆一監督作品。 愛媛県の四国中央市を舞台に、書道部の女生徒たちの部活や人間関係、またシャッター街と化した市中心街をなんとか活性化するのに協力しようとする工夫、そして他の高校に呼びかけて書道部同士の対抗試合を計画・実行するまでを描いている。 この映画の見どころは、様々な女生徒たちの生き生きした姿であろう。 ケンカしたり、対抗意識を燃やしたりしながら、書道を通じて友情をはぐくみ、市を活性化しようとする彼女たちが非常に魅力的だ。 主演の成海璃子、桜庭ななみ、山下リオがそれぞれにタイプの違う美少女なのもいい。 ただ、筋書きの細かいところには杜撰さもあり――例えば成海璃子のボーイフレンドの祖父がやっている製紙工場は火事になって廃墟と化したはずだが、なぜその祖父が試合直前に紙を用意することができたのか――、筋の展開の仕方はありがちという見方もできる。 あくまで少女たちのいわば生の魅力で見るべき映画だろう。

55.「(500)日のサマー」 5/17、UCI新潟。 評価★★☆ アメリカ映画、マーク・ウェブ監督作品。 あまりぱっとしない青年が、サマーという名前の女の子――会社の同僚でもある――と仲良くなるが、結局別れるというお話。 評判になった映画らしいのだが、見てみてさほど面白い作品だとは思えなかった。 メデタシメデタシで終わらない恋愛劇自体は珍しくないし、サマーがあくまで友達関係だと青年に断りながらも、自分から積極的にキスをしたり、さっさとベッドを共にしたりしているのは、よく分からないし、要するにサマーってタチの悪い身勝手女だったんじゃないの、という印象が残ってしまう。 青年は最後でサマーと別れた後、オータム (笑) という名の女の子と知り合うところで幕となるのだが、そういう変な名前の付け方を見ていると、一種の寓意劇みたいな映画なのだろうか。 ただし、そう解釈したところで映画全体が魅力的に見えてくるわけでもないのである。

54.「涼宮ハルヒの消失」 5/14、UCI新潟。 評価★★★☆ 武本康弘監督作品のアニメ。 原作はライトノベルで、テレビアニメとしても人気があったらしいが、私はいずれも未読・未見である。 しかしこのアニメは、結構よくできていると思う。 一見するとありがちな設定で、日常的な人間関係が或る原因から異次元的な方向にズレてしまうのだが、それを単に各人物が置かれた立場が変わってしまったところから来る混乱だとか、いかに元の秩序を回復させるかといったレヴェルにとどめず、こうした事態から見えてくる人間の思いがけない側面、ふだんは秘められていた性格の顕在化、そしてそれによって日頃の人間関係が改めて見直され、出来してしまった 「別の生き方」 にもそれなりに存在価値があるのではと考えてみるところまできちんと詰められている。 あり得た可能性を見ることによって人間の生き方は豊かになるのである。 そういう意味で、なかなか深い作品になりおおせていると評価したい。

53.「劇場版TRICK3 霊能力者バトルロイヤル」 5/14、UCI新潟。 評価★★☆ 堤幸彦監督作品。 このシリーズの劇場版もこれで三作目だけど、毎回 「しょぼいなー」 と思いながら見ているのだが、今回もその点は同じだった。 何て言うのかなあ、阿部寛と仲間由紀恵みたいな美男美女に冴えない役をやらせるという面白さが、末期的な(?)症状に陥っている邦画界にとっては斬新に思えるんだろうけど、もうそういう面白さで受けを狙う時期は終わってるんじゃないの? 

52.「ベジャール、そしてバレエは続く」 5/7、シネ・ウインド。 評価★★☆ スペイン映画。 アランチャ・アギーレ監督作品。 2007年に亡くなったフランスのバレエ振付師モーリス・ベジャールの遺志を継いでバレエ制作に携わる振付師やダンサーを描いたドキュメンタリー。 私はバレエに興味がない人間で、この作品を見ればひょっとして興味が湧くかなと思って見に行ったのだが、残念ながらそうはならなかった。 ドキュメンタリーの作り方として、或る振り付けがユニークかどうかは単にその振り付けだけを映しても判断不可能なので、過去の振り付けと比較してどうなのかといった説明をしてくれないと新しさも分からない――殊に私みたいな人間には――わけだが、そういう配慮がこの作品には欠けている。 作中の登場人物たちが語るシロウトにも分かる言葉は、芸術の核心に迫ることがないのである。

51.「のだめカンタービレ 最終楽章 後編」 5/5、WMC新潟。 評価★★☆    川村泰祐監督作品。 うーん・・・。 前編は一応筋が通った作りになっていたのだが、今回はどうかな。 清良 (水川あさみ) のコンクール挑戦だとか、描写に時間をかけてなくて、中途半端な気がするし、肝心ののだめ (上野樹里) も何かはじけてないんだよね。 のだめの音楽の先生はこの時点で3人いるわけで、千秋とミルヒと音楽院教授だけれど、彼女が音楽家としてやっていく道筋がそういう教師たちの相乗作用によっているのか、或いは別の、のだめ自身が持ち合わせている何かから生まれるのか、どうもはっきりしない。 ドラマとしていささか問題含みだし、最後のところは何かとってつけたみたいであんまり説得性がない。 あの内容を2時間ほどの映画1本に収めるのはどう見ても無理で、どこか徹底的に削らないとダメだったんじゃないかなあ。

50.「ゼブラーマン ゼブラシティの逆襲」 5/1、WMC新潟。 評価★★★ 宮藤官九郎脚本、三池崇史監督作品。 前作 「ゼブラーマン」 の続きみたいに見えるけど、実はそうではない。 この映画の主役はゼブラーマン (哀川翔) ではなく、ゼブラークイーン (仲里依紗) だからである。 筋書きはいい加減だし、まあ基本的にヒーローものというよりはヒーローもののパロディ作品だから、別に真面目に作ってなくても文句を言うべきでもないんだけど、そのいい加減さのなかで悪女の魅力をきわめてエロティックに見せてくれるゼブラークイーンだけが売りの映画です。 それでも標準的な水準には行ってるんじゃないかな。 「ゼブラークイーン2 ゼブラークイーンの逆襲」 を作ってくれないかなあ。

49.「名探偵コナン 天空の難破船(ロスト・シップ)」 4/30、WMC新潟。 評価★★★ 山本泰一郎監督作品。 コナンの最新作。 今回は飛行船が舞台。 そして怪盗キッドが大活躍する。 いや、つまり探偵コナンと、怪盗キッドと、(キッドに挑戦状を叩きつけた)飛行船の所有者と、その飛行船を乗っ取る謎のグループとの、3つ巴ならぬ4つ巴の戦いがなかなかに楽しめる。 もっとも、アクション的な見せ場が多く、推理物としてはもう一つという見方もできるかもしれないが、まあ悪くない出来ではあると思う。

48.「つむじ風食堂の夜」 4/23、シネ・ウインド。 評価★★★ 篠原哲雄監督作品。 或る架空の町と、そこにある食堂を舞台に、食堂にやってくる客たちの表情や会話、彼らの生き方やお互い同士の関わりを、現実からほんの数センチ浮いたと言いたくなるような抽象性と効かせ味程度の寓意性、そしてアンティークな映像で描いた映画。 すごくインパクトがあるとか斬新とかいうのではないけど、時にはこういう映画もいいなあ、と私は納得して見ていました。

47.「牛の鈴音」 4/23、シネ・ウインド。 評価★★★☆ 韓国映画。 イ・チュンニョル監督作品。 実在の農夫と老牛との関わりをじっくり描いている。 何人もの子供を育て都会に送り出した老農夫と老妻は、老いた牛を使いながら今日も無農薬で農業にいそしんでいる。 もっとも、老妻は口やかましくて、農薬を使ったほうが楽だとか、こんなところに嫁いだのが私の不幸だとか、文句ばっかり垂れていて、男としては 「女はみな (老いれば) こうしたもの」 と言いたくなっちゃうんだが、そうした五月蠅い老妻を無視して、すでに動かなくなりかけている四肢を必死に駆使する老農夫と、やさしい目をした老いた牛の表情が、なんとも言えずいい。 人間って、職業の違いこそあれ、みんなこうやって働いて死んでいくんだよなあ、としみじみ思わされる佳品。

46.「第9地区」 4/21、WMC新潟。 評価★★☆  アメリカ映画。 ニール・ブロムカンプ監督作品。 アフリカはヨハネスブルクに円盤形の巨大宇宙船が不時着した (といっても宙に浮いているんだけど)。 故障して動けない宇宙船に乗っていた異星人はヨハネスブルク郊外に住むようになるが、だんだん数が増えてきたので、当局は民間会社に委託して強制的に立ち退かせ、もっと辺鄙な場所に追いやろうとする。 ・・・・・・というような物語で、異星人が地球人と仲良くなるというお話ではなく、かといって怖い敵として地球人に襲いかかったり地球征服をたくらむというお話でもない。 その辺がまあ新味といえば新味だけれど、だけど何かイマイチ面白くないのだ。 たしかに寓意的な社会描写みたいなものはあるから知識人がもっともらしい評論を書くにはいい映画なのかもしれないけど、だけど映画としてはもっと直截な面白さがなきゃ、どうしようもないんじゃないの。

45.「ハート・ロッカー」 4/16、UCI新潟。 評価★★★   アメリカ映画。 キャスリン・ビグロー監督作品。 アカデミー賞作品賞受賞作。 今現在イラクで戦っているアメリカ人兵士を描いている。 爆発物処理班で、命がけの仕事を一見向こう見ずにやってのける男が主人公、彼を囲む兵士たちが準主人公といったところ。 爆発物の爆発機能をどうにか停止させていくシーンはなかなか迫力ではある。 ただ、イラクの現地人の姿は、映ってはいるけれど、あんまり描かれていない。 この手のアメリカ映画は、いつもアメリカ人兵士の自己意識だけが描かれており、現地人の本質には目が行かないのである。 そういう意味では、従来の類似のアメリカ映画と同工異曲とも言える。

44.「ヴィクトリア女王 世紀の愛」 4/9、Tジョイ新潟万代。 評価★★★  英米合作。 ジャン=マルク・バレ監督作品。 19世紀、英国の最盛期に君臨したヴィクトリア女王の、若い頃を描いた映画。 プリンセスであるがための様々な制約、母親や、母親の後ろ盾になっている男からの圧力、それらをはねのけて若い身空で君主の座につき、やがてアルバートと結ばれる。 舞台である宮殿や庭園などは豪華だが、物語自体は決して派手ではなく、邦題から連想されるような恋愛譚というよりは、むしろ王族や貴族同士の人間関係がいかに面倒くさいものだったかが分かる映画で、面白おかしい作品を期待する人には薦めないが、当時の英国を動かしていた上層部の様相を知るには悪くないと思う。

43.「シャーロック・ホームズ」 4/5、UCI新潟。 評価★★ アメリカ映画。 ガイ・リッチー監督作品。 コナン・ドイルの有名な小説を下敷きにしているように見えるが、はっきり言ってこれはホームズ物語ではない。 推理物というよりアクション映画であり、そのヒーローがなぜかホームズを名乗りワトソンを名乗っている、と思ったほうがいい。 アクション映画が好きな人にはいいだろうけど、小説のシャーロック・ホームズをよく知っている人や、映画は小説を忠実に再現しないとと思っている人にはお薦めできない。

42.「パレード」 4/5、Tジョイ新潟万代。 評価★★ 行定勲監督作品。 マンションでルームシェアをしている若い男女数人の物語なのだが、最初のあたりで、近所で女性を襲う謎の暴行魔が出現しているというニュースが流れ、それが最後まで尾を曳いてくる。 といって、サスペンス臭の強い映画なのかというとそういうわけでもなく、むしろ今どきの若者の生き方を何となく描いているような印象なのだ。 そういう風俗ものとして見ればまあまあなのかもしれないが、物語としての起承転結は不明瞭で、私は楽しめなかったというのが率直なところです。

41.「しあわせの隠れ場所」 3/30、WMC新潟。 評価★★★☆ アメリカ映画。 ジョン・リー・ハンコック監督作品。 お金持ちの善意の一家が、貧しい生まれながら体が大きい、しかし気持ちは優しい黒人少年を養子に迎え、その少年は高校ではラグビーをやり、やがて全米でも有数のプレイヤーと見なされて有力大学に進むという、実話をもとにした作品。 まあ、見ていて気持ちの悪くなる映画ではないし、人によっては感涙にむせんでしまうかもしれない。 黒人少年の面倒を見る妻役のサンドラ・ブロックはこれでアカデミー賞主演女優賞をとっている。 ただ私としては、少し話がストレートすぎて、50年前の映画を見ているような印象もあった。 映画を日頃あんまり見ていない人にはお薦めできる、と言っておこう。 

40.「誰かが私にキスをした」 3/29、UCI新潟。 評価★★☆ ハンス・カノーザ監督作品。 東京のアメリカン・スクールを舞台に、転倒事故で一時的に記憶を失った少女 (堀北真希) が、自分を囲む3人の男子同級生 (手越祐也、松山ケンイチ、アントン・イェルチン) のあいだで揺れ動きながら、過去の記憶を取り戻しつつ、自分のこれからの生き方を模索する、というような筋書きの映画。 うーん、問題は3人の少年と1人の少女との関係なんだが、特にアントン・イェルチン扮するアメリカ人の少年との関係がイマイチうまく設定されておらず、作品の深みを損なっている。 また3人との関係は実はかなり複雑なわけで、そこを描ききるところまで行っていない。 そのためには、少女の父の再婚話みたいな余計な部分は削った方がよかっただろう。 惜しい失敗作、と言ったところか。 

39.「シャネル&ストラヴィンスキー」 3/26、シネ・ウインド。 評価★★★ フランス映画。 ヤン・クーネン監督作品。 2009年に相次いで公開されたココ・シャネル伝記映画の3番手作品。 有名な作曲家ストラヴィンスキーとシャネルとの関係を描いている。 冒頭、『春の祭典』がパリで上演されたときの騒動が描かれていて、この騒動自体伝説的なものなので、その実態と迫力が見どころである。 シャネルはこの初演に立ち会って前衛的な芸術家としてのストラヴィンスキーに興味を持つという設定になっている (実際に彼女が初演に立ち会ったかどうかは不明らしい)。 それからしばらくして彼女は自分の別荘をストラヴィンスキーの仕事のために提供するのだが、妻子持ちの彼と恋多き女である彼女はそこで・・・・・というような展開になっている。 どこまでが伝記でどこまでがフィクションか分かりにくいが、芸術家同士の火花を散らすような関係を描いた映画としてはそれなりに面白い。   

38.「樺太1945夏 氷雪の門」 3/22、新潟ユニゾンプラザ。 評価★★★ 1974年に制作されながら、ソ連の圧力でごく一部の映画館でしか上映されなかった、という幻の作品。 村山三男監督作品。 1945年8月、日本は連合国に対して無条件降伏をした。 しかし実はそこで戦争は終わらなかった。 ソ連は、当時日本の領土だった樺太の南半分に対する戦闘行為を続行、日本の軍人のみならず、一般人を容赦なく殺傷した。 この映画は、当時樺太の真岡町で電話交換手をしていた若い日本人女性たちが、避難勧告が出ているにも関わらず自分たちの職務をまっとうし、最後は毒を飲んで全員自殺してしまうという実話をもとに作られている。 ソ連の卑劣さや、当時の日本女性たちの生き方がよく分かる映画であり、新潟では1日だけ、県の施設を用いて上映会が行われたが、一般人にもっとこの映画の存在を知ってもらうような努力が必要であろう。 DVDも新品は入手できない状況らしいので、改善を望む。 電話交換手の女性役には、二木てるみ、岡田可愛、藤田弓子などが扮しており、そのほか南田洋子や栗田ひろみも出演していて、女優陣の豪華さも目を惹く。

37.「愛のむきだし」 3/19、早稲田松竹。 評価★★★   園子温監督作品。 長尺で4時間におよぶ映画。 昨年評判になったが新潟には来ず、私の上京時期には東京で上映されておらず、見る機会がなかったが、今回の上京でようやく早稲田松竹にて見ることができた。 筋書きはなかなか複雑だが、思い切ってまとめるなら、少年の少女への思いと、宗教 (キリスト教カトリックと、新興宗教) ということになろう。 宗教の狭間で少年や少女はさまざまな行動に走りながら危うい生をたどっていくのだが、その生の軌跡はマンガチックなようでもありリアリスティックでもあり、これまた一筋縄ではいかないのだ。 少年の西島隆弘と少女の満島ひかりはいずれも美形。 西島は女装姿もあざやかだし、満島は下着シーンだとか入浴シーンもこなして観客を魅了してくれる。 カトリックという伝統宗教の限界、新興宗教の怪しさも、それなりに描き込まれている。

36.「海の沈黙」 3/18、岩波ホール。 評価★★★ フランス映画、1947年制作、ジャン=ピエール・メルヴィル監督作品。 第二大戦中、ナチスドイツに占領されたフランス。 その田舎町に住む祖父と孫娘の家に、一人の若いドイツ将校が逗留することになった。 彼を居間に迎えるときには沈黙を守り消極的抵抗を行う祖父と孫娘。 しかしドイツ将校はフランス文化への敬意をとうとうと述べ、今回の事態によってドイツ文化とフランス文化の結婚が行われるのだという自説を礼儀正しく主張する。 やがて彼は短期間パリに出て、首都のドイツ人将校たちと交際するが、フランス文化への敬意もなければ占領下のフランス人に対する思いやりもない同僚たちの姿にショックを受け・・・・・というようなお話。 原作は抵抗文学として有名で岩波書店から出ているが(私は未読)、映画化も戦後まもなく行われたものの、正式の劇場公開は今回のデジタル・リマスター版が最初だとか。 モノクロ画面がなかなか効果的で、映画ファンならやはり一度は見ておくべき作品だろう。

35.「すべて彼女のために」 3/17、ヒューマントラスト・シネマ有楽町。 評価★★ フランス映画、フレッド・カヴァイエ監督作品。 主人公は教師だが、妻が無実の殺人罪を着せられ裁判でも有罪が確定してしまう。 そこで夫は妻を脱獄させて子供と3人で海外に脱出する計画を練り・・・・・。 何というのかなあ、映画としてきわめて陳腐で、見せ場もとりたててないし、この映画ならではという箇所も見あたらない。 テレビドラマとしてならともかく、カネを払って映画館で見るようなシロモノではありません。

34.「泥だらけの純情」 3/17、神保町シアター。 評価★★★ 1963年作、中平康監督作品。 在アルジェリア大使である父を持ちミッション系高校に通っている上流家庭の令嬢 (吉永小百合) は、不良に絡まれているところをチンピラの青年 (浜田光夫) に救われる。 二人はそれをきっかけに恋に陥るが、育ちもふだんの暮らしぶりもあまりに違いすぎる二人の愛情は周囲から理解されず、ついに・・・・・というお話。 吉永小百合が若かった頃の代表作の一つ。 上流のお嬢さんでありながら、一途な恋に走るヒロインを見事に演じている。 

33.「時をかける少女」 3/17、ヒューマントラスト・シネマ渋谷。 評価★★★ 筒井康隆原作、谷口正晃監督作品。 この原作は、72年に 「タイムトラベラー」 のタイトルで島田淳子主演によりテレビドラマ化され、83年に大林宣彦監督・原田知世主演で映画化、さらに2006年にアニメ映画化されているが、それに次ぐもの。 ただし06年のアニメではヒロインは原作のヒロイン・芳山和子の姪という設定だったが、本作品では芳山和子はすでに中年に達しており(安田成美)、その一人娘(仲里依紗)がヒロインになっている。 筋書きは、芳山和子が交通事故で意識不明の重体に陥り、一時意識を取り戻したときに 「深町一夫を探してほしい、過去に戻って」 と娘に頼み込む。 それはかつて、深町一夫こと未来人ケン・ソゴルと恋をし、やむを得ず別れながらもきっといつか再会しようという約束を確認するためだった。 頼まれた娘は過去にタイムスリップするが、そこで彼女なりの恋を・・・・・。  特に前半はやや進行にもたつきがあってイマイチだが、後半は深町一夫も登場するし、それなりに面白くなる。 私は、この映画が今のところ新潟に来る予定がないということで東京で見たのだが、関東甲信越と呼ばれる地域でこの映画上映が予定されていないのは新潟県オンリーなのである。 新潟県の映画業界関係者よ、なんとかしてください!   (追記: その後、新潟市でも5月上旬からTジョイでの上映が決定した。)

32.「モリエール 恋こそ喜劇」 3/16、ル・シネマ(渋谷)。 評価★★★ フランス映画。 ローラン・ティラール監督作品。 フランスの古典喜劇作家として著名なモリエールを主人公として、若い演劇人である彼がなぜ喜劇をメインとして活動するようになったかを、フィクションとして描いている。 パリで演劇人として活動していた彼は、あるきっかけから地方都市の貴族に雇用される。 その家の奥方の美しさに魅了されたモリエールは彼女に迫るが、彼女は文化的素養豊かな女性であり、喜劇を軽視していたモリエールに喜劇の素晴らしさを教えて・・・・・というようなお話。 当時の風俗などが忠実に再現されていて歴史的な意味での面白さはそれなりにある。 ただ、この映画自体が喜劇として成功しているかどうかはちょっと微妙なところだろう。 主演のロマン・デュリスにもう少し喜劇的な雰囲気がほしい。 

31.「スイート・リトル・ライズ」 3/16、シネマ・ライズ(渋谷)。 評価★★ 江國香織原作、矢崎仁司監督作品。 東京に住む結婚して4年ほどたつ夫婦 (大森南朋、中谷美紀) が、それぞれに不倫をするようになるというお話。 亭主はたぶん一流企業勤務のサラリーマン、妻は趣味にテディベアを作りそれで個展もやっているという設定。 うーん・・・・・・何というのかなあ、風俗小説ならぬ風俗映画で、高級レストランでの食事だとか、そういうのを映画で見るのが好きな人だとかにはいいんだろうけど、私には味の薄い駄品としか思われなかった。 映画館で見るほどのものじゃないでせう。

30.「花のあと」 3/15、Tジョイ新潟万代。 評価★★★★☆ 藤沢周平原作、中西健二監督作品。 藤沢原作だから時代劇で、女ながら剣術に優れたヒロイン (北川景子) の恋を描いている。 彼女はあるとき道場で試合をして男たちを次々とうち負かしたが、道場一の剣士と言われた青年 (宮尾俊太郎) はたまたま留守だった。 花見で偶然青年と会った彼女は、手合わせをしようと約束する。 やがて彼女の家を訪ねてきた青年は庭で彼女と試合をして彼女をうち負かすが、倒れかけた彼女を抱き起こそうとした一瞬、目と目が合う。 その瞬間、彼女は彼に恋をしていた。 しかし彼女にはすでに親に決められたいいなずけがいた。 また青年の家は家格から言って彼女の家より下でもあった。 彼女は恋を心に秘めて日々を過ごす。 しかし青年には苛酷な運命が待ち受けていた・・・・・。 恋というものが本来的に結ばれない運命にあり、一瞬のものであればこそ一生人の心を束縛し、同時にその一瞬のために人は時として大胆な行動をとるという真理を、あますところなく見事に描いている。 北川景子も美しい。 また、彼女といいなずけとの関係にも妙味があって、幅のある作品になりおおせている。 四季の風景をとらえた映像も見事。 大いにお薦めの映画。

29.「ゴールデンスランバー」 3/12、WMC新潟。 評価★★    伊坂幸太郎原作、中村義洋監督作品。 仙台市在住の青年(堺雅人)が首相暗殺の嫌疑をかけられ逃げまくるというお話。 うーん、警察の描き方などがリアリティを欠いており、またどういうわけか主人公が逃げまくる過程で必ず助けてくれる人物が現れるなど、ご都合主義的な展開もあって、それでいてこの犯罪の実態はさっぱり明らかにならないなど、肝心の部分は素通りだったりするので、評価する気になれませんでした。 ついでに、竹内結子って美人じゃないのに、どうしてこんなにしばしば映画のヒロインやるのかなあ。 もう少しキレイな女優をヒロインにしてほしいものだ。 映画界の審美眼が低下している?

28.「ライアー・ゲーム ザ・ファイナルステージ」 3/8、UCI新潟。 評価★★★☆ マンガ原作の映画化。 松山博昭監督作品。 集まった十人ちょっとの男女が或るルールにのっとって点数(1点1億円)を競う、というお話。 そのルールがきわめてシンプルなのだが、ゲーム参加者たちの心理の読み合いによって予期しない結果が次々と出てくるところがミソ。 結構いける作品じゃないかな。 人を単純に信じてしまう性格の戸田恵梨香の純真な表情、徹底的に他人の心理や行動を読んでゲームに挑む松田翔太の意味ありげな表情が、それぞれに印象的。

27.「アンナと過ごした4日間」 3/6、シネ・ウインド。 評価★★★ ポーランド・フランス合作。 イエジー・スコリモフスキ監督作品。 老いた祖母と二人だけで暮らす労働者の青年。 ある日、彼は若い女性が強姦される現場を目撃し、しかも犯人だという冤罪を着せられてしまう。 刑期を終えて日常生活に戻った彼は、その女性に改めてアプローチしようとするのだが、その方法は・・・・・・。 非常に雰囲気が暗い映画で、たしかに主人公の行動もナニなんだけれど、それ以前に工場だとか住居だとかの映像が独特の陰鬱さを持っているので、それだけで何事かありそうというムードが充満している作品になっている。 だけどああいう場所には自分としては住みたくありませんね。 ポーランドってどこもかしこもあんなに暗いのかなあ。

26.「真幸くあらば」 3/5、Tジョイ新潟万代。 評価★★☆ 奥山和由製作、御徒町凪監督作品。 物取り動機で若い夫婦のアパートに忍び込み、発見されて二人とも殺した若者 (久保田将至)。 死刑判決を受けて刑務所に入っている彼のところに、囚人支援のヴォランティアである若い女 (尾野真千子) がやってくるようになった。 実は彼女は被害者男性とは以前婚約していたのが、裏切られたのであった。 やがて死刑囚と彼女の間には愛情が・・・・・。 というようなお話。 これ、受け取り方が難しい映画ですね。 製作者の意図どおりに反応するなら、不可能を超えた恋愛ということになって感涙することになる。 けど、素直じゃない私は、ちょっとついていけないものを感じた。 こういう女性って、どっかおかしいんじゃないかという気持ちが、全面的にとは言わないが、部分的にあって、それを捨てられませんでした。 私は愛とは無縁な不純な人間だからでしょうか。 多少類似した筋書きの映画でも、小池栄子主演の 『接吻』 だと、ヒロインに死刑囚を好きになる心理的動機があって、説得性を感じたんだけど。

25.「人間失格」 3/1、WMC新潟南。 評価★★★ 荒戸源次郎監督作品。 言わずと知れた太宰治の代表作を映画化したもの。 今風に言うと、田舎の富豪の息子である主人公 (生田斗真) が生きる力に欠けているため、色々な女と偶然や何かで知り合ったり関係したりしながら、どうしようもなく落ちていくお話であるが、映画で見ると、主人公は何でこんなに女にモテるのかなあ、と思ってしまう。 モテる秘訣を訊いてみたいものだ(笑)。 年齢的にも上は大楠道代や三田佳子から、下は石原さとみまで、色々な女優が登場するので、それなりに楽しめる。 副主人公として頻出する伊勢谷友介もなかなかいい。

24.「ソフィーの復讐」 2/26、UCI新潟。 評価★★★ 中国映画。 エヴァ・ジン監督作品。 マンガ家のソフィーは医者の恋人と結婚目前だった。 ところがその恋人を女優に横取りされてしまう。 怒った彼女は、何とか恋人を取り戻した上で改めて振ってやろうと画策する。 たまたま女優に振られた写真家と出会ったのを機に、彼の援助を得てさまざまな作戦をたてるのだが・・・・・。 ソフィーを演じるチャン・ツィイーがコメディエンヌとして頑張っているが、率直に言ってあまり笑えなかった。 むしろ、ちょっと変わったラブコメとして楽しんだ方がよさそう。

23.「インビクタス 負けざる者たち」 2/22、UCI新潟。 評価★★★★☆ クリント・イーストウッド監督作品。 南アフリカ共和国を舞台に、長年の投獄生活ののちに大統領に就任したマンデラが、アパルトヘイト時代から続くラグビー・チームの名を変えずに世界選手権に向けて強化していくことで、白人と黒人の壁を破り国民の一体感を生み出そうとする、という物語。 マンデラを演じるモーガン・フリーマンに味があるし、差別主義者である白人の過去を敢えて咎めることをせずに、あくまで融和と赦しによって新しい国を作り出していこうとする過程や、チームの男たちの表情、そしてクライマックスの試合の模様と、見せ場がたくさんあり、きわめて充実した映画に仕上がっている。 大いにお薦めである。

22.「赤と黒」 2/21、新潟市民プラザ(にいがた国際映画祭)。 評価★★★ 毎年2月に行われているにいがた国際映画祭。 毎回欠かさず見ているが、今回は私の上京と映画祭の時期が重なって、これ1本しか見られなかった。 スタンダールの有名な原作を、ジェラール・フィリップ主演で1954年に映画化したもののデジタルリマスター版。 クロード・オータン=ララ監督作品。 私の好みで言うと、レナール夫人役のダニエル・ダリューがあんまり美人には見えず、前半はそのせいもあってイマイチだなと思っていたのだが、後半のマチルダ役のアントネラ・ルアルディは貴族令嬢のイメージを裏切らない美人なので、ようやく楽しめるようになりました。 それにしても、ジェラール・フィリップって、妻夫木聡に似てますね。 

21.「カラヴァッジョ 天才画家の光と影」 2/19、銀座テアトルシネマ。 評価★★★★ イタリア・フランス・スペイン・ドイツ合作、アンジェロ・ロンゴーニ監督作品。 16世紀末から17世紀初めにかけて活躍し、近年評価が高まっているイタリア画家カラヴァッジョの生涯と作品を映画化したものである。 カラヴァッジョの映画というと、1986年のデレク・ジャーマンによるものがあるが、あれは私の記憶では芸術性が勝っていて映画としてはあんまり面白くなかった。 それに比べると、本作品は娯楽映画的な側面もけっこうあり、他方でカラヴァッジョの作品もそれなりに紹介されているし、当時の時代風俗なんかも再現されているので、映画として十分楽しめるようにできているところが買いである。 カラヴァッジョを演じるアレッシオ・ボーニはハンサムだし、彼を囲む女たちにも美人が揃っているしね。

20.「カティンの森」 2/18、岩波ホール。 評価★★★ ポーランド映画、アンジェイ・ワイダ監督作品、2007年。 有名なカティンの森虐殺事件を扱っている。 ポーランドは1939年にナチスドイツとスターリンのソ連に侵略され二分割された。 その際にソ連の捕虜となったポーランド将校約1万5千人が行方不明となり、43年にカティンの森で数千人の遺体が発見された。 ドイツはソ連の仕業とし、ソ連は逆にドイツの仕業と主張した。 戦後ソ連の衛星国となったポーランドでは長らくソ連犯行説はタブー扱いされていたが、ゴルバチョフが登場して東西のイデオロギー対立が解消された1989年にポーランドの雑誌がソ連犯行の証拠を掲載し、翌年にソ連もそれを認めるにいたった。 この映画は、ソ連の犯罪行為の犠牲になった将校たちの姿、その家族、またナチスドイツに蹂躙される大学など、当時のポーランドの様子を克明に描いていて迫力がある。 さいわい、新潟でもユナイテッドで上映されるようなので、多くの人に見て欲しい。

19.「沈丁花」 2/18、神保町シネマ。 評価★★★☆ 神保町シネマの特集 「オールスター映画 夢の祭典」 から、これだけを見てみた。 千葉泰樹監督作品、1966年。 4人姉妹のお話で、京マチ子、司葉子、団令子、星由里子が出ている。 ほかに母親役で杉村春子、姉妹の弟役で田辺靖雄、姉妹の結婚相手もしくはその候補として仲代達矢、小林桂樹、宝田明などが登場。 まさにオールスター映画である。 筋書きは、歯科医である父が早くに死んだため、後を継いで歯科医院を切り回している長女 (京マチ子) とその看護婦をしている次女 (司葉子) が仕事ゆえに未婚なのに、三女 (団令子) と四女 (星由里子) が結婚してしまっているため、何とか上の二人を結婚させようと、母や妹や弟や伯父 (加東大介) が画策する、というもの。 結婚話といえば、小津の映画だとか、谷崎の『細雪』が有名だけど、この映画もそうしたお話であり、なおかつ結構面白い。 昔はこういう映画が作れたんだなあ、と感慨にふけってしまいます。 

18.「突然、嵐のように」 2/17、シネマヴェーラ渋谷。 評価★★   下 (↓) の作品に続いて見た映画。 1977年、山根成之監督作品。 無軌道に生きる主人公 (郷ひろみ) が、入院先の看護婦 (秋吉久美子) と仲良くなるが、やがて借金で首が回らなくなって・・・・・というようなお話。 こちらはかなり凡庸な脚本と出来栄えという印象だった。 むしろ脇役で出てくる石浜朗や中山麻理に懐かしさのようなものを感じた。

17.「赤ちょうちん」 2/17、シネマヴェーラ渋谷。 評価★★★ シネマヴェーラ渋谷の 「70年代の青春 鬱屈と混沌と」 特集から、時間的に合うからという理由で秋吉久美子主演の2本立てを見た (70年代に私は若く 「青春」 だったわけだが、いずれも初見)。 で、これは藤田敏八監督作品で1974年作。 地方から東京にやってきた若い男女が同棲するようになり、しかし様々な理由から住居を次々と変えていく、というお話。 その過程の中で、高度成長期の東京の多様な素顔や、日本人の意識の変化など、この時代の特徴が浮かび上がってくる。 当時流行したフォークソングのタイトルをそのまま題名にした映画だけど、そういうワクを越えた出来栄えで、紋切り型にならずに時代性と主演二人 (高岡健二+秋吉久美子) の特性をうまく活かした藤田監督に敬意を。

16.「戦場でワルツを」 2/16、シアターN渋谷。 評価★★★ イスラエル・ドイツ・フランス・アメリカ合作、アリ・フォルマン監督・脚本・制作、2008年。 アニメによるノン・フィクションという映画である。 1982年に起こったサブラ・シャティーラ大虐殺事件を素材として、記憶の欠落や何度も見る夢を手がかりに、人間の記憶と戦争犯罪の問題が追求されている。 この虐殺事件は日本ではあまり知られておらず、或る程度予備知識を仕入れてから見た方がいいかも知れない。 ただしこのアニメにあっては、いわゆる戦争責任ではなく、戦争や虐殺をめぐる人間の記憶の不条理さや、大状況の中での人間の寄る辺なさのほうに重きがおかれていることを忘れるべきではないだろう。

15.「鏡の中のマヤ・デレン」 2/16、イメージ・フォーラム(渋谷)。 評価★★★ オーストリー・チェコ・スイス・ドイツ合作、マルティナ・クドゥラーチェク監督作品、2001年。 革命の年にロシアで生まれ、5歳で米国に渡ったマヤ・デレン。 彼女は映画監督であると同時にその美貌により女優としても活躍し、その他多様な活動を行ったが、1961年に44歳で死去した。 本作品は、このマヤ・デレンの生涯を明らかにしようとするもの。 彼女と交際のあった人々(2度目の夫は17歳年下の日本人だった)のインタビューや、その映像作品など、様々な視点から彼女の本質に迫ろうとしている。 上映館のイメージ・フォーラムでは1月にマヤ・デレンの作品も上映されたようだが、私はその頃は忙しくて上京する機会がなく、見損ねたのが残念。 

14.「倫敦 (ロンドン) から来た男」 2/15、イメージ・フォーラム(渋谷)。 評価★★☆ ハンガリー・ドイツ・フランス合作、タル・ベーラ (ハンガリー) 監督作品、2007年。 ジョルジュ・シムノンのミステリーが原作だそうである。 フランスの小さな港町を舞台に、銀行から奪われたカネを、たまたまその受け渡し現場を目撃した貧しい鉄道労働者が手に入れてしまう。 やがて彼と家族との関係が変化していき、事件を捜査しに英国からやってきた探偵も絡んで、事態は思わぬ方向に・・・・・というお話。 ただし、この映画ではそうした筋書きより、レトロを狙ったモノクロ画面と、極端な長回しできわめてゆっくりした映像の進行に特徴がある。 また、意図的なのか、或いは (上映館のお断りによると) フィルム自体がもろい材料で作られているそうなのでそのせいか、音にもスクラッチノイズが目立つ。 こういうムードを評価するかどうかが、本作をどう見るかを左右するだろう。 私は、レトロっぽいところにむしろある種の嘘を感じてしまい、あまり買えないなと思いました。 

13.「抱擁のかけら」 2/15、新宿ピカデリー。 評価★★★ スペイン映画、ペドロ・アルモドヴァル監督作品。 盲目の脚本家が過去を回想する形式の映画だが、そこでは美しいヒロイン(ペネロペ・クルス)が一方では裕福な会社経営者に目をかけられる秘書であり、同時に女優を目指している。 やがて経営者の出資で彼女を主演にした映画が脚本家を監督として作られるのだが、そうした中で三角関係のしがらみが・・・・というようなお話。 劇中劇ならぬ、映画中映画のお話もあって、結構錯綜しているのだが、退屈しないで見られる映画にはなっているし、ペネロペ・クルスがちゃんと脱いでいるところもいい。 (『サヨナライツカ』 で脱ぎながら胸も見せない中山美穂は見習って欲しい。)

12.「食堂かたつむり」 2/14、UCI新潟。 評価★★ 富永まい監督作品。 婚外子として母の手で育てられたヒロイン(柴咲コウ)が、外国人の恋人に騙されてカネを奪われ、そのショックで声も失い、故郷の小さな町に住む母のところに里帰りして、母とケンカをしながら食堂を開くというお話。 最初のあたりは大ざっぱに語りで済ませており、途中から或る程度ていねいに話が進むように見えるのだが、基本的にリアリズムではなく、メルヒェンチックな映画である。 だけど何となく退屈で、話にうまく乗れないのだ。 母と娘の関係にも時間がさかれているが、あんまりリアリティを感じないし、料理にしても、どこでこんな腕前になったのか、食材はどこから持ってくるのかなど、野暮な疑問が湧いてくる。 つまり、そういう、どうでもいいことを考えてしまうくらい魅力に乏しい映画だということ。 残念でした。

11.「ポー川のひかり」 2/11、シネ・ウインド。 評価★★☆ イタリア映画、エルマンノ・オルミ監督作品。 大学の哲学教授が、ある日図書館の貴重な古文書多数に大釘で穴をあけ、どこかに失踪する。 そしてポー川のほとりにある廃墟に住まい、周辺の素朴な住民たちと交流をするのだが・・・・・。 人間と人間の交流だとか、信仰や哲学の原点に立ち返ろうとする映画で、意図はよく分かるし悪くはないのだが、何か物足りない感じが残る。 主人公の教授がハンサムで、勉強の相談に来たインド人美人女子学生に学問のむなしさを説き、ついに接吻してしまうところなんか、今どきの窮屈な大学では下手すると――いや、下手をしなくてもセクハラと言われてクビになりかねないなと思うし、ポー川のほとりに住み着いてからもパン屋に勤める魅力的な若い女性と仲良くなったりして、人生、そんなにうまく行くものですかね、とやっかみ半分で言いたくなってしまいます。

10.「今度は愛妻家」 2/9、UCI新潟。 評価★★★★ 行定勲監督作品。 写真家の夫 (豊川悦司) は何かと細かいところに気配りをする妻 (薬師丸ひろ子) がうるさくて、邪慳にしている。 そんなある日、ついに妻は離婚を言い出すのだが、実は・・・・・・。 日常的にありそうなお話だけど、途中で仕掛けがしてある映画である。 ネタバレになるのでこれ以上書けないが、しかしそうした仕掛けがあってもさほど気にならず、過去を振り返って後悔し、「今度はお前を大事にする」 というトヨエツのセリフが胸にじんと迫ってくる佳作である。 

9.「アバター」 2/1、WMC新潟。 評価★★★☆ 米国映画、ジェームズ・キャメロン監督作品。 3D・吹き替え版にて鑑賞。 3Dは初体験だったが、まあこんなものかな、という程度で、びっくり仰天するほどではなかった。 筋書きは、地球外惑星で貴重な鉱物資源を採取するために、その惑星の原住民や動物たちを追い払い、自然を破壊しようとする強硬な軍人たちに、地球から派遣されてきた主人公が、最初は協力していたが、途中で疑問を覚え、その惑星の原住民たちと一緒に闘うというもの。 『ダンス・ウイズ・ウルヴス』 を想起させる映画で、ほかにも既存の有名作品から借りてきたと思しき設定や映像が結構あるが、それを別にすれば約2時間半、面白く見ることができ、退屈しない。 でも、この結末だと、地球人は○○しないといけない、ということになりはしませんかね。

8.「おとうと」 1/30、WMC新潟。 評価★★★ 山田洋次監督作品。 美しくしっかりした姉 (吉永小百合) と、ぐうたらな弟 (笑福亭鶴瓶) を軸に展開される人情喜劇。 弟が姉の娘 (蒼井優) の結婚式にやってきてめちゃくちゃにしてしまうところなど、『男はつらいよ』 シリーズで寅さんが妹の見合いをぶちこわす場面と似ているし、全体的に既視感のある作品で、斬新さは感じられない。 また弟のハチャメチャぶりも意外に大人しめなので、笑いを主たる目的として見る向きには物足りないかも知れないが、淡々と流れる時間の中で姉と弟の対立と和解を描いた人間ドラマとして見るなら、まあ悪くない映画だと言えるでしょう。

7.「Dr.パルナサスの鏡」 1/25、UCI新潟。 評価★☆ 英国=カナダ合作。 テリー・ギリアム監督作品。 『ダークナイト 〔バットマン〕』 での悪役で注目されていたヒース・レジャーが登場するはずが、彼の急死により製作そのものが危ぶまれていたところ、ジョニー・デップやジュード・ロウらの協力を得て完成された、といういわく付きの映画。 ・・・・・しかし、率直に言って面白くなかった。 旅の興行一座と、その舞台から幻想世界に入ることができるという設定、および一座の主人と悪魔との契約を軸に話が進むのであるが、幻想世界に面白みがなく、さりとて悪魔との契約にもとりわけハラハラさせられるわけでもなく、登場人物の魅力もイマイチであり、評価すべきところが見あたりません。

6.「サヨナライツカ」 1/24、UCI新潟。 評価★☆  辻仁成の小説 (私は未読) を、辻夫人である中山美穂主演で映画化したもの。 監督は韓国のイ・ジェハン。 航空会社勤務で婚約者もいる青年 (西島秀俊) が、仕事でバンコクに長期滞在しているうちに、謎の女性 (中山) と知り合い恋に陥るお話。 結局は結婚するために別れるのだが、その25年後、副社長となった彼が仕事で再度バンコクにやってくると彼女と再会するという後日談付き。 ・・・・・・何んて言うのかなあ、原作はどうか知らないけど、映画の出来は相当にヒドイ。 リアリティが全然感じられず、西島と中山が本当に恋愛感情を抱きあっているようには見えない。 タイの観光名所と高級ホテルを見て喜んでおけばそれでいい映画じゃないかな。 カネ出して見るほどの作品とはとても思えません。

5.「母なる証明」 1/18、Tジョイ新潟万代。 評価★★★★  韓国映画。 ポン・ジュノ監督作品。 女手ひとつで息子を育ててきた中年女性のヒロインは何かにつけて息子のことを気にしている。 あるとき、息子は殺人容疑で逮捕されてしまう。 息子の無実を証明するために母は奔走する。 やがて・・・・・というような筋書き。 途中まではありきたりな韓国映画かなと思いながら見ていたのだが、終盤に来て、それまでの何気ないいくつもの描写が一気に意味を持ち、俄然盛り上がってくるところが買いである。 タイトルは母だけれど、実は息子のあり方もこの映画の重要な鍵なのである。 ネタバレになるといけないので、あとはご自分でご覧あれ。

4.「大怪獣バトル ウルトラ銀河伝説」 1/15、UCI新潟。 評価★★★ 坂本浩一監督作品。 ウルトラマンの映画は何作も作られているけれど――私はそのうち一昨年に作られたものしか見ていないが――、今回は悪役ウルトラマンが初登場するというのが話題。 それで見てみました。 まあ、だけど筋書きとしてはそれほど複雑ではなく、確かに一昨年の 「大決戦! 超ウルトラ8兄弟」 よりは工夫された作りで、面白さは上だけれど、所詮こういう映画は基本的パターンからいってそれほど大人を唸らせるようなものにはならないのだろうなあ、と思いました。 ちなみにウルトラ7の息子であるウルトラマン0(ゼロ)が登場するのも話題。 それにしてもなぜ7の息子が0になるのか、どういう計算に基づいているのだろうか、謎である。

3.「悪夢のエレベーター」 1/15、Tジョイ新潟万代。 評価★★★☆ 堀部圭亮監督作品。 ある青年がエレベーターの中で目覚める。 他に男女3人が乗り合わせている。 事故があってエレベーターが急降下し、青年は頭を打って気絶していたのだという。 閉じ込められた4人は自分の身の上話をしたりして過ごすが、やがて青年はある事実に気づき・・・・・。 脚本で見せる映画の典型である――これはほめ言葉。 邦画には、脚本をかなり工夫した映画と、逆にものすごくいい加減な脚本の映画とがあるけれど、本作品は明らかに前者であり、特に終わり近くにはあっと言わせる部分があって、一見の価値のある映画になっていると思う。

2.「さらば夏の光」 1/5、シネ・ウインド。 評価★★ 吉田喜重監督作品、1968年制作。 下の 『情炎』 と同じく、シネ・ウインドの岡田茉莉子特集の1本。 作られた当時としては珍しかったヨーロッパ・ロケ (それも、ポルトガル、スペイン、イタリア、フランス、北欧と回っている) をした映画だが、作りは有名なフランス映画 『去年マリエンバードで』 を露骨に模倣しており、ちょっとどうかと思う。 登場人物たちのセリフが浮いていて、全然リアリティがない。 作られた当時は何となくモダンで芸術的に思われたのかも知れないが、今見ると色あせていると言うしかないでしょうな。

1.「情炎」 1/4、シネ・ウインド。 評価★★☆   新潟市のミニシアター系映画館シネ・ウインドで、昨年末から今年初めにかけて岡田茉莉子特集を組んでいる。 その1本。 吉田喜重監督作品、1967年。 母子家庭で育ったヒロインは、母に愛人がいることに反発しながら成長した。 その相手は彫刻家だったが、やがて彼の口から、母が彫刻家とは別に肉体労働者と関係を持って、その直後に死んだことを知る。 大人になったヒロインは裕福な男の妻となるが、やがて彼女自身も母と同様に・・・・・。 というような筋書きだけど、展開が読めるだけじゃなく、現代の目で見るとまどろっこしくて、もう少しスピーディな進行にできないのかな、という気がする。 

 

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